この記事のポイント
- 車の代金は原則として、耐用年数に分けて何年かで経費にします
- その年の償却費は、事業に使い始めた月から12月までの月割りです
- 私用にも使う車は、事業に必要な部分を区分できる分だけが経費です
- 中古車は耐用年数を短くできる場合がありますが、月割りは同じです
まず結論:12月に買っても、その年の経費になるのは原則として一部です
年末に車を買えば、その年の税金が大きく減ると考える方がいます。
事業に使う車は、減価償却資産(時の経過で価値が減る資産)です(所得税法2条1項19号)。
代金は原則として、耐用年数(法令で決まった使える年数)に分けて経費にします。
その年の分は、使い始めた月からの月割りで、私用分は除きます。
少額の特例が使えない車を12月に使い始めると、その年の償却費は1年分の12分の1です。

車の代金は、耐用年数に分けて経費にするのが原則です
国税庁は、次のように案内しています。
減価償却資産の取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきものです。
(国税庁タックスアンサー No.2100)
車の耐用年数と定額法(毎年同じ額を経費にする方法)の償却率です(耐用年数省令別表第一・第八)。
| 車の種類 | 耐用年数 | 定額法の償却率 |
|---|---|---|
| 総排気量0.66リットル以下の自動車(軽自動車など) | 4年 | 0.250 |
| 上記以外の貨物自動車(ダンプ式を除く) | 5年 | 0.200 |
| 上記以外の自動車(乗用車など) | 6年 | 0.167 |
| 二輪・三輪の自動車 | 3年 | 0.334 |
ダンプ式の貨物自動車や、運送事業用・報道通信用などの車は年数が違います。
個人は、届け出なければ定額法で計算します(所得税法施行令125条)。定率法を選ぶには、届出などの手続きが要ります(No.2100)。
例外は少額の資産です。取得価額10万円未満なら、使い始めた年に全額が経費です(所得税法施行令138条)。
青色申告の中小事業者には、40万円未満の特例もあります(租税特別措置法28条の2)。一定の要件のもとで、使い始めた年に全額を経費にできます。
40万円未満は令和8年4月1日以後の取得分で、それより前は30万円未満です(No.2100)。上限は年300万円で、開業・廃業の年は月割りです。明細書の添付が要件で、消費税を含めるかは経理の方式によります。
車の代金は、何年かに分けて経費にするのが原則です。
年末に区切りがあるもの全体は、個人事業主が年末にやることの記事にまとめています。
その年の経費は「事業に使い始めた月」からの月割りです
年の途中で使い始めた車は、1年分の償却費を12で割り、月数を掛けます(所得税法施行令132条1項)。
月数は、事業に使い始めた日から12月31日までで数えます。
前項各号の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。
(所得税法施行令132条2項)
12月20日に使い始めても、12月は1か月と数えます。基準は契約や支払の日ではなく、使い始めた日です。
計算例
例:取得価額300万円の乗用車(耐用年数6年・定額法)の令和8年分の償却費
1年分の償却費 3,000,000円 × 0.167 = 501,000円 7月に使い始めた場合 501,000円 ÷ 12 × 6か月 = 250,500円 12月に使い始めた場合 501,000円 ÷ 12 × 1か月 = 41,750円 令和9年1月に使い始めた場合 令和8年分は 0円金額は一定の前提を置いた目安で、私用分の按分は含めていません。
年内に契約しても、納車が1月なら令和8年分の償却費は0円です。

私用にも使う車は、事業に使った部分だけが経費です
家事上の経費と、これに関連する経費は、原則として経費になりません(所得税法45条1項1号)。
例外は、事業に必要な部分を明らかに区分できる場合です(所得税法施行令96条)。
この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。
(国税庁タックスアンサー No.2210)
ポイント
通達は、必要な部分が50%を超えるかで「主たる部分」を判定します(所得税基本通達45-2)。ただし、50%以下でも明らかに区分できれば、経費に入れて差し支えないとしています。
割合は、資産の利用状況などを総合して判定します(同45-1)。日付・行き先・用件・走行距離の記録は、割合を説明する材料になります。
上の例で事業に60%使うなら、12月分41,750円のうち25,050円が経費です。ガソリン代や保険料も、同じ考え方で分けます。
私用にも使う車は、事業に必要な部分を区分できる分だけが経費です。
割合で分ける考え方は、自宅兼事務所の家事按分の記事でも解説しています。

中古車は耐用年数が短くなる場合がありますが、月割りは同じです
中古車は、使える年数を見積もって耐用年数にできます(耐用年数省令3条1項1号)。
見積もりが難しいときは、簡便法(決まった算式で求める方法)が使えます(同項2号)。
- 耐用年数を全部過ぎた車:法定耐用年数 × 20%
- 一部を過ぎた車:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
1年未満は切り捨て、2年に満たないときは2年です(同条1項2号・5項)。
事業に使うための改良費(資本的支出)が取得価額の50%を超える車は、簡便法を使えません(同条1項)。
計算例
例:4年たった中古の乗用車(法定耐用年数6年)を150万円で買い、12月に使い始めた場合(定額法)
耐用年数 (6年 − 4年)+ 4年 × 20% = 2.8年 → 2年 1年分の償却費 1,500,000円 × 0.500 = 750,000円 令和8年分 750,000円 ÷ 12 × 1か月 = 62,500円 令和9年分 750,000円/令和10年分 687,499円(1円を残す)金額は一定の前提を置いた目安で、私用分の按分は含めていません。
定額法で2年で償却する中古車でも、12月に使い始めると、経費になる年は3つに分かれます。
私用で乗っていた車を事業に使い始めるときは、計算が別です(No.2108・No.2109)。
「12月に買えば全額経費」と考えると、次の誤りにつながります
- 車の代金を全額その年の経費にした ― 少額の特例が使えない車は、償却費だけが経費です。申告を直す必要が出ます。
- 12月に契約し、納車は1月だった ― 使い始めたのが1月なら、令和8年分の償却費は0円です。
- 私用分も経費にした ― 経費は、事業に必要な部分を区分できる分だけです(所得税法施行令96条)。
- 届出をしないまま定率法で計算した ― 個人は、届け出なければ定額法です(所得税法施行令125条)。
- ローンの返済額をそのまま経費にした ― 車の代金は償却費として経費にします。利息は、業務のための借入金の分が経費です(No.2210)。
注意
申告を直すと、追加で税金を納めることになる場合があります。償却費の誤りは、翌年以後の計算にも響きます。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
車を買う前に、ご自身で確かめられるのは次の4つです。
- 車検証や販売店の資料で、車の種類・総排気量・使われてきた年数を確かめる
- 納車の日と、事業で使い始める日を販売店と確かめる
- 事業と私用の使い方を書き出し、走行の記録をつけ始める
- 見積書・注文書と、支払の方法(一括・ローン)の書類を残す
耐用年数の見積り、事業に使う割合、少額の特例が使えるかは個別判断です。

税理士に頼むと変わるのは、償却費の計算と割合の根拠です
小松公認会計士・税理士事務所では、車を買う前後に次の作業を行います。
- 車の種類や経過年数からの耐用年数の判定と、償却方法の確認
- 使い始める月ごとの償却費と、令和8年分の所得の見込みの試算
- 事業に使う割合の決め方と、走行の記録など根拠の残し方のご案内
- 減価償却費の計算と、少額の特例を使うときの明細書の作成
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よくある質問(FAQ)
Q1. 12月に車を買えば、代金の全額をその年の経費にできますか?
少額の特例が使える場合を除き、できません。車は減価償却資産で、耐用年数に分けて経費にします。年の途中で使い始めた年は、1年分の償却費を12で割り、月数を掛けます(所得税法施行令132条)。12月に使い始めた車は1か月分です。
Q2. 12月に契約して代金も払い、納車は1月です。令和8年分の経費になりますか?
償却費は、事業に使い始めた日を基準に計算します(所得税法施行令132条)。納車が令和9年1月で、そこから使い始めるなら、令和8年分の償却費は0円で、令和9年分から計上します。契約の日や代金を払った日では決まりません。
Q3. 私用にも使う車は、どこまで経費になりますか?
事業に必要な部分を明らかに区分できる分だけです(所得税法施行令96条)。必要な部分が50%以下でも、明らかに区分できれば対象です(所得税基本通達45-2)。日付・行き先・用件・走行距離の記録は、割合を説明する材料になります。
Q4. 中古車を買うと、新車より早く経費にできますか?
耐用年数を短くできる場合があります。見積りが難しいときは簡便法が使え、4年たった乗用車なら2年です(耐用年数省令3条)。事業に使うための改良費が取得価額の50%を超える車は使えません。12月に使い始めれば、その年は1か月分で、残りは翌年以後の経費です。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法2条1項19号・45条1項1号・49条1項、所得税法施行令6条6号・96条・120条の2第1項・123条2項・125条1項・132条1項・2項・138条1項、租税特別措置法28条の2、減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項・5項・別表第一・別表第八、所得税基本通達45-1・45-2、タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」・No.2106「定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」・No.2108「中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」・No.2109「新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」・No.2210「必要経費の知識」・No.5404「中古資産の耐用年数」、弊所の料金表の内容を扱っています。定率法による計算、償却方法の届出と変更承認申請の期限、取得価額に含める費用(登録の費用・税金・保険料・リサイクル料金など)、消費税の経理方式と仕入税額控除・インボイス、一括償却資産、少額減価償却資産の特例の中小事業者の要件の細目、中古車の経過年数の数え方と耐用年数を後から見直せるかどうか、資本的支出に当たる支出の範囲、私用で使っていた車を事業に転用するときの計算、運送事業用・報道通信用などの車の耐用年数、リース契約、車を売るときや下取りの扱い、自動車税・保険料・燃料費などの維持費の個別の扱い、事業所得と不動産所得の両方がある場合の振り分け、法人の車、住民税・個人事業税への影響は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の償却費は取得価額・耐用年数・使い始めた日・事業に使う割合によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(96条・125条・132条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- e-Gov法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(3条・別表第一・別表第八)https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015
- 国税庁 タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
- 国税庁 所得税基本通達〔家事関連費(第1号関係)〕(45-1・45-2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/07/01.htm
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12月に事業用の車を買っても、代金の全額がその年の経費になるとは限りません。少額の特例が使える場合を除き、経費になるのは使い始めた月からの月割りの償却費です。私用にも使う車は、事業に必要な部分を区分できる分だけが経費です。代表税理士が、耐用年数と償却方法を確かめ、事業に使う割合の根拠の残し方をご案内します。償却費と所得の見込みの試算から、確定申告書の作成と提出まで担当します。全国どこからでもオンラインで完結します。契約や納車の日を決める前にご相談ください。
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