事業所得

個人事業主が年末に前払いした家賃・保険料は経費?
認められる条件と注意点

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 年末に払った翌年分の家賃・保険料は、原則としてその年の経費になりません
  • 支払日から1年以内の分を毎年続けて払った年の経費にしている場合は認められます
  • 自宅兼事務所の家賃は、生活の部分を前払いしても経費になりません
  • 誤って経費にしたら修正申告で直し、延滞税や過少申告加算税がかかる場合があります

まず結論:年末に払った翌年分の家賃・保険料は、原則として翌年の経費です

所得税は、1月1日から12月31日までの所得で計算します(タックスアンサーNo.2020)。

減価償却費などを除き、経費はその年に債務(支払う義務)が確定した分です(所得税法37条1項)。

年末に翌年分の家賃や保険料を払っても、原則はその年の経費になりません(所得税基本通達37-30の2)。

ただし、支払日から1年以内の分を、毎年続けて払った年の経費にしている場合は認められます(同)。

「年末にまとめて払えば、その年の経費が増える」とは限りません。

年末に払った翌年分の家賃・保険料は、原則として翌年の経費です
年末に払った翌年分の家賃・保険料は、原則として翌年の経費です

原則:経費になるのは、その年にサービスを受けた分です

家賃や保険料は原則として、その年にサービス(役務)を受けた分がその年の経費です。

通達は、前払費用(先に払ったサービスの代金)を次のように定めています。

一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうちその年12月31日においてまだ提供を受けていない役務に対応するもの

(所得税基本通達37-30の2)

この前払費用の額は、原則としてその年の経費になりません(同)。

経費の年を決める通達は、12月31日までに3つの要件を求めます(所得税基本通達37-2)。

債務の成立、給付の原因となる事実の発生、金額を合理的に計算できることです。

翌年に受けるサービスの代金は、12月31日にはまだ受けていないため、原則として翌年の経費です。

年末の支払い原則継続して払った年の経費にしている場合
翌年1月分の事務所の家賃翌年の経費払った年の経費にできる
1年分の事業用の保険料年末までに過ぎた期間の分だけ、その年の経費支払日から1年以内の分なら、払った年の経費にできる
事務用品のまとめ買い使った年の経費毎年おおむね一定量を買ってふだん使うものは、買った年の経費にできる

消耗品のまとめ買いは前払費用ではなく、別の通達で扱います(所得税基本通達37-30の3)。

例外:1年以内の前払いを毎年続けるなら、払った年の経費にできます

通達は、原則の後に、払った年の経費にできる例外を定めています。

その者が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する年分の必要経費に算入しているときは、これを認める。

(所得税基本通達37-30の2)

  • 契約に基づいて続けて受けるサービスの代金を、実際に払っていること
  • 支払った日から1年以内に受けるサービスの分であること
  • 毎年続けて、払った年の経費にしていること

ポイント

1年は、1月1日からではなく支払った日から数えます。12月25日に払ったなら、そこから1年以内に受ける分かを見ます。

計算例

例:令和8年10月1日に、令和9年9月30日までの1年分の店舗の保険料120,000円を払った場合

原則 令和8年分の経費 120,000円 × 3か月 ÷ 12か月 = 30,000円 原則 令和9年分の経費 120,000円 × 9か月 ÷ 12か月 = 90,000円 例外(毎年続けている場合) 令和8年分の経費 120,000円

保険期間が1年で、満期返戻金のない事業用の保険の前提です。月割りで計算しています。

金額は一定の前提を置いた目安です。

例外は経費にする年を早める扱いで、経費の総額が増えるわけではありません。

年払いの保険料も、原則は年末までに過ぎた期間の分がその年の経費です
年払いの保険料も、原則は年末までに過ぎた期間の分がその年の経費です

年末に家賃を前払いする前に、3つの点を確かめます

家賃の前払いは、次の3つを払う前に確かめます。

  • 契約に基づく払い方か ― 通達は「一定の契約に基づき」と定めています。契約で月ごとに払うと決まっている家賃をまとめて払うときは、契約の内容と払い方を確かめます。
  • 1年を超える分を含まないか ― 12月15日に、翌年1月から12月分を払ったとします。翌年12月後半の分は、支払日から1年を過ぎてから受けます。この払い方は、扱いを個別に確かめます。
  • 毎年続けられるか ― 条件は、継続して払った年の経費にしていることです。その年だけの前払いは、この条件を満たすとはいえません。

自宅兼事務所の家賃は、仕事の分だけが経費の対象です

自宅の一部を事務所にしている場合は、前払いの扱いの前に、仕事の分を分けます。

生活と仕事が混ざった費用(家事関連費)は、原則として経費になりません(所得税法45条1項1号)。

経費になるのは、主な部分が仕事に必要で、その部分を明らかに区分できる場合です。そのときの仕事の部分が対象です(所得税法施行令96条1号)。また、仕事の割合が半分以下でも、明らかに区分できる部分は経費にできます(所得税基本通達45-2)。

青色申告の方は、取引の記録などで仕事に直接必要だったと明らかにできる部分も対象です(同条2号)。

生活の部分の家賃は、前払いしても経費になりません。

補足

生計を一にする(同じ家計で暮らす)配偶者や親族に払う家賃は、経費になりません。受け取った側も所得としては扱いません(No.2210)。

仕事の分の割合の決め方は、家事按分の記事で解説しています。

自宅兼事務所の家賃は、仕事の分を区分できる部分が対象です
自宅兼事務所の家賃は、仕事の分を区分できる部分が対象です

誤って経費にすると、修正申告と翌年の帳簿の直しが要ります

前払いの経費を入れすぎると、その年の税金が少なすぎることになります。誤りの例は次の4つです。

  • 条件を確かめずに、翌年分を全額経費にした ― 条件に合わなければ、翌年分は払った年の経費から外れます。
  • 前払いした1月分を、翌年の帳簿でも入れた ― 同じ月の家賃を、2つの年で二重に経費にしています。
  • 自宅の家賃を全額前払いして経費にした ― 生活の部分は経費になりません(所得税法45条1項1号)。
  • 同じ家計の親に払う家賃を前払いした ― もともと経費になりません(No.2210)。

税金が少なすぎたときは、修正申告で直します(タックスアンサーNo.2026)。

注意

調査の事前通知の前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税(申告の不足に加わる税金)はかかりません。事前通知の後は新たに納める税金の5%、調査を受けた後や更正では10%です。その税金が、当初の申告納税額と50万円の多いほうを超えるときもあります。超える部分は、それぞれ10%・15%です(No.2026)。

どの場合も、納付の日までの延滞税をあわせて納めます(同)。

経費から外した前払いの分は、本来の年の経費として扱い直します。

法人の場合の扱いは、法人の短期前払費用の記事にまとめています。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

年末に払う前に、ご自身で確かめられるのは次の5つです。

  1. 12月に払う予定の家賃・保険料などを書き出す
  2. 契約書で、支払いの時期と対象の期間を確かめる
  3. 支払日から1年以内に受けるサービスの分かを、日付で確かめる
  4. 前の年までの帳簿で、前払いをどう扱ってきたかを確かめる
  5. 自宅兼事務所なら、仕事で使う部分の割合と根拠をそろえる

契約どおりの払い方か、1年を超える分の扱い、自宅分の分け方は個別判断です。

前払いを始めるかは、毎年続けられる資金と、令和8年分と翌年の所得の見込みを並べて決めます。

年末に確かめることの全体は、個人事業主が年末にやることの記事で一覧にしています。

前払いで経費にする年を早めても、経費の総額は変わりません
前払いで経費にする年を早めても、経費の総額は変わりません

税理士に頼むと変わるのは、払う前の判定と帳簿の締め方です

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

  • 年末に払う家賃・保険料などの契約書を見て、前払いの扱いを判定
  • 前払いをする場合としない場合の、令和8年分と翌年の所得の見込みの比較
  • 前の年までの帳簿との継続の確認と、翌年の帳簿での二重計上の防止
  • 自宅兼事務所の家賃の、仕事で使う割合と根拠の整理
  • 青色申告決算書か収支内訳書と、確定申告書の作成と期限内の電子申告

全国どこからでも、オンラインで完結します。

料金の目安

基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額が料金です。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。

事業所得の単価は、事業の売上の規模に応じて決まります。

ご自身の料金は60秒見積りで確かめられます。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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あわせて読みたい

よくある質問(FAQ)

Q1. 12月に翌年1月分の事務所の家賃を払いました。令和8年分の経費になりますか?

原則は、事務所を使う令和9年分の経費です(所得税基本通達37-30の2)。支払日から1年以内の分を毎年続けて払った年の経費にしている場合は、令和8年分にできます。契約に基づく払い方かも、あわせて確かめます。

Q2. 事業用の保険料を1年分まとめて払いました。全額をその年の経費にできますか?

原則は、年末までに過ぎた期間の分がその年の経費で、残りは翌年の経費です。支払日から1年以内の分を毎年続けて払った年の経費にしている場合は、全額をその年の経費にできます。満期返戻金のある長期の保険は、扱いが異なります。

Q3. 自宅兼事務所の家賃を前払いしたら、全額を経費にできますか?

経費になるのは、主な部分が仕事に必要で、その部分を明らかに区分できる場合のその部分です。仕事の割合が半分以下でも、明らかに区分できる部分は対象です(所得税基本通達45-2)。青色申告の方は、記録で仕事に直接必要と明らかにできる部分も対象です(所得税法施行令96条)。生活の部分は、前払いしても経費になりません。

Q4. 前払いを誤って経費にしたことに、申告の後で気づきました。どうすればよいですか?

申告期限の後に気づき、税金が少なすぎた場合は、修正申告で直します(No.2026)。調査の事前通知の前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません。延滞税はあわせて納めます。経費から外した分は、本来の年の経費として扱い直します。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法37条1項・45条1項1号、所得税法施行令96条、所得税基本通達37-2・37-30の2・37-30の3・45-2、タックスアンサーNo.2020「確定申告」・No.2026「確定申告を間違えたとき」・No.2210「必要経費の知識」、弊所の料金表の内容を扱っています。契約で月ごとに払うと定めた家賃をまとめて払う場合の判定、支払日から1年を超える期間の分を含む前払いの判定、継続をやめた場合の扱い、保険期間が3年以上で満期返戻金のある長期の損害保険契約(所得税基本通達36・37共-18の2)と何年分もまとめて払う保険料、生命保険料・国民年金保険料などの所得控除、法人の短期前払費用、青色申告者の現金主義の特例、不動産所得に固有の扱い、消費税の課税仕入れの時期とインボイス、帳簿の不提示などによる過少申告加算税の加算と延滞税の計算、更正の請求の手続は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の経費の額は契約の内容や支払いの時期によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

年末に前払いする前に、経費にできるかを確かめませんか

翌年分の家賃や保険料を年末に払っても、原則は翌年の経費です。支払日から1年以内の分を毎年続けて払った年の経費にしている場合は、払った年の経費にできます。自宅兼事務所の家賃は、生活の部分を前払いしても経費になりません。代表税理士が、契約書を見て前払いの扱いを判定し、所得の見込みを比べます。帳簿の締めから、確定申告書の作成と期限内の提出まで担当します。全国どこからでもオンラインで完結します。12月に払う前の段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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