この記事のポイント
- 売却に加えて交換や支払いも所得になり、原則は引渡しの年の分です
- 会社員は一定の条件のもと、給与・退職以外の所得が20万円以下なら所得税の申告は不要です
- 税率はほかの所得との合計で決まり、雑所得の損失は給与と相殺できません
- 令和8年中の売却は、改正で設けられた分離課税の特例の対象になりません
まず結論:12月31日までに売った分は、原則として令和8年分の所得になります
暗号資産の利益は、円に換えたときだけでなく、別の銘柄との交換や、商品の支払いでも生じます。
どの年の所得かは、原則として引渡しがあった日で決まります。
申告の期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです(タックスアンサーNo.2020)。
年末に売る前に、ほかの所得・取得価額の計算・改正の適用時期の3つを確かめます。

所得になるのは、売却・支払い・交換の3つの場面です
国税庁のFAQは、次のように示しています。
| 取引 | FAQの考え方 | 所得の計算 |
|---|---|---|
| 円に換える(売却) | 売った暗号資産の譲渡(1-1) | 売った価額 − 譲渡原価 |
| 商品の支払いに使う | 暗号資産を譲渡したことになる(1-2) | 商品の価額 − 譲渡原価 |
| 別の暗号資産と交換する | 手放した暗号資産で別の暗号資産を購入したことになる(1-3) | 受け取った暗号資産の価額 − 手放した分の譲渡原価 |
譲渡原価は、手放した分の取得価額(買った値段など)です。ほかの必要経費があれば、その額も差し引きます(FAQ 1-1)。
収入の時期は、原則として引渡しがあった日の属する年分です(FAQ 2-1)。
選択により、売却等の契約をした日の属する年分とすることもできます(同)。
12月に別の銘柄へ乗り換えただけでも、令和8年分の所得になることがあります。
会社員は「20万円」の判定で、所得税の申告の要否が決まります
暗号資産の利益は、原則として雑所得(ほかの9種類に当たらない所得)です(FAQ 2-2)。
暗号資産取引の収入金額が300万円超の年は、帳簿書類の保存の有無で原則として区分が変わります(同)。
会社員は、次のすべてに当たれば、原則として所得税の確定申告が要りません(所得税法121条1項1号)。
- 給与の収入が2,000万円以下
- 給与を1か所から受け、その全部が源泉徴収の対象
- 給与・退職以外の所得の合計が20万円以下
20万円は売った額ではなく、取得価額などを引いた後の所得で見ます(所得税法35条2項2号)。
注意
還付申告をするときは、20万円以下の所得も合わせて申告します(国税庁の確定申告Q&A・Q5)。所得税の申告をしない場合も、住民税の申告が必要になることがあります(地方税法317条の2第1項)。
この20万円の決まりは、給与所得がある方のものです(所得税法121条1項)。公的年金を受ける方にも、別の条件で同様の決まりがあります(同条3項)。
詳しくは副業の20万円ルールの記事へ。

税率は、ほかの所得と合わせた全体で決まります
雑所得は、給与などと合計して税額を計算します。所得税の税率は5%から45%の7段階です(No.2260)。
計算例
例:課税される所得金額600万円の会社員が、令和8年中に利益200万円を確定した場合
600万円の所得税 6,000,000円 × 20% − 427,500円 = 772,500円 800万円の所得税 8,000,000円 × 23% − 636,000円 = 1,204,000円 増える所得税 1,204,000円 − 772,500円 = 431,500円695万円までの95万円に20%、残りの105万円に23%がかかる計算です。所得控除の額は変わらない前提で、復興特別所得税と住民税は含めていません。
金額は一定の前提を置いた目安です。合計所得金額が増えると、基礎控除の額が変わることもあります(No.1199)。
同じ利益でも、その年のほかの所得しだいで、増える税額が変わります。
雑所得の損失は、給与所得など他の所得から差し引けません(FAQ 2-11、所得税法69条1項)。
取得価額の計算方法で、その年の所得が変わります
同じ銘柄を何回かに分けて買ったときは、1単位の取得価額を平均で出します。
方法は、1年分で平均する総平均法と、買うたびに出し直す移動平均法です(施行令119条の2)。
届出をしなければ総平均法です(施行令119条の5)。届出は、その種類を初めて取得した年分の確定申告期限までです(施行令119条の3)。
FAQ 2-4の設例(売却額5,295,000円)では、所得が次のように変わります。
| 評価方法 | 譲渡原価 | 所得(売却額 − 譲渡原価) |
|---|---|---|
| 総平均法 | 3,106,000円 | 2,189,000円 |
| 移動平均法 | 3,080,200円 | 2,214,800円 |
手数料は考えていない設例です。
総平均法では、12月に同じ銘柄を買い増すと、その年に売った分の原価も変わることがあります。
年初の分と年内に取得した分の合計で、1単位の取得価額を出すためです(施行令119条の2)。
ポイント
年内に取引履歴をそろえると、12月31日までの全取引で所得の見込みを出せます。購入の手数料は取得価額に加えます(FAQ 1-5)。

改正で設けられた分離課税は、令和8年中の売却には使えません
令和8年度税制改正で、特定暗号資産の譲渡を他の所得と分けて課税する特例が設けられました。
所得税は15%です(租税特別措置法38条の2)。財務省の大綱は、住民税5%と合わせて20%と示しています。
対象は、金融商品取引業者登録簿に名称が登録された暗号資産など、財務省令で定めるものです。
譲渡も、暗号資産取引業者への売委託などによるものが対象です(同条1項)。
適用は、令和8年法律第64号の施行日の属する年の、翌年1月1日以後の譲渡です。
令和8年法律第64号は、金融商品取引法などの改正法です。
施行日は、公布の日(令和8年7月23日)から1年を超えない範囲で政令で定めます。
令和8年中に売った分は、この特例の対象になりません。今の仕組みで申告します。
特例が始まるのは令和9年1月1日か令和10年1月1日で、政令で決まる施行日によります。改正の全体像は暗号資産の確定申告の記事へ。
年末の売却と申告で、避けたい5つの誤り
- 交換や支払いを所得と考えなかった ― 円に換えなくても所得になります(FAQ 1-2・1-3)。
- 取引所ごとの損益を足しただけ ― 取得価額は銘柄の種類ごとに計算します(施行令119条の2)。
- 損失を給与と相殺した ― 雑所得の損失は他の所得と通算できません(FAQ 2-11)。
- 取得価額が分からないまま売った ― 売却価額の5%相当額を取得価額にできます(FAQ 2-7)。実際より低ければ、所得は大きくなります。
- 20万円以下だからと何もしなかった ― 住民税の申告が要る場合があります(地方税法317条の2)。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
年内にご自身で進められるのは、次の5つです。
- 使っている取引所とウォレットを、すべて書き出す
- 1月からの売却・交換・支払い・手数料の履歴を取り出す
- 銘柄ごとに、1月1日の数量と取得価額を確かめる
- 給与など、ほかの所得の見込みを確かめる
- 評価方法の届出書を出したかを確かめる
所得区分、海外の取引所や個人間の取引の価額、売る時期と税額の関係は個別判断です。

税理士に頼むと変わるのは、年内の見込み計算と取得価額の根拠です
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
- 取引所・ウォレットごとに、集める履歴の一覧でのご案内
- 年内の売却・交換の予定をもとに、ほかの所得を含めた税額の試算
- 銘柄ごとの取得価額の計算と、評価方法の届出の確認
- 所得区分と必要経費の整理
- 確定申告書の作成と電子申告、計算の明細と控えのお渡し
全国どこからでも、オンラインで完結します。売るかどうかはご本人が判断し、弊所は税額の試算で材料をお出しします。
料金の目安
基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額が料金です。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。
暗号資産(雑所得)の単価は60,000円〜(税込66,000円〜)です。取引所数・通貨数により変わるため、「〜」の部分はご相談時にお見積りします。
ご自身の料金は60秒見積りで確かめられます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
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よくある質問(FAQ)
Q1. 12月31日に売った暗号資産の利益は、どの年の所得になりますか?
国税庁のFAQは、原則として引渡しがあった日の属する年分としています。選択により、売却等の契約をした日の属する年分とすることもできます(FAQ 2-1)。令和8年分の申告は、原則として翌年2月16日から3月15日までです(No.2020)。
Q2. 会社員で、暗号資産の利益が20万円以下なら何もしなくてよいですか?
条件は、給与が2,000万円以下で、1か所から受け、全部が源泉徴収の対象であることです。給与・退職以外の所得が20万円以下なら、原則として所得税の申告は不要です(所得税法121条1項)。同族会社の役員などが会社から利子や賃料を受ける場合は除きます。還付申告をするときはその所得も申告し、住民税の申告が要る場合もあります。
Q3. 年末に損が出ている銘柄を売れば、給与の税金は減りますか?
雑所得に区分される場合、その損失は給与所得など他の所得から差し引けません(FAQ 2-11)。根拠は所得税法69条1項です。その年の暗号資産取引の収入金額が300万円を超えると、区分が変わることがあります(FAQ 2-2)。区分の判断は個別に行います。
Q4. 分離課税の特例が始まるまで、売るのを待ったほうがよいですか?
令和8年中の売却は、特例の対象になりません。特例は、特定暗号資産を暗号資産取引業者への売委託などで譲渡した場合のものです。適用は、令和8年法律第64号の施行日の属する年の翌年1月1日以後の譲渡です。施行日は政令で定め、特例の開始は令和9年1月1日か令和10年1月1日になります。売るかどうかはご本人が判断し、弊所は税額の試算で材料をお出しします。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法35条1項・2項2号・48条の2第1項・69条1項・121条1項・3項、所得税法施行令119条の2・119条の3・119条の5・262条の2、地方税法317条の2第1項、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)による改正後の租税特別措置法38条の2第1項と同改正法の附則1条10号・11号・39条1項、金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)附則1条、国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月最終改訂)1-1・1-2・1-3・1-5・2-1・2-2・2-4・2-5・2-7・2-11、タックスアンサーNo.1199「基礎控除」・No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」・No.2020「確定申告」・No.2260「所得税の税率」、国税庁「確定申告期に多いお問合せ事項Q&A」のQ5、財務省「令和8年度税制改正の大綱」、弊所の料金表の内容を扱っています。住民税の税率と計算、住民税の申告の細目、復興特別所得税・防衛特別所得税の計算、雑所得の中での損益の差し引きと損失の繰越し、所得区分が事業所得・業務に係る雑所得になる場合の判定と扱い、必要経費の範囲、一時的に必要な暗号資産の取得の扱い、マイニング・ステーキング・レンディング・分裂・寄附・証拠金取引・信用取引・デリバティブ・NFT、海外の取引所や個人間取引の価額の確かめ方、評価方法の変更の手続、特定暗号資産の範囲と分離課税の所得の計算、損失の繰越控除の要件、取引業者の報告書制度、総合課税の譲渡所得となる暗号資産の見直し、施行日を定める政令の内容、基礎控除の具体的な金額と配偶者控除・扶養控除・国民健康保険料への影響、相続・贈与、法人の暗号資産、財産債務調書・国外財産調書は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は所得や控除の内容によって変わります。売却の時期についての投資の助言は行っていません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和7年12月)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- e-Gov法令検索「所得税法」(35条・48条の2・69条・121条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(令和8年法律第12号による改正後の38条の2。未施行の版で表示されます)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
年末に売る前に、令和8年分の税額の見込みを確かめませんか
暗号資産の利益は、売却だけでなく交換や支払いでも生じ、原則として引渡しの年の所得になります。税率は給与などほかの所得との合計で決まり、総平均法では年内に買った分も取得価額の計算に入ります。令和8年中の売却は、改正で設けられた分離課税の特例の対象になりません。代表税理士が、取引履歴の集め方のご案内と、銘柄ごとの取得価額の計算を行います。ほかの所得を含めた税額の試算から、確定申告書の作成と電子申告まで対応します。全国どこからでもオンラインで完結します。12月31日を迎える前にご相談ください。
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