この記事のポイント
- 家賃など年金以外の所得が合計20万円を超えると、申告不要の制度は使えません
- 家賃の所得が20万円以下でも、住民税の申告は原則として必要です
- 家賃が赤字の年は、申告すると年金から引かれた所得税が戻る場合があります
- 減価償却・修繕・赤字の計算で迷うときが、頼んだほうがよい場面です
まず結論:家賃の所得の額と計算の中身で、頼むかどうかが分かれます
年金を受け取る方は、条件を満たせば所得税の確定申告が要りません(所得税法121条3項)。
条件の一つは、年金以外の所得の合計が20万円以下であることです。家賃の所得もこの合計に入ります。
家賃と経費が少なく、計算が単純なら、ご自身で申告できる場合があります。
減価償却費・修繕・赤字が絡む年は判断が増え、依頼を考えたい場面です。

年金の申告不要の制度は、3つの条件をすべて満たすときに使えます
国内で年金を受け取る方は、次のすべてに当たれば確定申告は要りません(No.2020)。
- その年の公的年金等の収入金額が400万円以下
- その公的年金等の全部が、源泉徴収(支払のときに税金を差し引くこと)の対象
- 公的年金等以外の所得金額が20万円以下
20万円の判定に入る所得には、不動産所得(家賃の所得)が含まれます(所得税法121条3項)。
400万円の基準の見方は、年金受給者の確定申告と400万円ルールの記事で解説しています。
条件から外れる方は、所得控除を引いて残りがあれば、確定申告で税額を精算します(No.1600)。

20万円と比べるのは、家賃から経費を引いた「所得」です
不動産所得は、家賃などの総収入金額から必要経費を引いた額です(所得税法26条2項)。
収入には、更新料や、返さなくてよい敷金・保証金も入ります(No.1370)。
経費の主なものは、固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費です(同)。
減価償却費は、建物などの取得にかかった金額を、使える期間に分けて経費にします(No.2100)。
計算例
例:年金を受け取りながら、マンションの1室を月8万円で貸している場合
家賃収入 80,000円 × 12か月 = 960,000円 減価償却費を入れ忘れた 960,000円 − 360,000円 = 600,000円 → 20万円超 減価償却費を正しく入れた 960,000円 − 360,000円 − 420,000円 = 180,000円 → 20万円以下年金の収入は400万円以下で全部が源泉徴収の対象、ほかの所得はない前提です。減価償却費以外の経費36万円と減価償却費42万円は仮の金額です。
金額は一定の前提を置いた目安です。180,000円の場合、所得税の申告は不要です。
減価償却費は、毎年計算して経費に入れるものです。入れ忘れると、申告の要否の判定を誤ります。
所得税の申告が要らない年も、住民税の申告は原則として必要です
住民税の申告書は、原則として3月15日までに市区町村へ出します(地方税法317条の2第1項)。
年金を受け取る方で、年金以外の所得がなかった方は、申告が要らない場合があります(同項ただし書)。
所得割(所得に応じた住民税)がかからないと認められ、市区町村の条例で定める方も対象外です。
家賃の所得がある方は、20万円以下でも住民税の申告が原則として必要です。
確定申告書を出せば、原則として住民税の申告書も出したものとみなされます(同法317条の3第1項)。
ポイント
住民税の所得割は、前年の所得をもとに計算します(地方税法313条1項)。家賃の所得は、この計算の元になる総所得金額に入ります(同条2項・所得税法22条2項)。
国民健康保険に入っている方は、保険料の計算にも関わります。保険料の所得割は、総所得金額などから基礎控除をした額に応じて決まります。根拠は国民健康保険法施行令29条の7第2項4号などです。
保険料の金額は、お住まいの市区町村の案内でご確認ください。
家賃が赤字の年は、申告すると税金が戻る場合があります
不動産所得の赤字は、年金などほかの所得から差し引けます(所得税法69条1項)。これを損益通算といいます。
土地などを取得するための借入金の利子にあたる赤字は、差し引けません(租税特別措置法41条の4)。
別荘など、主に趣味や保養のための不動産の貸付けの赤字も対象外です(No.1391)。
年金からは、原則として支払のときに所得税などが源泉徴収されています(No.1600)。
赤字を差し引いて源泉徴収税額が納め過ぎになれば、申告で還付を受けられます(所得税法122条1項)。
還付の申告は、その年の翌年1月1日から5年間出せます(No.2030)。
注意
赤字の年は、年金の申告不要の条件に当たることがあります。それでも申告しなければ、源泉徴収された所得税は戻りません。
赤字の年は、申告不要の条件に当たっても、申告したほうがよい場合があります。

間違えやすいのは、この5つの場面です
年金だけの年と同じに考えると、次の誤りにつながります。
- 家賃などの所得の合計が20万円を超えたのに、何も出さない ― 申告不要の制度は使えません。期限後の申告には、無申告加算税がかかることがあります(国税通則法66条1項)。
- 20万円以下なので、住民税の申告もしない ― 住民税の申告は原則として必要です(地方税法317条の2第1項)。
- 医療費控除の還付申告で、20万円以下の家賃の所得を書かない ― 還付の申告書にも総所得金額を書きます(所得税法122条1項・120条1項1号)。家賃の所得も、総所得金額に含まれます(同法22条2項)。
- 減価償却費を入れずに所得を出す ― 所得を多く計算し、申告の要否の判定や税額を誤ります。
- 価値を高める工事を、全額その年の修繕費にする ― 価値を高める部分は原則として資本的支出で、減価償却で分けて経費にします(No.1379)。
工事の分け方は、修繕費か資本的支出かの記事で解説しています。
家賃の所得は、経費を漏れなく入れてから20万円と比べることが大切です。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で進められるのは、次の5つです。
- 年金の源泉徴収票で、年金の収入と源泉徴収税額を確かめる
- 1年分の家賃の入金と、管理会社からの明細を集める
- 固定資産税の通知書、保険料と修繕の領収書を集める
- 収入から経費を引いて、家賃の所得を20万円と比べる
- 確定申告をするか、住民税の申告にするかを決める
年金の源泉徴収票は、支払者が翌年1月31日までに交付します(所得税法226条3項)。
収支が単純な方は、国税庁の確定申告書等作成コーナーで申告書を作れる場合があります(No.1600)。
減価償却費の計算、修繕費の区分、赤字の扱い、共有名義の分け方は個別判断です。
減価償却費の計算には、取得にかかった金額と、財務省令で定める耐用年数を使います(No.2100)。相続した建物や中古の建物は、この2つを確かめる作業から始まります。

税理士に頼むと変わるのは、判定の根拠と計算の手間です
小松公認会計士・税理士事務所では、年金と家賃収入がある方の申告で、次の作業を行います。
- 所得税の申告が要るか、住民税の申告で足りるかの判定と、その根拠のご説明
- 年金・家賃・経費について、集める書類の一覧でのご案内
- 減価償却費の計算と、修繕費か資本的支出かの区分
- 赤字の年の損益通算と、還付の見込みの計算
- 収入と経費の内容を書いた書類と申告書の作成、電子申告、控えのお渡し
離れて暮らす親の申告をご家族から頼む流れは、親の確定申告を子どもが代わりに頼む記事にまとめています。
全国どこからでも、オンラインで完結します。
料金の目安
基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額が料金です。公的年金の単価は6,000円(税込6,600円)です。家賃収入の単価は、物件ごとの1年分の家賃収入(経費を引く前)の規模で決まります。
個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。
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この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 年金のほかに家賃収入があります。確定申告は必要ですか?
年金の収入が400万円以下で全部が源泉徴収の対象の方は、年金以外の所得で判断します。その合計が20万円以下なら、所得税の申告は不要です(所得税法121条3項)。家賃などの所得が合計20万円を超えると、申告不要の制度は使えません(No.1600)。
Q2. 家賃の所得が20万円以下なら、何も出さなくてよいですか?
所得税の申告は不要でも、住民税の申告は原則として必要です(地方税法317条の2第1項)。家賃の所得がある方は、年金だけの方の例外に当たりません。確定申告書を出せば、原則として住民税の申告書も出したものとみなされます(同法317条の3第1項)。
Q3. 家賃が赤字の年は、申告したほうがよいですか?
不動産所得の赤字は、年金などほかの所得から差し引けます(所得税法69条1項)。源泉徴収された所得税が戻る場合があります。土地などを取得するための借入金の利子にあたる赤字は、差し引けません(租税特別措置法41条の4)。
Q4. 年金と家賃収入の申告は、自分でできますか?
収支が単純なら、国税庁の確定申告書等作成コーナーで作れる場合があります(No.1600)。減価償却費の計算、修繕費の区分、赤字の扱いで迷うときは、判定から税理士に任せる方法があります。離れて暮らすご家族からのご依頼もお受けしています。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法22条2項・26条2項・69条1項・120条1項・121条3項・122条1項・226条3項、租税特別措置法41条の4、地方税法313条1項・2項・317条の2第1項・317条の3第1項、国民健康保険法施行令29条の7第2項4号、国税通則法66条1項、タックスアンサーNo.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」・No.1379「修繕費とならないものの判定」・No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」・No.1600「公的年金等の課税関係」・No.2020「確定申告」・No.2030「還付申告」・No.2100「減価償却のあらまし」、弊所の料金表の内容を扱っています。公的年金等控除の額と年金の所得の計算、年金の源泉徴収の税率、外国の制度に基づく年金、減価償却費の計算方法(償却方法・耐用年数・相続や中古の建物の扱い)、貸付けに使う少額の資産の扱い、修繕費と資本的支出の形式基準の細目、土地などの借入金の利子の計算、事業的規模の判定と青色申告(青色申告特別控除・純損失の繰越し)、収入と経費の内容を書いた書類の様式、共有名義の物件の分け方、消費税、住民税の税額と申告書の様式、国民健康保険料の料率・軽減・上限、後期高齢者医療制度の保険料と介護保険料、無申告加算税の割合と延滞税、令和8年分の確定申告期間の日付は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の判定は年金の種類や家賃・経費の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(69条・121条・122条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- e-Gov法令検索「地方税法」(313条・317条の2・317条の3)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 国税庁 タックスアンサー No.1600「公的年金等の課税関係」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm
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