この記事のポイント
- 指摘を受けた期は修正申告か更正で直し、加算税と延滞税の対象になります
- 申告済みの翌期は、法定申告期限から5年以内なら更正の請求で減額を求められます
- 指針は、翌期に計上済みの繰延べを通謀・改ざん等がない限り虚偽記載等に当たらないとします
- 完了前の請求書で経費を意図的に前倒しした処理を、仮装と認定した裁決があります
まず結論:期ズレの指摘は、当期の増額と翌期の減額をセットで直します
期ズレとは、売上や経費を本来と別の期に計上する誤りです。
法人税の売上は、原則として引渡しや役務の提供の日の期に計上します(法人税法22条の2第1項)。
経費(償却費を除く)は、期末までに債務が確定した分を差し引きます(同法22条3項2号)。
調査で期ズレを指摘されると、本来の期(当期)の税額が増えます。
ずれ込んだ先の翌期は、その分だけ税額が多すぎる状態です。
当期だけ直して翌期を放置すると、同じ利益に二重に税金がかかったままです。

当期は修正申告か更正で直し、加算税と延滞税がかかります
当期は、修正申告(税額を増やす申告のやり直し)で直します(国税通則法19条1項)。
出さなければ、税務署長が調査により更正(税額を直す処分)をします(同法24条)。
過少申告加算税(申告の不足にかかる上乗せの税金)は、増えた税額の10%です(同法65条1項)。
調査の通知の後でも、更正を予知する前に出した修正申告は5%です(同項)。
臨場調査や誤りの指摘などで調査を知った後は、原則として予知の後と扱われます(過少申告加算税の指針)。
調査の通知の前に自主的に出した修正申告には、過少申告加算税はかかりません(同条6項)。
増えた税額が、期限内申告税額と50万円の多い方を超える部分は、5%が加わります(同条2項)。
延滞税(利息にあたる税金)は、法定納期限の翌日から納付日までの日数分かかります(同法60条2項)。
修正申告の納期限は、修正申告書を出した日です(同法35条2項1号)。令和8年中の割合は、納期限までと、その翌日から2か月を経過する日までは年2.8%です。その後は年9.1%です(タックスアンサーNo.9205)。
期限内申告なら、延滞税の期間の特例があります(同法61条1項1号)。法定申告期限から1年を過ぎた後、修正申告書を出すまでの期間が除かれます。偽りその他不正の行為で税を免れ、更正を予知して出した修正申告は除きます。
計算例
例:期ズレで当期の法人税が600,000円増える場合(期限内申告税額2,000,000円)
調査で指摘を受けた後の修正申告 600,000円 × 10% = 60,000円 調査の通知の後・更正の予知の前 600,000円 × 5% = 30,000円 調査の通知の前に自主的に修正 過少申告加算税 0円 重加算税になった場合 600,000円 × 35% = 210,000円 延滞税(150日・すべて令和8年中・提出日に納付) 600,000円 × 2.8% × 150日 ÷ 365日 ≒ 6,900円増えた税額が2,000,000円以下のため、5%の加算はありません。金額は一定の前提を置いた目安です(延滞税は100円未満を切捨て)。
補足
令和6年1月1日以後に法定申告期限が来る国税には、帳簿に関する加重もあります(同法65条4項)。帳簿を遅滞なく見せない場合や、売上げの記載が不十分な場合に、10%か5%が加わります。災害などやむを得ない事情がある場合は除かれます。
期ズレの売上は、遅滞なく見せた翌期帳簿の記載を当期の記載と扱ってよいとされます(同じ指針)。
翌期は、申告済みなら更正の請求で減額を求めます
申告済みの翌期は、更正の請求(税額を減らすよう求める手続)をします(国税通則法23条1項1号)。
更正の請求ができるのは、翌期の法定申告期限から5年以内です(同項)。
翌期の申告がまだなら、その売上を翌期の所得から除いて申告します。売上が属するのは、引渡しなどの日の期だからです。
経費の前倒しは逆向きです。当期の損金(差し引ける費用)から外れた分は、債務が確定した翌期の損金になります。
地方税・消費税を含む手続は、法人税の修正申告と更正の請求の記事にまとめています。
注意
当期の修正申告だけを出して翌期を忘れると、翌期は多く納めたままです。期限を過ぎると、原則として更正の請求はできなくなります。

重加算税の扱いは、翌期への計上と繰延べのやり方で変わります
重加算税は、事実を隠蔽・仮装して申告書などを出したときの加算税です(国税通則法68条1項)。
過少申告加算税に代えて、35%が課されます。更正を予知する前に出した修正申告は対象外です(同項)。
国税庁の事務運営指針(税務署の取扱いの基準)には、次の定めがあります。
次に掲げる場合で、当該行為が相手方との通謀又は証ひょう書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんによるもの等でないときは、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない。
(事務運営指針「法人税の重加算税の取扱いについて」第1の3)
証ひょう書類は、請求書など取引の証拠になる書類です。「次に掲げる場合」には、次の2つが含まれます。
- 売上げ等の収入の計上を繰り延べ、その収入が翌事業年度の収益に計上されていることが確認されたとき
- 経費(原価に算入される費用を含む)を繰り上げて計上し、翌事業年度に支出されたことが確認されたとき
翌期に計上していても、通謀や証ひょう書類の改ざんなどによる繰延べは、この扱いの外です。
失敗パターン:完了前の請求書で経費を意図的に前倒しし、仮装とされた裁決があります
国税不服審判所(税務署の処分への不服を審査する機関)の公表裁決から、期ズレの例です。
- 平成26年10月28日裁決 ― 期末に未完了の修繕などを、先に出させた請求書で意図的に当期の経費にしました。翌期に払ったという主張は通らず、仮装と認定されました。期末に完了済みの部分は、仮装とされていません。
- 平成17年9月28日裁決 ― 代表者が関与税理士に所得の操作を依頼しました。経費の前倒しと収入の繰延べが行われ、重加算税の賦課が認められました。
- 令和2年3月10日裁決 ― 翌期の修繕費の請求書に、当期の納品日が書かれていた事案です。準備は当期中に行われ、日付が完了日を示す証拠もないとされました。仮装とまではいえず、その部分の重加算税は認められませんでした。
裁決では、請求書の日付と完了の時期に加え、故意に事実をゆがめたかが見られています。
ポイント
昭和48年12月13日裁決は、在庫の土地の計上漏れを過失とし、重加算税を相当でないとしました。税務調査の前に、翌期の売上に計上されていた事案です。
期ズレを生まない締め方は、締め日後の引渡しと期末の請求書の確認です
売上の基準は、原則として請求書の日付ではなく、引渡しや役務の提供の日です。
商品の引渡しの日は、出荷や検収など、継続して使う合理的な日です(法人税基本通達2-1-2)。
基準の選び方は売上の計上時期の記事、工事は工事の売上計上の記事で扱っています。
- 売上の締め日の翌日から期末までに、引き渡した分・検収を受けた分を拾う
- 期末をまたぐ出荷・納品・検収の記録を、日付つきで一覧にする
- 期末の日付の請求書に、工事や役務が完了していないものがないか確かめる
- 翌期の最初の請求と入金に、当期の売上が混じっていないか確かめる

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
指摘を受けたら、ご自身で整理できるのは次の4点です。
- 指摘された取引ごとに、引渡しの日・計上した期・金額を書き出す
- その取引が、翌期の帳簿で売上や経費に計上済みかを確かめる
- 納品書・検収書・請求書の日付と、実際の完了の日を並べる
- 翌期の申告が済んでいるかと、その法定申告期限を確かめる
繰延べの経緯を調査でどう説明するかは、資料を見たうえでの個別判断です。
重加算税や帳簿の加重、正当な理由に当たるかも、事実で判断が分かれます。

税理士が入ると変わるのは、当期と翌期の直し方と説明資料です
小松公認会計士・税理士事務所では、期ズレの指摘を受けたときに次の作業を行います。
ひとつめは、取引ごとに本来の期・計上した期・金額・書類を並べた一覧の作成です。
ふたつめは、当期の修正申告書と、翌期の更正の請求書などの作成です。
みっつめは、加算税と延滞税の試算と、納付の時期の確認です。
よっつめは、翌期の計上と書類の日付の経緯を示す、調査用の説明資料の準備です。
いつつめは、締め日後の売上と期末の請求書を確かめる手順づくりです。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 翌期に売上を計上済みなら、当期の修正申告はしなくてよいですか?
必要です。売上は原則として、引渡しや役務の提供の日の期に計上します(法人税法22条の2第1項)。当期は修正申告などで直し、延滞税がかかります。調査の指摘後なら過少申告加算税も対象です。申告済みの翌期は、更正の請求で減額を求めます(国税通則法23条1項)。
Q2. 期ズレは、重加算税の対象になりますか?
事務運営指針は、売上の繰延べが翌事業年度の収益に計上されていると確認された場合などを挙げています。これらは帳簿書類の虚偽記載等に当たらないとしています。ただし、相手方との通謀や証ひょう書類の破棄・隠匿・改ざんによるもの等は除かれます。
Q3. 翌期の減額は、いつまでに手続すればよいですか?
申告済みの翌期の更正の請求は、翌期の法定申告期限から5年以内に限りできます(国税通則法23条1項)。翌期の申告前なら、その売上を翌期の所得から除いて申告します。経費の前倒しは逆向きで、債務が確定した翌期の損金にします。
Q4. 調査で帳簿を見せないと、加算税が重くなりますか?
令和6年1月1日以後に法定申告期限が来る国税では、帳簿の加重があります(国税通則法65条4項)。帳簿を遅滞なく見せない、売上げの記載が不十分といった場合に、10%か5%が加重されます。災害などやむを得ない事情がある場合は除かれます。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条3項2号・22条の2第1項、国税通則法19条1項・23条1項・24条・35条2項1号・60条2項・61条1項・65条1項・2項・4項・6項・68条1項・118条3項・119条4項、令和4年法律第4号附則20条2項、法人税基本通達2-1-2、国税庁の事務運営指針「法人税の重加算税の取扱いについて」(令和8年6月30日改正)第1の3、同「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて」第1の1・第1の2、タックスアンサーNo.9205「延滞税について」、国税不服審判所の昭和48年12月13日・平成17年9月28日・平成26年10月28日・令和2年3月10日の各裁決の内容を扱っています。重加算税の10%加重(国税通則法68条4項)、無申告加算税と期限後申告、加算税の「正当な理由」の判断基準、欠損金額を直す更正の請求(法人税は10年)、帳簿の加重措置の「特定事項」の範囲などの財務省令の細目、更正・決定の期間制限(偽りその他不正の行為がある場合を含む)、還付加算金、令和7年以前の延滞税の割合による計算、地方法人税の修正申告・更正の請求と加算税・延滞税、法人住民税・法人事業税の手続と延滞金・加算金、消費税の重加算税の取扱いと課税期間の判定、収益の計上時期の「近接する日」の特例、債務確定の判定の細目、工事の収益計上の細目、翌期の申告書の具体的な記載方法、修正申告書・更正請求書の書き方、通算法人の取扱いは扱っていません。紹介した裁決はいずれも当時の規定による事案です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安で、実際の加算税・延滞税は納付日などで変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「国税通則法」(19条・23条・24条・35条・60条・61条・65条・68条)https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- 国税庁 事務運営指針「法人税の重加算税の取扱いについて」https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_02/00.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.9205「延滞税について」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例要旨「隠ぺい、仮装の事実等を認めた事例」https://www.kfs.go.jp/service/MP/01/0605030100.html
- 国税不服審判所 公表裁決事例要旨「隠ぺい、仮装の事実等を認めなかった事例」https://www.kfs.go.jp/service/MP/01/0605030200.html
期ズレを指摘されたら、当期と翌期の直し方を確かめませんか
税務調査で期ズレを指摘されると、当期は修正申告などで税額が増え、加算税と延滞税がかかります。申告済みの翌期は、法定申告期限から5年以内の更正の請求で減額を求めます。国税庁の指針は、翌期に計上済みの繰延べを、一定の場合に帳簿書類の虚偽記載等に当たらないとします。通謀や証ひょう書類の改ざん等によるものは除かれます。代表税理士が、取引ごとの期の整理と、当期・翌期の申告書の作成を行います。加算税・延滞税の試算、調査の説明資料、次の決算の締め方の見直しまで通して対応します。修正申告書を出す前の段階でご相談ください。
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