不動産譲渡所得

相続土地国庫帰属制度と売却・寄附
要らない土地を手放すときの税金とお金の違い

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 国庫帰属は相続等で取得した土地が対象。手数料は1筆14,000円、承認後の負担金は基本20万円です
  • 売却で利益が出れば譲渡所得に課税。損が出ても原則として給与などとは差し引けません
  • 時価の2分の1未満の売却は、法人相手なら時価で計算、個人相手なら損失がないものとされます
  • 国や市町村が寄附を受け入れれば、譲渡所得の所得税はかかりません

まず結論:手放し方で、払うお金と税金のかかり方が変わります

相続した要らない土地を手放す方法は、主に3つあります。

相続土地国庫帰属制度、売却、国や市町村への寄附です。

相続土地国庫帰属制度は、要件を満たす土地を国に引き取ってもらう制度です。

方法お金の出入り譲渡所得の所得税
国庫帰属手数料と負担金を払う国庫帰属そのものの扱いは個別に確認
売却代金が入る。仲介手数料などがかかる利益が出ればかかる
国・市町村への寄附代金は入らないかからない

国庫帰属はお金を払う方法、売却はお金を受け取る方法です。

手放し方によって、払うお金と税金が変わります
手放し方によって、払うお金と税金が変わります

国庫帰属:払うのは審査手数料と負担金の2つです

申請できるのは、相続や相続人への遺贈で土地を取得した方です(相続土地国庫帰属法2条1項)。

売買などで自ら取得した方や法人は、基本的に利用できません(法務省)。

共有の土地は、共有者の全員で申請します(同法2条2項)。

審査手数料は1筆14,000円で、却下・不承認でも返りません。

筆(ひつ)は、登記簿で1つの土地として数える単位です。

承認後に納める負担金は、国の管理費用10年分を考えて決まります(同法10条1項)。

基本は20万円で、市街化区域等の宅地・農地や森林は面積に応じて決まります。

計算例

例:1筆を国庫帰属させるときのお金

例1 20万円の区分の土地(施行令5条1項4号) 14,000円 + 200,000円 = 214,000円 例2 市街化区域内の宅地200㎡ 200㎡ × 2,450円 + 303,000円 = 793,000円 例2の合計 14,000円 + 793,000円 = 807,000円

数値は一定の前提を置いた目安です。

隣接する同じ区分の2筆以上は、申出により1筆とみなして負担金を計算します(施行令6条)。

通知から30日以内に納めないと、承認は効力を失います(同法10条3項)。

納めた時に、土地の所有権は国庫に帰属します(同法11条1項)。

国庫帰属:引き取れない土地と、税金の扱い

建物がある土地や、担保権が設定された土地などは申請できません(同法2条3項)。

一定の崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地は承認されません(同法5条1項)。

管理・処分を妨げる工作物や樹木などが地上にある土地も同じです。

審査の標準処理期間は8か月とされ、超える場合もあります(法務省Q&A)。

負担金を納めるまでは、申請した方が土地を管理します。

国庫帰属そのものの所得税・相続税の扱いは、個別に確認が要ります。

当事務所が確認した国税庁・法務省の資料には、その説明がありませんでした。

固定資産税は、1月1日時点の所有者として台帳に登録された方にかかります。

翌年1月1日までに国への登記が済めば、以後の固定資産税は負担しません(法務省Q&A)。

国庫帰属は、承認後に負担金を納めた時に国のものになります
国庫帰属は、承認後に負担金を納めた時に国のものになります

売却:利益が出れば、譲渡所得に税金がかかります

譲渡所得とは、売った金額から取得費と譲渡費用を引いた利益です。

取得費は買った代金など、譲渡費用は仲介手数料など売るための費用です。

相続した土地は、亡くなった方の取得費と取得の時期を引き継ぎます(No.3270)。

取得費が分からなければ、売った金額の5%を取得費にできます(No.3258)。

計算例

例:相続した土地を220万円で売却(取得費不明・譲渡費用9万円・長期譲渡所得)

概算取得費 2,200,000円 × 5% = 110,000円 課税長期譲渡所得金額 2,200,000円 - 110,000円 - 90,000円 = 2,000,000円 所得税15%と復興特別所得税(令和8年分は2.1%) 300,000円 + 6,300円 = 306,300円 住民税5% 2,000,000円 × 5% = 100,000円 手元に残る目安 2,200,000円 - 90,000円 - 406,300円 = 1,703,700円

都市計画区域外で特別控除を使わない場合の、一定の前提を置いた目安です(No.3208)。令和9年分からは復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%で、合計は同じです。

都市計画区域内の一定の土地には、低未利用土地等の100万円控除があります。

令和10年12月31日までに500万円以下(一定の場合は800万円以下)で売る場合などです。

安く売るときと、損が出たときの扱い

時価の2分の1未満で売ると、買う相手によって扱いが変わります。

時価とは、通常売買される価額です(No.3105)。

原則は、実際の売却価額で計算します(No.3217)。

法人に2分の1未満で売ると、時価で売ったものとされます(所得税法59条1項2号)。

個人に2分の1未満で売り、取得費と譲渡費用の合計に満たないときは次のとおりです。

その不足額は、その山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。

(所得税法59条2項)

注意

取得費600万円・時価400万円の土地を、知人に150万円で売る例です(譲渡費用なし)。時価の2分の1の200万円未満なので、損失450万円はなかったものとみなされます。時価で売れば、損失200万円として計算されます。数値は一定の前提を置いた目安です。

マイホームの一定の特例を除き、土地の譲渡損失は給与などと差し引けません(No.3203)。

詳しくは不動産の譲渡損失の記事をご覧ください。

親族や知人に安く売るときは、時価の2分の1が分かれ目です
親族や知人に安く売るときは、時価の2分の1が分かれ目です

寄附:国や市町村が受け入れれば、譲渡所得はかかりません

法人への寄附は、原則として時価で譲渡したものとされます。

国と地方公共団体への寄附には、次の定めがあります。

国又は地方公共団体に対し財産の贈与又は遺贈があつた場合には、所得税法第五十九条第一項第一号の規定の適用については、当該財産の贈与又は遺贈がなかつたものとみなす。

(租税特別措置法40条1項前段)

市町村は地方公共団体です(地方自治法1条の3第2項)。

国税庁は「特に要件はなく何らの手続きも必要ありません」としています(No.3108)。

ただし、寄附を受け入れるかどうかは、寄附を受ける側が決めます。

ポイント

寄附金控除は、寄附した額をもとに所得から差し引く控除です。土地を国や地方公共団体に寄附したときの対象は、取得費に相当する金額です。時価ではありません(No.1150のQ&A)。

控除額の計算は土地を市町村に寄附したときの税金の記事で扱っています。

失敗しやすいのは、この6つの場面です

払ったお金が戻らない場面と、税金の計算が変わる場面です。

  • 建物を残したまま国庫帰属を考えた ― 建物がある土地は申請できません
  • 却下・不承認になった ― 審査手数料は1筆ごとにかかり、返りません
  • 負担金を30日以内に納めなかった ― 承認が効力を失い、手数料も返りません
  • 12月に承認された ― 登記が1月になると、翌年の固定資産税を負担します
  • 知人に時価の2分の1未満で売り、損が出た ― 損失はなかったものとみなされます
  • 会社に時価の2分の1未満で売った・ただで渡した ― 時価で売ったものとされます

どれも、手続きの前に確かめておきたい点です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

資料と土地の状況の確認はご自身でできますが、方法の選択は個別判断です。

  1. 登記事項証明書で、名義・地目・地積・筆数と共有の有無を確かめる
  2. 亡くなった方が買ったときの売買契約書や領収書を探す
  3. 土地がある市町村に、寄附を受け付けているかを問い合わせる
  4. 国庫帰属を考えるなら、法務局の相談窓口で見通しを聞く

補足

承認申請書の作成の代行を業務としてできるのは、弁護士・司法書士・行政書士です。申請手続は所有者本人か法定代理人が行い、他の人は代理できません(法務省Q&A)。

決める前に、取得費の資料と土地の状況を確かめます
決める前に、取得費の資料と土地の状況を確かめます

税理士が入ると変わるのは、方法ごとの手取りの比較と申告です

税理士は、3つの方法を税金と手元に残るお金で比べます。

ひとつめは、購入時の資料から取得費を確かめることです。

ふたつめは、売却時の税額と、国庫帰属の手数料・負担金を並べた試算です。

みっつめは、売却価額が時価の2分の1未満に当たらないかの確認です。

よっつめは、寄附金控除や譲渡所得の内訳書を確定申告書に反映することです。

小松公認会計士・税理士事務所では、資料の確認から確定申告までを担当します。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 相続土地国庫帰属制度を使うと、いくらかかりますか?

審査手数料は土地1筆あたり14,000円です。承認されると負担金を納め、1筆ごとに基本は20万円です。市街化区域等の宅地・農地や森林は、面積に応じて20万円以上になります。却下や不承認になっても、審査手数料は返りません。

Q2. 国庫帰属させると、所得税や相続税はかかりますか?

国庫帰属そのものの所得税・相続税の扱いは、個別に確認が要ります。当事務所が確認した国税庁・法務省の資料には、説明がありません。法務省のQ&Aは、翌年1月1日までに国への登記が済めば、以後の固定資産税は負担しないとしています。

Q3. 親戚や知人に安く売るときは、何に気をつけますか?

個人への売却は、実際の売却価額で計算するのが原則です。ただし時価の2分の1未満で売って損が出ても、その損はなかったものとみなされます。根拠は所得税法59条2項です。会社など法人に2分の1未満で売ると、時価で売ったものとされます。

Q4. 市町村に寄附すれば、税金はかかりませんか?

国や地方公共団体への寄附は、譲渡所得の所得税がかかりません。国税庁は「特に要件はなく何らの手続きも必要ありません」としています(No.3108)。ただし、受け入れるかは寄附先が決めます。会社への寄附は、原則として時価で譲渡したものとされます。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律2条・5条・10条・11条、同法施行令3条・5条・6条、所得税法59条1項・2項、所得税法施行令169条、租税特別措置法40条1項、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法5条の9、地方自治法1条の3、法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」(令和7年9月1日現在)、国税庁タックスアンサー No.3105・No.3108・No.3203・No.3208・No.3217・No.3226・No.3258・No.3270・No.1150(Q&A)の内容を扱っています。国庫帰属そのものの所得税・相続税・贈与税の扱い、負担金や審査手数料の税務上の扱い、相続税の申告への影響、相続放棄の手続、承認申請書と添付書類の作成方法、却下・不承認の具体的な判断基準、農地・森林などの負担金の金額、公益法人等への寄附の承認手続、寄附金控除の計算、安く買った側の贈与税、限定承認による相続の扱い、相続税がかかった場合の取得費加算の特例(No.3267)、法人に時価の2分の1以上の価額で売る場合の個別の扱い、住民税の詳細は扱っていません。承認申請書の作成の代行は弁護士・司法書士・行政書士の業務であり、当事務所が行うものではありません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は土地の区分・面積・取得費・売却価額によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

相続した土地を手放す前に、手元に残るお金を比べませんか

国庫帰属は手数料と負担金を払う方法で、売却は代金が入る一方、利益が出れば譲渡所得の税金がかかります。時価の2分の1未満での売却や、損が出る売却は扱いが変わります。代表税理士が、取得費の確認から、方法ごとの税額と手取りの試算、確定申告までを担当します。国庫帰属の承認申請書の作成は、弁護士・司法書士・行政書士の業務です。手放し方を決める前に、資料がそろった段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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