不動産譲渡所得

土地を市町村に寄附したときの税金
譲渡所得は非課税、寄附金控除は時価でなく取得費

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

YouTubeチャンネルを見る →

この記事のポイント

  • 国や都道府県・市町村への土地の寄附は、譲渡所得の所得税が非課税。特に要件・手続はありません
  • 値上がりした土地なら、寄附金控除の対象額は時価でなく取得費相当額。確定申告で受けます
  • 公益法人等は国税庁長官の承認で非課税。申請は寄附から4か月以内か確定申告期限の早い日まで
  • 借入金の引受けなど実質的な対価関係があると、非課税の特例は使えません

まず結論:市町村への土地の寄附は、譲渡所得が非課税です

国や地方公共団体(市町村など)に土地を寄附しても、譲渡所得の所得税はかかりません。

譲渡所得とは、土地などを手放したときの値上がり益のことです。

国税庁は、国や地方公共団体への寄附を次のように説明しています。

この場合は、特に要件はなく何らの手続きも必要ありません。

(国税庁 タックスアンサー No.3108)

ただし、値上がりした土地の寄附金控除は、時価ではなく取得費(買った代金など)が基準です。

公益財団法人などへの寄附は、国税庁長官の承認を受けたときに非課税になります。

受け入れるかどうかや条件は自治体ごとに異なるため、まず所在地の市町村に確かめます。

使っていない土地を寄附するときは、受け入れの条件と税金の扱いを先に確かめます
使っていない土地を寄附するときは、受け入れの条件と税金の扱いを先に確かめます

法人への寄附は時価で売ったとみなすのが原則、国と地方公共団体は例外です

個人が法人に土地を贈与すると、原則として時価で売ったものとみなされます。

所得税法59条1項1号の「みなし譲渡」です。値上がり益に所得税がかかります。

そのうえで、租税特別措置法40条1項前段が、国と地方公共団体への寄附を外しています。

国又は地方公共団体に対し財産の贈与又は遺贈があつた場合には、所得税法第五十九条第一項第一号の規定の適用については、当該財産の贈与又は遺贈がなかつたものとみなす。

(租税特別措置法40条1項前段)

市町村は地方公共団体です(地方自治法1条の3第2項)。遺言による寄附(遺贈)も同じ扱いです。

寄附先譲渡所得の所得税手続
国・地方公共団体(市町村など)寄附はなかったものとみなされ、かからない特に要件・手続なし
公益法人等(公益財団法人など)国税庁長官の承認を受けたときは、かからない期限内に承認申請書を提出
それ以外の法人(会社など)時価で譲渡したものとみなされる―

会社への贈与や低い価額での譲渡は、みなし譲渡の記事で解説しています。

寄附金控除の対象は、時価ではなく取得費に相当する金額です

寄附金控除の対象になるのは、時価ではなく、その土地の取得費に相当する金額です。

寄附金控除は、国や地方公共団体などへの寄附金を所得から差し引く所得控除です。

この場合は、贈与した土地の取得費(その土地を贈与するために支出した金額がある場合はその金額を含みます。)に相当する金額が特定寄附金の額になります。

(国税庁 タックスアンサー No.1150 Q&A「国等に対して土地を寄附した場合」)

非課税になった値上がり益の部分は、特定寄附金から除かれます(租税特別措置法40条21項)。

時価が取得費を下回る土地は、扱いが異なるため個別に確かめます。

控除額は、次の低い方から2,000円を引いた額です(所得税法78条1項)。

計算例

例:取得費120万円の土地(寄附時の時価500万円)を市町村に寄附。総所得金額等400万円、ほかの寄附なし

特定寄附金の額 取得費に相当する金額 1,200,000円(時価の5,000,000円ではない) 総所得金額等の40% 4,000,000円 × 40% = 1,600,000円 いずれか低い金額 1,200,000円 寄附金控除 1,200,000円 - 2,000円 = 1,198,000円

数値は、寄附のための支出がないなど一定の前提を置いた目安です。

控除は確定申告で受けます。寄附先の受領証を添付するか、提出時に提示します(タックスアンサー No.1150)。

寄附金控除の対象は、時価ではなく土地の取得費に相当する金額です
寄附金控除の対象は、時価ではなく土地の取得費に相当する金額です

公益法人等への寄附は、承認申請の期限に注意します

公益法人等への寄附は、国税庁長官の承認を受けたときに非課税になります。

公益社団法人・公益財団法人など、公益を目的とする事業を行う法人が対象です。

一般特例の承認要件は、原則として次の3つです(租税特別措置法施行令25条の17第5項)。

  • 寄附が、公益の増進に著しく寄与すること
  • 寄附から2年を経過する日までに、公益目的事業に直接使われる(見込みを含む)こと
  • 寄附した人の所得税や、親族などの相続税・贈与税を不当に減らす結果にならないこと

このほかに承認特例という仕組みがあり、対象の法人や要件が異なります。

承認申請書は、寄附の日から4か月以内か、寄附した年分の確定申告期限の早い日までに出します。

提出先は、納税地の所轄税務署長を経由した国税庁長官です(タックスアンサー No.3108)。

計算例

例:令和8年に公益財団法人へ土地を寄附した場合の、承認申請書の提出期限

11月2日に寄附 4か月以内=令和9年3月2日/確定申告期限=令和9年3月15日 → 令和9年3月2日 12月1日に寄附 4か月以内=令和9年4月1日/確定申告期限=令和9年3月15日 → 令和9年3月15日

期間は寄附の翌日から数えます(国税通則法10条1項)。数値は一定の前提を置いた目安です。

注意

承認を受けた後でも、取り消されることがあります。寄附から2年以内に公益目的事業に直接使われなかった場合などです。その場合は、寄附をした人か、寄附を受けた公益法人等に所得税がかかります。根拠はタックスアンサー No.3108と租税特別措置法40条2項・3項です。

思わぬ課税や控除の誤りにつながる5つの場面

次の5つは、非課税の扱いや控除額が変わる場面です。

  • 寄附金控除を時価で計算した ― 上の例では控除が40万円多くなり、過大な申告になります。
  • 借入金を引き受けてもらった ― 実質的に対価関係があれば有償の譲渡となり、措置法40条は使えません。
  • 公益法人等への承認申請が期限に遅れた ― 期限内に出さないと、原則として非課税になりません。
  • 使う予定のない土地を公益法人等に寄附した ― 一般特例では措置法40条の適用を受けられません。2年以内に公益目的事業に直接使われる見込みが要件だからです。
  • 寄附した人に特別の利益が及ぶ ― 特定寄附金にならず、寄附金控除を受けられません。寄附でできた設備を専属的に使う場合などです(所得税法78条2項1号)。

2つめは国税庁の質疑応答事例「債務承継がある場合」と所得税基本通達59-2が根拠です。

4つめは質疑応答事例「遠隔地に所在する不動産を社会福祉法人に寄附した場合」が根拠です。承認特例を使う寄附は、要件が異なります。

寄附の前に、受け入れの条件と取得費の資料を整理しておきます
寄附の前に、受け入れの条件と取得費の資料を整理しておきます

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

市町村への確認と資料集めはご自身でできますが、取得費と手続の判断は個別です。

  1. 所在地の市町村に、寄附を受け付けているかと条件を確かめる
  2. 登記事項証明書で、名義と共有の有無を確かめる
  3. 買ったときの売買契約書や領収書を探し、取得費を確かめる
  4. 寄附したら受領証を受け取り、確定申告で寄附金控除を申告する

ここから先は、資料と事情で結論が変わります。

取得費が分からない土地、共有の土地、借入金が残る土地、公益法人等への寄附などです。

補足

国税庁の質疑応答事例に、相続した財産を相続税の申告期限までに国などへ贈与した例があります。この例で、寄附金控除の対象は、亡くなった方から引き継いだ取得価額とされています。相続税にも、国などへの贈与の規定があります(租税特別措置法70条1項)。申告期限までに贈与した相続財産を、相続税の課税価格に算入しないものです。要件は個別に確かめます。

市町村が受け入れない場合は、売却も選択肢です。

一定の要件のもとで、低未利用土地等の100万円控除を使える可能性があります。

対象は令和10年12月31日までの譲渡です。

引き渡しの後は受領証を受け取り、確定申告で寄附金控除を申告します
引き渡しの後は受領証を受け取り、確定申告で寄附金控除を申告します

税理士が入ると変わるのは、取得費の根拠と申告・申請の段取りです

税理士は、取得費の根拠をそろえ、控除額と期限を数字で確かめます。

ひとつめは、購入時の資料から取得費を確かめ、特定寄附金の額を計算することです。

ふたつめは、総所得金額等の40%の上限をふまえ、寄附する年の控除額を試算することです。

みっつめは、借入金の引受けなど、対価関係がないかを契約の内容から確かめることです。

よっつめは、公益法人等への寄附で、承認申請書と添付書類を期限内に整えることです。

いつつめは、寄附と売却の税額を比べたうえで、確定申告書に反映することです。

小松公認会計士・税理士事務所では、寄附の前の資料確認から確定申告までを担当します。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

小松公認会計士・税理士事務所 代表

小松 優馬公認会計士・税理士

  • お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
  • 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
  • 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます

YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる

初回相談は無料です。

あわせて読みたい

よくある質問(FAQ)

Q1. 市町村に土地を寄附すると、所得税はかかりますか?

譲渡所得の所得税はかかりません。国や地方公共団体への寄附は、みなし譲渡の規定の上で、なかったものとみなされます。根拠は租税特別措置法40条1項前段です。特に要件や手続はありません(タックスアンサー No.3108)。寄附金控除を受けるには確定申告が必要です。

Q2. 寄附金控除は、土地の時価で計算するのですか?

値上がりした土地なら、時価ではありません。国や地方公共団体への土地の贈与では、取得費に相当する金額が特定寄附金の額です。贈与のための支出があれば含めます(タックスアンサー No.1150)。控除額は、これと総所得金額等の40%の低い方から2,000円を引いた額です。

Q3. 公益財団法人などに寄附する場合も、譲渡所得は非課税ですか?

国税庁長官の承認を受けたときに非課税です。承認申請書は、寄附の日から4か月以内か、寄附した年分の確定申告期限の早い日までに出します。2年以内に公益目的事業に直接使われない場合などは、承認が取り消され、所得税がかかることがあります。

Q4. 市町村が寄附を受け付けてくれないときは、どうすればよいですか?

受け入れの可否や条件は自治体ごとに異なります。受け入れられない場合は、売却も検討します。売るときは、一定の要件のもとで低未利用土地等の100万円控除を使える可能性があります。対象は令和10年12月31日までの譲渡です。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法59条1項・78条1項・2項・120条1項、租税特別措置法40条1項〜3項・21項・70条1項、租税特別措置法施行令25条の17第1項・5項、国税通則法10条1項、地方自治法1条の3、国税庁タックスアンサー No.3108・No.1150(同Q&Aを含む)・No.3226、国税庁の質疑応答事例「債務承継がある場合」「遠隔地に所在する不動産を社会福祉法人に寄附した場合」「国等に対して相続財産を贈与し、相続税の非課税規定の適用を受けた場合」、所得税基本通達59-2の内容を扱っています。承認要件の具体的な判定基準、承認特例の対象と要件、承認が取り消された場合の税額計算、公益信託への拠出、公益社団法人等への寄附で所得控除に代えて選べる税額控除、時価が取得費を下回る土地や取得費が分からない土地の扱い、住民税の扱い(寄附金税額控除を含む)、相続税の非課税の要件、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律による制度、各自治体の受け入れ基準は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は取得費・寄附の時期・所得の状況によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

土地を寄附する前に、取得費と手続を確かめませんか

市町村への土地の寄附は、譲渡所得の所得税が非課税です。ただし、値上がりした土地の寄附金控除の対象額は、取得費で決まります。公益法人等への寄附には、承認申請の期限もあります。代表税理士が、取得費の資料の確認から承認申請書の準備、確定申告書への反映まで担当します。寄附の手続を始める前に、資料がそろった段階でご相談ください。

無料相談を申し込む 不動産売却の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り

小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

関連記事

不動産譲渡所得の料金
令和8年分 確定申告 お引き受け開始中

不動産売却の料金を約60秒で確認

譲渡対価規模・特例適用を選ぶだけ。令和8年12月31日までのお申込みで10%OFF。割引後の料金がその場で分かります

個人 60秒見積り

土地の寄附と譲渡所得・寄附金控除のご相談

初回相談は無料です。代表が直接ご対応します。

不動産売却の確定申告サポートを見る
法人60秒見積り 個人60秒見積り または自動見積りをせずに無料相談を申し込む