この記事のポイント
- 確定申告書は原則申告書を出す時の住所地の税務署に出します
- 売却益の住民税は売った翌年1月1日の住所地で課税されます
- 3,000万円控除は、契約前日の住民票の住所が違えば戸籍の附票の写しなども出します
- 振替納税は、転居で税務署が変わっても手続なしで継続できます(国税庁の案内)
まず結論:確定申告書は、出す時の住所の税務署に出します
確定申告書は、原則として、申告書を出す時の住所地を所轄する(受け持つ)税務署に出します。
納税申告書は、その提出の際におけるその国税の納税地(以下この条において「現在の納税地」という。)を所轄する税務署長に提出しなければならない。
(国税通則法21条1項)
納税地とは、申告や納税をする税務署を決める場所です。
国内に住所がある人は、その住所地が納税地です(所得税法15条1号)。
住所とは生活の本拠のことで、客観的な事実で判定されます(タックスアンサー No.2029)。
売った家の所在地で、提出先の税務署が決まるわけではありません。

申告の前に転居したら、転居先の税務署に出します
申告書を出す前に引っ越したなら、出す先は原則として新しい住所の税務署です。
国税庁は、令和8年1月20日にa市からb市へ転居した給与所得者の例を示しています。
令和7年分の申告書は、b市を所轄する税務署長に出すという答えです(No.2029の質疑応答Q2)。
申告する年分の1月1日以後に引っ越した場合には、次の定めもあります。
前の住所の税務署に出しても、その税務署は受理することができます(国税通則法21条2項)。
受理されると、今の税務署に出したものとみなされ、そこへ送られます(同条2項・3項)。
ただ、受理するかどうかは税務署の判断です。初めから今の住所の税務署に出すのが確実です。
ポイント
以前は転居すると「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を出す必要がありました。令和4年度税制改正により、令和5年1月1日以後は提出が不要です。新しい住所は、申告書に書いて知らせます。
税務署からの書類と振替納税は、引っ越す前に確かめます
年の途中で引っ越すなら、書類の届き先と振替納税を先に確かめます。
国税庁は、文書は原則として納税地あてで、年の途中の転居では到着が遅れる可能性があるとしています。
届き先を早めに変えたいときは、申出書を新しい住所の税務署に出せます。
正式名は「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」です。
様式は、令和8年9月24日の国税システム更改で新しくなりました。
日本郵便に転居届を出すと、旧住所あての郵便物が届出日から1年間、新住所へ転送されます。
国税庁の案内では、振替納税は、転居で税務署が変わっても手続なしで続けられます。
振替納税とは、預貯金口座からの引落しで国税を納める方法です。
タックスアンサー No.2091・No.9201にも、同じ案内があります。
口座を変えるときは、新しい口座の振替依頼書を出します(No.9201)。

住民税は、売った翌年の1月1日の住所地が課税します
売却益の住民税は、売った翌年の1月1日に住所がある市区町村と都道府県が課税します。
個人の市町村民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
(地方税法318条。道府県民税は同法39条が同じ定めです)
賦課期日とは、その年度の住民税を誰にどこが課税するかを判定する基準の日です。
住民税は、前年の所得をもとに課税されます(同法313条1項・附則34条1項など)。
令和8年に売ったなら、令和9年1月1日の住所地が令和9年度分を課税します。
ここでの住所は、原則として住民票(住民基本台帳)に記録された所です(同法294条2項)。
| 引っ越した時期(令和8年に売却) | 確定申告書の提出先 | 令和9年度の住民税の課税先 |
|---|---|---|
| 令和8年12月31日までに転居 | 新しい住所の税務署 | 新しい住所地 |
| 令和9年1月2日以後、申告前に転居 | 新しい住所の税務署 | 前の住所地 |
| 申告書を出した後に転居 | 前の住所の税務署(出した時の住所) | 前の住所地 |
表は、転居と同時に住民票も移した前提の目安です。
納期や給与天引きなどの納め方は、不動産を売った翌年に来る住民税の記事で扱っています。
3,000万円控除は、契約前日の住民票の住所が売った家と違うと書類が増えます
売買契約日の前日までに住民票を新居へ移していると、戸籍の附票の写しなども添付します。
特例の要件の全体は、マイホーム売却の3,000万円特別控除の記事にまとめています。
引っ越しで特に関わるのは2点です。1点目は売る期限です。以前に住んでいた家も、この特例の対象になり得ます。
ただし、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。
2点目は添付書類です。基本は、譲渡所得の内訳書です(タックスアンサー No.3302)。
売買契約日の前日の住民票の住所と、売った家の所在地が異なる場合などは、書類が増えます。
住んでいたことを明らかにする、戸籍の附票の写しなどを併せて出します。
根拠は、租税特別措置法施行規則18条の2第2項1号です。
戸籍の附票とは、本籍地の市区町村が作る住所の記録です。
住所と、その住所を定めた年月日が載ります(住民基本台帳法16条・17条)。
計算例
例:令和6年8月20日に家X(a市)から新居A(b市)へ転居し、住民票も移動。令和8年10月15日に家Xの売買契約、11月30日に引渡し。令和9年1月20日に新居B(c市)へ転居、3月10日に申告。
売る期限:3年を経過する日は令和9年中 → 令和9年12月31日まで(期限内) 書類:契約日の前日(令和8年10月14日)の住民票は新居A ≠ 家X → 戸籍の附票の写しなど 提出先:令和9年3月10日の住所は新居B → c市を所轄する税務署 住民税:令和9年1月1日の住所は新居A → 令和9年度分はb市で課税日付は一定の前提を置いた目安です。この特例は新居Aの住宅ローン控除と併用できず、受けた年分の修正が要ります。

失敗パターン:提出先・書類・住民税などで起きる6つの形
次の6つは、どれも手続の誤りや遅れにつながります。
- 売った家や前の住所の税務署に出す ― 提出先は、出す時の住所地の税務署です
- 「1月1日の住所」欄を空けて出す ― 令和7年分の手引きは、住所が違えば必ず記入するとしています
- 税務署からの書類の到着が遅れる ― 申出書と郵便の転居届で備えます
- 前の市区町村からの住民税の案内を見落とす ― 課税するのは1月1日の住所地です
- 戸籍の附票の写しなどを付けていない ― 契約日の前日の住民票の住所が、売った家と違う場合です
- 新居の住宅ローン控除への影響を見落とす ― 3,000万円控除と併用できない場合があります
注意
前の住所の税務署に出した申告書は、受理されて初めて今の税務署に出したものとみなされます。期限の直前に出す先を誤ると、出し直す時間がなくなるおそれがあります。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
住所と日付の確認はご自身でできますが、どこが住所かの判断は個別です。
- 申告書を出す日の住所と、その住所を所轄する税務署を確かめる
- 売った翌年1月1日に住民票があった市区町村を確かめる
- 売買契約日の前日の住民票の住所と、売った家の所在地を比べる
- 新居で住宅ローン控除を受けているか、受ける予定かを確かめる
ここから先は、事実関係で結論が変わります。
住民票と実際の住まいが違う、住まいが2か所ある、住まなくなった日がはっきりしない場合です。
補足
海外へ引っ越して国内に住所も居所もなくなり、申告などが必要な人は、納税管理人を定めます。納税管理人とは、国内で申告などを代わりに処理する人です。定めたら、税務署長に届け出ます(国税通則法117条1項・2項)。詳しくは海外在住のまま不動産を売却したときの記事をご覧ください。

税理士が入ると変わるのは、住所の履歴と日付の突き合わせです
ひとつめは、転居の日付と住民票の履歴を並べ、提出先の税務署を確定することです。
ふたつめは、契約日の前日の住所を確かめ、戸籍の附票の写しなどの要否を判断することです。
みっつめは、住まなくなった日から、3,000万円控除の売る期限を確かめることです。
よっつめは、申告書の住所欄の記入と、住民税の課税先の確認です。
小松公認会計士・税理士事務所では、住所の確認から申告書の作成・提出までを担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 売った家の所在地の税務署に出すのですか?
いいえ。確定申告書は、原則として申告書を出す時の住所地を所轄する税務署に出します(国税通則法21条1項・所得税法15条1号)。売った家の所在地で、提出先の税務署が決まるわけではありません。
Q2. 前の住所の税務署に出してしまったら、どうなりますか?
申告する年分が始まった後に住所が変わった場合、前の住所の税務署は申告書を受理することができます。受理されれば、今の税務署に出したものとみなされます(国税通則法21条2項)。受理は税務署の判断なので、初めから今の住所の税務署に出すのが確実です。
Q3. 1月に引っ越したら、売却益の住民税はどこが課税しますか?
売却益の住民税は、売った翌年の1月1日に住所がある市区町村と都道府県が課税します(地方税法318条・39条)。1月2日以後に引っ越したなら、前の住所地です。住所は、原則として住民票(住民基本台帳)で判断されます(同法294条2項)。
Q4. 3,000万円控除では、どんな書類を付けますか?
国税庁の案内では、譲渡所得の内訳書を付けます。売買契約日の前日の住民票の住所と売った家の所在地が違う場合などは、戸籍の附票の写しなども併せて出します(タックスアンサー No.3302・租税特別措置法施行規則18条の2)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税通則法21条・117条、所得税法15条、地方税法39条・294条・313条・318条・附則34条、租税特別措置法施行規則18条の2、住民基本台帳法16条・17条、国税庁タックスアンサー No.2029・No.2091・No.3302・No.9201、国税庁「申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付」、国税庁「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する手続」、国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」、国税庁「国税システムの更改について」、日本郵便「転居・転送サービス」の内容を扱っています。居所地や事業所等を納税地とする特例の選び方、住民票を移さずに住んでいる場合の住民税の扱い(地方税法294条3項・4項)、住まいが2か所ある場合の住所の判定、3,000万円特別控除のその他の要件と税額の計算、譲渡所得の内訳書の各欄の書き方、住民税の納期と納め方、令和8年分の確定申告書の様式と記載欄、海外へ転出する場合の課税、e-Taxの操作は扱っていません。記事中の日付の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の扱いは転居・住民票の異動・売買契約の日付と事実関係によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2029 確定申告書の提出先(納税地)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2029.htm
- 国税庁 A1-6 所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する手続https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/06.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- e-Gov法令検索 国税通則法https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- e-Gov法令検索 地方税法https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
自宅の売却と引っ越しが重なるなら、提出先と書類を先に確かめませんか
自宅を売って引っ越すと、確定申告書の提出先、税務署からの書類の届き先、住民税を課税する市区町村、3,000万円控除で付ける書類が、転居と契約の日付で変わることがあります。代表税理士が、住民票の履歴と売買契約の日付を突き合わせ、提出先の確認から申告書の作成・提出まで一貫して担当します。転居の予定が決まった段階でご相談ください。
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