この記事のポイント
- 売上は原則として契約で受け取ると決まった報酬の額で、振込額とは限りません
- 差し引く約束の手数料・場所代は、事業のための費用なら必要経費です
- 振込額を売上にして手数料も経費に入れると、手数料を二重に差し引きます
- 支払調書は源泉徴収・消費税・未払の書き方が通帳と違い、写しが届くとも限りません
まず結論:売上は原則として、振込額ではなく契約で決まった報酬の額です
委託元やアプリが、手数料や場所代を差し引いて報酬を振り込むことがあります。
事業所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します(所得税法27条2項)。
売上にするのは、原則として、契約で受け取ると決まった報酬の額です。通帳の振込額とは限りません。
報酬から差し引く約束の手数料は、事業のための費用なら必要経費として別に入れます。

差し引く約束があれば、売上は差し引く前の報酬の額です
報酬から手数料を差し引くと契約で決まっていれば、売上は差し引く前の報酬の額です。
所得税法は、総収入金額に入れる金額を次のように定めています。
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額
(所得税法36条1項)
振込額が少ないのは、報酬と手数料を差し引きで精算しているためです。
手数料や場所代は、売上を得るための費用なら必要経費です(同法37条1項)。
反対に、手数料の分は初めから自分の売上ではないと考えるには、裏付けが要ります。
国税不服審判所(税務署の処分への不服を審査する機関)の裁決に、参考になる事案があります。
自動車整備業などの個人が、車の販売は委託販売で、手数料だけが売上だと主張しました。
審判所は、手数料を受け取る契約をしていた事実は認められないとしました。
取引先の申述書だけでは、委託販売とまでは認められませんでした(令和3年3月4日裁決)。
申告をせず、推計(収支や事業の規模などから所得を見積もる方法)で課税された事案です。
どちらの形かは、契約書や支払明細などの裏付けで判断されます。
差し引かれたお金は、中身ごとに扱いが違います
差し引かれたお金が、すべて必要経費になるとは限りません。
主な項目の扱いは、次のとおりです。
| 差し引かれたもの | 扱い |
|---|---|
| 事業のための手数料・場所代・振込手数料 | 必要経費(所得税法37条1項) |
| 源泉徴収された所得税 | 経費にならず、税額から差し引く(同法45条1項2号・120条1項4号) |
| 取得価額10万円以上の備品の代金 | 使い始めた年に全額を経費にできない場合がある(所得税法施行令138条1項) |
| 私用の買い物の代金 | 必要経費にならない(所得税法45条1項1号) |
源泉徴収の精算は、対象外の報酬から税金を引かれたときの記事で解説しています。
備品の青色申告の特例などは、少額の備品を経費にする特例の記事にまとめています。
支払明細の項目を1つずつ分けて、売上と経費を帳簿に入れます。

振込額で記帳すると、所得や帳簿の売上がずれます
振込額をそのまま売上にすると、手数料の入れ方しだいで所得や売上がずれます。
計算例
例:報酬月300,000円から手数料20%を差し引いて振り込まれる場合(1年分)
報酬 300,000円 × 12か月 = 3,600,000円 手数料 60,000円 × 12か月 = 720,000円 振込額 240,000円 × 12か月 = 2,880,000円 正しい記帳 3,600,000円 - 720,000円 = 2,880,000円 振込額だけを売上にした 2,880,000円(売上は720,000円少ない) 振込額を売上にし、手数料も経費にした 2,880,000円 - 720,000円 = 2,160,000円金額は、この取引の所得(売上から経費を引いた額)です。ほかの経費と源泉徴収はない前提です。
金額は一定の前提を置いた目安です。
最後の記帳では手数料を二重に差し引き、所得が720,000円少なすぎます。
税額が少なすぎた申告は修正申告で直し、延滞税もあわせて納めます(No.2026)。
調査の事前通知の前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません(同)。
注意
令和5年分以降は、調査で税金が増えるときの過少申告加算税に、加算があります。帳簿の売上金額が本来の3分の2未満なら、新たに納める税金の5%が加算されます。2分の1未満のときや、帳簿を提示しなかったときは10%です(No.2026)。差し引かれる額が報酬の3分の1を超えると、振込額は本来の売上の3分の2未満になります。
振込額で記帳すると、所得が合っていても帳簿の売上は足りなくなります。
支払調書と通帳が合わないのは、書き方の決まりが違うからです
支払調書の金額も通帳の入金も、売上の額と一致するとは限りません。
支払調書は、報酬の支払者が翌年1月31日までに税務署へ出す書類です(所得税法225条1項)。
対象は、所得税法204条1項などに挙がった報酬で、一定の金額を超えるものです(No.7431)。
書き方は、国税庁の令和8年分の手引が次のように示しています。
- 支払金額は、その年中に支払の確定した額で、未払の分も含みます
- 源泉徴収税額は、支払金額に対応する税額を別の欄に書きます
- 消費税は原則として含めます。明確に区分されていれば、含めずに書き、摘要欄に消費税の額を書くこともできます
一方、通帳の入金は、源泉徴収税額や手数料などを差し引いた後の額です。
売上を入れる年の決まりは、年またぎの売上の記事で解説しています。
ポイント
報酬の支払調書は、所得税法上、本人に交付する義務がないとされています(国税庁の法定調書FAQ)。写しが届かない取引先もあるため、支払明細はご自身で保存します。
支払調書は写さず、契約と支払明細から売上を組み立てて照合に使います。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
明細の保存と、売上と経費を分けた記帳は、ご自身で進められます。
- 契約書や利用規約で、報酬の決まり方と差し引かれるものを確かめる
- 支払明細を毎月保存し、差し引く前の報酬・差し引かれた項目・振込額を書き出す
- 差し引く前の報酬を売上、手数料などを経費として、分けて記帳する
- 売上から差し引かれた額の合計を引くと、振込額になるかを毎月確かめる
- 支払調書が届いたら、帳簿の売上との差の理由を書き留める
契約がどちらの形か、差し引かれた項目が経費になるかは個別判断です。
補足
消費税の課税事業者の方は、消費税法基本通達も確かめます。委託販売や業務代行で、販売などを相手に任せる側(委託者)は、差し引く前の金額が原則です。その課税期間の委託販売等のすべてで、手数料を引いた残額にしていれば認められます(10-1-12)。軽減税率の取引では、この扱いは使えません。源泉徴収された報酬は、差し引く前の金額で判定します(10-1-13)。

税理士に頼むと変わるのは、売上と経費の組み立て方です
税理士が入ると、明細から売上と経費を組み立て、根拠を残して申告できます。
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
- 契約書・利用規約・支払明細から、報酬の額と差し引かれた項目の仕分け
- 月ごとの記帳(記帳代行)と、通帳・支払明細との照合
- 源泉徴収税額の集計と、支払調書との差の整理
- 備品の減価償却と、消費税の申告が要るかの確認
- 青色申告決算書または収支内訳書と、確定申告書の作成・電子申告
- 提出した申告書の控えのお渡し
全国どこからでも、オンラインで完結します。
料金の目安
基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額が料金です。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。
通常料金での計算例です。差し引く前の売上が300万円以下の方の事業所得は39,000円(税込42,900円)です。その他控除セット(社会保険料など)6,000円と、記帳代行の基本料金8,000円を足します。合計は、32,000円+39,000円+6,000円+8,000円=85,000円です。税込では93,500円です。記帳代行は、このほかに1仕訳80円(税込88円)がかかります。仕訳分は、申告書の作成後に仕訳数が確定してから別途ご請求します。計算例は一定の前提を置いた目安です。
事業所得の単価は、売上の規模で決まります。ご自身の料金は60秒見積りで確かめられます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 報酬から手数料を差し引いて振り込まれます。売上は振込額ですか?
売上にするのは、原則として、契約で受け取ると決まった報酬の額です(所得税法36条1項)。報酬から手数料を差し引く約束なら、売上は差し引く前の報酬の額です。差し引かれた手数料は、事業のための費用なら必要経費です(同法37条1項)。報酬の決まり方は契約書で確かめます。
Q2. 振込額を売上にして、手数料を経費に入れなければ、結果は同じではありませんか?
手数料の全額が必要経費になる場合、所得の額は同じです。ただし帳簿の売上は少なくなります。調査で税金が増え、帳簿の売上が本来の3分の2未満だと過少申告加算税が重くなります(No.2026)。令和5年分以降の扱いです。手数料も経費に入れると、二重に差し引くことになります。
Q3. 取引先の支払調書の金額と、通帳の入金の合計が合いません。
支払調書の支払金額は、その年中に支払の確定した額で、未払の分も含みます。源泉徴収税額は別の欄で、消費税は原則として含めて書かれます(国税庁の令和8年分の手引)。通帳は源泉徴収税額や手数料などを差し引いた後の額です。売上は契約と支払明細から組み立てます。
Q4. 差し引かれたお金は、すべて経費になりますか?
事業のための手数料・場所代は必要経費です(所得税法37条1項)。源泉徴収された所得税は経費になりません(同法45条1項2号)。確定申告で税額から差し引きます(同法120条1項4号)。10万円以上の備品は、全額を一度に経費にできない場合があります(所得税法施行令138条1項)。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法27条2項・36条1項・37条1項・45条1項1号・2号・120条1項4号・225条1項3号、所得税法施行令138条1項、消費税法基本通達10-1-12・10-1-13、タックスアンサーNo.2026「確定申告を間違えたとき」・No.7431「「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等」、国税庁「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」・「法定調書に関するFAQ」、国税不服審判所の令和3年3月4日裁決、弊所の料金表の内容を扱っています。個々の契約がどちらの形に当たるかの当てはめ(委託販売・業務代行・報酬の歩合の定めなど)、売上を計上する時期の細目、源泉徴収の対象となる報酬の範囲と税率、給与と外注の区分、手数料に係る消費税の仕入税額控除とインボイス、消費税の納税義務の判定(基準期間・特定期間・インボイスの登録)、減価償却の計算と少額の減価償却資産・一括償却資産の特例、家事按分、青色申告特別控除、過少申告加算税・延滞税の計算、雑所得(副業)の帳簿の保存や収支内訳書の添付の基準、住民税・個人事業税・国民健康保険料への影響は扱っていません。紹介した裁決は、申告をせず推計で課税された事案です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は契約や取引の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(27条・36条・37条・225条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税不服審判所 公表裁決事例(令和3年3月4日裁決)https://www.kfs.go.jp/service/JP/122/08/index.html
- 国税庁「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」第4章 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/tebiki2026/PDF/04.pdf
- 国税庁「法定調書に関するFAQ」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/FAQ/houteichosho_qa.htm
- 国税庁 消費税法基本通達 第10章第1節「課税資産の譲渡等」(10-1-12・10-1-13)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/10/01.htm
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