この記事のポイント
- 無利息や低い利息で貸すと、基準の利率との差額が原則として給与になります
- 災害・病気による臨時の貸付けなど3つの場合は、課税しなくて差し支えありません
- 基準の利率は貸した年で決まり、令和8年中の貸付けは1.3%です(借りて貸したのが明らかな場合を除く)
- 返済の免除は原則として給与になり、受け取る利息は益金で消費税は非課税です
まず結論:従業員への無利息の貸付けは、原則として利息の差額が給与になります
会社が従業員に無利息や低い利息で貸すと、基準の利率との差額は、原則として給与になります。
根拠は、国税庁のタックスアンサー No.2606 です。
差額は、お金以外の形で受ける「経済的利益」に当たります(所得税基本通達36-15(3))。
ただし、災害や病気のときの臨時の貸付けなど、3つの場合は課税しなくて差し支えありません。
利息を取らずに貸すときは、3つの場合に当たるかを貸す前に確かめます。
この記事は、従業員(税法では「使用人」)への貸付けに絞ります。役員は役員貸付金と役員借入金の記事をご覧ください。

課税しなくて差し支えないのは、次の3つの場合です
次のどれかに当たれば、差額に課税しなくて差し支えありません(所得税基本通達36-28)。
| 場合 | 主な要件 | 確かめる点 |
|---|---|---|
| (1) 臨時の生活資金 | 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が要る人に、その資金として貸す | 金額と返済期間が合理的か。課税しないのは合理的な返済期間内の利益です |
| (2) 合理的な利率 | 会社の借入金の平均調達金利など、合理的な貸付利率を定める | 定めた利率で、利息を実際に受け取っているか |
| (3) 年5,000円以下 | (1)(2)以外の貸付けで、差額の合計が年5,000円以下 | 法人は事業年度で判定します |
平均調達金利(会社の借入金の平均の利率)について、通達は次の例を挙げます。
当該使用者が貸付けを行った日の前年中又は前事業年度中における借入金の平均残高に占める当該前年中又は前事業年度中に支払うべき利息の額の割合
(所得税基本通達36-28(2))
(2)は、利率を定めたうえで、その利息を実際に受け取っていることが前提です。
注意
(1)(2)に当たらない貸付けの差額が5,000円を超えると、差額の全額が給与として課税されます。1年未満の事業年度は、5,000円を月数に応じて減らし、6か月なら2,500円です(同通達(3))。

基準の利率は、貸した年と、お金の出どころで決まります
基準の利率は、他から借りたお金を貸したことが明らかならその借入金の利率、それ以外は貸した年の率です。
使用者が役員又は使用人に貸し付けた金銭の利息相当額については、当該金銭が使用者において他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には、その借入金の利率により、その他の場合には、貸付けを行った日の属する年の租税特別措置法第93条第2項《利子税の割合の特例》に規定する利子税特例基準割合による利率により評価する。
(所得税基本通達36-49)
利子税特例基準割合は年ごとに決まり、No.2606 は令和3年以後を次のとおり示しています。
| 貸付けを行った年 | 基準の利率 |
|---|---|
| 令和3年中 | 1.0% |
| 令和4年から令和7年中 | 0.9% |
| 令和8年中 | 1.3% |
率は貸した日の属する年で決まり、令和7年中に貸した分は0.9%で計算します。
計算例
例1:令和8年中に、無利息で100万円を貸した場合
1,000,000円 × 1.3% = 13,000円(差額) 5,000円を超えるため、(1)に当たらなければ13,000円が給与になります例2:同じ条件で、30万円を貸した場合
300,000円 × 1.3% = 3,900円 → 5,000円以下のため課税しなくて差し支えありません例3:平均調達金利を利率と定めて、200万円を貸す場合
前期の支払利息300,000円 ÷ 前期の借入金の平均残高40,000,000円 = 0.75% 2,000,000円 × 0.75% = 15,000円を利息として受け取ります 1.3%との差11,000円も、(2)により課税しなくて差し支えありませんどれも、貸すお金を他から借りたのではなく、残高が1年間変わらないという一定の前提を置いた目安です。
返済の免除は原則として給与になり、天引きには労働基準法の確認も要ります
返済を免除した額は、原則として給与所得の収入金額とされます。
免除した額は、債務の免除による経済的利益に当たります(所得税基本通達36-15(5))。
国税庁の源泉徴収のあらましは、これを現物給与(お金以外の形で受ける給与)に挙げています。
免除するときは、源泉徴収(給与から所得税を差し引いて納めること)の要否も確かめます。
役員の親族などの特殊関係使用人では、法人税法36条も関係します。
同条は、その給与に「債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。」と定めています。
不相当に高額な部分は、損金(税金の計算で差し引ける費用)になりません。詳しくは社長の家族に払う給与の記事をご覧ください。
奨学金の返済を会社が支援したいときは、奨学金の代理返還の記事もご覧ください。
補足
返済の天引きには、法令の定めか、労使の書面による協定が要ります(労働基準法24条1項)。協定は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(なければ過半数代表者)と結びます。同法17条は、労働することを条件とする前貸の債権と賃金の相殺を禁じています。労務の判断は、社会保険労務士などにご確認ください。
会社側では、受け取る利息は益金で、消費税は非課税です
受け取る利息は、益金(税金の計算で収益として数える額)に入ります(法人税法22条2項)。
計上の時期は、利子の計算期間の経過に応じた、その事業年度の分です(法人税基本通達2-1-24)。
金融・保険業以外の会社には、例外の扱いがあります。
1年以内の一定期間ごとに支払期日が来る利子は、継続して支払期日の年度に計上できます。
ただし、借りたお金をそのまま貸すひも付きの関係では、この扱いは使えません(同通達の注1)。
受け取る利息は、消費税の非課税取引です(タックスアンサー No.6201)。
ポイント
貸付規程・金銭消費貸借契約書・返済の記録は、3つの場合に当たることを示す資料です。貸す理由・金額・利率・返済期間と、利息と返済を受け取った日・金額を残します。
金銭消費貸借契約書は、印紙税の第1号文書です(タックスアンサー No.7101)。
税額は契約書に書いた契約金額で決まり、たとえば50万円を超え100万円以下なら1,000円です。
書類は貸す前に作り、利息と返済の記録はその都度残すことが大切です。

失敗パターン:課税の誤りにつながる5つの形
次の5つは、貸す前に書類と計算の手順を決めておくことで防ぎやすい誤りです。
- 利率を規程に書いただけ ― 利息を受け取っていなければ、(2)の前提を欠きます。
- 5,000円の超過分だけを給与にする ― 5,000円を超えると、差額の全額が給与です。
- 令和7年中の貸付けに1.3%を当てる ― 率は0.9%です(無利息の100万円で差額9,000円)。
- 臨時の生活資金の返済期間を決めない ― 課税しないのは、合理的な返済期間内の利益です。
- 返済の免除を口頭で済ませる ― 免除額は現物給与で、源泉徴収の要否の確認が要ります。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
貸す前にご自身で整えられるのは、次の4点です。
- 貸す理由・金額・利率・返済期間を、契約書に書く
- 貸すお金を、会社が他から借りて用意したかを記録する
- 従業員ごとに、年(法人は事業年度)の差額を計算する
- 利息の受取りと返済を、日付と金額で記録する
一方、平均調達金利の計算、臨時の生活資金に当たるか、合理的な返済期間は事実で判断が分かれます。
返済の免除、退職するときの残高、役員の親族への貸付けは個別判断が要ります。

税理士が入ると変わるのは、利率の根拠と毎年の計算の残し方です
小松公認会計士・税理士事務所では、従業員への貸付けで次の作業を行います。
ひとつめは、前期の支払利息と借入金の平均残高からの、平均調達金利の計算です。
ふたつめは、従業員ごとの差額の事業年度ごとの集計と、5,000円の判定です。
みっつめは、給与になる差額や免除額の、源泉徴収と年末調整への反映です。
よっつめは、受取利息の計上時期、消費税の区分、契約書の印紙税額の確認です。
いつつめは、決算書・申告書への反映と、税務調査に備えた説明資料の作成です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 従業員に無利息で100万円を貸すと、いくらが給与になりますか?
令和8年中の貸付けの基準の利率は、年1.3%です(所得税基本通達36-49)。他から借りたお金を貸したことが明らかな場合は除きます。残高が1年間同じなら、差額は13,000円です。年5,000円を超えるので、臨時の生活資金の貸付けでなければ全額が給与になります。
Q2. 会社の借入金の利率で貸せば、1.3%より低くてもよいですか?
会社の借入金の平均調達金利など、合理的と認められる利率を定める方法があります。その利率で利息を受け取っていれば、課税しなくて差し支えありません(所得税基本通達36-28(2))。平均調達金利は、たとえば前期の支払利息を、前期の借入金の平均残高で割って求めます。
Q3. 貸したお金の返済を免除すると、どうなりますか?
免除した額は、債務の免除による経済的利益です(所得税基本通達36-15(5))。国税庁の源泉徴収のあらましでは、これは現物給与で、原則として給与所得の収入金額とされます。役員の親族などでは、不相当に高額な部分は損金になりません(法人税法36条)。
Q4. 返済額を給与から天引きしてもよいですか?
賃金からの控除には、法令の定めか、労使の書面による協定が要ります(労働基準法24条1項)。協定は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(なければ過半数代表者)と結びます。労働することを条件とする前貸の債権と賃金の相殺は禁じられています(同法17条)。労務の判断は、社会保険労務士などにご確認ください。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税基本通達36-15・36-28・36-49、タックスアンサー No.2606「金銭を貸し付けたとき」・No.6201「非課税となる取引」・No.7101「不動産の譲渡・土地の賃貸借・消費貸借・運送等に関する契約書」、国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」、法人税法22条2項・36条、法人税法施行令72条、法人税基本通達2-1-24、消費税法6条1項・別表第二、労働基準法17条・24条1項の内容を扱っています。役員への貸付け、平成22年12月31日までに行った使用人への住宅資金の貸付けの特例、資力を喪失した人の債務免除(所得税法44条の2)、退職所得との区分、貸倒損失の要件、特殊関係使用人の過大な給与の判定基準、源泉徴収税額の計算方法、課税売上割合への影響、労働基準法上の前貸の範囲と協定の内容、貸金業法などの規制、社会保険料への影響は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、基準の利率は貸した年や資金の出どころによって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2606「金銭を貸し付けたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2606.htm
- 国税庁 所得税基本通達〔給与等に係る経済的利益〕(36-28)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
- 国税庁 所得税基本通達〔給与等とされる経済的利益の評価〕(36-49)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/04.htm
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」第2 給与所得の源泉徴収事務https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2026/pdf/04.pdf
- 国税庁 法人税基本通達 第2章第1節第6款「利子、配当、使用料等に係る収益」(2-1-24)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_01_05.htm
従業員にお金を貸す前に、利率と書類を確かめませんか
従業員に無利息や低い利息でお金を貸すと、基準の利率との差額は給与として課税されます。例外は、災害や病気で臨時に多額の生活資金が要る人への合理的な貸付けです。合理的な利率を定めて利息を受け取る場合と、差額が年5,000円以下の場合も例外です。返済を免除した額も、原則として給与所得の収入金額とされます。代表税理士が、平均調達金利の計算と、従業員ごとの差額の集計を行います。源泉徴収・年末調整への反映、受取利息と消費税の区分、印紙税の確認まで通して対応します。お金を貸す前の段階でご相談ください。
無料相談を申し込む 法人顧問サービスの詳細を見る 約60秒で料金を自動見積り決算と申告だけのご依頼は、決算申告のみのプランをご覧ください。