この記事のポイント
- 何年分まとめて払っても、経費は原則としてその年に経過した期間の分です
- 貸している建物の保険で、保険期間3年以上・満期返戻金ありなら積立保険料の部分は資産です
- 地震保険料控除は自分や生計を一にする家族が持ち、常に住む家屋などが対象で、貸す部分は必要経費です
- 修繕に備えて自分で積み立てるお金は、積み立てた年の経費になりません
まず結論:何年分まとめて払っても、経費はその年に経過した期間の分です
貸している建物の火災保険料などは、家賃収入(不動産所得)の必要経費になります(No.1370)。
ただし、何年分もまとめて払っても、経費になるのは原則としてその年に経過した期間の分です。
保険期間3年以上で満期返戻金のある積立型の保険は、積立保険料の部分を資産として扱います。
年内に一括で払っても、令和8年分の経費が保険料の全額になるわけではありません。

何年分もの保険料は、保険期間に合わせて各年の経費に分けます
保険料を経費にする年は、原則として、払った日ではなく保険期間で決まります。
所得税基本通達37-30の2は、前払費用をその年分の必要経費に入れないとしています。
前払費用は、契約で続けて受ける役務(サービス)のうち、12月31日にまだ受けていない分の費用です。
例外は、支払日から1年以内に受ける役務の分を払い、継続して払った年の経費にしている場合です。
5年分の一括払いは、支払日から1年以内に受ける役務の分の支払いではありません。
翌年以降の期間の分は、払った年の経費にせず、それぞれの年に回します。
会社で物件を持つ場合は、法人の損害保険料の記事をご覧ください。
満期返戻金のある積立型は、積立保険料の部分が資産になります
積立型の保険は、保険料を2つに分けて扱います(所得税基本通達36・37共-18の2)。
対象は、保険期間が3年以上で満期返戻金がある「長期の損害保険契約」です。
- 積立保険料の部分:満期・解約・失効の時まで、資産として扱う
- それ以外の部分:期間の経過に応じて、必要経費にする
区分は、保険会社の書類の記載によります。
支払った保険料の金額のうち、積立保険料に相当する部分の金額とその他の部分の金額との区分は、保険料払込案内書、保険証券添付書類等により区分されているところによる。
(所得税基本通達36・37共-18の2の注)
計算例
例1:令和8年10月1日から5年間の掛け捨ての保険料150,000円を、一括で払った場合
1か月あたり 150,000円 ÷ 60か月 = 2,500円 令和8年分の経費(10月〜12月) 2,500円 × 3か月 = 7,500円 令和9年分〜令和12年分の経費 各年 2,500円 × 12か月 = 30,000円 令和13年分の経費(1月〜9月) 2,500円 × 9か月 = 22,500円例2:同じ期間の積立型で、保険料480,000円のうち積立保険料が300,000円の場合
積立保険料以外の部分 480,000円 − 300,000円 = 180,000円 令和8年分の経費 180,000円 ÷ 60か月 × 3か月 = 9,000円 積立保険料300,000円 満期・解約・失効の時まで資産として扱う月割りで計算し、建物の全部を貸している前提です。
金額は一定の前提を置いた目安です。
満期返戻金を受け取った年は、一時所得(継続的でない一時の所得)として計算します。
差し引く保険料は、総額から必要経費にした部分を除いた残りです(同36・37共-18の6)。
例2で全期間の経費を入れていれば、差し引く保険料は480,000円ではなく300,000円です。
地震保険料控除の対象は、自分や生計を一にする家族が持ち、常に住む家の分です
貸している建物の地震保険料は、控除ではなく、損害保険料として必要経費で扱います(No.1370)。
控除の対象は、自分や生計を一にする家族が持ち、常に住む家屋などの保険です(所得税法77条1項)。
自宅と貸室が1つの建物にある場合は、保険料を次のように分けます。
| 保険料の部分 | 扱い |
|---|---|
| 住んでいる部分の地震保険料 | 地震保険料控除の対象(所得税基本通達77-2・77-5) |
| 貸している部分の火災保険料・地震保険料 | 不動産所得の必要経費 |
| 住んでいる部分の火災保険料 | 必要経費にならない |
必要経費にする部分は、貸付面積や保険金額などの適切な基準で分けます。
国税庁の「収支内訳書(不動産所得用)の書き方」の案内です。
住んでいる部分は控除、貸している部分は必要経費と、分けて扱います。
ポイント
保険料は3つに分けます。掛け捨ての部分は原則として期間に応じた経費、積立保険料は資産です。住んでいる部分の保険料は、必要経費にしません。

修繕に備えて自分で積み立てるお金は、経費になりません
将来の修繕のために自分で積み立てたお金は、積み立てた年の必要経費になりません。
償却費以外の費用で、その年に債務が確定しないものは除かれるからです(所得税法37条1項)。
債務の確定には、12月31日までに次の3つがそろうことが必要です(所得税基本通達37-2)。
- 債務が成立していること
- 債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
- 金額を合理的に計算できること
自分の口座への積立ては、工事の債務がまだ成立していません。
修繕費になる工事の費用は、積み立てた年ではなく、債務が確定した年の経費です。
工事によっては、修繕費ではなく資本的支出(減価償却で経費にする支出)になります。
分け方は修繕費と資本的支出の記事、工事の時期は不動産所得の年末チェックの記事で解説しています。
積立型の保険で修繕に備える場合も、積立保険料の部分は経費になりません。

保険料の扱いを間違えると、2年分以上の申告に響きます
振り分けを間違えると、払った年とその後の年の経費がずれます。
- 5年分を払った年に全額経費にした ― 翌年以降の分だけ経費が多すぎます。税金が少なすぎれば修正申告をします。
- 積立型の保険料を全額経費にした ― 積立保険料の部分は、満期や解約などの時まで資産です。
- 2年目以降の分を入れ忘れた ― 経費が少なく、税金を納めすぎることがあります。
- 貸している部屋の地震保険料を控除に入れた ― 貸している部屋は控除の対象外です。
- 満期返戻金から保険料の総額を差し引いた ― 必要経費にした部分は差し引けません。
注意
税金が少なすぎたときは修正申告をし、延滞税もあわせて納めます。調査の事前通知の前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。事前通知の後は5%、調査の後は10%がかかります。新たに納める税金が一定の額を超える部分は、それぞれ10%・15%です(No.2026)。
納めすぎたときは、更正の請求ができる場合があります。
更正の請求の期間は、原則として法定申告期限から5年以内です(No.2026)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
保険を更新して払う前に、ご自身で確かめられるのは次の4つです。
- 保険証券で、保険期間の始まりと終わりの日を確かめる
- 払込案内書で、積立保険料が含まれているかを確かめる
- 建物のうち、貸している部分と住んでいる部分の面積を書き出す
- その年に経過する月数と、翌年以降に回す額を表にする
全部を貸している建物の掛け捨ての保険なら、ここまでで整理できる場合があります。
保険料を分ける基準、解約や保険金を受け取った年の処理、1年契約の扱いは個別判断です。
税理士に頼むと変わるのは、各年の経費の表と申告への反映です
税理士が入ると、各年の経費の額を表で確かめてから申告できます。
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
- 保険証券と払込案内書を読み取り、各年の経費の表を作る
- 翌年以降に回した保険料を、毎年の申告に引き継ぐ
- 自宅部分がある建物の保険料を分ける基準を整理し、地震保険料控除と振り分ける
- 満期返戻金・解約返戻金を受け取った年の一時所得を計算する
- 収支内訳書または青色申告決算書と確定申告書を作り、電子申告して控えをお渡しする
全国どこからでも、オンラインで完結します。
料金の目安
基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額が料金です。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。
家賃収入の単価は、物件ごとの1年分の家賃収入(経費を引く前)の額で決まります。
ご自身の料金は60秒見積りで確かめられます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
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初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 火災保険を5年分まとめて払いました。払った年に全額を経費にできますか?
原則としてできません。経費になるのは、その年に経過した期間の分です。翌年以降の分は前払費用で、その年分の必要経費に入りません(所得税基本通達37-30の2)。5年分の一括払いは、支払日から1年以内に受ける役務の分の支払いではありません。
Q2. 積立型の火災保険の保険料は、どう扱いますか?
貸している建物の保険で、保険期間3年以上・満期返戻金ありの契約が対象です。積立保険料の部分は、満期・解約・失効の時まで資産として扱います。残りの部分は、期間の経過に応じて必要経費にします(所得税基本通達36・37共-18の2)。
Q3. 貸しているマンションの地震保険料は、地震保険料控除に入れられますか?
貸している部屋の分は入れられません。控除の対象は、自分や生計を一にする家族が持ち、常に住む家屋などの保険です(No.1146)。貸している建物の地震保険料は、損害保険料として不動産所得の必要経費で扱います(No.1370)。
Q4. 将来の大規模修繕に備えて自分で積み立てているお金は、経費になりますか?
なりません。償却費以外の費用で、その年に債務が確定しないものは必要経費から除かれます(所得税法37条1項)。修繕費になる工事は、債務が確定した年の経費です。確定には、12月31日までに3つの要件がそろう必要があります(所得税基本通達37-2)。管理組合に払う修繕積立金は、一定の要件で支払期日の年の経費にできます(国税庁の質疑応答事例)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法37条1項・77条1項、所得税基本通達36・37共-18の2・36・37共-18の6・37-2・37-30の2・77-2・77-5、タックスアンサーNo.1146「地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約」・No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」・No.2026「確定申告を間違えたとき」、国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」、弊所の料金表の内容を扱っています。現金主義の特例を選んだ青色申告者の計上時期、1年契約の保険料を年払いした場合の取扱いの細目、自宅部分の地震保険料を一括で払った場合の控除額の計算、地震保険料控除の按分の算式と居住用がおおむね90%以上の場合の特例、賃借した建物や使用人の建物の保険料、賃借人が保険料を払う場合の取扱い、保険事故で保険金を受け取ったときの課税と積立保険料の処理、一時所得の特別控除と課税される金額の計算、保険料の消費税、区分マンションの管理組合に払う修繕積立金の要件の細目、法人の損害保険料、加算税の加重措置と延滞税の計算、旧長期損害保険料の経過措置、保険の契約期間の上限は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は保険の契約内容や建物の使い方によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(37条・77条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁 所得税基本通達〔長期の損害保険契約に係る支払保険料等〕(36・37共-18の2〜18の7)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/15.htm
- 国税庁 所得税基本通達〔その他の共通費用〕(37-30の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/09.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2026「確定申告を間違えたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
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火災保険・地震保険を何年分もまとめて払っても、経費は原則としてその年に経過した期間の分です。保険期間3年以上で満期返戻金がある保険は、積立保険料の部分を資産として扱います。自宅部分がある建物は、貸している部分と住んでいる部分で保険料の扱いが分かれます。代表税理士が、保険証券と払込案内書から各年の経費の表を作り、保険料を分ける基準まで整理します。収支内訳書・青色申告決算書と確定申告書の作成、電子申告まで対応します。全国どこからでもオンラインで完結します。保険を更新して払う前にご相談ください。
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