この記事のポイント
- 事業・家賃収入の人は、報酬のうち業務について生じた部分が必要経費の対象です
- 給与だけの人は、給与の所得から報酬を差し引く仕組みがありません
- 譲渡費用は売るために直接かかった費用で、申告の報酬は国税庁の例にありません
- 経費にする年は払った日でなく、原則として債務が確定した年です
まず結論:税理士の報酬が経費になるかは、所得の種類で分かれます
確定申告を頼んだ税理士の報酬は、誰でも経費にできるわけではありません。
必要経費(収入から差し引ける費用)を引くのは、事業所得・不動産所得などの計算です。
給与だけの人には、給与の所得から報酬を差し引く仕組みがありません。
経費にする年は、払った日ではなく、債務が確定した年が原則です。

所得の種類ごとに、報酬の扱いを一覧にします
報酬の扱いは、所得の計算のしかたで決まります。
| 所得の種類 | 報酬の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 事業所得・不動産所得 | 業務について生じた部分は、必要経費の対象 | 所得税法37条1項 |
| 雑所得(副業など。公的年金等を除く) | 業務について生じた部分は、必要経費の対象 | 同上 |
| 給与所得 | 収入から給与所得控除額を引く仕組みで、報酬を引く仕組みはない | 同法28条2項・57条の2 |
| 譲渡所得 | 費用として引くのは、取得費と譲渡費用 | 同法33条3項 |
所得控除(所得税法72条〜86条)にも、税理士の報酬を差し引く項目はありません。
事業と家賃収入の人は、業務について生じた部分が必要経費です
報酬のうち、事業や貸付けの業務について生じた部分は、必要経費の対象です。
必要経費には、販売費・一般管理費その他の業務について生じた費用が入ります(所得税法37条1項)。
確定申告書等作成コーナーのよくある質問も、決算書などの必要経費に「税理士等の報酬」を挙げています。
本年中に税理士や弁護士、公認会計士などに支払うことの確定した報酬や料金などです。
(国税庁 確定申告書等作成コーナー よくある質問「税理士等の報酬」)
注意
家事上の経費は、必要経費になりません(所得税法45条1項1号)。家事と業務が混ざる経費は、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合に限り、その部分が経費です。根拠は同法施行令96条とNo.2210です。
給与や医療費控除の計算は、事業や貸付けの業務そのものではありません。
報酬にこうした分が含まれるときは、業務の分を区分できるかが分かれ目です。
家事と業務が混ざる費用の考え方は、家事按分の記事で解説しています。

給与だけの人は、報酬を差し引く仕組みがありません
給与だけの人が払った報酬は、給与の所得の計算で差し引けません。
給与所得の金額は、給与の収入から給与所得控除額を引いた残額です(所得税法28条2項)。
給与所得控除額は、収入に応じて決まる額です。
実際の支出を引く特定支出控除も、対象は通勤費・研修費など7つです(同法57条の2)。
確定申告を頼んだ報酬は、この7つに含まれていません。医療費控除などの申告を頼んだ場合も同じです。
ポイント
給与だけの人は、報酬を払っても所得税は減りません。還付の見込み額と料金を比べて、頼むかを決めます。
不動産を売った年は、報酬が譲渡費用になるかを別に考えます
売却の申告の報酬は、譲渡所得の計算では別の基準で判断します。
土地や建物の譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します(No.3255)。
譲渡費用は、土地や建物を売るために直接かかった費用です(同)。
国税庁は例として、仲介手数料・売主が負担した印紙税・立退料・取壊し費用などを挙げています。
国税不服審判所の裁決は、次の基準を示しています。
現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的にみてその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものである
(国税不服審判所 平成26年2月4日裁決)
この裁決では、税理士への相談料(滞納の整理や売却の事務の報酬)が譲渡費用に当たらないとされました。
売った後に申告書を作る報酬は、国税庁が挙げる譲渡費用の例にありません。
売却でかかった費用の線引きは、取得費と譲渡費用の記事で解説しています。

経費にする年は、払った年ではなく、原則として債務が確定した年です
必要経費になるのは、原則として、その年に債務が確定した金額です(No.2210)。
その年に払っても、債務が確定していなければ、その年の必要経費になりません(同)。
債務の確定には、12月31日までに次の3つがそろうことが必要です(所得税基本通達37-2)。
- 債務が成立していること
- 具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
- 金額を合理的に算定できること
令和8年分の申告書を令和9年に作成・提出するなら、報酬は原則として令和9年分の必要経費の対象です。
年内に一部を前払いしても、作業が翌年なら、原則として翌年分の扱いです。
計算例
例:令和9年分の必要経費にできる報酬が100,000円の場合(減る所得税の目安)
195万円超330万円以下の区分(10%) 100,000円 × 10% = 10,000円 330万円超695万円以下の区分(20%) 100,000円 × 20% = 20,000円 900万円超1,800万円以下の区分(33%) 100,000円 × 33% = 33,000円区分は、課税される所得金額(所得控除を引いた後の金額)で見ます。税率は所得税法89条によります。復興特別所得税(令和9年以後は防衛特別所得税も)と住民税は含めていません。
金額は、所得控除の額が変わらないなど、一定の前提を置いた目安です。経費を引く前後で税率の区分や控除の額が変わると、計算も変わります。
報酬の扱いを誤ると、2年分の申告に響くことがあります
次の4つは、報酬の扱いで起こりうる誤りです。
- 給与だけなのに、報酬を差し引いて申告する ― 給与所得にも所得控除にも、引く仕組みはありません。
- 令和8年分の申告の報酬を、令和8年分の経費にする ― 年内に債務が確定していません(No.2210)。令和8年分と令和9年分の両方の所得がずれます。
- 業務と関係のない分まで、事業の経費に入れる ― 必要経費になるのは、業務に必要な部分を明らかに区分できる金額です(No.2210)。
- 売却の申告の報酬を、譲渡費用に入れる ― 譲渡費用は、売るために直接かかった費用です(No.3255)。
報酬の扱いは、所得の種類・業務の分・経費にする年の3点で確かめます。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
報酬について、ご自身で確かめられるのは次の4つです。
- 申告する所得の種類(給与・事業・家賃収入・売却など)を書き出す
- 税理士の請求書と領収書を残し、作業の内容と金額を確かめる
- 報酬を払った日と、申告書を提出した日を記録する
- 年内に払った分があれば、どの年分の申告の報酬かを控えておく
報酬のどこまでが業務の分か、売却の年の報酬をどう扱うかは、個別判断です。
年の途中で事業をやめた方なども、事実に応じて判断が分かれます。
税理士に頼むと変わるのは、所得ごとの整理と経費にする年の確認です
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
- 申告する所得と控除の確認と、集める書類の一覧でのご案内
- 事業・家賃収入の帳簿の確認と、必要経費の内訳の整理
- 前年に払った報酬など、経費にする年分の確認
- 不動産を売った方は、特例が使えるかの判定と、譲渡所得の内訳書の作成
- 申告書の作成と電子申告
資料はスマホで撮影して送れます。全国どこからでも、オンラインで完結します。
料金の目安
基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額が料金です。基本料金には、申告書の作成と電子申告が含まれます。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。
計算例:給与所得・医療費控除・ふるさと納税・その他控除セットが各6,000円の場合です。合計は32,000円+6,000円×4=56,000円(税込61,600円)です。65,000円に満たないため、最低料金の65,000円(税込71,500円)になります。計算例は一定の前提を置いた目安です。
事業所得は売上規模、不動産所得は家賃収入に応じた料金です。給与だけの方は、この料金を経費にできません。ご自身の料金は60秒見積りで確かめられます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 確定申告を頼んだ税理士の報酬は、必要経費になりますか?
必要経費を引くのは、事業所得・不動産所得・雑所得(公的年金等を除く)などです(所得税法37条1項)。報酬のうち、業務に必要な部分として明らかに区分できる金額が対象です(No.2210)。給与だけの方には、報酬を差し引く仕組みがありません。
Q2. 会社員で、医療費控除の申告だけを頼みました。報酬は差し引けますか?
差し引けません。給与所得は、収入から給与所得控除額を引いて計算します(所得税法28条2項)。特定支出控除の対象は通勤費・研修費など7つで、申告の報酬は含まれていません(No.1415)。還付の見込み額と料金を比べて、頼むかを決めます。
Q3. 令和8年分の申告の報酬は、どの年の経費になりますか?
事業や家賃収入の業務の分は、原則として債務が確定した年の必要経費です(No.2210)。令和9年に申告書を作成・提出する報酬は、原則として令和9年分です。年内に前払いしても、債務が確定していなければ令和8年分の経費になりません。
Q4. 不動産を売った年の申告の報酬は、譲渡費用に入れられますか?
譲渡費用は、土地や建物を売るために直接かかった費用です(No.3255)。国税庁の例は仲介手数料や立退料などで、申告の報酬は挙がっていません。税理士への相談料を譲渡費用と認めなかった裁決もあります(平成26年2月4日裁決)。売った後に申告書を作る報酬は、売るために直接かかった費用に当たりません。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法28条2項・33条3項・37条1項・45条1項・57条の2・72条〜86条・89条、所得税法施行令96条、所得税基本通達37-2、タックスアンサーNo.1415「給与所得者の特定支出控除」・No.2210「必要経費の知識」・No.2260「所得税の税率」・No.3255「譲渡費用となるもの」、国税庁 確定申告書等作成コーナーのよくある質問「税理士等の報酬」、国税不服審判所の平成26年2月4日裁決、弊所の料金表の内容を扱っています。報酬を業務の分と業務以外の分に分ける具体的な方法、事業を廃止した後に払う報酬の扱い、現金主義の特例(所得税法67条)を選んだ方の計上時期、短期の前払費用の特例、報酬を支払うときの源泉徴収、消費税の課税事業者の仕入税額控除と経理の方式(税込・税抜)、公的年金等・一時所得・株式等の譲渡所得・山林所得の計算での扱い、相続税・贈与税の申告の報酬の扱い、税務調査の立会いや修正申告の報酬の扱い、引用した裁決が掲げる最高裁判決の内容、給与所得控除額の金額、令和8年分の確定申告期間の日付、復興特別所得税・防衛特別所得税・住民税・個人事業税への影響は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額や料金は所得や控除の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(28条・33条・37条・45条・57条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
- 国税庁【確定申告書等作成コーナー】よくある質問(令和7年分)「税理士等の報酬」https://www.keisan.nta.go.jp/r7yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/zeirishihoshu/zeirishihoshu.html
- 国税不服審判所 公表裁決事例(平成26年2月4日裁決)https://www.kfs.go.jp/service/JP/94/04/index.html
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税理士の報酬が経費になるかは、所得の種類で分かれます。事業や家賃収入の業務について生じた部分は、必要経費の対象です。経費にする年は、原則として債務が確定した年です。給与だけの方には、報酬を差し引く仕組みがありません。代表税理士が、所得の確認から必要経費の内訳と年の整理、申告書の作成と電子申告まで担当します。全国どこからでもオンラインで完結します。どの所得の申告を頼むかを決める段階で、ご相談ください。
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