この記事のポイント
- 底地の売却も土地の譲渡所得。代金から取得費と譲渡費用を引きます
- 取得費が分からないときは、売った代金の5%を取得費にできます
- 対価を払い借地権を消滅させてから売ると、2つの部分に分けて計算します
- 1つの契約の売却を、底地部分と借地権部分で別の年に分けて申告できません
まず結論:底地の売却も土地の譲渡所得です。取得費と立退料の扱いで税額が変わります
底地とは、借地権が付いた状態の土地のことです。
借地権は、建物などを持つために他人の土地を借りる権利です。
所得税基本通達33-10も、この土地を「底地」と呼んでいます。
底地も土地ですから、売った利益は譲渡所得です(タックスアンサー No.3202)。
給与などのほかの所得と分けて税額を計算する、分離課税です。
譲渡所得は、売った代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
取得費は買ったときの代金など、譲渡費用は売るために直接かかった費用です。
底地では、取得費の資料と、借地人に払う立退料の扱いで税額が変わります。

売り方は主に3つ。地主が申告するのは底地の代金です
どの売り方でも、地主が売るのは底地です。
| 売り方 | 地主が売るもの |
|---|---|
| 借地人に売る | 底地 |
| 第三者に売る | 借地権が付いたままの底地 |
| 借地人と一緒に第三者へ売る | 底地(借地人は借地権を売る) |
一緒に売る場合も、地主の収入金額(売って受け取る金額)は底地の代金です。
代金の内訳と、だれがどの費用を負担したかは、売買契約書で分けておきます。
借地権を売る側の計算は、借地権・底地を売ったときの記事で扱っています。
補足
底地を買った借地人が後で売るときは、取得の日を部分ごとに判定します(所得税基本通達33-10)。詳しくは取得の日が違う不動産の記事をご覧ください。
取得費:底地をどう手に入れたかで、確かめる資料が変わります
確かめる資料は、底地を手に入れた経緯で違います。
- 底地として買った ― 購入代金と購入手数料などの合計です(No.3252)
- 相続・贈与で受け継いだ ― 亡くなった方などの購入代金と取得の時期を引き継ぎます(No.3270)
- 更地を買い、後で借地権を設定した ― 購入代金に加え、設定したときの申告を確かめます
先祖伝来などで取得費が分からないときは、売った代金の5%を取得費にできます(No.3258)。
実際の取得費が5%より少ないときも、5%を使えます。
たとえば底地を2,000万円で売り、取得費が分からなければ、100万円を取得費にできます。
資料が見つかり、実額が5%より多ければ、実額で計算できます。
注意
権利金は、借地権を設定する対価として受け取る一時金です。権利金を譲渡所得で申告するときは、土地の取得費の一部を差し引きます(所得税法施行令174条1項)。そう申告した年があれば、その申告書の控えを探してください。
権利金の扱いは、借地権の設定と取得費の記事で扱っています。

借地権を買い戻してから売るときは、土地を2つの部分に分けて計算します
借地人に対価を払って借地権を消滅させ、更地にしてから売る方法もあります。
この場合は、次のように扱います。
当該土地のうち借地権等の消滅時に取得したものとされる部分(以下この項において「旧借地権部分」という。)及びその他の部分(以下この項において「旧底地部分」という。)をそれぞれ譲渡し
(所得税基本通達33-11の2)
代金は、消滅時の「借地権の価額÷更地の価額」の割合で旧借地権部分に分けます。
払った対価が適正なら、手数料などを除いたその額を借地権の価額として使えます(同通達の注)。
旧借地権部分の取得費は、借地権を消滅させるために払った対価です(同38-4の2)。
旧底地部分の取得費は、土地の取得費から、先の借地権の設定で取得費とした額を引いた額です。
一部だけ売るときは、どちらにも面積の割合を掛けます(同38-4の2)。
借地権を消滅させる対価は、譲渡費用ではなく旧借地権部分の取得費です。
取得の日も、部分ごとに判定します(同33-10)。
売った年の1月1日に買い戻しからの所有期間が5年以下なら、旧借地権部分は短期です(No.3202)。
計算例
例:平成15年に底地を1,600万円で購入。令和5年に借地人へ3,000万円を払い借地権を消滅(そのときの更地価額5,000万円)。令和8年に土地全体を6,000万円で売却
旧借地権部分の代金 6,000万円 × 3,000万円 ÷ 5,000万円 = 3,600万円 旧底地部分の代金 6,000万円 - 3,600万円 = 2,400万円 短期(旧借地権部分) 3,600万円 - 3,000万円 = 600万円 長期(旧底地部分) 2,400万円 - 1,600万円 = 800万円 税額(住民税を含む) 短期 2,377,800円 + 長期 1,625,200円 = 4,003,000円 立退料を譲渡費用にして全体を長期とした場合 1,400万円 → 2,844,100円 差額 1,158,900円(税額が少なく計算されます)対価は適正で、先の設定で取得費とした額、譲渡費用、特別控除はないものとしました。
一定の前提を置いた目安です。
税率は令和8年分で、短期は所得税30%・住民税9%、長期は15%・5%です。
令和8年分の復興特別所得税は、所得税額の2.1%です(No.3211・No.3208)。
譲渡費用:測量費や仲介手数料は入り、維持管理の費用は入りません
譲渡費用は、売るために直接かかった費用です。
国税庁は、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代などを挙げています(No.3202)。
貸家を売るために借家人へ払う立退料も、譲渡費用です(No.3255)。
借家人は建物を借りる人で、土地を借りる借地人とは違います。
一方、次の費用は譲渡費用になりません。
譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持又は管理に要した費用は、譲渡費用に含まれないことに留意する。
(所得税基本通達33-7の注)
底地を持っていた間に払った固定資産税は、譲渡費用になりません。
ポイント
同じ測量費でも、土地を買ったときに払った測量費は取得費です(No.3252)。売るために払った測量費は、譲渡費用です(No.3202)。
申告で誤りやすいのは、この5つです
取得費と譲渡費用の入れ方を誤ると、税額が少なすぎたり多すぎたりします。
- 借地権を消滅させた対価を譲渡費用に入れた ― 旧借地権部分の取得費として、部分ごとに計算します
- 買い戻して5年以下の部分まで長期で申告した ― 取得の日は、部分ごとに判定します
- 先の設定で取得費とした額を引いていない ― 買い戻し後の売却では、旧底地部分から引きます
- 修繕費や固定資産税を譲渡費用に入れた ― 維持・管理の費用は、譲渡費用になりません
- 売るための測量費を入れ忘れた ― 譲渡費用に入れられる費用です
注意
貸している土地を、更地にして引き渡す約束で売った照会があります。借地人が立ち退かず、地主は底地部分だけを契約の年に申告しました。国税庁の質疑応答事例は、分割した申告は認められないとしています。
1つの契約による譲渡は、収入が確定した1つの年分の所得として課税されるためです。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
資料をそろえて経緯を整理するところまでは、ご自身で進められます。
- 登記事項証明書で、底地を取得した日と原因(売買・相続など)を確かめる
- 底地を買ったときの契約書か、亡くなった方が買ったときの資料を探す
- 借地契約書と、権利金を受け取った年の申告書の控えをそろえる
- 売るときの契約書で、代金の内訳とご自身が負担した費用を確かめる
立退料のうち借地権の対価に当たる部分、対価が適正か、一緒に売るときの代金の分け方は個別判断です。
権利金を譲渡所得で申告した底地を売るときの取得費の扱いも、個別に確かめます。

税理士に頼むと変わるのは、取得費の根拠と部分ごとの計算です
小松公認会計士・税理士事務所では、底地の売却で次の作業を行います。
- 登記簿と契約書から、底地の取得の経緯と取得の日を確かめる
- 取得費の資料の探し方のご案内と、売った代金の5%との比較
- 過去の借地権の設定と、権利金の申告の内容の確認
- 借地権を買い戻した場合の、代金と取得費の部分ごとの計算
- 譲渡費用に入れる費用と入れない費用の仕分け
- 譲渡所得の内訳書と申告書の作成・提出、控えのお渡し
資料はオンラインで共有いただけるため、全国どこからでもご依頼いただけます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
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よくある質問(FAQ)
Q1. 底地を借地人に売りました。確定申告は必要ですか?
底地も土地なので、売って利益が出れば分離課税の譲渡所得として申告します(No.3202)。売った代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費が分からないときは、売った代金の5%を取得費にできます(No.3258)。
Q2. 先祖代々の底地で、買ったときの金額が分かりません。
先祖伝来のものなど取得費が分からないときは、売った代金の5%を取得費にできます(No.3258)。相続した底地は亡くなった方の購入代金を引き継ぐので、まず当時の資料を探します(No.3270)。資料が見つかり、実額が5%より多ければ、実額で計算できます。
Q3. 借地人に立退料を払い、更地にしてから売りました。立退料は譲渡費用ですか?
借地権を消滅させるために払った対価は、譲渡費用ではありません。旧借地権部分の取得費として計算します(所得税基本通達38-4の2)。土地は旧借地権部分と旧底地部分に分け、代金も分けます(同33-11の2)。取得の日も部分ごとに判定します(同33-10)。
Q4. 更地で引き渡す約束で売りましたが、借地人の立退きが翌年になりそうです。
1つの契約の譲渡を、底地部分と借地権部分で別の年に分けて申告することはできません。国税庁の質疑応答事例が、分割した申告は認められないとしています。契約の年の所得として申告できるかは、その年中に契約の効力が発生しているかによります(同事例)。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法施行令79条・174条1項、租税特別措置法31条の4第1項、所得税基本通達33-7・33-10・33-11の2・38-4・38-4の2、国税庁タックスアンサー No.3111・No.3202・No.3208・No.3211・No.3252・No.3255・No.3258・No.3270、国税庁の質疑応答事例「底地部分と借地権部分の分割申告を認めることの可否」「借地権の設定に伴う譲渡所得の課税関係」の内容を扱っています。借地権を残したまま底地を売る場合に、過去の借地権の設定で取得費とした額をどう扱うかの細目、底地・借地権の時価と借地権割合の求め方、借地人と一緒に売る場合の代金の分け方、立退料のうち借地権の対価に当たる部分の区分、旧借地権部分と旧底地部分への譲渡費用の分け方、親族など特別な関係のある借地人への売却価格と贈与税、底地を買った借地人の側の計算、限定承認による相続で取得した底地、販売を目的として持つ土地(棚卸資産)の売却、相続や購入のときに払った登記費用などの扱い、権利金の所得区分の判定、収入すべき時期の判定の細目、3,000万円控除・買換え・収用などの特例、相続税の取得費加算、消費税、令和9年分以後に適用される復興特別所得税等の税率は扱っていません。記事中の計算例は令和8年中の売却を前提とした一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は取得費・代金・所有期間・使う特例などによって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 所得税基本通達 法第33条《譲渡所得》関係(33-7・33-10・33-11の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm
- 国税庁 所得税基本通達 法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》関係(38-4・38-4の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/18.htm
- 国税庁 質疑応答事例「底地部分と借地権部分の分割申告を認めることの可否」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/04/01.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3258 取得費が分からないときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
底地を売る前に、取得費の資料と立退料の扱いを確かめませんか
底地の売却は、土地の譲渡所得として計算します。ただし、底地を買ったか相続したか、取得費の資料があるかで計算の前提が変わります。過去に権利金を譲渡所得で申告したかどうかも確かめます。対価を払って借地権を消滅させてから売るときは、その対価を旧借地権部分の取得費として扱います。取得の日も、部分ごとに判定します。代表税理士が、登記簿・契約書・過去の申告書の控えから取得費の根拠を整えます。譲渡所得の内訳書と申告書の作成・提出まで担当します。売買契約を結ぶ前の段階から、資料をそろえてご依頼ください。
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