この記事のポイント
- 事業の赤字を繰り越すには、原則として赤字の年の青色申告が必要です
- 赤字の年に申告し、その後も連続して申告します。期間は原則3年です
- 白色の年の事業の赤字で繰り越せるのは、変動所得と災害の損失に限られます
- 青色の赤字の年分は、期限後も出せる場合があります。翌年分より先に出します
まず結論:赤字を繰り越す条件は、青色申告と切れ目のない申告です
事業が赤字で納める税金がなければ、所得税の確定申告の義務がない場合があります(No.2020)。
ただし、申告しないままでは、その赤字を翌年以後の黒字から差し引けません。
事業の赤字を繰り越すには、原則として赤字の年が青色申告であることが必要です(所得税法70条1項)。
さらに、赤字の年の申告と、その後の連続した申告が条件です(同条4項)。
税金が出ない年でも、申告するかどうかで翌年以後の税額が変わります。
会社の赤字は、法人の欠損金の記事をご覧ください。

繰り越せるのは、他の所得と相殺しても残った赤字です
繰越しの対象は、他の所得と相殺して残る赤字です。
事業所得の赤字は、給与など他の所得から差し引きます(所得税法69条1項)。これを損益通算といいます。
それでも残った赤字を、純損失といいます(同法2条1項25号)。
雑所得の赤字は、他の所得から差し引けません(No.2250)。純損失にもなりません。
副業が事業所得か雑所得かは、副業の開業届の記事で解説しています。
ポイント
事業所得だけで赤字の年は、青色申告特別控除の限度額が0円です(No.2072)。控除で赤字は増えません。
繰り越すための条件は3つです
事業の赤字を繰り越す条件は、原則として次の3つです。
| 条件 | すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 赤字の年が青色申告 | その年分を青色申告書で出す | 所得税法70条1項 |
| 赤字の年の申告 | 第四表(損失申告用の用紙)を添えて申告する | 同条4項・No.2020 |
| その後の連続した申告 | 控除を受ける年まで、毎年の確定申告書を出す | 同条4項 |
繰り越せる期間は、原則として翌年以後3年間です(No.2070)。
令和8年分の赤字なら、令和9年分から令和11年分までです。
青色申告が必要なのは赤字の年で、控除を受ける年は確定申告書の提出が条件です。

白色申告の年の赤字は、繰り越せるものが限られます
赤字の年が白色申告だと、繰り越せる事業の赤字は次の2つに限られます(所得税法70条2項)。
- 変動所得の損失 ― 原稿料・作曲料・著作権の使用料、漁獲、養殖などの損失です(同法施行令7条の2)。
- 被災事業用資産の損失 ― 商品・店舗・機械などの災害による損失です。
それ以外の赤字は、その年に引ききれなければ翌年以後に使えません。
翌年から青色申告にしても、この扱いは変わりません。
青色申告にするには、承認の申請書を期限までに出します(所得税法143条・144条)。
- 原則:青色申告にする年の3月15日まで
- その年1月16日以後に開業:開業日から2か月以内
令和8年分に間に合わない方は、令和9年3月15日までの申請で令和9年分から青色申告にできます。
届出の全体は、開業の届出書の記事にまとめています。
注意
遅れた申請書は、却下の通知がなくても承認があったとはみなされません(平成20年9月16日裁決)。e-Taxの受信通知や控えで提出日を確かめてください。
間違えると、繰り越せたはずの赤字を使えなくなります
条件から外れると、翌年以後に赤字を使えません。主な形は次のとおりです。
- 赤字なので申告しなかった ― 条件を満たさず、翌年以後の黒字から引けません(所得税法70条4項)。
- 翌年は所得が少ない、会社員に戻ったなどで申告しなかった ― 次の年以後に控除できなくなります(同項)。
- 翌年の申告で繰越しを書き忘れた ― 引ける赤字を引かず、税金を多く納めます。更正の請求(納めすぎを直す手続き)は、原則として法定申告期限から5年以内です(No.2026)。
- 帳簿が定めに従っていなかった ― 青色の承認が取り消されることがあります(所得税法150条1項)。取り消された年分以後の申告書は、青色申告書として扱われません。
赤字が残っている間は、所得が少ない年も確定申告書を出すことが大切です。
期限を過ぎたら、赤字の年分を翌年分より先に出します
赤字の年の申告を忘れても、青色申告の承認があれば繰越しの道は残っています。
税務署の決定(税額などを決める処分)があるまでは、期限後でも出せます(国税通則法18条1項)。
申告期限から原則5年を過ぎた年分は出せないとする判決があります(東京高裁平成30年8月1日判決)。
繰越しの条件の「確定申告書」には、期限後申告書も含まれます(所得税法2条1項37号)。
期限内の提出の要件は、平成23年12月の改正でなくなりました(国税庁のあらまし)。
ただし、赤字の年分や抜けた年分は、翌年分より先に出すことが大切です。
株式の譲渡損失の繰越しでは、順番が逆で認められなかった裁決があります(平成28年3月7日裁決)。
純損失の事案ではありませんが、所得税法70条4項も「その後において連続して」と同じ言い回しです。
注意
繰戻し還付は、赤字を前年分に戻して還付を受ける方法です。原則として期限内の青色申告書が条件です(所得税法140条4項)。個人事業税の繰越しも、赤字の年の期限内の申告が原則です(地方税法72条の49の12第6項)。

繰り越した赤字は、使う年を選べません
繰り越した赤字は、翌年以後の所得から順に差し引かれます。
使う年や金額を選べるという主張は、退けられています(昭和55年6月12日裁決)。
差し引くのは、基礎控除などの所得控除より先です(所得税法22条2項・87条2項)。
計算例
例:令和8年分の純損失200万円を、青色申告で繰り越す場合
令和9年分 所得50万円 − 赤字50万円 = 0円(残りの赤字150万円) 令和10年分 所得400万円 − 赤字150万円 = 250万円 令和10年分の所得税 (250万円 − 所得控除100万円)× 5% = 75,000円 繰り越せない場合の所得税 (400万円 − 所得控除100万円)× 10% − 97,500円 = 202,500円 令和10年分の差額 202,500円 − 75,000円 = 127,500円所得は事業所得だけで、所得控除の合計を毎年100万円と仮定しました。復興特別所得税などと住民税は含めていません。
金額は一定の前提を置いた目安です(税率はNo.2260の速算表)。
令和9年分は繰り越さなくても税額0円の年ですが、赤字50万円は使われます。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
赤字の年にご自身で確かめられるのは、次の4つです。
- 青色申告承認申請書の控えや受信通知で、提出日と開業日を確かめる
- 帳簿から1年分の売上と経費を集計し、赤字の額を出す
- 青色申告決算書と第四表を添えて、原則として翌年3月15日までに申告する
- 第四表の写しやデータを保管し、翌年以後も申告する予定を立てる
控えには令和7年1月から日付印がなく、申告書の控用も令和8年9月になくなりました(国税庁の案内)。
次の3つは、金額の前提で結果が変わる個別判断です。
- 副業や兼業の収入が、事業所得に当たるか
- 開業費(開業準備の費用)を赤字の年に経費にするか、後の年に回すか(所得税法施行令137条3項)
- 前年分も青色申告の方が、繰越しと繰戻し還付のどちらを選ぶか
繰戻し還付は、前年分の青色申告書がなければ使えません(所得税法140条4項)。還付請求書は申告書と同時に出します。
税理士に頼むと変わるのは、条件の確認と赤字の額の確定です
申告した赤字の額が、翌年以後に差し引く額の土台になります。
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
- 開業日や届出の状況をうかがい、必要な資料を一覧でご案内
- 青色申告の承認と帳簿の確認
- 領収書・通帳からの記帳代行(別料金・ご希望の方)
- 青色申告決算書と、第四表を含む確定申告書の作成と電子申告
料金の目安
基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額が料金です。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。
通常料金での計算例:売上300万円までの事業所得と、その他控除セットがある場合です。32,000円+39,000円+6,000円=77,000円(税込84,700円)です。消費税の申告がない場合の、一定の前提を置いた目安です。
ご自身の料金は60秒見積りで確かめられます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 赤字でも確定申告は必要ですか?
納める税金がなければ、申告の義務がない場合があります(No.2020)。ただし赤字を繰り越すには、原則として赤字の年が青色申告で、赤字の年とその後の年の確定申告書を連続して出す必要があります(所得税法70条)。住民税の申告が必要な場合もあります。
Q2. 白色申告の赤字は、翌年に繰り越せますか?
事業の赤字で繰り越せるのは、変動所得の損失と被災事業用資産の損失に限られます(所得税法70条2項)。それ以外の赤字は、その年の他の所得から引ききれなければ繰り越せません。翌年から青色申告にしても、この扱いは変わりません。
Q3. 赤字の年の申告を期限までに出せませんでした。もう繰り越せませんか?
青色申告の承認があれば、決定があるまで期限後の申告書を出せます(国税通則法18条1項)。申告期限から原則5年を過ぎた年分は出せないとする判決があります。繰越しの「確定申告書」には期限後申告書も含まれます(所得税法2条1項37号)。翌年分より先に出すことが大切です。繰戻し還付は原則として使えません。
Q4. 廃業して会社員に戻りました。残った赤字はどうなりますか?
青色の赤字なら、繰越しの期間内は給与所得を含む総所得金額などから差し引けます(所得税法22条2項・70条1項)。ただし年末調整で終えず、赤字の年から控除を受ける年まで連続して確定申告書を出すことが条件です(同条4項)。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法2条1項25号・37号、22条2項、69条1項、70条1項・2項・4項、70条の2、87条2項、123条1項、140条1項・4項、142条1項、143条、144条、147条、150条1項、所得税法施行令7条の2・137条3項、国税通則法18条1項・23条1項、地方税法72条の49の12第6項・317条の2第1項、タックスアンサーNo.2020「確定申告」・No.2026「確定申告を間違えたとき」・No.2070「青色申告制度」・No.2072「青色申告特別控除」・No.2250「損益通算」・No.2260「所得税の税率」、国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き 損失申告用」・「平成23年12月の所得税の改正のあらまし」・「国税システムの更改について」・「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」、国税不服審判所の昭和55年6月12日・平成20年9月16日・平成28年3月7日の各裁決、東京高裁平成30年3月8日判決・同年8月1日判決、弊所の料金表の内容を扱っています。平成28年3月7日裁決は上場株式等の譲渡損失の繰越控除の事案で、純損失の事案ではありません。純損失について提出の順番を直接判断した公表裁決は、確認できていません。同じ文言の先物取引の損失では、東京高裁平成30年3月8日判決も提出の順番を重視しています。東京高裁平成30年8月1日判決も先物取引の損失の事案で、純損失の事案ではありません。公表裁決のうち平成23年4月27日裁決は、期限内の提出を要件としていた改正前の規定による事案です。複数の年の赤字を差し引く順序、雑損失の繰越控除、居住用財産や株式等の譲渡損失・先物取引の損失の繰越し、特定非常災害の特例の要件と手続き、変動所得の計算、被災事業用資産の損失の範囲、繰戻し還付の計算と手続きの細目、事業を廃止した年の繰戻し、損益通算の順序、分離課税の所得と純損失の関係、確定申告をする必要がある方の判定の細目、第四表の記入方法、途切れた申告を後から出した場合の個別の扱い、開業費の範囲と計算、事業所得と雑所得の区分の基準、青色申告特別控除の額と要件(令和9年分以後の見直しを含む)、青色申告の承認の取消しの細目、死亡や相続があった場合の扱い、無申告加算税と延滞税、住民税と個人事業税の計算の細目、法人成りの扱い、消費税の申告、国民健康保険料などへの影響は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は所得や控除の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(2条・69条・70条・140条・144条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き 損失申告用」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/003.pdf
- 国税庁 タックスアンサー No.2070「青色申告制度」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
- 国税庁「平成23年12月の所得税の改正のあらまし」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/h23_12_aramashi.pdf
- 国税不服審判所 公表裁決事例「平成28年3月7日裁決」https://www.kfs.go.jp/service/JP/102/08/index.html
赤字の年の申告で、繰越しの条件を確かめませんか
事業の赤字を翌年以後に繰り越すには、原則として赤字の年が青色申告で、赤字の年とその後の年の確定申告書を連続して出すことが必要です。白色の年の事業の赤字で繰り越せるのは、変動所得の損失と被災事業用資産の損失に限られます。弊所が、青色申告の承認と帳簿を確かめ、青色申告決算書と第四表を含む確定申告書を作成して電子申告します。記帳から任せたい方もご依頼いただけます。全国どこからでもオンラインで完結します。赤字のまま申告せずに終える前に、ご相談ください。
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