この記事のポイント
- 収入金額が買換資産の取得価額以下なら、譲渡がなかったものとされます
- 地上階数4以上(共同住宅は3以上)の中高層耐火建築物が対象です
- 取得は譲渡した年の12月31日まで。取得から1年以内に用途に供します
- 非課税ではなく課税の繰延べです。将来売るときに取得価額を引き継ぎます
まず結論:現金が入らなくても、課税は繰り延べられます
土地を提供して、建ったマンションの一部を受け取る。
これを等価交換といいます。
手元に現金は入りませんが、税金の上では土地を譲渡したことになります。
「売った実感がないのに税金がかかるのか」と不安になるのは当然です。
そこで用意されているのが、租税特別措置法37条の5の特例です。
譲渡による収入金額が買換資産の取得価額以下であれば、その譲渡資産の譲渡がなかったものとされます。
収入金額が取得価額を超えるときは、その超える金額に相当する部分の譲渡があったものとされます。
超える部分の計算方法は政令に委ねられています。
ポイント
条文の見出しは「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例」です。長いため、実務では立体買換えの特例と呼ばれます。買換資産とは、譲渡した資産の代わりに取得する資産です。等価交換では、受け取る建物部分とその敷地の土地等がこれにあたります。

対象になるのは2つの型です
条文は、譲渡する土地等・建物・構築物と、買換資産の組み合わせを2つ定めています。
| 区分 | 敷地の上に建てる建物 | 買換資産 |
|---|---|---|
| 第1号 | 地上階数4以上の中高層の耐火建築物を建築する、政令で定める事業(特定民間再開発事業) | その事業で建築された中高層耐火建築物等(その敷地の土地等を含む) |
| 第2号 | 地上階数3以上の中高層の耐火共同住宅(主として住宅の用に供される建築物で政令で定めるもの) | その事業で建築された耐火共同住宅(その敷地の土地等を含む) |
どちらの型でも、譲渡する資産が定められた区域内にあることが前提になります。
注意
条文は第1号の区域として「既成市街地等」などを掲げます。第2号はこれに加え、首都圏・近畿圏・中部圏の政令で定める区域も対象です。中心市街地共同住宅供給事業の区域も含まれます。いずれも政令等で定められた区域に限られるため、物件の所在地ごとに確認が必要です。
建物に、地上階数4以上の部分と、満たない部分とがある場合があります。
通達37の5-2は、その場合も中高層耐火建築物に該当するものとして取り扱うとしています。
共同住宅では、地上階数3で同じように読みます。
地上階数は建築基準法施行令2条1項8号により判定します。

数字でみると、繰延べの大きさが分かります
判定に使うのは、収入金額と買換資産の取得価額の関係だけです。
計算例
例:長期譲渡に当たる土地を等価交換で譲渡した場合
譲渡による収入金額 = 1億円買換資産の取得価額 = 1億円1億円 ≦ 1億円 → 譲渡がなかったものとされる比較:特例を使わなかった場合の目安
取得費(概算取得費・譲渡価額の5%)= 500万円譲渡費用 = 300万円1億円 - 500万円 - 300万円 = 9,200万円9,200万円 × 20.315% = 18,689,800円取得価額が8,000万円なら、超える2,000万円に相当する部分の譲渡があったものとされます。
その部分の所得金額は政令で定めるところにより計算します。
上の金額は一定の前提を置いた目安で、実際の税額は個別に計算します。
現金が入らない取引で1,800万円を超える納税が生じるかどうかは、資金繰りを大きく左右します。
期限は「取得」と「使いはじめ」の2つです
期限を外すと、特例は使えません。
- 買換資産の取得(建設を含みます)は、譲渡の日の属する年の12月31日までに行います。
- 取得の日から1年以内に、買換資産を定められた用途に供します。
第1号の買換資産は、その個人の居住の用に供します。
その個人の親族の居住の用に供する場合も含まれます。
第2号の買換資産は、その個人の事業の用または居住の用に供します。
これらの用に供する見込みであるときも対象です。
2項は、譲渡の翌年1月1日から同年12月31日までに取得する見込みである場合に準用されます。
政令で定めるやむを得ない事情により、それでも困難な場合があります。
税務署長の承認を受けたときは、同日後2年以内で税務署長が認定した日までとなります。
通達37の5-4は、譲渡した年の1月1日以後に取得したものを対象とします。
譲渡した日より前の取得であっても、買換資産にできます。

非課税ではありません。将来へ持ち越すしくみです
この特例は課税の繰延べであり、税金が消えるわけではありません。
4項が、買換資産の取得価額の引継ぎを定めています。
引き継いだ金額は、買換資産の償却費の計算に使われます。
取得の日以後に譲渡・相続・遺贈・贈与があった場合の譲渡所得の計算にも使われます。
| 収入金額と取得価額の関係 | 買換資産の取得価額とされる金額 |
|---|---|
| 収入金額が超える場合 | 譲渡をした資産の取得価額等のうち、その超える額に対応する部分以外の部分の額 |
| 等しい場合 | 譲渡をした資産の取得価額等に相当する金額 |
| 収入金額が満たない場合 | 譲渡をした資産の取得価額等に、その満たない額を加算した金額 |
注意
受け取った建物部分を将来売るときは、引き継いだ低い取得価額で譲渡所得を計算します。繰り延べた分は、そのときに表に出ます。相続でご家族が売る場合も同じです。いずれ売る予定があるのかで、特例の評価は変わります。
5項は、譲渡資産と買換資産とを交換した場合の規定です。
交換差金の授受がある場合も含みます。
交換譲渡資産は、交換の日における価額に相当する金額で1項の譲渡をしたものとみなされます。
交換取得資産は、同日における価額に相当する金額で1項の取得をしたものとみなされます。

使える範囲と、他の特例との関係
譲渡資産の使いみちは、広く認められています。
通達37の5-1は、第2号の譲渡資産が事業の用・居住の用に供されていたかを問わないとしています。
空閑地や事業用の土地を譲渡し、買換資産を居住の用に供した場合にも適用があるとされます。
通達37の5-5は、生計を一にする親族の事業の用に供される場合を扱います。
その買換資産は、譲渡をした方にとっても事業の用に供されたものとされます。
通達37の5-6は、買換資産を取得しないで亡くなった場合の取扱いです。
死亡前の売買契約や請負契約で、買換資産が具体的に確定していることが必要です。
その相続人が法定期間内に取得し、用途に供したときは適用できます。
通達37の5-7は、買換資産を譲渡の対価として取得することを約した場合の定めです。
その場合の収入金額は、買換資産の取得時の価額に相当する金額によります。
補足
6項は、第1号の譲渡資産を譲渡したのに、中高層耐火建築物等の取得が困難な場合の定めです。困難かどうかは、政令で定める特別な事情によります。対象は、譲渡資産がその年1月1日において所有期間10年以下の居住用財産に該当する場合です。その譲渡所得は、措置法31条の3に規定する譲渡所得に該当するものとみなされます。通達37の5-8は、6項が譲渡の一部につき1項の適用を受けないときに限り適用があるとしています。またその譲渡については、措置法35条1項の適用がないとしています。
交換という言葉から固定資産の交換の特例を思い浮かべる方もいます。
しかし、立体買換えは別の条文です。
土地の使い方によっては、事業用資産の買換え特例が候補になることもあります。
自宅の建替えに近い形であれば、マイホームの買換え特例も比較の対象です。
それぞれ要件が異なり、どれを選ぶかは個別の判断になります。
ご自身でできることと、個別判断になること
ここまではご自身でも確認できます。
提案書で、建てる建物の地上階数と用途を確かめます。
土地の所在地と、完成・引渡予定日を控えます。
ここから先は個別の判断になります。
収入金額と買換資産の取得価額をどのように把握するかが出発点です。
将来の売却や相続まで見たうえで、特例を使うかどうかを決めます。
小松公認会計士・税理士事務所では、提案書の段階からご一緒に検討します。
契約を結ぶ前にご相談いただくほうが、選べる道は広くなります。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 等価交換なら税金はかからないのですか?
かからないわけではありません。課税の繰延べです。収入金額が買換資産の取得価額以下であれば譲渡がなかったものとされますが、4項により取得価額を引き継ぐため、将来その部屋を売るときに繰り延べた分が計算に表れます。
Q2. 建物の完成が翌年になりそうです。間に合いますか?
2項の取得指定期間があります。譲渡の翌年1月1日から同年12月31日までに取得する見込みであれば準用されます。政令で定めるやむを得ない事情で困難な場合は、税務署長の承認を受ければ同日後2年以内で認定された日までとなります。
Q3. 貸していた土地でも使えますか?
通達37の5-1は、第2号の譲渡資産について事業の用又は居住の用に供されていたものであるかどうかを問わないとしています。空閑地や事業用の土地を譲渡し、買換資産を居住の用に供した場合にも適用があるとされています。
Q4. うちの土地は対象の区域に入っていますか?
区域は政令等で定められた区域に限られるため、物件の所在地ごとに確認が必要です。地名の印象では判断できません。登記事項証明書と都市計画の資料をもとに、事業の内容とあわせて確認します。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法37条の5(第1項・第2項・第4項・第5項・第6項)、租税特別措置法関係通達37の5-1、37の5-2、37の5-4、37の5-5、37の5-6、37の5-7、37の5-8を扱っています。「既成市街地等」その他の対象区域の具体的な範囲、租税特別措置法施行令25条の4に定める細目、収入金額が買換資産の取得価額を超える場合の所得金額の按分計算の算式、買換資産の取得価額の引継ぎに関する政令の計算方法、確定申告の手続と添付書類、この特例の適用期限、租税特別措置法37条(事業用資産の買換え)・36条の2(居住用財産の買換え)・35条(居住用財産の特別控除)の要件、法人が行う等価交換の取扱い、消費税・不動産取得税・登録免許税の取扱いは扱っていません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(37条の5)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁 措置法第37条の5《既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例》関係https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti37/11.htm
- 国税庁 措置法第31条の3《居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》関係https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti31/06.htm
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立体買換えの特例は、対象となる区域、建物の地上階数、取得と用途に供する期限がそろって初めて使えます。そして非課税ではなく課税の繰延べですから、将来その部屋を売るとき、あるいはご家族が相続したときまで見たうえで判断する必要があります。デベロッパーの提案書を拝見しながら、代表税理士が特例の可否と手残りの見通しを整理します。
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