この記事のポイント
- 源泉徴収のある報酬は、入金額でなく差し引かれる前の金額と源泉徴収税額で記録します
- 支払調書は支払った側が税務署に出す書類で、手元に届くとは限りません
- 原稿料などの副業は、収入300万円以下で帳簿書類の保存がないと業務に係る雑所得とされます
- 住民税は、確定申告書で副業分を自分で納める方法を選べる場合があります
まず結論:副業1年目は、12月31日までに1年分の記録をそろえておきます
この記事は、給与以外の副業で令和8年分の確定申告が必要な会社員の方に向けた内容です。
申告が必要かどうかの判定は、副業の20万円ルールの記事で解説しています。
申告の期間は、原則として令和9年2月16日から3月15日までです(タックスアンサーNo.2020)。
年内に記録の形を決めておくと、年明けは申告書の作成に集中できます。

年内にそろえる5つの記録を一覧にします
次の5つを、1月から12月の分で整えます。
| 記録 | 年内にそろえること |
|---|---|
| 収入 | 取引先ごとに、日付・金額・仕事の内容を書き出す |
| 差し引かれた所得税 | 報酬ごとの源泉徴収税額を確かめる |
| 経費 | 領収書や利用明細に、どの仕事に使ったかを書き添える |
| 支払調書 | 支払った側が作る書類。届いた分を保管する(届かないこともある) |
| 帳簿 | 上の取引を日付順に記録し、書類と一緒に保存する |
収入は「差し引かれる前の金額」と「源泉徴収税額」で記録します
報酬から所得税が差し引かれる副業では、差し引かれる前の金額を収入にします。
原稿料やデザインの報酬などは、原則として支払う側が所得税を差し引きます(所得税法204条1項1号)。
差し引かれた税額は、確定申告で過不足を精算します(同法120条1項4号、No.2020)。
計算例
例:令和8年7月から12月まで、毎月50,000円の原稿料が支払われた場合(消費税は考えない前提)
1回の源泉徴収税額(復興特別所得税を含む) 50,000円 × 10.21% = 5,105円 6回分の収入 50,000円 × 6回 = 300,000円 6回分の源泉徴収税額 5,105円 × 6回 = 30,630円 6回分の入金額 300,000円 - 30,630円 = 269,370円入金額の269,370円を収入にすると、収入が30,630円少なくなります。差し引かれた30,630円の精算も漏れます。
金額は一定の前提を置いた目安です(税率はタックスアンサーNo.2795)。
支払調書は、支払った側が税務署に出す書類です(所得税法225条1項)。
給与の源泉徴収票は本人にも交付されますが(同法226条1項)、支払調書の提出先は税務署です。
注意
同じ人への年間の支払が5万円以下の原稿料などは、支払調書の提出が要りません(No.7431)。支払調書を待たずに、ご自身の記録で収入と税額を確かめます。
支払調書は手元に届くとは限らないため、請求書と入金の記録が申告の土台になります。

経費は、領収書と「どの仕事に使ったか」をセットで残します
経費の領収書には、どの仕事のための支出かを書き添えて残します。
経費は、副業の収入を得るために直接かかった費用などです(所得税法37条1項)。
自宅の通信費のように、生活と仕事が混ざった費用を家事関連費といいます。
主な部分が仕事に必要なら、明らかに区分できる仕事の部分を経費にできます(所得税法施行令96条1号)。
区分の根拠として、仕事に使った時間や日数などを年内に書き留めておきます。
区分の根拠を示せない費用は、経費として認められないおそれがあります。
掛金や備品など、12月31日が区切りになるものは個人事業主の年末の記事で解説しています。
事業所得か雑所得かは、帳簿書類の保存が判断材料になります
原稿料などの副業は、収入300万円以下で帳簿書類の保存がないと、業務に係る雑所得とされます。
原稿料などの所得は、事業所得と認められるもの以外は業務に係る雑所得です(所得税基本通達35-2)。
業務に係る雑所得とは、副業の収入のうち営利を目的とした継続的なものです(No.1500)。
国税庁は令和4年10月7日に通達を改正し、判定の考え方を注書きで示しました。
前段は、社会通念(世間一般の考え方)上、事業と称するに至る程度かで判定するとしています。後段は次のとおりです。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。
(所得税基本通達35-2の注)
補足
帳簿書類を残していても、事業所得になるとは限りません。国税庁の解説は、収入が僅少な場合や営利性が認められない場合は、個別に判断するとしています。僅少の例には「例年、300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満」の場合を挙げています。例年とは、おおむね3年程度の期間です。
事業所得の赤字は給与と損益通算(ほかの所得との差し引き)ができます(所得税法69条1項)。
雑所得の赤字は、損益通算ができません(No.1500)。
事業所得になる副業は、金額にかかわらず帳簿の記録と保存が必要です(所得税法232条1項)。
判断の基準と裁判例は事業所得と雑所得の記事で解説しています。

副業分の住民税は、確定申告書で納め方を選ぶ欄があります
国税庁の令和7年分の手引きでは、第二表の住民税の徴収方法の欄で「自分で納付」を選べます。
会社員の給与分の住民税は、給与から差し引く特別徴収で納めます(地方税法321条の3第1項)。
市区町村は、給与以外の副業分もこの差し引きに加えることができます(同条2項)。
申告書で普通徴収(自分で納める方法)を希望すれば、加えない定めです(同項ただし書)。
ポイント
文京区の案内では、変わるのは納め方で、住民税の額は変わりません。期限内に確定申告書を出して選ぶよう案内しています。給与以外の所得がマイナスの場合などは、「自分で納付」でも特別徴収になる場合があるとしています。
扱いは条例や申告の内容で変わるため、お住まいの市区町村で確かめます。
年内の準備を飛ばすと、申告で4つの誤りにつながります
記録がそろわないまま申告すると、税額の誤りや期限の遅れにつながります。
- 入金額だけを収入にする ― 収入が少なくなり、差し引かれた税額の精算も漏れます。
- 支払調書を待って期限を過ぎる ― 期限後申告になります。無申告加算税や延滞税の対象になり得ます(国税通則法66条1項・60条1項2号)。
- 帳簿書類を残さずに事業所得で申告する ― 原稿料などの収入が300万円以下なら、雑所得とされます。赤字を給与と通算していた場合は、その分の税額が増えます。
- 生活と仕事が混ざった費用を全額経費にする ― 区分できないと、経費にできないおそれがあります。
どの誤りも、年内に記録の形を決めておけば、申告の前に気づきやすくなります。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
年内にご自身で進められるのは、次の5つです。
- 1月から12月の収入を、取引先ごとに請求書と入金明細で書き出す
- 報酬ごとに、差し引かれた税額を支払明細か入金額との差で確かめる(振込手数料は除く)
- 経費の領収書と利用明細を月ごとにまとめ、用途を書き添える
- 取引を日付順に帳簿へ記録し、書類と一緒に保存する
- 取引先に、支払調書や支払明細を出してもらえるかを確かめる
次の4つは、事実によって判断が分かれます。
- 事業所得か、業務に係る雑所得か
- 家事関連費のうち、仕事に使った部分の割合
- 12月の仕事で、入金が令和9年1月になる報酬の年分
- 住民税の徴収方法の扱い
区分と按分は、帳簿をつけ始める前に方針を決めておくと、記録がぶれません。

税理士に頼むと変わるのは、記録の点検と区分の判断です
小松公認会計士・税理士事務所では、副業1年目の方の申告で次の作業を行います。
- 請求書・入金明細・支払調書を突き合わせた、収入と源泉徴収税額の確定
- 経費の区分と、家事関連費の按分の根拠づけ
- 帳簿書類の状況をふまえた、事業所得か雑所得かの検討
- 本業の源泉徴収票と合わせた確定申告書の作成と、期限内のe-Taxでの提出
- 住民税の徴収方法の欄の確認と、提出した申告書の控えの保管
全国どこからでも、オンラインで完結します。料金は、所得の種類・取引の量・記帳の状態で決まり、60秒見積りでその場で分かります。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 支払調書が届かないと、確定申告はできませんか?
支払調書は、支払った側が税務署に出す書類です(所得税法225条1項)。届かなくても、請求書・入金明細・支払明細で収入と差し引かれた税額を確かめて申告します。同じ人への年間の支払が5万円以下の原稿料などは、支払調書の提出も要りません(No.7431)。
Q2. 副業の報酬から差し引かれた所得税は、どうなりますか?
差し引かれた税額は、確定申告で年間の税額との過不足を精算します(タックスアンサーNo.2020)。精算には、差し引かれる前の金額と差し引かれた税額の記録が要ります。収入を入金額で記録すると、収入と精算する税額の両方が少なくなります。
Q3. 帳簿をつけていれば、副業は事業所得になりますか?
なるとは限りません。通達は、社会通念上事業と称するに至る程度かで判定するとしています(所得税基本通達35-2の注)。国税庁の解説は、帳簿書類があっても個別に判断する場合を挙げています。収入が僅少な場合と、営利性が認められない場合です。
Q4. 副業分の住民税を、自分で納めることはできますか?
給与以外の副業分は、申告書で普通徴収(自分で納付)を希望できます(地方税法321条の3第2項)。令和7年分の手引きでは、確定申告書の第二表で「自分で納付」を選びます。ただし、給与以外の所得がマイナスの場合などは特別徴収になる場合があり、市区町村で確かめます。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法37条1項・69条1項・120条1項4号・204条1項1号・225条1項・226条1項・232条1項、所得税法施行令96条1号、所得税基本通達35-2、国税庁「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説」(令和4年10月7日の通達改正に係るもの)、地方税法321条の3第1項・2項、国税通則法60条1項2号・66条1項、タックスアンサーNo.1500「雑所得」・No.2020「確定申告」・No.2795「原稿料や講演料等を支払ったとき」・No.7431「『報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書』の提出範囲と提出枚数等」、国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」、文京区「副業がある場合の徴収方法について」の内容を扱っています。副業の所得について確定申告が必要かどうかの判定、開業届と青色申告の承認申請、事業所得か雑所得かを判定した裁判例と判定要素の詳細、副業が給与(アルバイトなど)の場合、収入の計上時期の細目、家事関連費の按分割合の決め方、青色申告者の家事関連費の特例、前々年の収入による業務に係る雑所得の書類の保存義務と収支内訳書の添付、現金主義の特例、収支内訳書の書き方、帳簿書類の保存期間、電子取引データの保存、減価償却と少額減価償却資産、消費税とインボイス、令和9年分以後の防衛特別所得税、令和8年分の確定申告書の様式、無申告加算税・延滞税の割合と計算、住民税の税額の計算と65歳以上の方の公的年金の扱い、社会保険料への影響、勤務先の副業の規定は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は所得や控除の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(37条・69条・120条・204条・225条・226条・232条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁 所得税基本通達 法第35条《雑所得》関係(35-2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/09.htm
- 国税庁「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/pdf/02.pdf
- 国税庁 タックスアンサー No.7431「『報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書』の提出範囲と提出枚数等」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7431.htm
- 国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」手順6 住民税、事業税に関する事項を記入するhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/03/order6/3-6_02.htm
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