この記事のポイント
- 社員への慶弔金は一定の基準に従って支給すれば福利厚生費になります
- 受け取る側は社会通念上相当なら課税されません。金額の上限は通達にありません
- 社外の慶弔に払った金品は交際費等です。社内と分けて集計します
- 役員への支給は社会通念を超える部分が給与となり、損金不算入になります
まず結論:基準に従って払えば福利厚生費、受け取る側も社会通念の範囲なら課税されません
社員の結婚や出産、入院に際して会社がお金を出すことがあります。慶弔見舞金といいます。
あらかじめ決めた基準に従って支給すれば、会社側は福利厚生費として損金にできます。
根拠は租税特別措置法関係通達(以下、措置法通達)61の4(1)-10です。
受け取る社員側も、社会通念上相当な金額なら課税されません(所得税基本通達28-5・9-23)。
社会通念上相当とは、世間一般の感覚で普通と受け止められる範囲のことです。
ただし、通達には「何万円まで」という金額は書かれていません。
役員だけを対象にした高額な支給は、給与と扱われるおそれがあります。

受け取る側は「社会通念上相当」なら課税されません
結婚祝金と出産祝金は、原則は給与です。ただし社会通念上相当なら課税しなくて差し支えありません。
所得税基本通達28-5は次のように定めています。
使用者から役員又は使用人に対し雇用契約等に基づいて支給される結婚、出産等の祝金品は、給与等とする。ただし、その金額が支給を受ける者の地位等に照らし、社会通念上相当と認められるものについては、課税しなくて差し支えない。
(所得税基本通達28-5)
香典と見舞金は、所得税基本通達9-23が定めています。
葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、令第30条の規定により課税しないものとする。
(所得税基本通達9-23)
こちらは非課税所得の項に置かれています。
どちらの通達も、線引きは「社会通念上相当」であり、金額の上限は書かれていません。
社葬を行うときの香典や葬儀費用の扱いは、社葬費用と香典の取扱いにまとめています。
補足
役員や社員に交際費、接待費などの名目で渡した金品は、原則として給与です(所得税基本通達28-4)。業務のために使った事績が明らかなものだけが課税されません。慶弔金を「交際費」の名目で渡さないでください。
会社側は「一定の基準」があれば福利厚生費、社外なら交際費等です
会社側の区分は、相手が社内か社外か、基準があるかで決まります。
措置法通達61の4(1)-10は、従業員等やその親族等の慶弔、禍福に際し支給する金品を定めています。
「一定の基準に従って支給される金品に要する費用」は交際費等に含めません。
タックスアンサーNo.5261は、結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いを例に挙げています。
「一定の基準に従って」が条件です。慶弔見舞金規程を作り、それに沿って払うことが証拠になります。
一方、得意先など社外の者の慶弔に支出した金品は、原則として交際費等です(61の4(1)-15)。
交際費等には損金算入の上限があります。
資本金1億円以下の法人では、800万円×事業年度の月数÷12などです(No.5265)。
| 相手 | 支給のしかた | 区分 |
|---|---|---|
| 従業員等・その親族等(元従業員を含む) | 一定の基準に従って支給 | 福利厚生費(61の4(1)-10) |
| 得意先・仕入先など社外の者 | 慶弔、禍福に際して支出 | 交際費等(61の4(1)-15) |
| 自社の従業員等と同等の事情にある専属委託先の従業員等 | 一定の基準に従って支給 | 交際費等に該当しない(61の4(1)-18) |
計算例
例:慶弔見舞金規程で結婚祝金3万円・出産祝金1万円と定め、当期に社員2名が結婚、3名に出産があった
3万円 × 2名 + 1万円 × 3名 = 9万円 規程に従った支給 → 会社側は福利厚生費(61の4(1)-10) 受け取った社員側は、社会通念上相当なら課税しなくて差し支えない(所得税基本通達28-5) 同じ9万円でも、取引先の慶弔に払ったものは交際費等(61の4(1)-15)一定の前提を置いた目安です。3万円・1万円は規程で定めた金額の例であり、非課税の上限ではありません。
食事補助や社員旅行など、ほかの福利厚生費の考え方は福利厚生費になる条件で説明しています。

役員だけの落とし穴 ― 経済的な利益は役員給与に含まれます
役員への支給は、社員より慎重な判断が必要です。
法人税法34条4項は、役員給与に「債務の免除による利益その他の経済的な利益」を含むと定めています。
経済的な利益とは、お金を渡すのと同じ効果を役員にもたらすもののことです。
法人税基本通達9-2-9は、物品その他の資産の贈与や、個人的費用の負担をその例に挙げています。
ただし、同じ通達は「病気見舞、災害見舞等のような純然たる贈与と認められるもの」を除いています。
さらに9-2-10が、次のように定めています。
法人が役員等に対し9-2-9に掲げる経済的な利益の供与をした場合において、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、当該法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないものとする。
(法人税基本通達9-2-10)
所得税で課税されない範囲の見舞金なら、法人税でも給与とは扱われません。
逆に、社会通念を超える部分は経済的な利益として役員給与になります。
役員給与は、定期同額給与などの型のいずれにも当たらないと損金になりません(法人税法34条1項)。
臨時に払う慶弔金をこの型に当てはめるのは、通常むずかしいです。
給与とされた部分は損金不算入となり、役員本人にも所得税がかかります。
注意
「役員だけの慶弔金は必ず給与」と決まっているわけではありません。規程の有無・支給基準・金額の相当性で個別に判断します。役員だけを対象にした規程や、社員と差が大きい金額は、社会通念上相当と説明しにくくなります。
社長の家族が社員として働いている場合の給与の扱いは、社長の家族への給与で説明しています。

指摘を受けやすい3つの失敗パターン
税務調査で指摘されやすいのは、次の3つです。
①規程がない。その都度、社長の判断で金額を決めています。
「一定の基準に従って」支給したと示せず、福利厚生費として説明できません。
②役員だけ高額。社員の結婚祝金はわずかで、役員本人の祝金だけ桁が違います。
純然たる贈与とは言いにくく、経済的な利益として役員給与になります。損金不算入です。
③記録がない。誰に、いつ、何の慶弔で払ったかが残っていません。
業務に使ったことが明らかでない支給は、給与と扱われます。
根拠は法人税基本通達9-2-9と措置法通達61の4(1)-12です。
共通するのは、「基準」と「記録」のどちらかが欠けていることです。
どちらも支給の前に整えるものです。後から作った規程では、当時の支給を説明できません。
ここまではご自身で、ここからは個別判断です
ご自身でできるのは、基準の骨組みと記録の様式を整えるところまでです。
- 慶弔の種類を決めます。結婚、出産、傷病、死亡、災害のどれを対象にするかです。
- 対象者を決めます。役員、社員、元社員、その親族のどこまで含めるかです。
- 支給の記録様式を決めます。日付、氏名、事由、金額、受領の確認を残します。
ここから先は個別判断です。
金額をいくらに置くかは、会社の規模や業界、役員と社員の差の付け方で変わります。
規程の文言も、対象者の範囲や親族の定義で結論が動きます。
小松公認会計士・税理士事務所では、規程の骨子と金額水準を、会社の実情を伺ってから設計しています。

税理士が入ると何が変わるか
変わるのは、支給の前に区分の判断が終わることです。
ポイント
①慶弔見舞金規程の骨子と金額水準の設計(役員と社員の差の付け方を含む)
②支給ごとの区分判定(福利厚生費・交際費等・給与)
③社外の慶弔を交際費等に集計し、定額控除限度額との関係を確認します
④役員への支給が経済的な利益に当たるかを支給前に検討します
⑤決算時に支給記録と規程を突合し、申告書に反映します
支給してから相談すると、選べる処理が限られます。
慶弔は突然起きます。規程があれば、その場で迷わず払えます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 社員への結婚祝金は、いくらまでなら非課税ですか?
通達に金額の上限はありません。所得税基本通達28-5は、支給を受ける者の地位等に照らし、社会通念上相当と認められるものは課税しなくて差し支えないと定めています。金額の水準は会社の規模や規程の内容で個別に判断します。
Q2. 慶弔見舞金規程がなくても福利厚生費にできますか?
むずかしくなります。租税特別措置法関係通達61の4(1)-10は、一定の基準に従って支給される金品を交際費等に含めないとしています。基準を示せないと、給与または交際費等と扱われるおそれがあります。
Q3. 役員に払った見舞金は、必ず給与になりますか?
必ずではありません。法人税基本通達9-2-9は病気見舞、災害見舞等のような純然たる贈与を経済的な利益から除いています。所得税で課税されず、給与として経理していなければ、9-2-10により給与として扱われません。
Q4. 取引先の社長のお葬式に出した香典は福利厚生費ですか?
福利厚生費ではなく交際費等です。租税特別措置法関係通達61の4(1)-15は、得意先、仕入先等社外の者の慶弔、禍福に際し支出する金品等の費用を交際費等に含めています。社内の慶弔金と分けて集計してください。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税基本通達9-23、28-4、28-5、国税庁タックスアンサーNo.2508「給与所得となるもの」、No.5261「交際費等と福利厚生費との区分」、No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」、租税特別措置法関係通達(法人税編)61の4(1)-1、61の4(1)-10、61の4(1)-12、61の4(1)-15、61の4(1)-18、法人税法34条1項・4項、法人税基本通達9-2-9、9-2-10の内容を扱っています。慶弔見舞金の具体的な金額基準、慶弔見舞金規程のひな形、源泉徴収の税率や手続、所得税法9条・所得税法施行令30条の条文本文、社葬費用の要件、食事・社員旅行・人間ドックなど他の福利厚生費、役員社宅・養老保険、消費税の取扱いは扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための仮の設例であり、一定の前提を置いた目安です。実際の税額や区分を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 所得税基本通達 28-5「雇用契約等に基づいて支給される結婚祝金品等」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/03.htm
- 国税庁 所得税基本通達 9-23「葬祭料、香典等」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/04.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5261「交際費等と福利厚生費との区分」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5261.htm
- 国税庁 租税特別措置法関係通達(法人税編)61の4(1)-10「福利厚生費と交際費等との区分」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/08/08_61_4a.htm
- 国税庁 法人税基本通達 9-2-9・9-2-10「債務の免除による利益その他の経済的な利益」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_02.htm
慶弔見舞金規程は、最初の支給の前に整えてください
慶弔金は、規程と記録があるかどうかで福利厚生費にも給与にもなります。役員への支給は、社会通念を超える部分が損金不算入となり、役員本人にも所得税がかかります。金額の水準、役員と社員の差の付け方、社外の慶弔との集計の分け方は、御社の規模と実情によって変わります。代表税理士が規程の骨子から支給ごとの区分判定、決算への反映まで通して対応します。
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