この記事のポイント
- 請負の売上は、原則として目的物を完成して引き渡した日の期に計上します
- 一部を引き渡すたびに代金を受け取る特約や慣習があれば部分完成基準です
- 工期1年以上・10億円以上などの長期大規模工事は工事進行基準が強制です
- 工事進行基準によらない未完成の工事の原価は未成工事支出金で繰り越します
まず結論:工事の売上は、原則として完成して引き渡した日の期に計上します
建設会社の売上は、法人税では入金の日で決まりません。
法人税法22条の2第1項は、目的物の引渡し又は役務の提供の日の期の益金にすると定めています。
請負も、引渡し等の日の事業年度に計上するのが原則です(法人税基本通達2-1-21の7)。
物の引渡しを要する取引では、目的物の全部を完成して引き渡した日を指します(同通達2-1-21の2)。
請求書を出した日や入金の日ではなく、完成して引き渡した日が基準です。
この記事では、このやり方を「工事完成基準」と呼びます。
この記事では、例外として3つを扱います。部分完成基準、長期大規模工事の工事進行基準、選んで使う工事進行基準です。

「引渡しの日」は工事に合う日を選び、毎期同じ基準で使います
建設工事の引渡しの日は、通達が例を挙げています。
例えば作業を結了した日、相手方の受入場所へ搬入した日、相手方が検収を完了した日、相手方において使用収益ができることとなった日等当該建設工事等の種類及び性質、契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。
(法人税基本通達2-1-21の8)
作業の終了・搬入・検収・使用可能日のうち、工事の性質と契約に合う日を選びます。
選んだ日は、毎期続けて使うことが前提です。
期末の利益を見て基準を変えると、継続して計上している日とはいえなくなります。
売上の計上時期の全体像は、売上の計上時期の記事にまとめています。

一部を引き渡すたびに代金を受け取る約束なら、部分完成基準です
工事の全部が完成していなくても、その期に売上を立てる場合があります。
法人税基本通達2-1-1の4の部分完成基準です。対象は、次の事実がある建設工事等です。
1個の建設工事等であっても、その建設工事等の一部が完成し、その完成した部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合
(法人税基本通達2-1-1の4(2))
1つの契約で同種の工事を多量に請け負った場合も同じです(同(1))。引渡量に応じて代金を受け取る特約や慣習が前提です。
この場合は、その期に引き渡した量や完成部分ごとに売上を計上します。
注意
部分完成基準は「特約又は慣習」がある場合の定めです。完成した部分を引き渡し、その割合で代金を受け取る約束かを、契約書の支払条件で確かめます。工事進行基準を適用する工事は対象外です。
長期大規模工事は工事進行基準が強制、それ以外は選べます
工事進行基準とは、工事の進み具合に応じて、完成前の期にも売上と原価を計上する方法です。
法人税法63条1項は、長期大規模工事にこの方法を義務づけています。要件は次の3つです。
- 着手の日から、契約で定めた引渡しの期日までが1年以上(法人税法63条1項)
- 請負の対価の額が10億円以上(法人税法施行令129条1項)
- 対価の額の2分の1以上を、引渡しの期日から1年を経過する日後に支払う定めがない(同条2項)
判定は契約ごとです。複数の契約でも全体で一つの工事と認められるなら、まとめて判定します(法人税基本通達2-4-3)。
長期大規模工事以外でも、着工した期に引き渡さない工事は工事進行基準を選べます(法人税法63条2項)。
選ぶには、着工した期から、確定した決算で工事進行基準により経理します。
途中の期で一度でもその経理をしないと、翌期以後はこの扱いを受けられません(同項ただし書)。
進み具合は、見積もった工事原価のうち、既にかかった原価の割合などで測ります(施行令129条3項)。
計算例
例:請負金額1億2,000万円の工事で、工事進行基準を選んだ場合
見積もった工事原価 9,600万円/期末までにかかった原価 3,840万円 進み具合 3,840万円 ÷ 9,600万円 = 40% 当期の売上 1億2,000万円 × 40% = 4,800万円 当期の原価 9,600万円 × 40% = 3,840万円 → 利益 960万円 工事完成基準なら当期の売上は0円。3,840万円は翌期以降に繰り越します数字は一定の前提を置いた目安です。どちらの方法が合うかは、会社ごとに異なります。
補足
この定めは、令和7年4月1日施行の改正で法人税法64条から63条に移りました。条文の中身は変わっていません。令和8年度改正でも、63条と施行令129条に変更はありません。

工事完成基準では、引渡し前の原価を「未成工事支出金」で繰り越します
工事完成基準では、売上を計上する期に、その工事の原価を費用にします。
法人税法22条3項1号が、損金を「当該事業年度の収益に係る」完成工事原価などとしているためです。
引渡し前の工事の原価は、棚卸資産の「仕掛品(半成工事を含む。)」に当たります(施行令10条3号)。
法人税基本通達2-2-6にも「未成工事支出金勘定」という言葉が出てきます。
原価には、材料費・労務費・外注費・経費が入ります(同通達2-2-5)。受注や引渡しに直接かかった全ての費用も含みます。
引き渡した工事の原価が期末に確定していなければ、期末の現況で適正に見積もります(同通達2-2-1)。
ポイント
期末に、未完成の工事を一覧にします。工事ごとに、期末までにかかった原価を集計します。売上を立てた工事の原価が残っていないかも確かめます。
棚卸資産の評価方法の決め方は、棚卸資産の評価方法の記事をご覧ください。
否認につながりうる処理を、5つ挙げます
通達や裁決に照らすと、次の処理は期ずれとして否認されることがあります。
- 引き渡した工事を、入金が翌期だからと翌期に計上する。平成11年6月28日裁決は、入金の有無にかかわらず、完了した日の期の収益としました。
- 代金が決まっていないからと、売上を立てない。平成24年3月6日裁決の事案では、期末までに工事が完了し、相手先が使っていました。審判所は、期末の現況で見積もった額を益金としました。現行の通達2-1-1の10も同じ扱いです。
- 引渡しの日の基準を、期ごとに変える。通達2-1-21の8は、継続して計上している日によるとしています。
- 売上を立てた工事の原価を、未成工事支出金に残す。売上と原価の期がずれます。工事完成基準の工事で、未完成分の原価を費用にするのも同じです。
- 長期大規模工事なのに、完成した期にまとめて計上する。63条1項の工事は、工事進行基準が強制です。
2件とも当時の規定による事案ですが、入金や代金の確定を待たずに収益とした点は共通です。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で整えられるのは、次の4点です。
- 工事ごとに、請負金額・着工日・引渡しの日・かかった原価を工事台帳に記録する
- 引渡しの日を何で判断するか(検収書・引渡書など)を決め、毎期同じにする
- 期末に未完成の工事を一覧にし、未成工事支出金の金額を出す
- 請負金額10億円以上・工期1年以上の工事がないかを確かめる
部分完成の特約や慣習に当たるか、どの日を引渡しとするかは、契約ごとの個別判断です。
工事進行基準を選ぶかどうか、進み具合や原価の見積りも、事実に応じて判断が分かれます。

税理士が入ると変わるのは、工事ごとの計上時期の根拠と期末の締めです
小松公認会計士・税理士事務所では、建設業の決算で次の作業を行います。
ひとつめは、契約書・注文書の支払条件の確認です。部分完成基準や長期大規模工事に当たるかを見ます。
ふたつめは、引渡しの日の基準の文書化です。検収書や引渡書と、計上した日を突き合わせます。
みっつめは、期末の未成工事支出金の集計です。工事台帳と、外注費・材料費の請求書を照合します。
よっつめは、工事進行基準を選ぶ場合の試算です。工事完成基準との利益の差を、期ごとに並べます。
いつつめは、決算書と申告書への反映です。期をまたぐ工事の売上と原価の対応を確かめます。
むっつめは、税務調査の想定問答の準備です。引渡しの日の根拠資料を、工事ごとにそろえます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 工事代金を着工前にもらいました。もらった期の売上になりますか?
入金の時期では決まりません。原則として、目的物の全部を完成して引き渡した日の期に計上します。根拠は法人税基本通達2-1-21の7と2-1-21の2です。部分完成の特約や慣習がある工事、工事進行基準を適用する工事は扱いが変わります。
Q2. 工期が1年を超える工事は、すべて工事進行基準ですか?
強制されるのは長期大規模工事です(法人税法63条1項・施行令129条)。工期1年以上・対価10億円以上が要件です。対価の半分以上を引渡し期日の1年経過後に払う契約は除きます。それ以外も、着工した期に引き渡さない工事なら選べます(同法63条2項)。
Q3. 期末に工事は終わりましたが、代金が決まっていません。翌期の売上にしてよいですか?
平成24年3月6日裁決の事案では、期末までに工事が完了し、相手先が使っていました。審判所は、期末の現況で適正に見積もった額を益金に算入すべきとしました。当時の規定による事案ですが、現行の通達2-1-1の10も期末の現況で見積もるとしています。後で確定した額との差は、原則として確定した期の収益で調整します。
Q4. 未成工事支出金とは何ですか?
期末に引き渡していない工事のためにかかった原価です。法人税法施行令10条3号は仕掛品(半成工事を含む)を棚卸資産としています。工事完成基準では、その工事の売上を計上する期に原価として費用にします(法人税法22条3項1号)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条の2第1項・22条3項1号・63条1項・2項、法人税法施行令10条3号・129条1項・2項・3項、法人税基本通達2-1-1の4・2-1-1の10・2-1-21の2・2-1-21の7・2-1-21の8・2-2-1・2-2-5・2-2-6・2-4-3、国税不服審判所の平成11年6月28日裁決・平成24年3月6日裁決の内容を扱っています。紹介した裁決はいずれも平成30年改正前の通達のもとでの事案です。履行義務が一定の期間にわたり充足されるものとして計上する方法(法人税基本通達2-1-21の4・2-1-21の5・2-1-21の7ただし書)、施行令129条4項以下の細目(期末に着手から6か月未満の長期大規模工事などの特例を含む)、工事進行基準による未収入金(施行令130条)、損失が見込まれる工事・外貨建工事・適格合併等の場合の取扱い、進行割合の見積りの方法の細目、棚卸資産の評価方法の選定と届出、消費税の資産の譲渡等の時期、建設業法・経営事項審査上の会計処理、加算税・延滞税と修正申告の手続は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の売上と原価の計上額は契約の内容と工事の事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条の2・22条・63条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(10条・129条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- 国税庁 法人税基本通達 第3款「役務の提供に係る収益」(2-1-21の7・2-1-21の8)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_01_03.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第1款「資産の販売等に係る収益計上に関する通則」(2-1-1の4・2-1-1の10)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_01_01.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例要旨「請負収入」https://www.kfs.go.jp/service/MP/03/0201030000.html
工事の売上を計上する期を、決算の前に確かめませんか
工事の売上は、原則として目的物を完成して引き渡した日の期に計上します。部分完成の特約や慣習がある工事、長期大規模工事、工事進行基準を選んだ工事は扱いが変わります。公表裁決では、入金がないことを理由に売上を計上しない処理が認められませんでした。代金が決まっていないことを理由にした処理も同じです。代表税理士が、契約書の支払条件の確認と、引渡しの日の基準の整理を行います。期末の未成工事支出金の集計、工事進行基準の試算、申告書への反映も担当します。税務調査の想定問答の準備まで、通して対応します。期末を迎える前にご相談ください。
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