この記事のポイント
- 4つの要件をすべて満たして継続適用すれば、ポイント分を前受けにできます
- 前受けにするには、会計でもポイント分を売上から分けることが前提です
- ポイント引当金の繰入額は、債務確定基準により損金になりません
- 前受けの未使用分は、付与から10年や有効期限などの区切りで益金にします
まず結論:4つの要件を満たす自社ポイントは、ポイント分を前受けにできます
自社ポイントを付けたときの法人税の扱いは、2通りです。
法人税基本通達2-1-1の7の要件をすべて満たし、毎期続けて適用すれば、前受けにできます。
前受けとは、まだ売上にしない受け取りです。それ以外は、販売時に全額が売上です。
ポイント引当金を計上しても、その繰入額は損金(税金の計算で差し引ける費用)になりません。
売上の計上時期の基本は、売上の計上時期の記事にまとめています。

前受けにできるのは、4つの要件をすべて満たす自社ポイントです
対象は、買い物に伴い自社が発行し、不特定多数のお客様に付けるポイントやクーポンです。他社が運営するポイントは除かれます。
次に掲げる要件の全てに該当するときは、継続適用を条件として、当該自己発行ポイント等について当初の資産の販売等(以下2-1-1の7において「当初資産の販売等」という。)とは別の取引に係る収入の一部又は全部の前受けとすることができる。
(法人税基本通達2-1-1の7)
| 要件 | 中身(言い換え) |
|---|---|
| (1) 重要な権利 | 商品を買わなければ受け取れない重要な権利を与える |
| (2) 年度ごとの管理 | 発行年度ごとに区分して管理している |
| (3) 一方的に失わせない | 期限切れ・規約違反など会社の責任でない事情以外では、一方的に失わせられないと規約で明らかにしている |
| (4) 金額と使い方 | イ:値引き額が明らかで1ポイントから使える/ロ:イに当たる他社ポイント等と決まった比率で交換できる |
注意
通達の注は、次のものを(4)イに当たらないとしています。スタンプカード、割引券(次の代金を一定割合引く券)、一定数まで使えないものです。ロの要件を満たすかは別に確かめます。
告知期間を置いて制度を終える定めがあっても、(3)に反しないとされています(国税庁の趣旨説明)。
前受けにする前提は、会計でもポイント分を売上から分けていることです。
会計で全額を売上にしたまま、申告書の上の調整だけで前受けにすることは認められません(趣旨説明)。
前受けの額は、代金を商品とポイントに割り振って決めます
受け取った代金は、商品の価額とポイントの額に合理的に割り振ります(同通達の注)。
前受けは、ポイントが使われるのに応じて益金(税金の計算で収益に入れる額)にします。失効しそうなポイントも見込みます(法人税基本通達2-1-39の3)。
計算例
例:国税庁の趣旨説明の設例(10円ごとに1ポイント、1ポイント1円の値引き)
100,000円を販売し10,000ポイントを付与(使われる見込みは9,500ポイント) 売上 100,000円 × 100,000 ÷(100,000 + 9,500)= 91,324円 前受け 100,000円 × 9,500 ÷(100,000 + 9,500)= 8,676円 1年目(4,500ポイント使用) 8,676円 × 4,500 ÷ 9,500 = 4,110円を益金 2年目(累計8,500ポイント、見込みを9,700に更新) 8,676円 × 8,500 ÷ 9,700 - 4,110円 = 3,493円を益金金額は設例の前提を置いた目安で、比率や見込みは会社ごとに異なります。
失効の見込みは、過去の実績などから合理的に見積もり、根拠書類の保存が条件です(同通達の注1)。

使われないポイントは、付与から10年などの区切りで益金にします
前受けの残りは、付与の日から10年が経過した日の属する事業年度の終わりに益金にします。
10年より前に次のことが起きたときは、その日が区切りです(2-1-39の3)。
- 発行年度ごとの区分管理をしない、またはしなくなったとき
- ポイントの有効期限が来たとき
- 会社が継続して収益にすると決めた基準に達したとき
3つめの基準は、付与日から一定年数がたったことなどです。会計処理の方針などで明らかなものに限られます(同通達の注2)。
有効期限が10年より短ければ、期限が来た日の属する事業年度の終わりに残りを益金にします。
要件を満たさない・選ばないときは、販売時に全額が売上です
前受けにしない場合、ポイント分を含む代金の全額が販売時の売上です。
将来の値引きに備えてポイント引当金を計上しても、その繰入額は損金になりません。償却費以外の費用は、期末までに債務が確定したものに限られるからです。
当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
(法人税法22条3項2号)
趣旨説明も、ポイント等引当金の繰入額は債務確定基準により損金不算入と考えられるとしています。来店しただけで付けるポイントなど、販売に伴わないものの引当金も同じです。
法人税法が定める引当金は貸倒引当金(52条)で、ポイントの引当金の定めはありません。
中小企業(会計監査の対象でない法人)は、販売時に全額を売上にする従来の扱いもできます(趣旨説明)。この場合も、ポイント引当金の繰入額は損金になりません。
補足
ポイントと引換えに金銭や物品を渡す「金品引換券付販売」には、別の通達があります(9-7-3など)。
点数で表示し、1枚からでも引き換えるなどの条件を満たすと、算式の額を決算で未払金にできます。
原則として翌期に益金に戻し、申告書には明細書を付けます。当てはまるかは、規約しだいの個別判断です。
他社の共通ポイントと消費税は、別に考えます
他社が運営する共通ポイントは、前受けの対象外です。
国税庁の処理例では、加盟店は販売時に売上を全額計上します。税込11,000円で110ポイントの例では、税抜の売上10,000円とポイント費用110円です。
消費税では、運営会社に払うポイント費用を不課税とする前提です。規約の内容によっては課税取引に当たるケースも考えられる、と注記されています。
国税庁の設例では、前受けにしても、消費税の課税売上げはポイント分を差し引きません。
税率8%当時の設例で、税込10,800円の販売の課税売上げの対価は10,000円です。法人税の売上は9,025円です。
代金の全額をポイントで払った時は、課税売上げ1,000円を立てます。同額の「対価の返還等(ポイント分)」を差し引き、税額は差引0円です。
取引先への売上割戻し(リベート)は別の論点で、リベートと交際費の記事で扱っています。

指摘につながる処理は、たとえば次の5つです
要件を一つでも欠くと、前受けの額は販売の期の売上に戻るおそれがあります。
- 会計は全額売上のまま、申告書だけで前受けにする ― 認められません。
- 発行年度ごとに管理していない ― 要件(2)を欠きます。
- 失わせる場合を規約で限っていない ― 要件(3)を欠きます。
- スタンプカードや割引券を前受けにする ― (4)イに当たりません。
- ポイント引当金の繰入額を損金に入れる ― 損金になりません。
ポイント
特定の得意先だけにポイントを付ける場合は、要件の「不特定多数」に当たりません。趣旨説明は、交際費等に当たることが考えられるとしています。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確かめられるのは、次の4点です。
- ポイント規約を読み、有効期限・失効・制度終了の定めを書き出す
- 1ポイントから使えるか、1ポイントの値引き額が明らかかを確かめる
- 付与・使用・失効のポイント数を、発行年度ごとに集計できるか確かめる
- 会計で、ポイント分を売上から分けているかを確かめる
割り振りの計算と失効の見込みは、数字の根拠が問われる個別判断です。

税理士が入ると変わるのは、要件の判定と年度別の管理表です
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
- 規約を読み、4つの要件に当たるかを条項ごとに判定する
- 商品とポイントへの割り振りを計算し、根拠を資料にする
- 付与・使用・失効の数から、発行年度別の前受けの残高表を作る
- 過去の実績から失効の見込みを見積もり、根拠書類を残す
- 共通ポイントの規約も読み、消費税の区分を整理する
- 会計と申告書がずれないかを確かめ、申告に反映する
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 自社ポイントを付けたら、ポイント分は前受けにしなければいけませんか?
義務ではありません。法人税基本通達2-1-1の7の4要件をすべて満たし、継続して適用する場合に前受けにできる扱いです。会計でもポイント分を分けていることが前提です。申告書の上だけで前受けにすることは認められません。
Q2. ポイント引当金を計上すれば、損金になりますか?
なりません。償却費以外の費用は、期末までに債務が確定したものに限られます(法人税法22条3項2号)。国税庁の趣旨説明も、引当金の繰入額は損金不算入と考えられるとしています。金品引換券付販売には、条件つきで未払金の計上を認める通達(9-7-3)があります。
Q3. 使われないまま残ったポイントは、いつ益金になりますか?
前受けにした場合、付与の日から10年が経過した日の属する事業年度の終わりに、残りを益金にします。それより前に有効期限が来たときなどは、その日で判定します(2-1-39の3)。発行年度ごとの管理をやめたときや、会計方針などであらかじめ定めた基準に達したときも同じです。
Q4. 共通ポイントの加盟店も、同じ扱いですか?
同じではありません。2-1-1の7は他社運営のポイントを対象外としています。国税庁の処理例では、加盟店は売上を全額計上し、運営会社へ払う額をポイント費用とします。この費用は消費税で不課税とする前提ですが、規約によっては課税取引のケースも考えられるとされています。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条3項2号・4項、22条の2第1項、52条、法人税基本通達2-1-1の7・2-1-39の3・2-2-12・9-7-2から9-7-5、国税庁の平成30年5月30日付通達改正の趣旨説明(2-1-1の7・2-1-39の3)、国税庁「「収益認識に関する会計基準」への対応について~法人税関係~」・「収益認識基準による場合の取扱いの例」(いずれも平成30年5月)、タックスアンサーNo.6480と、そこから参照される国税庁「共通ポイント制度を利用する事業者(加盟店A)及びポイント会員の一般的な処理例」の内容を扱っています。独立販売価格と失効の見込みの見積り方法の細目、商品券等の非行使部分(2-1-39・2-1-39の2)、キャッシュバック(2-1-1の16)、売上割戻しの計上時期、9-7-3の未払金の計算と明細書の様式、ポイント(値引き型)が金品引換券付販売に当たるかの判断、交際費等の判定、共通ポイントの運営会社側とポイントを使った買手側の処理、消費税の対価の返還等の条文と軽減税率・インボイスとの関係、収益認識基準を適用すべき会社の範囲、法人住民税・事業税、加算税・延滞税、裁決・判例は扱っていません。記事中の計算例は国税庁の設例の前提を置いた目安であり、割り振りの比率や失効の見込みは会社ごとに異なります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条・22条の2・52条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁 法人税基本通達 第2章第1節第1款「資産の販売等に係る収益計上に関する通則」(2-1-1の7)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_01_01.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第2章第1節第7款「その他の収益等」(2-1-39の3)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_01_06.htm
- 国税庁「平成30年5月30日付課法2-8ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/180530/index.htm
- 国税庁「収益認識基準による場合の取扱いの例」(平成30年5月)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2018/pdf/0605_B.pdf
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