この記事のポイント
- 権利金は原則不動産所得。土地の時価の2分の1を超えると譲渡所得です
- 譲渡所得になったとき、取得費は土地の取得費を按分した金額だけです
- 底地の価額が明らかでないときは地代の年額の20倍を使えます
- 2回目以降の設定では、前回使った取得費を引いた残額が元になります
まず結論:譲渡所得になった権利金は、土地の取得費を按分して差し引きます
土地を建物の敷地として貸すと、権利金を受け取ることがあります。
権利金とは、借地権を設定する対価として一時に受け取るお金です。
この権利金は、原則として不動産所得になります(所得税法26条1項)。
ただし権利金がその土地の時価の2分の1を超えると、資産の譲渡とみなされます。
所得税法33条1項と、同法施行令79条1項の定めです。
このときは、分離課税の譲渡所得として申告します。
問題は、土地の取得費を全額引けるわけではないことです。
所得税法施行令174条1項が、按分の方法を定めています。
2分の1を超えるかの判定は、借地権・底地を売ったときの記事で詳しく扱っています。

取得費は「権利金 ÷(権利金+底地の価額)」の割合で按分します
結論として、土地の取得費に、権利金が土地全体の価値に占める割合を掛けます。
取得費は、その借地権等の設定をした土地の取得に要した金額及び改良費の額の合計額に、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額のうちに占める割合を乗じて計算した金額とする。
一 その借地権等の設定の対価として支払を受ける金額
二 前号に掲げる金額とその借地権等の設定をされている土地…としての価額との合計額
(所得税法施行令174条1項)
底地とは、借地権が付いた状態の土地のことです。
土地を丸ごと売ったのではなく、価値の一部を手放したと考える計算です。
ポイント
底地としての価額が明らかでなく、地代があるときは、地代の年額の20倍を底地の価額とします(施行令174条1項2号かっこ書)。
数値例:更地価額8,000万円の土地に借地権を設定した場合
結論として、権利金5,000万円でも取得費は約2,027万円しか引けません。
計算例
例:30年前に3,000万円で買った土地(更地価額8,000万円・地代年額120万円)に借地権を設定し、権利金5,000万円を受け取った場合(建物の全部を所有する目的・譲渡費用100万円・所有期間5年超)
【判定】8,000万円 ÷ 2 = 4,000万円 < 権利金5,000万円 → 譲渡所得【底地の価額】120万円 × 20 = 2,400万円【取得費】3,000万円 × 5,000万円 ÷(5,000万円 + 2,400万円)= 20,270,270円【譲渡所得】50,000,000円 - 20,270,270円 - 1,000,000円 = 28,729,730円【課税長期譲渡所得金額】28,729,000円(千円未満切捨て・国税通則法118条1項)所得税 = 28,729,000円 × 15% = 4,309,350円復興特別所得税 = 4,309,350円 × 2.1% = 90,496円住民税 = 28,729,000円 × 5% = 1,436,450円合計 = 5,836,296円分離課税では、譲渡所得の50万円の特別控除は使えません。
措置法31条1項が「特別控除額の控除をしないで計算した金額」としているためです。
この数字は仮の前提による目安であり、実際の税額は資料により変わります。

2回目以降の設定では、使える取得費が目減りします
結論として、過去に按分して使った取得費は、次の設定では使えません。
すでに借地権を設定している土地の地下を、さらに他人に使わせる場合などです。
このときは、前の設定で取得費とした金額を引いた残額が元になります。
所得税法施行令174条2項の定めです。
先に設定した借地権が消滅し、現在は設定がないときもあります。
この場合は、計算した取得費から過去に控除された取得費を引きます(同条3項)。
補足
立退料を払って借地を返してもらい、同じ土地を新たに貸した場合について、国税庁の質疑応答事例があります。回答は「旧借地権部分と旧底地部分のそれぞれの部分について借地権等の設定をしたものとして取り扱われます」としています。
判定額に加わるものと、地代の20倍という推定規定
結論として、受け取ったお金以外も判定に加わることがあります。
特に有利な条件でお金を借りるなど、特別の経済的な利益を受ける場合です。
この利益の額を権利金に加えた金額で、2分の1を超えるかを判定します(施行令80条1項)。
注意
保証金等は、その地域で通常収受される程度の額以下なら「特に有利な条件による金銭の貸付け」に当たりません(所基通33-15)。明らかでないときは、契約による地代のおおむね3月分相当額が目安です。
もう一つの基準が、地代の年額の20倍です。
権利金がこの金額以下なら、資産の譲渡に「該当しないものと推定する」とされています。
所得税法施行令79条3項です。
これは推定であり、20倍を超えたら譲渡所得になるという規定ではありません。
国税不服審判所の平成11年3月23日裁決も、1項で判定できる以上は3項の出番はないとしています。

いつの年分の収入になるかは、所得区分で根拠が違います
結論として、不動産所得と譲渡所得では拠りどころの通達が異なります。
| 区分 | 収入すべき時期 | 根拠 |
|---|---|---|
| 不動産所得(引渡しを要するもの) | 引渡しのあった日 | 所基通36-6 |
| 不動産所得(引渡しを要しないもの) | 契約の効力発生の日 | 所基通36-6 |
| 譲渡所得 | 引渡しがあった日。選択により契約の効力発生の日 | 所基通36-12 |
| 返還を要しない敷金等 | 返還を要しないことが確定した日 | 所基通36-7 |
一つの契約なのに、底地部分と借地権部分を別々の年に分けて申告することはできません。
国税庁の質疑応答事例が、分割した申告は認められないとしています。
不動産所得になった場合の申告は、不動産所得の確定申告の記事をご覧ください。
申告で指摘を受けやすい失敗パターン
結論として、指摘の多くは所得区分の判断と取得費の按分で起きます。
- 土地の取得費を全額差し引く。施行令174条1項の按分を飛ばした例で、申告漏れにつながります。
- 地代の20倍だけで所得区分を決める。まず時価の2分の1で判定します。
- 特別の経済的な利益を加えない。無利息で借入れを受けているのに権利金の額だけで判定した例です。
- 更新料を機械的に譲渡所得にする。更新料や名義書換料は、施行令79条の適用があるものを除き不動産所得です(所基通26-6)。
- 2回目の設定で前回の取得費を再び使う。施行令174条2項・3項の調整もれです。
いずれも、契約書と過去の申告書控えを並べれば防げます。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
結論として、契約書から読み取れる事実の整理までは、ご自身で進められます。
- 借地契約書で、権利金・地代・保証金の額と建物の用途を確かめる
- 建物の全部を所有する目的か、一部か、地下や空間に限るのかを確かめる
- 土地を買ったときの売買契約書と領収書をそろえる
- 過去に同じ土地で借地権を設定したことがあるか、申告書控えで確かめる
- 権利金のほかに、無利息の借入れなどの利益がないかを確かめる
ここから先の論点は「その土地の価額」、つまり時価をいくらと見るかです。
施行令79条1項は「その土地の価額」としか定めておらず、算定方法を示した条文はありません。
ここで手を止めて、契約書とともにご相談ください。
補足
ご自身の土地をご自身の会社に貸す場合は、相当の地代や土地の無償返還に関する届出書といった法人税側の論点が加わり、本記事の範囲とは別です。借地権の認定課税と無償返還の届出書の記事をご覧ください。

税理士が入ると何が変わるか
結論として、税理士は所得区分の判定と取得費の按分、申告書への反映までを担います。
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
- 特別の経済的な利益の有無を確かめ、判定に加える金額を確定する
- 不動産所得と譲渡所得の両方で税額を試算し、前提を並べて示す
- 施行令174条1項の按分計算書を作り、底地の価額の置き方と理由を書き残す
- 過去の設定の有無を申告書控えで確かめ、同条2項・3項の調整を反映する
- 収入すべき年分を通達に照らして決め、確定申告書の計算明細に反映する
按分の前提を書き残すことで、なぜその金額になったかを後から説明できる状態にします。
契約書がまだ案の段階でも、分かる範囲でお聞かせください。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 土地を貸して権利金を受け取りました。不動産所得と譲渡所得のどちらですか?
原則は不動産所得です(所得税法26条1項)。ただし権利金がその土地の時価の2分の1を超えるときは資産の譲渡とみなされ、分離課税の譲渡所得になります(所得税法33条1項、同法施行令79条1項)。
Q2. 譲渡所得になった場合、土地の取得費は全額引けますか?
引けません。権利金 ÷(権利金+底地としての価額)の割合を土地の取得費に掛けた金額だけを差し引きます(所得税法施行令174条1項)。土地を売ったのではなく、価値の一部を手放したと考える計算です。
Q3. 底地としての価額が分かりません。どうすればよいですか?
その土地が借地権の目的である用途にのみ使われ、底地としての価額が明らかでなく、地代があるときは、地代の年額の20倍を底地の価額とします(所得税法施行令174条1項2号かっこ書)。
Q4. 権利金が地代の年額の20倍を超えました。譲渡所得になりますか?
それだけでは決まりません。20倍以下なら譲渡に該当しないものと推定するという規定です(所得税法施行令79条3項)。国税不服審判所の平成11年3月23日裁決も、時価の2分の1で判定できる以上は推定規定の出番はないとしています。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法26条1項・33条1項、所得税法施行令79条・80条・174条、所得税基本通達26-6・33-15・36-6・36-7・36-12・38-4、租税特別措置法31条・32条、国税通則法118条1項、国税庁タックスアンサーNo.3111「土地を貸し付けて権利金などをもらったとき」・No.1376「不動産所得の収入計上時期」・No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」・No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」、国税不服審判所 平成11年3月23日裁決を扱っています。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は個別の事情により異なります。「その土地の価額」や底地としての価額の具体的な算定方法、借地権や底地を売却したときの税額、概算取得費が借地権の設定に使えるかどうか、定期借地権の種類ごとの取扱い、相当の地代や土地の無償返還に関する届出書など法人税側の論点、相続税・贈与税の評価、消費税の取扱い、居住用財産の特別控除など各種特例の適用の可否については扱っていません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3111「土地を貸し付けて権利金などをもらったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3111.htm
- e-Gov法令検索 所得税法施行令(79条・80条・174条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 国税庁 所得税基本通達 法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》関係(38-4)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/18.htm
- 国税庁 所得税基本通達 法第36条《収入金額》関係(36-6・36-7・36-12)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/01.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例要旨(平成11年3月23日裁決・借地権の更新料と地代の年額の20倍)https://www.kfs.go.jp/service/MP/02/0206080000.html
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