この記事のポイント
- 解散した日で事業年度が終了し、申告が1回増えます(法法14条1項1号)
- 残余財産が確定したら、その翌日から1か月以内に申告します(法法74条2項)
- 債務超過なら、設立当初からの欠損金を損金にできます(法法59条4項)
- 判定は解散時ではなく各事業年度終了の時の実態貸借対照表で行います
まず結論:解散した日で、その期はいったん終わります
会社をたたむと決めたら、まず知っておきたいのが事業年度の区切りです。
事業年度の途中で解散すると、その事業年度は解散の日に終了します。
根拠は法人税法14条1項1号です。決算月が来ていなくても、そこで1期が切れます。
そして翌日から、新しい事業年度(清算事業年度)が始まります。
さらに、清算中に残余財産が確定した日にも、その事業年度が終了します(同項5号)。
残余財産とは、債務をすべて支払ったあとに残った財産のことです。
| できごと | 事業年度の扱い | 申告の期限 |
|---|---|---|
| 事業年度の途中で解散した | 解散の日に終了(法法14条1項1号) | 終了の日の翌日から2か月以内 |
| 清算中で、決算日が来た | 通常どおり終了 | 終了の日の翌日から2か月以内 |
| 残余財産が確定した | 確定の日に終了(法法14条1項5号) | 確定の日の翌日から1か月以内(法法74条2項) |
最後の1回だけ、期限が2か月ではなく1か月である点にご注意ください。

いつ、何回申告することになるのか
具体的なカレンダーで見ると分かりやすくなります。
3月決算の会社が、令和8年9月30日に解散したとします。
計算例
3月決算法人が令和8年9月30日に解散し、令和9年5月31日に残余財産が確定した場合
① 令和8年4月1日〜令和8年9月30日(6か月)=解散事業年度 ② 令和8年10月1日〜令和9年5月31日(8か月)=残余財産の確定の日で終了 ①の申告期限=令和8年11月30日 ②の申告期限=令和9年6月30日(確定の日の翌日から1か月以内)清算が長引けば、その間も事業年度ごとに決算と申告が必要になります。
「解散したのだから、もう申告は要らない」ということにはなりません。
申告の中身も、通常の事業年度と変わりません。
法人税法74条1項は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定した決算に基づき申告書を提出しなければならないとしています。
同条3項により、貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類の添付も必要です。
清算中だからといって、決算を省くことはできないということです。
注意
最後の申告には、もう一つ短い期限があります。法人税法74条2項は「1か月以内」としたうえで、その1か月以内に残余財産の最後の分配または引渡しが行われる場合には、その行われる日の前日までとしています。分配を急ぐと、申告期限のほうが先に来ます。

債務超過なら、古い欠損金を使えます
清算の局面で最も効くのが、この規定です。
解散した法人に残余財産がないと見込まれるときは、設立当初からの欠損金を損金にできます。
根拠は法人税法59条4項です。一般に「期限切れ欠損金の損金算入」と呼ばれます。
青色申告の欠損金は、繰り越せる年数に限りがあります。
その年数を過ぎて使えなくなった古い赤字も、清算のときには復活するということです。
損金にできるのは、青色欠損金などを控除したあとの所得の金額が限度です。
計算例
清算中の事業年度に土地の売却益3,000万円・使える青色欠損金1,000万円・期限切れ欠損金5,000万円
青色欠損金控除後の所得=3,000万円 - 1,000万円 = 2,000万円 期限切れ欠損金のうち損金算入できる額=2,000万円(所得の金額が限度) 課税所得=2,000万円 - 2,000万円 = 0円清算では、含み益のある不動産を売って債務を返すことがよくあります。
そのときに大きな売却益が出ても、この規定で税金が出ないことがあります。
順序も決まっています。まず青色欠損金などを控除し、そのあとの所得の金額を限度として期限切れ欠損金を使います。
青色欠損金を残したまま、先に古い欠損金から使うということはできません。
そして、この規定を使うには書類の添付が条件になっています。
補足
法人税法59条6項は、確定申告書、修正申告書または更正請求書に損金の額に算入される金額の計算に関する明細を記載した書類と残余財産がないと見込まれることを説明する書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り適用する、としています。後者が実態貸借対照表です。なお同条7項は、添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは適用できるとしています。

「残余財産がないと見込まれるとき」はどう判定するか
判定は、解散したときの状態で決めるのではありません。
国税庁の質疑応答事例は、法人税基本通達12-3-8を引いて次の点を明らかにしています。
ポイント
解散した法人が当該事業年度終了の時において債務超過の状態にあるときは、「残余財産がないと見込まれるとき」に該当します。つまり清算中に終了する各事業年度終了の時ごとに判定します。
そして、債務超過かどうかは実態貸借対照表で確認します(法人税基本通達12-3-9)。
実態貸借対照表とは、資産・負債を時価ベースで並べ直した貸借対照表のことです。
帳簿の数字ではなく、実際に売ったらいくらになるかで並べ直します。
ここで、実務上とても大事な確認が公表されています。
補足
国税庁の質疑応答事例では、清算中の事業年度に土地の売却益が出て一度は資産超過になったものの、その期の未払法人税等を負債に含めると債務超過になるという事例が取り上げられています。回答は、未払法人税等を負債に含めたところで判定して差し支えないとしています。実態貸借対照表は、清算に当たって実現が見込まれる損益まで考慮して作成されるためです。
退職が見込まれる従業員に将来支給する退職金なども、同じ考え方で織り込まれます。
たたむと決めた期に、使えなくなる制度があります
解散すると、それまで使えていた特例が使えなくなることがあります。
たとえば研究開発税制です。
注意
中小企業技術基盤強化税制も一般試験研究費の税額控除も、解散(合併による解散を除きます)の日を含む事業年度と清算中の各事業年度は適用対象から外れています(国税庁タックスアンサーNo.5444・No.5442)。同じ趣旨の除外は、ほかの特例にも置かれていることがあります。
そのため、解散の日をいつにするかは、税務上も意味を持ちます。
使いたい特例がある年に解散日を置くと、その年の分が丸ごと消えてしまうためです。
逆に、含み損のある資産を整理する順序を変えることで、負担が軽くなることもあります。
いずれも、解散の登記をする前でなければ選べません。

当事務所での進め方
最初に、たたみ方そのものをご相談いただきます。
解散して清算するのか、他社へ譲るのか、休眠にとどめるのかで負担が変わるためです。
解散を選ぶ場合は、解散日を決める前に、その期に使いたい制度の有無を確認します。
次に、資産と負債を時価で並べ直した実態貸借対照表を作ります。
社長からの借入金、含み損のある資産、将来の退職金まで含めて洗い出します。
そのうえで、期限切れ欠損金が使えるかを事業年度ごとに確かめ、申告まで進めます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 会社を解散すると、申告は何回必要になりますか?
最低でも1回増えます。解散の日で事業年度が終了するため(法法14条1項1号)、その分の申告が必要です。清算が年をまたげばさらに増え、最後に残余財産が確定した事業年度の申告を行います。
Q2. 最後の申告の期限はいつですか?
残余財産の確定の日の翌日から1か月以内です(法法74条2項)。ただし、その1か月以内に残余財産の最後の分配または引渡しが行われる場合には、その行われる日の前日までになります。
Q3. 10年より前の古い赤字も使えますか?
債務超過であれば使えます。解散した法人に残余財産がないと見込まれるときは、適用年度前の各事業年度に生じた欠損金を基礎に計算した金額を損金に算入できます(法法59条4項)。所得の金額が限度です。
Q4. 債務超過かどうかは、解散したときの決算書で見ますか?
見ません。国税庁の質疑応答事例は、清算中に終了する各事業年度終了の時の実態貸借対照表(時価ベース)で判断するとしています。期ごとに判定し直すことになります。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法14条1項1号・5号、59条4項、74条1項・2項、法人税基本通達12-3-8・12-3-9、国税庁質疑応答事例「解散法人の残余財産がないと見込まれる場合の損金算入制度(法法59)における『残余財産がないと見込まれるとき』の判定について」および同「解散法人の残余財産が零となる事業年度の『残余財産がないと見込まれるとき』(法法59)の判定について」を扱っています。期限切れ欠損金額の具体的な算定方法(法人税法施行令の定め)、青色欠損金の繰越期間、会社法上の清算手続・登記・債権者保護手続、法人住民税および法人事業税の均等割その他の地方税の取扱い、消費税の申告、清算中の役員報酬・退職金、残余財産の分配に係る株主側のみなし配当、通算法人およびグループ通算制度における取扱い、特別清算・破産は扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための仮の設例です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 法人税法(14条・59条・74条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁 質疑応答事例「解散法人の残余財産がないと見込まれる場合の損金算入制度(法法59)における『残余財産がないと見込まれるとき』の判定について」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/34/01.htm
- 国税庁 質疑応答事例「解散法人の残余財産が零となる事業年度の『残余財産がないと見込まれるとき』(法法59)の判定について」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/34/02.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5444「中小企業技術基盤強化税制」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5444.htm
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解散日をいつにするか、資産をどの順序で整理するか、期限切れ欠損金が使えるかは、登記をしてしまうと選び直せません。債務超過の会社ほど、事前の組み立てで結論が変わります。代表税理士が実態貸借対照表の作成から最後の申告まで、一続きで対応します。休眠にとどめる選択肢も含めてご説明します。
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