この記事のポイント
- 入れ忘れで税額が多すぎたら、原則として法定申告期限から5年以内に更正の請求です
- 税額の不足は修正申告です。調査の事前通知前に自主的に出せば過少申告加算税はかかりません
- 3,000万円控除は確定申告書への記載と添付が条件で、後から使えるとは限りません
- 住民税や国民健康保険料も変わることがあります。国保料の賦課決定には原則2年の期間制限があります
まず結論:税金が多すぎたら更正の請求、少なすぎたら修正申告です
不動産を売った年の確定申告を出した後で、誤りに気づくことがあります。
税額が多すぎたら更正の請求、少なすぎたら修正申告で直します(タックスアンサー No.2026)。
タックスアンサーは国税庁の解説ページで、No.はその番号です。
更正の請求は、納めすぎた税金を正すよう税務署長に求める手続です。
修正申告は、不足していた税額を自分で申告し直す手続です。
法定申告期限(原則として売った年の翌年3月15日)より前なら、正しい申告書を出し直せます。
ただし、還付の処理が済んだ還付申告書では、この扱いができないことがあります。
3,000万円控除などの特例は、書き忘れると後から使えるとは限りません。

取得費・譲渡費用の入れ忘れは、原則5年以内の更正の請求で直します
費用の入れ忘れで税額が多すぎたときは、更正の請求で正します。
取得費には、買った代金のほか購入手数料なども入ります(No.3252)。
業務に使っていない物件なら、購入時の登記費用や不動産取得税も取得費です。
譲渡費用は、売るために直接かかった仲介手数料などです(No.3255)。
更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。
(国税庁 タックスアンサー No.2026)
最終的な税額も純損失の金額(引ききれない赤字)も変わらないときは、更正の請求はできません(同)。
更正請求書には、理由の基礎となる事実を証明する書類を添えます(国税通則法施行令6条2項)。
入れ忘れた費用の領収書や契約書が、請求の裏付けになります。
税務署は調査のうえ、更正をするか、更正の理由がない旨を通知します(国税通則法23条4項)。
計算例
例:令和7年に、業務に使っていない土地を4,000万円で売却(長期)。購入時の仲介手数料と登記費用100万円を取得費に入れ忘れた
当初 4,000万円 -(取得費2,500万円 + 譲渡費用150万円)= 1,350万円 直した後 4,000万円 -(2,600万円 + 150万円)= 1,250万円 所得税と復興特別所得税 2,067,525円 → 1,914,375円(差 153,150円) 住民税 675,000円 → 625,000円(差 50,000円) 税負担の差の合計 = 203,150円長期とは、売った年の1月1日で所有期間が5年を超える売却です(No.3208)。
税率は令和7年分の所得税15%、復興特別所得税は所得税額の2.1%、住民税5%です(同)。
特例・ほかの所得・端数処理は考えない、一定の前提を置いた目安です。

収入の漏れなどで税額が少なかったときは、修正申告をします
税額が少なすぎたときは、修正申告で正しい税額にします。
修正申告書は、税務署の更正があるまで出せます(国税通則法19条1項)。
売却の申告では、次のような誤りが税額を増やします。
- 固定資産税の精算金を、譲渡価額に入れていなかった(No.1440)
- 建物の取得費から、減価償却費相当額を引いていなかった(No.3252)
- 要件を満たさない特例を使っていた
- 同じ年に売った別の不動産を申告していなかった
税務署からの調査の事前通知の前に自主的に修正申告をした場合であれば、過少申告加算税はかかりません。
(国税庁 タックスアンサー No.2026)
事前通知の後は原則5%、調査を受けた後は原則10%の過少申告加算税がかかります(同)。
修正申告書を出す日が納期限で、納付の日までの延滞税もあわせて納めます(同)。
増える誤りは、事前通知の前に自分から直すかどうかで負担が変わります。
加算税と延滞税の計算は、確定申告を間違えたときの記事で扱っています。
3,000万円控除を書き忘れたら、後から使えるとは限りません
住んでいた家の3,000万円控除は、確定申告書への記載と書類の添付が条件です。
第一項の規定は、その適用を受けようとする者の同項に規定する資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨その他の財務省令で定める事項の記載があり、かつ、当該譲渡による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
(租税特別措置法35条12項)
確定申告書には、期限後申告書も含まれます(所得税法2条1項37号)。
一方、この項に修正申告書や更正請求書は挙がっていません。
書き忘れた特例は、更正の請求で当然に加えられるものではありません。
救済として、税務署長が「やむを得ない事情がある」と認めるときの定めがあります(措置法35条13項)。
その場合も、記載をした書類と明細書などの提出が条件です。
マイホームの軽減税率の特例にも、同じ形の定めがあります(同法31条の3第3項・4項)。
相続税額を取得費に足す特例には、別に更正の請求の定めがあります(同法39条4項)。相続税の申告が確定申告の期限より後になった場合などです。
期限は取得費加算の更正の請求の記事にまとめています。
ポイント
期限前に気づいたら、特例を書いた申告書を出し直せます(No.2026)。申告要件の読み方は3,000万円控除の申告要件の記事をご覧ください。

所得税を直すと、住民税と国民健康保険料にも響きます
所得税を直すと、住民税や国民健康保険料の金額も変わることがあります。
所得税の確定申告書を出せば、原則として住民税の申告をしたものとみなされます(地方税法317条の3)。
所得税の更正や修正申告があったときに、住民税を直せる期間の特例もあります(同法17条の6第3項)。
計算例では、住民税の差が50,000円ありました。通知書の金額が変わったかを確かめます。
補足
国民健康保険法110条の2第1項は、保険料の賦課決定に2年の期間制限を置いています。2年は、その年度の最初の納期の翌日から数えます。新宿区は、区の税務課以外で修正申告をした場合は国保の窓口へ連絡するよう案内しています。国民健康保険税として課す市区町村もあります(同法76条1項ただし書)。
所得税の更正の請求は原則5年でも、国民健康保険料には2年の期間制限があります。

直し方を誤ると、戻るはずの税金や控除を逃します
売却の申告を直す場面では、次の失敗が起きます。
- 5年を過ぎてから入れ忘れに気づく ― 原則として更正の請求ができません
- 領収書を探さずに請求する ― 事実を証明する書類の添付が求められます
- 期限前に気づいたのに出し直さない ― 特例を書いて出し直す機会を逃します
- 事前通知を受けてから修正申告する ― 原則として過少申告加算税がかかります
- 所得税だけ直して国保の窓口に伝えない ― 保険料の2年の期間を過ぎることがあります
注意
更正の請求をしても、当初の税金の徴収は猶予されないのが原則です(国税通則法23条5項)。当初の税金は期限どおりに納めて、結果を待ちます。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
書類を並べて、誤りの向きと期限を確かめるところまではご自身でできます。
- 提出した申告書の控えと、譲渡所得の内訳書を手元に出す
- 売ったときと買ったときの契約書・領収書・精算書を並べる
- 入れ忘れた費用と、入れすぎた金額を書き出す
- 法定申告期限から5年の期限と、住民税・国保の通知書を確かめる
費用が取得費や譲渡費用に入るか、特例を書かなかった経緯、相続や共有の計算は個別に判断します。
税理士に頼むと変わるのは、手続の切り分けと根拠書類です
小松公認会計士・税理士事務所では、売却の申告を直すときに次の作業を行います。
- 提出済みの申告書と内訳書を読み、税額が増える誤りか減る誤りかを切り分ける
- 入れ忘れた費用を領収書で確かめ、更正請求書に添える書類をそろえる
- 戻る税額や増える税額を、所得税と住民税に分けて見込む
- 特例を書かなかった場合は、条文と経緯を整理して取れる手続を検討する
- 更正の請求書・修正申告書を作成してe-Taxで提出し、控えをお渡しする
- 住民税と国民健康保険料の通知の変化を確かめ、必要な連絡をご案内する
全国どこからでもオンラインで完結します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 売却時の仲介手数料を入れ忘れて申告しました。いつまで直せますか?
税額が多すぎたなら更正の請求をします。期間は原則として法定申告期限から5年以内です(タックスアンサー No.2026)。最終的な税額も純損失の金額も変わらないときはできません。領収書など、理由の基礎となる事実を証明する書類を添えます(国税通則法施行令6条2項)。
Q2. 修正申告をすると、必ず加算税がかかりますか?
いいえ。調査の事前通知の前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません(No.2026)。事前通知の後は原則5%、調査を受けた後は原則10%です。修正申告書を出す日が納期限で、納付の日までの延滞税もあわせて納めます。当初が期限後申告なら、無申告加算税がかかる場合があります。
Q3. 3,000万円控除を書かずに申告しました。更正の請求で使えますか?
条文は、確定申告書に記載と書類の添付がある場合に限り適用するとしています(措置法35条12項)。更正の請求で当然に使えるものではありません。やむを得ない事情を税務署長が認めるときは、書類の提出で適用されることがあります(同条13項)。期限前なら出し直せます。
Q4. 所得税を直すと、国民健康保険料も変わりますか?
変わることがあります。国民健康保険料の賦課決定には、2年の期間制限があります(国民健康保険法110条の2第1項)。2年は、その年度の最初の納期の翌日から数えます。国民健康保険税として課す市区町村もあります。所得税を直したら、通知書の金額を確かめます。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税通則法19条1項・23条1項・4項・5項、国税通則法施行令6条2項、租税特別措置法35条12項・13項・31条の3第3項・4項・39条4項、所得税法2条1項37号・120条1項、地方税法17条の6第3項・317条の3第1項、国民健康保険法76条1項・110条の2第1項、国税庁タックスアンサー No.1440・No.2026・No.3208・No.3252・No.3255、国税庁「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」、新宿区「国民健康保険料の賦課決定の期間制限について」の内容を扱っています。過少申告加算税の加重部分と帳簿に関する加算、無申告加算税、延滞税の割合と計算、契約の解除や代金の減額・判決などの後発的理由による更正の請求、取得費加算の更正の請求の期限と計算、空き家の特例の1億円判定による修正申告、概算取得費で申告した後に実額へ改める可否、「やむを得ない事情」に当たる具体的な事例、更正の請求で特例を受けられるかの結論、住民税の更正の手続と市区町村ごとの扱い、国民健康保険税の期間制限、介護保険料などへの影響、令和9年分以後の税率は扱っていません。記事中の計算例は令和7年中の売却を前提とした一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は取得費・譲渡費用・所有期間・使う特例・ほかの所得・端数処理によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2026 確定申告を間違えたときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
- 国税庁 A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/01.htm
- e-Gov法令検索「国税通則法」(19条・23条)https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(35条12項・13項)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 新宿区 国民健康保険料の賦課決定の期間制限についてhttps://www.city.shinjuku.lg.jp/kenkou/hoken04_002006.html
不動産売却の申告の誤りは、手続を選ぶ前に書類から確かめませんか
入れ忘れで税額が多すぎたら、原則として法定申告期限から5年以内に更正の請求をします。税額が少なすぎたときは修正申告で、調査の事前通知の前に自主的に出せば過少申告加算税はかかりません。3,000万円控除などの特例は確定申告書への記載と書類の添付が条件で、後から使えるとは限りません。代表税理士が、提出済みの申告書と契約書・領収書を読み、手続を切り分けます。根拠書類の整理から、更正の請求書・修正申告書の作成と提出まで担当します。住民税と国民健康保険料への影響も確かめます。申告書の控えをお手元に、お申し込みください。
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