この記事のポイント
- 記念品は物で渡し、要件を満たすときだけ課税されません
- 永年勤続はおおむね10年以上・5年以上の間隔が目安です
- 現金・商品券・自由に選べる品は給与として課税されます
- 給与とされると会社の源泉徴収漏れになります
まず結論:記念品は「物で渡し、要件を満たす」ときだけ給与になりません
永年勤続表彰や創業記念で社員に渡す品物は、本来は給与の一種です。
ただし国税庁の通達で、一定の要件を満たせば「課税しなくて差し支えない」とされています。
永年勤続は所得税基本通達36-21、創業記念は同36-22です。
どちらも「現物に代えて支給する金銭は含まない」と明記されています。
つまり、物や招待で渡すことが出発点です。お金で渡した時点で、この取扱いから外れます。

永年勤続表彰は「おおむね10年以上」「おおむね5年以上の間隔」「相当な額」の3点です
永年勤続の表彰では、記念品のほか旅行や観劇への招待も対象です。要件は次の2つです。
(1) 当該利益の額が、当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められること。
(2) 当該表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること。
(所得税基本通達36-21)
「社会通念上相当」とは、世間一般から見て不自然でない、という意味です。
36-21には「〇万円まで」という金額の基準は書かれていません。
タックスアンサーNo.2591も、勤続年数や地位などに照らして相当な金額以内かを見るとしています。
ポイント
表彰規程に対象の勤続年数(10年・15年・20年など)と記念品の内容を書いておくと、毎回の判断がぶれません。同じ人を5年未満の間隔で表彰する設計は避けます。
創業記念品は「処分見込価額1万円以下」と「おおむね5年ごと」です
創業記念品は、永年勤続と違って金額の基準が通達に書かれています。
(1) その支給する記念品が社会通念上記念品としてふさわしいものであり、かつ、そのものの価額(処分見込価額により評価した価額)が1万円以下のものであること。
(所得税基本通達36-22)
処分見込価額とは、その品物を処分するとしたら見込まれる価額のことです。
タックスアンサーNo.2591では、この1万円は消費税等の額を除いて判定するとされています。
増資記念・工事完成記念・合併記念も同じ扱いです。周年行事のように繰り返すものは、おおむね5年以上の期間ごとに支給することが要件です。
建築業者や造船業者等が工事の完成に際して配るものは、この取扱いの対象外です。

現金・商品券・自由に選べる記念品は、給与として課税されます
避けたい失敗は、手軽さから商品券やカタログで渡すことです。
なお、記念品の支給や旅行・観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。
(国税庁タックスアンサーNo.2591)
国税庁の質疑応答事例では、創業50周年に全員へ配った1万円分の商品券が給与とされています。商品を自由に選べるので、金銭と異ならないという理由です。
永年勤続でも、一定額の範囲で本人に品物を選ばせる方式は給与です。事例は「記念品の金額の多少にかかわらず」課税するとしています。
計算例
例:創業記念に1万円分の商品券を30人へ配った場合(一定の前提を置いた目安)
1人あたり 券面額10,000円がそのまま給与 会社全体 10,000円 × 30人 = 300,000円が給与等 同じ予算で評価額9,800円の品物なら 1万円以下(要件の1つを満たす) 評価額12,000円の品物なら 1万円超(36-22の要件を満たさない)注意
「1万円以下だから商品券でも大丈夫」ではありません。1万円の基準は記念品(物)についての基準で、商品券は金額にかかわらず券面額が給与です。
永年勤続の旅行券は原則として給与、4つの条件を満たせば課税されません
旅行券は有効期限がなく換金性もあるため、原則として給与等とされます。
国税庁のQAは、次のような条件を満たすなら課税しなくて差し支えないとしています。
- 旅行の実施は、旅行券の支給後1年以内であること
- 旅行の範囲が、旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含む)であること
- 使った人が、所定の報告書に旅行日・旅行先・支払額等を書き、確認資料を添えて会社に出すこと
- 使わなかった分を会社に返還すること
(4) 旅行券の支給を受けた者が当該旅行券の支給後1年以内に旅行券の全部または一部を使用しなかった場合には、その使用しなかった旅行券は貴社に返還すること。
(国税庁タックスアンサーNo.2591 QA「永年勤続者に対する旅行券の支給」)
計算例
例:勤続20年で10万円の旅行券を渡し、1年以内に7万円分を使った場合(一定の前提を置いた目安)
未使用分 100,000円 - 70,000円 = 30,000円 30,000円分の旅行券は会社へ返還する 報告書と旅行先がわかる資料を会社で保管する報告書の回収と返還の仕組みがなければ、実質は金銭の支給と同じと見られます。

給与とされると、会社の源泉徴収漏れと役員給与の問題になります
課税されるのは社員ですが、困るのは会社です。給与の支払者には源泉徴収の義務があります。
居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
(所得税法183条1項)
商品券を福利厚生費で処理していても、給与等とされれば源泉徴収していなかったことになります。
納付の時期は源泉所得税の納期の特例の記事で扱っています。
補足
役員に渡した場合は法人税も関係します。法人税法34条4項は、役員給与に「経済的な利益を含むものとする」と定めています。役員給与の損金不算入の規定の検討対象になります。
慶弔の支出は慶弔見舞金の記事、食事の支給は福利厚生費としての食事代の記事で扱っています。
税務調査で指摘を受けやすいのは、この5つです
源泉所得税の調査で見られるのは、要件よりも「渡し方」と「記録」です。
- 記念品の代わりに現金や商品券を渡した ― 全額(券面額)が給与です
- カタログや一定額の中で自由に選ばせた ― 金額の多少にかかわらず給与です
- 旅行券を渡したきり、報告書も返還の定めもない ― 原則どおり給与です
- 勤続5年で表彰した、短い間隔で同じ人を表彰した ― おおむね10年以上・5年以上の間隔から外れます
- 創業記念品の評価額が1万円を超えた、毎年配った ― 36-22の要件を満たしません
指摘の多くは、渡した後では直せない「渡し方」の問題です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
表彰や周年行事の前に、ご自身で用意できるのは次の4点です。
- 対象者の名簿を作り、勤続年数と前回表彰の年を並べる
- 渡す物が現物か、商品券・カタログ・現金かを確かめる
- 創業記念品なら、品物の値段と前回の配布の年を控える
- 旅行券なら、報告書の様式と返還の手順があるかを確かめる
役員も対象ですが、金額が「社会通念上相当」かは、ここから先の個別判断です。
すでに商品券を配ってしまった場合の処理も、支給した月や人数で変わります。
税理士が入ると変わるのは、制度の設計と源泉徴収の処理です
小松公認会計士・税理士事務所では、次の順で対応します。
ひとつめは、表彰規程の整備です。対象の勤続年数、間隔、記念品の内容を文書にします。
ふたつめは、渡し方の選択です。現物・招待・旅行券のどれにするかを、要件に照らして決めます。
みっつめは、旅行券の報告書の様式と返還の手順づくりです。
よっつめは、給与となるものの源泉徴収と、給与支払の記録への反映です。
いつつめは、役員が対象になる場合の、法人税の役員給与の検討です。
むっつめは、調査で聞かれる点の想定問答です。対象者の選び方と金額の決め方を説明できるようにします。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 永年勤続表彰の記念品は、いくらまでなら課税されませんか?
所得税基本通達36-21に金額の基準はありません。勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められる額であることが要件です。あわせて、おおむね10年以上の勤続者が対象で、同じ人を2回以上表彰するときはおおむね5年以上の間隔が必要です。
Q2. 創業記念に1万円分の商品券を配っても課税されませんか?
給与として課税されます。国税庁の質疑応答事例は、創業50周年の1万円分の商品券を給与等としています。商品を自由に選べるため、金銭の支給と異ならないという理由です。1万円以下の基準は、処分見込価額で評価した記念品(物)についての基準です。
Q3. 永年勤続表彰で旅行券を渡したいのですが、どうすればよいですか?
旅行券は原則として給与等です。国税庁のQAは、支給後1年以内の旅行、額に見合う旅行の範囲、報告書の提出、未使用分の返還などを満たせば課税しなくて差し支えないとしています。報告書の様式と返還の手順を先に決めておくことが大切です。
Q4. 記念品が給与とされたら、会社には何が起きますか?
給与等の支払者は、支払の際に所得税を徴収し、翌月10日までに納付する義務があります(所得税法183条1項)。源泉徴収していなければ、会社の源泉徴収漏れになります。役員が対象なら、役員給与の損金不算入の規定(法人税法34条)の検討も必要です。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法183条1項、法人税法34条4項、所得税基本通達36-21・36-22、国税庁タックスアンサーNo.2591「創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」とそのQA「永年勤続者に対する旅行券の支給」、国税庁質疑応答事例(源泉所得税)「創業50周年を記念して従業員に支給した商品券」「自由に選択できる永年勤続者表彰記念品」の内容を扱っています。永年勤続記念品の具体的な金額の目安、処分見込価額の具体的な算定方法、給与とされた場合の源泉所得税の具体的な税額、不納付加算税・延滞税の計算、役員への記念品が法人税法34条1項各号のどれに当たるかの判定、定年退職者の慰安旅行、レクリエーション行事や値引販売などほかの経済的利益の取扱い、消費税の仕入税額控除、住民税・社会保険料の取扱いは扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の判断は支給の方法・金額・対象者によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2591.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2591 QA「永年勤続者に対する旅行券の支給」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2591_qa.htm
- 国税庁 所得税基本通達〔給与等に係る経済的利益〕(36-21・36-22)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
- 国税庁 質疑応答事例(源泉所得税)「創業50周年を記念して従業員に支給した商品券」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/42.htm
- 国税庁 質疑応答事例(源泉所得税)「自由に選択できる永年勤続者表彰記念品」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/07.htm
周年記念や永年勤続表彰、渡し方を決める前に確かめませんか
永年勤続表彰の記念品や旅行、創業記念品は、所得税基本通達36-21・36-22の要件を満たせば給与として課税されません。一方で、現金・商品券・自由に選べる記念品は給与になり、旅行券は報告書と返還の仕組みがなければ原則として給与です。給与とされれば、会社の源泉徴収漏れになります。代表税理士が、表彰規程の整備、渡し方の選択、旅行券の報告書と返還の手順、源泉徴収の処理、役員が対象になる場合の法人税の検討まで、通して対応します。記念品を発注する前、周年行事の準備段階でご相談ください。
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