この記事のポイント
- 損金算入 約3割に税額控除 最大6割が上乗せされます
- 控除には税額の20パーセントなどの上限があります
- 本社が所在する自治体への寄附は対象になりません
- 青色申告と明細書の添付が条文上の要件です
まず結論:最大約9割ですが、届く会社は限られます
企業版ふるさと納税は、寄附した法人の税負担が大きく下がる制度です。
内閣府地方創生推進事務局の資料は、こう書いています。
地方創生の取組に対して企業が寄附した場合、法人関係税を税額控除(最大約9割の軽減効果)
内訳は、損金算入が約3割、税額控除が最大6割、企業負担が約1割とされています。
ただし「最大」であり、多くの中小企業は6割まで届きません。
理由は、控除に上限があるからです。この記事は、そこを数字で確かめます。

3つの税から控除します
控除は、法人住民税・法人税・法人事業税の3つに分かれます。
| 税目 | 控除できる額 | 上限 |
|---|---|---|
| 法人住民税 | 寄附額の4割 | 法人住民税法人税割額の20% |
| 法人税 | 法人住民税で4割に達しない場合の残額 (寄附額の1割が限度) | 法人税額の5% |
| 法人事業税 | 寄附額の2割 | 法人事業税額の20% |
内閣府の資料は、法人住民税について「寄附額の4割を税額控除(法人住民税法人税割額の20%が上限)」と記載しています。
4割と2割を足して6割。これが税額控除の最大値です。
法人税の控除は、住民税で4割を使いきれなかったときの補助的なものです。
数字で見る:1,000万円を寄附して、控除しきるには
上限は「寄附額」ではなく「自社の税額」で決まります。
計算例
1,000万円を寄附して、控除枠を使いきるために必要な税額
法人住民税 10,000,000円 × 40% = 4,000,000円を控除したい 上限は法人税割額の20% → 4,000,000円 ÷ 20% = 法人税割額 20,000,000円が必要 法人事業税 10,000,000円 × 20% = 2,000,000円を控除したい 上限は事業税額の20% → 2,000,000円 ÷ 20% = 事業税額 10,000,000円が必要 法人税 控除は寄附額の1割 1,000,000円が限度 上限は法人税額の5% → 1,000,000円 ÷ 5% = 法人税額 20,000,000円が必要法人住民税の法人税割額が2,000万円ある会社は、かなりの規模です。
100万円の寄附でも、法人税割額200万円・事業税額100万円が必要になります。
そこまでの税額がなければ、控除は上限で頭打ちになります。
注意
上限に当たった分は、切り捨てられます。繰越しはできません。「9割戻ると聞いたので寄附した」のに、実際の軽減が損金算入の約3割だけだった、という事態が起こります。寄附を決める前に、その事業年度の税額の見込みを確かめてください。
使えない3つのケース
金額の前に、そもそも対象外になる場合があります。
内閣府の資料は、次の3点を明記しています。
- 「本社が所在する地方公共団体への寄附は対象外」 ― 地元への寄附には使えません
- 「寄附企業への経済的な見返りは禁止」 ― 見返りがあると認められません
- 「10万円以上の寄附が対象」 ― 少額の寄附は対象になりません
さらに「東京都及び市区町村のうち地方交付税の不交付団体で三大都市圏の既成市街地等に所在する市区町村は本制度の対象外」とされています。
寄附する側だけでなく、受け取る自治体の側にも条件があります。
見返りの禁止は、法令にも書かれています。
租税特別措置法42条の12の2第1項は、控除の対象となる特定寄附金から次のものを除いています。
その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く
内閣府も、地方公共団体の側の禁止規定として地域再生法施行規則13条を挙げています。

青色申告であること、明細書を付けることが条文上の要件です
手続の要件は、租税特別措置法42条の12の2に書かれています。
第1項は「青色申告書を提出する法人が」と始まります。
白色申告の法人は、この税額控除を受けられません。
承認申請の期限は法人の青色申告の承認申請で扱っています。
第2項は、確定申告書等に控除の対象となる特定寄附金の額・控除を受ける金額・その計算に関する明細を記載した書類を添付し、かつ寄附金が特定寄附金に該当することを証する書類を保存している場合に限り適用するとしています。
申告書では「別表六(二十五)」を使います。
補足
損金算入そのものは、この制度がなくても寄附金として行われます。企業版ふるさと納税は、そこに税額控除を上乗せする制度です。一般の寄附金には損金算入限度額があります。限度額の計算は寄附金の損金算入限度額をご覧ください。
適用期限は令和10年3月31日までです
この制度には期限があります。
租税特別措置法42条の12の2第1項は、寄附の時期を次のように定めています。
地域再生法の一部を改正する法律(平成二十八年法律第三十号)の施行の日から令和十年三月三十一日までの間に
内閣府の資料も、令和7年度税制改正で「税額控除の特例措置を3年間(令和9年度まで)延長する」と記載しています。
令和9年度まで、つまり令和10年3月31日までに支出した寄附が対象です。
期限内でも、寄附先の自治体が地域再生計画の認定を受けていなければ使えません。
つまずく典型は、この4つです
金額よりも、前提の確認で落ちることが多い制度です。
- 税額の見込みを確かめずに寄附した ― 控除が上限で止まり、思ったほど戻りません
- 本社所在地の自治体に寄附した ― 対象外です
- 寄附の見返りを受け取った ― 特別の利益に当たると控除できません
- 明細書を付け忘れた ― 添付がなければ適用されません
とくに多いのが、決算の着地が見えないうちに寄附を決めてしまうことです。
寄附は支出した日を含む事業年度で判定します。期末間際の判断は、税額の見込みとセットで行う必要があります。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確認できるのは、次の4点です。
- 寄附先の自治体が地域再生計画の認定を受けているかを確認する
- 自社の本社所在地と、寄附先が同じでないかを確認する
- 前期の申告書で、法人税割額・法人税額・事業税額の水準を見る
- 寄附の予定額が10万円以上かを確認する
ここから先は個別判断です。
今期の税額がいくらになるかは、決算の着地を見込まなければ分かりません。
見返りに当たるかどうかも、取引の内容を個別に見る必要があります。
税理士が入ると変わるのは、寄附前の税額の試算です
ひとつめは、着地見込みの試算表です。期末までの損益を織り込み、所得を見込みます。
ふたつめは、3つの税額の計算です。法人税割額・法人税額・事業税額を出し、控除の上限を先に求めます。
みっつめは、寄附額の設計です。控除枠を超えない金額を逆算し、超える分の効果も示します。
よっつめは、他の選択肢との比較です。同じ資金を設備投資や決算賞与に回した場合と並べます。
いつつめは、申告書への反映です。別表六(二十五)を作成し、証する書類の保存まで整えます。
寄附してから計算するのでは、順番が逆です。
期末3か月の打ち手は決算対策は残り3か月で決まりますもご覧ください。
小松公認会計士・税理士事務所では、試算から申告書の作成まで続けて担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 本当に寄附額の約9割が戻りますか?
内閣府は「最大約9割の軽減効果」としていますが、控除には上限があります。法人住民税は法人税割額の20パーセント、法人事業税は事業税額の20パーセント、法人税は法人税額の5パーセントが上限です。1,000万円を寄附して4割(400万円)を住民税から控除するには、法人税割額が2,000万円必要になります。
Q2. 地元の市に寄附したいのですが、使えますか?
使えません。内閣府の資料は「本社が所在する地方公共団体への寄附は対象外」と明記しています。また、東京都および市区町村のうち地方交付税の不交付団体で三大都市圏の既成市街地等に所在する市区町村も、制度の対象外とされています。
Q3. 寄附のお礼に地元の特産品をもらえますか?
いいえ。内閣府は「寄附企業への経済的な見返りは禁止」としています。租税特別措置法42条の12の2第1項も、特別の利益が寄附をした者に及ぶと認められるものを特定寄附金から除いています。ただし自治体のホームページ等で寄附企業名が紹介されることは、禁止されていません。
Q4. いつまでの寄附が対象ですか?
租税特別措置法42条の12の2第1項は「令和十年三月三十一日までの間に」支出した特定寄附金を対象としています。令和7年度税制改正で3年間(令和9年度まで)延長されたものです。なお、この控除は青色申告書を提出する法人に限られ、確定申告書等への明細書の添付も要件です。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法42条の12の2(e-Gov法令検索・施行日 令和8年8月12日版)、内閣府地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税」制度概要資料(令和8年4月1日時点)、同「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の延長」(令和7年度税制改正)、同「『寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与すること』についての解説」の内容を扱っています。法人住民税・法人事業税の控除に係る地方税法の条番号、法人住民税法人税割・法人事業税の税率、地域再生計画の認定手続、人材派遣型の要件、自治体ごとの寄附の受付方法は扱っていません。記事中の計算例は、内閣府資料に記載された控除割合と上限割合から逆算した設例であり、実際の税額は資本金・所得金額・所在自治体の税率によって異なります。寄附先が制度の対象となるか、見返りに当たるかどうかは個別の事実関係で判断されます。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」42条の12の2(認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 内閣府地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税ポータルサイト」https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html
- 内閣府地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税 制度概要」https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/pdf/R080401gaiyou.pdf
- 内閣府地方創生推進事務局「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の延長」https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/portal/pdf/R7zeikai.pdf
- 内閣府地方創生推進事務局「『寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与すること』についての解説」https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/portal/pdf/250401kaisetsu.pdf
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