この記事のポイント
- 要件を満たせば、親が住む家を親が売ると親の3,000万円控除。残った代金は相続財産です
- 相続後に子が売るなら、要件に応じて空き家特例か取得費加算。2つは併用できません
- 同居の子などは申告期限まで持ち続けることが小規模宅地等の特例の要件です
- 有利な方は相続税の有無・評価額・空き家特例の要件で入れ替わります
まず結論:有利な方は、相続税と空き家特例の要件で入れ替わります
親の家(実家)は、だれがいつ売るかで使える特例が変わります。
親が住む家を生前に親が売るなら、要件を満たせば親の「3,000万円控除」が使えます。
相続してから子が売るなら、「空き家特例」か「取得費加算」を検討します。
相続税では、親が住んでいた土地に「小規模宅地等の特例」を使える場合があります。
どちらが有利かは、相続税の有無、評価額、空き家特例の要件で入れ替わります。

生前に親が売るとき:中心になるのは親の3,000万円控除と軽減税率です
親が住む家を売ると、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます(No.3302)。
譲渡所得とは、売った金額から買った金額(建物は減価償却後の額)と売る費用を引いたもうけです。
住まなくなった家も、次の期限内なら対象です。
以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。なお、その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません。)
(国税庁 タックスアンサー No.3302)
売った年の1月1日で家と土地をともに10年超持つなどの要件を満たせば、軽減税率も重ねて使えます。
控除後のもうけのうち6,000万円以下の部分は、所得税10%・住民税4%です(No.3305ほか)。
ただし、親子や夫婦など特別の関係がある人に売ると、3,000万円控除は使えません。
売却代金のうち亡くなるまで残った分は、親の財産として相続税の対象になります。
親が認知症の場合は、認知症の親の自宅売却の記事をご覧ください。
相続後に子が売るとき:空き家特例と取得費加算は、どちらか一方です
相続した家の取得費と取得の時期は、親から引き継ぎます(No.3270)。
親の取得から売った年の1月1日までが5年超なら、子が売っても長期譲渡所得です。
| 項目 | 空き家特例(No.3306) | 取得費加算(No.3267) |
|---|---|---|
| 中身 | 譲渡所得から最高3,000万円を控除 | 相続税の一部を取得費に加える |
| 主な対象 | 昭和56年5月31日以前の建築で、区分所有でなく、相続の直前に親が一人で住んでいた家と敷地 | 相続税が課税された人が相続した財産 |
| 売る期限 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(特例は令和9年12月31日までの譲渡) | 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで |
| 主な条件 | 売却代金1億円以下、耐震基準を満たすか取壊し、相続後に貸したり住んだりしていない | 加える額は、特例を使わない譲渡益が上限 |
親が要介護認定を受けて老人ホームに入るなどした場合も、一定の要件で対象になります(No.3306)。
空き家特例は、取得費加算など他の特例を受けていないことが要件です。
ポイント
2つは併用できないため、有利な方を選びます。
基本の流れは相続した実家の売却の記事にまとめています。

相続税の側:小規模宅地等の特例は、売る時期で失うことがあります
親が住んでいた土地は、相続税の計算で評価額が80%減る場合があります(No.4124)。
330㎡までが対象で、要件は取得する人で変わります。
| 取得する人 | 主な要件 |
|---|---|
| 親の配偶者 | 取得者ごとの要件はありません |
| 同居していた親族 | 申告期限まで住み続け、持ち続けること |
| 上記以外の親族 | 親に配偶者も同居の相続人もない、3年以内に自分や配偶者などの家に住んでいない、申告期限まで保有など |
同居の子などが申告期限前に売ると、この特例は使えなくなります。
申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です(No.4205)。
同居していた子は、空き家特例も使えません(相続の直前に親以外が住んでいたため)。
生前に売って代金が現金で残ると、その現金にこの特例は使えません。
詳しくは小規模宅地等の特例と売る時期の記事をご覧ください。
数字で比べる:前提しだいで、有利な方が入れ替わります
計算例
例:親(配偶者なし)が昭和55年に建て、一人で住む一戸建て。第三者への売却価格5,000万円、取得費1,000万円(譲渡費用なし)。ほかの財産は預貯金1,900万円で、代金の残りも預貯金で残る。相続人は持ち家に住む子1人(基礎控除3,600万円)。土地建物の相続税評価額は4,000万円と仮定
A 親の税金:(4,000万円-3,000万円)×14.21%=1,421,000円 A 相続財産:1,900万円+(5,000万円-1,421,000円)=67,579,000円 A 相続税:(67,579,000円-3,600万円)×20%-200万円=4,315,800円 B 相続税:(5,900万円-3,600万円)×15%-50万円=2,950,000円 B1 空き家特例:(4,000万円-3,000万円)×20.315%=2,031,500円 B2 加算額:2,950,000円×4,000万円÷5,900万円=200万円 B2 取得費加算:(4,000万円-200万円)×20.315%=7,719,700円| 区分 | A 生前に親が売る | B1 相続後(空き家特例) | B2 相続後(取得費加算) |
|---|---|---|---|
| 売った人の税金 | 1,421,000円 | 2,031,500円 | 7,719,700円 |
| 相続税 | 4,315,800円 | 2,950,000円 | 2,950,000円 |
| 合計 | 5,736,800円 | 4,981,500円 | 10,669,700円 |
空き家特例の要件を満たすB1は、Aより755,300円少なくなります。満たさないB2は、4,932,900円多くなります。
評価額を5,000万円と置くと、B1の合計は6,631,500円で、Aより多くなります。
相続税がかからない家庭なら、比べるのは売った人の税金だけです。その場合はB1よりAが610,500円少なくなります。
数値は一定の前提を置いた目安です。評価額と特例の要件で結論が変わります。
補足
子は持ち家に住むため、小規模宅地等の特例は使えない前提です。14.21%と20.315%は、所得税・復興特別所得税・住民税の合計です。令和9年分以後は、復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%に分かれます。合計の2.1%は変わりません(財務省「令和8年度税制改正の解説」)。

特例を失うのは、たとえばこの5つの場面です
- 親の家を子が買い取る ― 親子間の売買は、3,000万円控除の対象外です
- 親が住まなくなって3年がたつ年の12月31日を過ぎる ― 親の3,000万円控除が使えません
- 相続後に貸す・自分が住む ― 空き家特例の要件から外れます
- 同居の子が申告期限前に売る ― 小規模宅地等の特例を失います
- 空き家特例と取得費加算の両方を見込む ― 2つは併用できません
注意
空き家特例は、売却代金1億円以下も要件です。一定の期間内に、ほかの相続人が売った部分なども合わせて判定します。家と敷地を取得した相続人が3人以上なら、令和6年1月1日以後の譲渡は上限が2,000万円です。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
事実の確認はご自身でできますが、どちらで売るかの判断は個別です。
- 登記事項証明書で、建てた日付と区分所有かどうかを確かめる
- 親が住まなくなった日と、同居していた家族の有無を書き出す
- 相続人の人数と、それぞれが持ち家に住んでいるかを確かめる
- 預貯金など、親の財産の総額を大まかにつかむ
ここから先は、相続税評価額の計算、特例の要件の当てはめ、売る時期ごとの試算です。

税理士が入ると変わるのは、2つの税金を同じ表で比べられることです
ひとつめは、親の譲渡所得、相続税、子の譲渡所得を同じ前提で試算することです。
ふたつめは、相続税評価額を出し、取得費加算の額まで計算することです。
みっつめは、各特例の要件を事実と書類で確かめることです。
よっつめは、3年がたつ年の12月31日や申告期限から逆算し、売る時期の案を作ることです。
いつつめは、確定申告書と相続税の申告書に特例を反映することです。
小松公認会計士・税理士事務所では、売る前の試算から両方の申告まで担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 親が元気なうちに売った方が、税金は少なくなりますか?
前提しだいです。本記事の例で空き家特例が使えるとき、相続税がなければ生前の売却が610,500円少なくなります。相続税がかかると、相続後の売却が755,300円少なくなりました。評価額や要件で逆転するため、両方を試算します。
Q2. 親の家を子が買い取れば、親は3,000万円控除を使えますか?
使えません。No.3302の要件に、親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売ったものでないことがあります。生計を一にする親族や、売った後にその家で同居する親族なども含まれます。
Q3. 相続した実家を、空き家特例と取得費加算の両方で計算できますか?
できません。空き家特例は、取得費加算など他の特例を受けていないことが要件です。有利な方を選びます。取得費加算は、相続税が課税された人が対象です。相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡が要件です。
Q4. 相続税の申告期限より前に売ると、小規模宅地等の特例は使えませんか?
取得する人で変わります。配偶者には持ち続ける要件がありません。同居していた親族や、要件を満たす別居の親族は、申告期限まで持ち続けることが要件です。申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁タックスアンサー No.3302・No.3305・No.3208・No.3306・No.3267・No.3270・No.4124・No.4152・No.4155・No.4205(根拠法令等として租税特別措置法35条・39条・69条の4などが掲げられています)、東京都主税局「個人住民税」、財務省「令和8年度税制改正の解説」(防衛特別所得税の創設等)の内容を扱っています。3,000万円控除と軽減税率のその他の要件と添付書類、空き家特例の耐震基準・被相続人居住用家屋等確認書・老人ホーム入所後の要件・1億円判定の細目、取得費加算の計算明細書の書き方、小規模宅地等の特例の別居親族の要件の細目・限度面積の調整・事業用や貸付用の宅地、相続税評価額の計算方法、配偶者の税額軽減、相続人が複数いる場合の計算、生前贈与してから売る方法、成年後見の手続、住民税の課税時期、令和9年分以後の端数処理は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は売却価格・取得費・評価額・財産の総額・相続人の構成・売る年によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
- 財務省 令和8年度税制改正の解説「防衛特別所得税の創設等」https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/explanation/PDF/p0141-0209.pdf
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