この記事のポイント
- 借入金の残高は譲渡所得の計算式に入りません。返済しても計算は同じです
- 本人が住む家を売るなら3,000万円控除の対象になり得ます。子に売ると対象外です
- 相続人が売るなら空き家特例と取得費加算は選択です。リ・バース60で新築した家は空き家特例の対象外です
- 住み始めた後の利息は取得費に入りません。死亡時の確実な借入金は相続税で差し引けます
まず結論:借入金が残っていても、税金の計算式は変わりません
リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借り、元金を亡くなった後などに一括で返す借入れです。
「リ・バース60」は、住宅金融支援機構と提携する金融機関の住宅ローンです。
機構は、これを「リバースモーゲージ型住宅ローン」と呼んでいます。
毎月の支払いは利息だけです。元金は、契約者が亡くなったときに相続人が一括で返すか、自宅を売って返します。
譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します(No.3202)。借入金の残高は、この式に入りません。
違いが出るのは、だれが売るかです。本人が生きているうちに売るか、相続人が売るかで、使える特例が変わります。

本人が生きているうちに売るなら、3,000万円控除を確かめます
住んでいる自宅を売るなら、最高3,000万円を控除できる特例の対象になり得ます(No.3302)。
施設などへ移った後に売るなら、期限があります。住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までです。
売った年の前年・前々年にこの特例を受けていないことなども要件です。
親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売ったものは、対象になりません。
計算例
例:自宅を3,000万円で売り、残高800万円を返す
前提 取得費1,900万円・譲渡費用100万円・長期 譲渡益 3,000万円 -(1,900万円 + 100万円)= 1,000万円 第三者に売る 3,000万円控除(譲渡益が上限)で、課税される譲渡所得は0円 子に売る 控除なし。所得税150万円 + 復興特別所得税31,500円 + 住民税50万円 = 2,031,500円 残高800万円は、どちらの計算にも入りません数値は一定の前提を置いた目安です。長期は、売った年の1月1日で所有期間が5年を超えるものです(No.3202)。
税率は長期の所得税15%・住民税5%と、所得税の2.1%の復興特別所得税です(No.3208)。令和9年分からは、復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%です。
抵当権の抹消費用など、売るときに動くお金の仕分けは住宅ローンが残る家の売却の記事で扱っています。

相続人が売るなら、取得費と取得の時期を引き継ぎます
相続した家の取得費は、亡くなった方が買ったときの代金などを基に計算します(No.3270)。
相続や贈与によって取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま取得した相続人や受贈者に引き継がれます。
(国税庁 タックスアンサー No.3270)
空き家の3,000万円控除には、家屋についての要件があります(No.3306)。
家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたことが、要件の一つです。
相続の開始の直前に、被相続人以外に住んでいた人がいないことも要件です。
リ・バース60などで新築した家は、建築時期の要件に当たらず、この特例を使えません。
空き家特例と取得費加算は、同じ家や敷地について選択になります(No.3306・国土交通省)。
使い分けの全体は相続した実家の売却の記事で扱っています。
補足
機構の案内では、連帯債務で借りた場合、元金を返すのは主債務者と連帯債務者が共に亡くなったときです。配偶者が同居していた場合、最初の相続では空き家特例の居住者の要件を満たしません。

相続税では借入金を差し引け、取得費加算の可否にも響きます
亡くなった時点で残っていた借入金は、相続税の計算で遺産総額から差し引けます。
差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で確実と認められるものです。
(国税庁 タックスアンサー No.4126)
差し引けるのは、その債務を負担することになる相続人などです。
取得費加算は、相続税額の一部を、売った財産の取得費に足せる特例です(No.3267)。
相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ることが要件です。
借入金を差し引いた結果、相続税がかからなければ、取得費加算は使えません。
計算例
例:相続人が自宅を3,500万円で売る(引き継いだ取得費2,300万円・譲渡費用200万円・長期)。その相続人の相続税額400万円、自宅の相続税評価額3,000万円、取得財産の価額6,000万円
取得費加算額 400万円 × 3,000万円 ÷ 6,000万円 = 200万円 譲渡益 3,500万円 -(2,300万円 + 200万円)= 1,000万円 → 加算後 800万円 税額(長期) 2,031,500円 → 1,625,200円(差 406,300円)数値は一定の前提を置いた目安です。相続時精算課税と暦年課税の贈与の加算はない前提です。
利息は、住み始めた後の分は取得費に入りません
借入金の利子のうち、取得費に入るのは次の部分です。
土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
(国税庁 タックスアンサー No.3252)
毎月払う利息のうち、住み始めた後の分は取得費に入りません。
生活資金のための借入れの利息は、「購入するために借り入れた資金の利子」に当たりません。
リフォームの費用のうち改良費に当たるものは、取得費に含まれます(No.3252)。
譲渡費用は、売るために直接かかった費用です(No.3255)。借入金の返済は、その例に挙がっていません。
ポイント
利息は「何のために借りたか」と「いつの分か」で分かれます。買う・建てるための借入れで、住み始める前の分が取得費の対象です。期間の考え方は借入金の利子と取得費の記事をご覧ください。
失敗しやすいのは、この6つです
- 返した残高を譲渡費用に入れる ― 譲渡所得が少なくなり、申告漏れになることがあります
- 住み始めた後の利息を取得費に入れる ― 取得費が過大になります
- 子が買い取ったのに3,000万円控除を使う ― 特別の関係がある人への売却は対象外です
- リバースモーゲージで新築した家に空き家特例を使う ― 昭和56年5月31日以前の建築が要件です
- 相続の直前に配偶者が同居していた家に空き家特例を使う ― 被相続人以外の居住者がいないことが要件です
- 相続税がかからないのに取得費加算を使う ― 相続税の課税が要件です
ノンリコース型は、売却代金で返しきれなくても、相続人が残りを返す必要がない型です(機構の案内)。
ノンリコース型の場合、返済が不要となる残債務分については、債務免除益とみなされ、一時所得が発生し、所得税等が課税される可能性があります。
(住宅金融支援機構「リ・バース60」の案内ページ)
注意
売却代金が残高に足りないときの扱いは、ノンリコース型かリコース型かで異なります(機構の案内)。課税の扱いはこの記事では扱っていないため、売る前に個別に確かめてください。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
資料をそろえるのはご自身でできますが、特例の選択と利息の区分は個別判断です。
- 借入れの契約書と、残高や利息の支払いが分かる書類をそろえる
- 自宅を買った・建てたときの契約書と領収書を探す
- リフォームをしたなら、工事の契約書と領収書を探す
- 売る人が本人か相続人か、売る予定の時期を確かめる
ここから先は、事情で結論が変わります。
空き家特例と取得費加算のどちらを選ぶか、利息のうち取得費に入る部分、残高が残るときの扱いです。

税理士が入ると変わるのは、特例の選択と取得費の根拠です
ひとつめは、借入れの使いみちと契約書から、取得費に入る利息と入らない利息を分けることです。
ふたつめは、購入・建築・改良の資料から取得費を組み立て、根拠を残すことです。
みっつめは、3,000万円控除・空き家特例・取得費加算の要件を確かめ、税額を比べることです。
よっつめは、相続税の申告書の数字と、取得費加算の計算明細書をそろえることです。
いつつめは、譲渡所得の内訳書と確定申告書への反映です。
小松公認会計士・税理士事務所では、売る前の試算から適正申告までを担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. リバースモーゲージの残高は、譲渡所得から差し引けますか?
差し引けません。譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します(No.3202)。借入金の残高はこの式に入らず、売却代金で返しても税額の計算は変わりません。住んでいた家なら、3,000万円控除の要件を確かめます。
Q2. 相続人が売るとき、空き家の3,000万円控除は使えますか?
家屋が昭和56年5月31日以前に建築され、相続の開始の直前に被相続人以外に住んでいた人がいないことなどが要件です(No.3306)。リ・バース60などで新築した家は対象外です。売る期限や1億円以下の要件もあり、取得費加算とは選択です。
Q3. リバースモーゲージの利息は、取得費に入りますか?
家を買う・建てるための借入金の利子は、使用開始の日までの分が取得費です(所得税基本通達38-8)。住み始めた後に払う利息や、生活資金のための借入れの利息は入りません。何のための借入れかを契約書で確かめます。
Q4. 亡くなった時点の借入金は、相続税で差し引けますか?
被相続人が死亡したときに現に存在した債務で、確実と認められるものは差し引けます(No.4126)。差し引けるのは、その債務を負担する相続人などです。その結果、相続税がかからなければ、取得費加算は使えません。残高が担保の価値を上回る場合などは個別に確かめます。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁タックスアンサー No.3202・No.3208・No.3252・No.3255・No.3267・No.3270・No.3302・No.3306・No.4126(根拠法令として所得税法33条・38条・60条、租税特別措置法35条・39条、相続税法13条・14条などを掲げるもの)、所得税基本通達38-8、国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置」の資料、住宅金融支援機構「リ・バース60」の案内の内容を扱っています。特定の金融機関や商品の金利・融資限度額・手数料、ノンリコース型で売却代金が残高に足りない場合の課税関係(債務免除益の所得区分・課税される人・相続税で差し引ける債務の額)、連帯債務の場合に相続税で差し引ける債務の範囲、抵当権の実行(競売)による売却の扱い、リフォーム・借換えのための借入金の利子の扱い、住宅ローン控除との関係、老人ホーム等に入所していた場合の空き家特例、耐震基準と被相続人居住用家屋等確認書の手続、相続税額の計算、軽減税率の特例と短期譲渡所得の税率、端数処理、住民税の申告と納付の時期は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は取得費・譲渡価額・譲渡費用・所有期間・相続税額によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4126 相続財産から控除できる債務https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
- 住宅金融支援機構 【リ・バース60】https://www.jhf.go.jp/kojin/yushihoken_revmo/index.html
リバースモーゲージの自宅を売る前に、使える特例と税額を確かめませんか
リバースモーゲージを利用した自宅は、本人が売るか相続人が売るかで、3,000万円控除・空き家特例・取得費加算の使い方が変わります。代表税理士が、借入れの契約書と購入時の資料から取得費と利息の扱いを整理し、売る前の試算から確定申告まで一貫して担当します。売る時期を決める前に、資料がそろった段階でご相談ください。
無料相談を申し込む 不動産売却の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り