この記事のポイント
- 借地権・底地を売ったときの税金は、更地と同じ分離課税の譲渡所得で計算します
- 土地を貸して受け取る権利金は原則不動産所得ですが、多額なら譲渡所得になります
- 分かれ目は権利金が時価の2分の1を超えるかどうかです(地下・空間利用は4分の1)
- 取得費が不明なら概算取得費5パーセントが使えますが、実額との差は約152万円です
まず結論:借地権も底地も、売れば土地と同じ税金がかかります
借地権も底地も、税務上は土地そのものと同じ扱いです。売って利益が出れば譲渡所得として税金がかかり、計算のしかたも更地の売却と同じです。ただし「権利金」を受け取ったときだけは、金額しだいで税金の種類が変わります。
ポイント
借地権は土地を借りた側に生まれる権利、底地は借地権が付いた状態で地主に残る土地です。どちらも単独で売買でき、売れば譲渡所得の対象になります。
| 売る人 | 売るもの | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 借地人(土地を借りて建物を建てている人) | 借地権 | 土地等の譲渡(分離課税の譲渡所得) |
| 地主(土地の所有者) | 底地 | 土地等の譲渡(分離課税の譲渡所得) |
| 借地人と地主が同時に売る | 借地権+底地=完全所有権 | それぞれが自分の権利の譲渡として計算 |
国税庁タックスアンサーNo.3202のとおり、譲渡所得は給与や事業の所得と分けて計算します。借地権の売却も同じ枠組みです。
権利金は不動産所得?それとも譲渡所得?
原則は不動産所得
「権利金」は、土地を貸すときに借主から一時金として受け取るお金です。国税庁タックスアンサーNo.3111によれば、権利金は原則として不動産所得になります。不動産所得は総合課税で、給与など他の所得と合算した税率がかかります。
ただし「相当に多額」なら譲渡所得
権利金の額が大きい場合は実質的に土地の一部を売ったのと変わらないため、所得税法は一定の条件で「資産の譲渡」とみなして譲渡所得として課税します(所得税法33条、施行令79条・80条)。
譲渡所得となる金額の基準
建物や構築物を所有する目的で借地権を設定した場合、受け取る権利金がその土地(転貸のときは借地権)の時価の2分の1を超えるとき。
地下または空間の上下の範囲を定めた利用に限る権利の設定などの場合は、時価の4分の1を超えるとき。
数字で見る判定
土地の時価が6,000万円の場合で考えます。
| 受け取った権利金 | 時価の2分の1(3,000万円)との比較 | 所得区分 |
|---|---|---|
| 3,500万円 | 3,000万円を超える | 譲渡所得(分離課税) |
| 2,500万円 | 3,000万円以下 | 不動産所得(総合課税) |
注意
金額が1,000万円違うだけで、税率も計算方法も、申告書に書く場所もまったく変わります。「権利金だから不動産所得」と機械的に処理すると、申告漏れや払いすぎの原因になります。
電線・導管用の地役権などの設定も判定対象です。まとまった金額の受け取りは確認が必要です。
借地権・底地を売ったときの税額計算
借地権や底地を売ったときの利益は、更地の売却と同じ式で計算します。
譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
長期・短期の判定と税率
所有期間は譲渡した年の1月1日時点で判定します(No.3202)。
| 区分 | 所有期間(譲渡年の1月1日時点) | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15パーセント | 基準所得税額の2.1パーセント | 5パーセント |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30パーセント | 9パーセント |
出典:国税庁タックスアンサーNo.3208「長期譲渡所得の税額の計算」、No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」
借地権をいくらで手に入れたか分からないとき
借地権は数十年前に取得し、当時の書類が残っていないことも多くあります。この場合も土地建物と同じく、売った値段の5パーセントを取得費とみなす概算取得費が使えます(No.3202)。実際の金額が大きければそちらが有利です。次の前提で比べます。
- 借地権の譲渡価額:3,000万円
- 譲渡費用:100万円
- 所有期間:長期(譲渡年の1月1日時点で5年超)・軽減税率の特例は適用しない
| 項目 | 概算取得費5パーセントを使う場合 | 取得費900万円を計上できる場合 |
|---|---|---|
| 取得費 | 150万円 | 900万円 |
| 譲渡所得 | 2,750万円 | 2,000万円 |
| 所得税(15パーセント) | 4,125,000円 | 3,000,000円 |
| 復興特別所得税(2.1パーセント) | 86,625円 | 63,000円 |
| 住民税(5パーセント) | 1,375,000円 | 1,000,000円 |
| 合計 | 5,586,625円 | 4,063,000円 |
計算例
差額は1,523,625円です。権利金、名義書換料、更新料などの記録が残っていないか、まず確認する価値があります。
国税庁の質疑応答事例「借地権譲渡の場合の取得費の計算」も参考になります(所得税法38条、施行令182条)。更新料の取扱いは事案により異なるため、個別にご確認ください。
実務で確認すべき4つのポイント
1. 建物とセットで売っているか
借地上の建物を売る場合、借地権も一緒に譲渡します。代金の建物・借地権への分け方で減価償却費相当額の要否が変わるため、契約書の内訳を確認してください。
2. 地主に支払った名義書換料(承諾料)
借地権を第三者に売るには地主の承諾が必要で、承諾料を払うことがあります。譲渡費用に当たるかは検討が必要です。
3. 底地と借地権を同時に売るケース
地主と借地人が協力してまとめて売る場合、代金は借地権割合に応じて分けるのが一般的です。実態とかけ離れた分け方は、贈与とみなされる可能性があります。根拠を残しておくことが大切です。
4. 借地権の交換・等価交換をしたとき
借地権と底地を交換し、それぞれ完全な所有権の土地を得る方法もあります。売買ではなく交換となり、固定資産の交換の特例(所得税法58条)の適用を検討します。
当事務所の進め方
借地権・底地の譲渡は、次の順序で検討します。
- 権利関係の確認──登記事項証明書・借地契約書から、いつ・いくらで手に入れた権利かを特定します
- 所得区分の判定──権利金がある場合は時価の2分の1基準で判定します
- 取得費の算定──権利金・更新料の記録を集め、概算取得費5パーセントとどちらが有利かを判定します
- 申告書への反映──譲渡所得の内訳書に計算の根拠を明示します
売買契約を結ぶ前にご相談いただけると、選べる方法の幅が広がります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 借地権を売ったときも3,000万円の特別控除は使えますか?
使える余地があります。借地権上の建物にご自身が住み、マイホーム売却特別控除の条件を満たす場合です。事業用・賃貸用の借地権には使えません。個別の確認が必要です。
Q2. 地主に支払う「更新料」は経費になりますか?
借地の用途で扱いが異なり、取得費にできるかも支払いの内容と時期で判断が分かれます。金額が大きくなりやすいため、税理士への確認をおすすめします。
Q3. 権利金を受け取ったのが数年前です。今からでも申告できますか?
できます。期限後申告または修正申告・更正の請求で対応します。自分から申告するほうが加算税は軽くなります。お早めにご相談ください。
Q4. 底地を借地人に売却しました。売却価格が相場より安いと問題になりますか?
問題になることがあります。時価より著しく安く売ると、差額に贈与税がかかることがあります。親族間では特に注意し、値段の根拠となる資料を残してください。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。借地権・底地の評価と譲渡所得の計算は、契約内容・利用状況・取得の経緯によって結論が大きく異なります。記事中の税額は記載した前提に基づく試算であり、実際の税額を保証するものではありません。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.3111「土地を貸し付けて権利金などをもらったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3111.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- 国税庁 質疑応答事例「借地権譲渡の場合の取得費の計算」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/05/12.htm
- 所得税法26条・33条・38条、所得税法施行令79条・80条・182条、所得税基本通達33-13e-Gov法令検索
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