この記事のポイント
- 給与と年金がある年は、年金の所得と給与所得がどちらも20万円超なら原則として申告が要ります
- 退職金は受給に関する申告書を出していれば、源泉徴収で済むのが原則です
- 確定申告書を出すときは、退職所得の金額も記載する必要があります
- 退職所得も合計所得金額に入り、配偶者控除の判定に響きます
まず結論:定年退職の年は、3種類の源泉徴収票で申告の要否が決まります
定年退職の年は、退職金・再雇用の給与・年金が同じ年に重なることがあります。
確定申告が要るかは、この3つの組み合わせで決まります。
手がかりは、退職所得・給与所得・公的年金等の3種類の源泉徴収票です。
年末調整を受けていても、年金の所得と給与所得がどちらも20万円を超えると、原則として申告が要ります。

退職金は「受給に関する申告書」を出したかで分かれます
退職金の支払者に「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば、税金は源泉徴収で済みます。
源泉徴収とは、支払う会社が税額を計算して天引きすることです。原則として確定申告は要りません(No.1420)。
ただし、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があります。
(国税庁 タックスアンサー No.1420)
給与と年金で確定申告書を出す年も、退職所得の金額を記載します。
受給に関する申告書を出していないと、支払額の20.42パーセントが源泉徴収されます。確定申告で精算します(No.1420)。
精算の進め方は退職金の申告書を出し忘れたときの記事で解説しています。
再雇用の給与は、年末調整で精算されたかを確かめます
再雇用先に年末まで勤める人は、その勤務先で年末調整を受けます(No.2665)。
対象は、扶養控除等申告書(扶養する家族の有無などを届ける書類)を出した一定の人です。
別の会社で再雇用された人は、原則として新しい勤務先が年末調整をします。前の勤務先の給与も含めて精算します(No.1910)。
前の勤務先の給与は、その源泉徴収票で確かめます。確かめられないと年末調整はできず、確定申告で精算します(No.2674)。
年の途中で退職し再就職しなかった人は、原則として年末調整を受けられません。税金が納め過ぎになっている場合があります(No.1910)。
この還付申告は、翌年1月1日から5年間出せます(No.2030)。
前の勤務先の源泉徴収票を再雇用先に出したかで、給与を精算する場所が変わります。

年金が始まると、給与も年金も「申告不要」から外れることがあります
給与と年金がある年は、どちらの申告不要にも当たらないことがあります。
公的年金等は、国民年金・厚生年金や企業年金などです。所得は、収入から公的年金等控除額を引いた額です(No.1600)。令和9年分からは、給与所得控除額との合計が280万円を超える分だけ、この控除額が減ります。
| 申告不要の制度 | 条件(すべてに当てはまるとき) |
|---|---|
| 給与の申告不要(所得税法121条1項) | 給与の収入が2,000万円以下で、1か所から受け、全部が源泉徴収の対象。給与・退職以外の所得が20万円以下 |
| 年金の申告不要(同条3項) | 公的年金等の収入が400万円以下で、全部が源泉徴収の対象。年金以外の所得が20万円以下 |
給与の側の「給与・退職以外の所得」には、年金の所得が入ります。
年金の側の「年金以外の所得」には、定年前の分も含む1年分の給与所得が入ります。
年金の所得と給与所得がどちらも20万円を超えると、どちらの申告不要も使えません。
この場合は、原則として確定申告が必要です。ただし、申告すれば還付になる人は除かれます(No.1900)。
定年前の分も含む1年分の給与所得が20万円以下なら、年金の申告不要に当たることがあります。
2か所以上から給与を受けた人は、年末調整されなかった給与も加えて判定します(No.1900)。
補足
年金の申告不要に当たっても、住民税の申告が必要な場合があります(No.1600)。年金だけの年の判断は年金受給者の確定申告の記事をご覧ください。
退職金を受け取った年は、配偶者控除の判定にも響きます
配偶者控除の判定に使う本人の合計所得金額には、退職所得の金額も入ります。
合計所得金額は、総所得金額・退職所得金額・山林所得金額の合計額です(所得税法2条1項30号)。
本人の合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者控除は受けられません。配偶者特別控除も同じです(No.1191)。
計算例
例:勤続38年・退職金2,800万円で、給与と年金の所得の合計が650万円の場合
退職所得控除額 800万円 + 70万円 ×(38年 − 20年)= 2,060万円 退職所得の金額 (2,800万円 − 2,060万円)× 1/2 = 370万円 合計所得金額 650万円 + 370万円 = 1,020万円(1,000万円超)この年は、配偶者控除を受けられません。一般の退職手当等で、障害による退職やほかの退職金との調整がない前提です。
金額は一定の前提を置いた目安です。
年末調整では、配偶者控除等申告書に本人の合計所得金額の見積額を書きます(所得税法195条の2)。
退職金が大きい年は、退職所得を入れた合計所得金額で判定し直します。

失敗パターン:この4つで申告漏れや精算漏れが起きます
次の4つは、必要な申告が漏れたり、納め過ぎが戻らなかったりする形です。
- 年金の所得を見落とす ― 年末調整済みだからと申告しないまま、期限を過ぎる形です。令和8年分の期限は、原則として令和9年3月15日です(No.2020)。
- 申告書に退職所得を書かない ― 給与と年金で申告する年も、記載が要ります(No.1420)。
- 退職金の申告書を出さない ― 20.42パーセントの天引きは、申告で精算します(No.1420)。
- 前の勤務先の源泉徴収票を出していない ― 年末調整ができず、確定申告で精算します(No.2674)。
注意
期限を過ぎると期限後申告です。調査の事前通知の前に自主的に出しても、納める税金の5パーセントの無申告加算税がかかるのが原則です。延滞税もあわせて納めます(No.2024)。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確かめられるのは、次の4つです。
- 退職所得・給与所得・公的年金等の源泉徴収票をすべてそろえる
- 退職所得の受給に関する申告書を、退職金の支払者に出したかを確かめる
- 再雇用先に、前の勤務先の源泉徴収票を出したかを確かめる
- 年金の所得と、給与・年金以外の所得を書き出す
上の表のどちらかの条件に当てはまれば、原則として申告は要りません(所得税法121条)。
次の場合は、個別の判断が要ります。
- 前年以前や同じ年に、ほかの退職金も受け取った(控除額の計算が異なることがあります。No.1420)
- 勤続年数や退職所得控除額の計算が特殊で、確定申告書等作成コーナーが対応していない(No.1420)
- 本人の合計所得金額が、配偶者控除の1,000万円の境目に近い
- 申告すると還付になるか、納付になるかを先に知りたい
iDeCoなどの一時金との関係は、退職所得控除の重複調整の記事で扱っています。

税理士に頼むと変わるのは、源泉徴収票の突き合わせと申告書の正確さです
小松公認会計士・税理士事務所では、定年退職の年の申告で次の作業を行います。
- 3種類の源泉徴収票の突き合わせと、申告が要るかの判定
- 前の勤務先の給与が、年末調整に入っているかの確認
- 退職所得の金額と、配偶者控除などに使う合計所得金額の計算
- 申告すると還付か納付かの見込み計算
- 集める書類の一覧でのご案内
- 確定申告書の作成と、期限内のe-Taxでの提出
全国どこからでも、オンラインで完結します。
料金の目安
料金は基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額です。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。
例:給与所得・公的年金・退職所得と、その他控除セット(社会保険料・生命保険料・扶養など)の場合です。内訳は32,000円+6,000円+6,000円+8,000円+6,000円です。合計は58,000円(税込63,800円)です。最低料金に満たないため、最低料金の65,000円(税込71,500円)になります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 定年後も同じ会社で再雇用され、年末調整を受けました。確定申告は要りますか?
給与の精算は年末調整で済みます。ただし、年金の所得と給与所得が両方20万円を超えると、原則として申告が必要です(所得税法121条)。給与の収入が2,000万円を超える人も必要です。申告すれば還付になる人は除かれます(No.1900)。
Q2. 退職金の「受給に関する申告書」を出していれば、確定申告書に退職金は書かなくてよいですか?
申告書を出していれば、退職金の税金は源泉徴収で済み、原則として確定申告は要りません。ただし、医療費控除などで確定申告書を出すときは、退職所得の金額の記載が必要です(No.1420)。
Q3. 定年退職したあと再就職しなかった場合、確定申告はどうなりますか?
年の途中で退職したまま再就職しないと、原則として年末調整を受けられません。税金が納め過ぎになっている場合があります(No.1910)。還付申告は翌年1月1日から5年間出せます(No.2030)。年金があれば、その所得も含めて申告します。年金の所得と給与所得がどちらも20万円超で納付になるなら、期限は原則として翌年3月15日です。
Q4. 退職金を受け取った年は、配偶者控除に影響しますか?
配偶者控除の判定に使う本人の合計所得金額には、退職所得の金額も含まれます(所得税法2条1項30号)。本人の合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者控除は受けられません。配偶者特別控除も同じです(No.1191)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法2条1項30号・35条5項(令和9年1月1日施行)・83条1項・121条1項〜3項・195条の2第1項、タックスアンサーNo.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」・No.1600「公的年金等の課税関係」・No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」・No.1910「中途退職で年末調整を受けていないとき」・No.1191「配偶者控除」・No.2020「確定申告」・No.2024「確定申告を忘れたとき」・No.2030「還付申告」・No.2665「年末調整の対象となる人」・No.2674「中途就職者の年末調整」の内容を扱っています。公的年金等控除の金額と年齢による違い、給与所得控除の金額、令和8年度改正による基礎控除と配偶者・扶養親族の所得要件の見直しの細目、年金の受給開始の時期、退職所得控除の重複期間の調整(前年以前の退職金やiDeCoなどの一時金がある場合)、特定役員退職手当等・短期退職手当等の計算、2か所以上から給与を受ける場合の判定の細目、住民税の申告の要否と国民健康保険料・介護保険料への影響、外国の年金、年金の扶養親族等申告書、雇用保険の給付、無申告加算税がかからない場合の要件と延滞税の計算、令和9年分以後の防衛特別所得税は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は所得や控除の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(2条・121条・195条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1600「公的年金等の課税関係」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1910「中途退職で年末調整を受けていないとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1910.htm
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