この記事のポイント
- 債務免除を受けると免除額が会社の益金になり、欠損金などで差し引けない分に課税されます
- DESでは資本金等の額が債権の時価で増え、額面との差額は益金になります
- DESで資本金等の額や資本金が増えると、均等割の区分や中小法人の判定に影響します
- 同族会社でご家族が株主ならみなし贈与、残したままなら相続財産の論点があります
まず結論:役員借入金は返済・免除・DESで税金の出方が変わります
役員借入金は、社長が会社に貸したお金です。
減らす方法は、返済・債務免除・資本への振替(DES)の3つが中心です。
免除とDESは現金が動かない反面、会社に益金(税金の計算上の収益)が生じる場合があります。
ご家族が株主なら贈与税、残したままなら相続税の論点も出ます。

返済は資金が要り、免除とDESは課税の確認が先です
返済は、会社の現金と役員借入金が同額ずつ減る方法で、資金が要ります。
利息や返済計画は役員貸付金・役員借入金の記事にあります。
現金を動かさない方法の違いは次のとおりです。
| 比べる点 | 債務免除 | DES |
|---|---|---|
| 会社の益金になる額 | 免除した額の全額 | 額面と債権の時価との差額 |
| 資本金等の額 | 変わりません | 債権の時価の分だけ増えます |
どちらも、繰越欠損金と株主構成を確かめてから額を決めます。
債務免除:免除額は益金になり、差し引けない分に課税されます
社長が債務を免除すると、その額は「債務免除益」として会社の益金になります(法人税法22条2項)。
免除益は、その期の損金や繰越欠損金(過去の赤字)と差し引きされます。
繰越欠損金は、前10年以内に開始した事業年度の分です(同法57条1項)。
控除の上限は、中小法人等なら所得の全額、それ以外は原則として所得の50%です(同条1項・11項)。
連続した確定申告と帳簿書類の保存が条件です(同条10項)。
青色申告でない期の欠損金は、災害損失の部分を除き、ないものとされます(同法58条1項)。
10年は、平成30年4月1日以後開始の事業年度の欠損金が対象です(平成27年改正法附則27条1項)。
計算例
例1:中小法人等が役員借入金3,000万円の免除を受け、繰越欠損金が2,000万円ある場合
所得 3,000万円 - 2,000万円 = 1,000万円(法人税の対象) 免除額を2,000万円にした場合 2,000万円 - 2,000万円 = 0円 中小法人等でない場合(原則) 控除の上限 3,000万円 × 50% = 1,500万円 → 所得 3,000万円 - 1,500万円 = 1,500万円免除益以外の損益をゼロとした、一定の前提を置いた目安です。
注意
期限切れの欠損金を充てられる場面は、法人税法59条が定めています。更生手続・再生手続の開始の決定などがあった場合や、解散して残余財産がないと見込まれる場合などです。
59条の場面に当たらないときは、繰越欠損金の残高を見て免除額を決めます。
詳細は欠損金の繰越控除の記事をご覧ください。
DES:資本金等の額は時価で増え、額面との差額は益金です
DESでも、時価が額面を下回る分は益金になります。
DES(デット・エクイティ・スワップ)では、社長が会社への貸付金を現物出資し、株式を受け取ります。
現物出資は、お金以外の財産で出資することです。
資本金等の額は、給付を受けた資産の「価額」で増えます(法人税法施行令8条1項1号)。
このため、法人がDESによる自己宛債権の現物出資(適格現物出資を除く。)を受けた場合には、債務者である法人の増加する資本金等の額は、その券面額でなく時価によることとなる。また、債務者である法人が現物出資を受けた自己宛債権に対応する債務について、その券面額と自己宛債権の時価との差額が債務の消滅益として計上されることとなる。
(国税庁 法人税基本通達12-3-6の解説)
券面額は額面のことです。
計算例
例2:額面2,000万円の役員借入金でDESをし、債権の時価が800万円と評価された場合
増える資本金等の額 800万円(時価) 債務消滅益 2,000万円 - 800万円 = 1,200万円(益金)時価800万円は仮定の数字で、一定の前提を置いた目安です。
DESの債務消滅益も、59条の場面なら同条の対象です(法人税基本通達12-3-6)。

資本金等の額や資本金が増えると、均等割と中小法人の判定に影響します
DESで資本金等の額が増えると、均等割の区分が上がることがあります(地方税法52条・312条)。
均等割は、法人住民税のうち定額の部分です。
資本金と資本準備金の合計額のほうが大きければ、その額で区分します(同法52条4項・312条6項)。
計算例
例3:資本金300万円の会社が、時価・額面とも2,000万円の債権でDESをした場合
資本金等の額 300万円 → 2,300万円(1千万円超) 道府県民税の均等割 年2万円 → 年5万円 市町村民税の均等割(従業者50人以下) 年5万円 → 年13万円 年間の増加額 3万円 + 8万円 = 11万円資本準備金0円・標準税率・12か月とした、一定の前提を置いた目安です。市町村は標準税率の1.2倍まで上げられます(同法312条2項)。
資本金の額が1億円を超えると、所得年800万円以下の軽減税率から外れます(法人税法66条2項)。
中小法人等として欠損金を所得の全額まで控除する扱いからも外れます(同法57条11項1号)。
資本金と均等割の関係は会社設立の資本金の記事もご覧ください。
社長側:ご家族が株主なら贈与、残したままなら相続財産になります
債務免除で会社の財産が増えると、株価が上がることがあります。
対象は同族会社(株主の3人以下とその親族などで、株式の50%超を持つ会社など)です。
上がった部分は、株主が次の人から贈与で取得したものとされます。
(3) 対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 当該債務の免除、引受け又は弁済をした者
(相続税法基本通達9-2)
根拠は相続税法9条で、時価より著しく低い価額の現物出資も同じ扱いです(同通達9-2(2))。
社長以外に株主がいるときに確かめる論点です。
会社が資力を喪失した場合は、債務超過額の部分を贈与として扱いません(同通達9-3)。ただし、次の留意があります。
単に一時的に債務超過となっている場合は、これに該当しないのであるから留意する。
(相続税法基本通達9-3)
何もしないまま相続が起きると、役員借入金は社長の貸付金として相続財産になります(相続税法2条1項)。
元本は「その返済されるべき金額」で評価し、既経過の利息があれば加えます(財産評価基本通達204)。
元本から除けるのは、破産手続開始の決定などの事実がある場合です。回収が不可能または著しく困難と見込まれる場合も除かれます(同通達205)。
資金繰りが苦しいだけでは、額面より低く評価されるとは限りません。

失敗パターン:想定外の税金につながる4つの場面
どれも、額を決める前の確認不足で起きます。
- 欠損金を見ずに全額を免除した ― 損金と繰越欠損金を超えた免除益に、法人税がかかります。
- 家族株主がいるのに免除した ― 株価の上昇分が社長からの贈与とみなされることがあります。一時的な債務超過は、9-3の除外に当たりません。
- DESなら課税されないと考えた ― 時価が額面を下回ると、差額が債務消滅益になります。
- DESで資本金を増やしすぎた ― 均等割の区分が上がります。資本金1億円超では中小法人向けの扱いから外れます。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
次の資料は、ご自身でそろえられます。
- 役員借入金の残高と、貸した経緯がわかる契約書・振込の記録
- 法人税の申告書にある繰越欠損金の残高と、生じた事業年度
- 株主名簿にある、社長以外の株主と持株数
- 登記簿の資本金の額と、決算書の資本準備金の額
債権の時価、免除とDESの配分、株価の上昇額は、試算しないと決められません。
贈与税・相続税の額や、株主総会の決議などの手続も個別判断です。

税理士が入ると変わるのは、3つの方法の比較と数字の根拠です
小松公認会計士・税理士事務所では、次の順で進めます。
ひとつめは、残高の内訳と、欠損金の残高・期限の整理です。
ふたつめは、債権の時価と株価の試算です。債務消滅益と贈与の有無を確かめます。
みっつめは、DES後の均等割と中小法人の判定の確認です。
よっつめは、債務免除の通知書や議事録の準備の指示と、申告書への反映です。
いつつめは、相続税の試算です。返済・免除・DESの組み合わせごとに税額を比べます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 社長からの借入金を免除してもらうと、会社に税金がかかりますか?
免除された額は、債務免除益として会社の益金になります(法人税法22条2項)。その期の損金や繰越欠損金と差し引いても残る部分に法人税がかかります。中小法人等でない場合、欠損金の控除は原則として所得の50%までです(同法57条1項・11項)。
Q2. 役員借入金をDESで資本金に替えれば、税金はかかりませんか?
資本金等の額は、債権の額面ではなく時価で増えます(法人税法施行令8条1項1号)。国税庁は、額面と時価との差額が債務の消滅益になると説明しています。資本金等の額が増えると、均等割の区分が上がることもあります(地方税法52条・312条)。
Q3. 社長が債務免除をすると、家族に贈与税がかかることはありますか?
債務免除で同族会社の株価が上がると、上がった部分は株主への贈与として扱われます。贈与した人は、免除をした社長です(相続税法基本通達9-2)。会社が資力を喪失した場合の除外はありますが、一時的な債務超過は該当しません(同通達9-3)。
Q4. 役員借入金を残したまま相続になると、どう評価されますか?
社長の会社への貸付金として相続財産になり、元本と既経過の利息で評価します(財産評価基本通達204)。元本から除けるのは、破産手続開始の決定などの事実がある場合です。回収が不可能または著しく困難と見込まれる場合も除かれます(同通達205)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条2項、57条1項・10項・11項、58条1項、59条、66条2項、所得税法等の一部を改正する法律(平成27年法律第9号)附則27条1項、法人税法施行令8条1項1号、法人税基本通達12-3-6と国税庁によるその解説、地方税法52条1項・4項、312条1項・2項・6項、相続税法2条1項・9条、相続税法基本通達9-2・9-3、財産評価基本通達204・205の内容を扱っています。これらの規定に、令和8年度税制改正による変更は確認できませんでした。社長側の所得税(債権を現物出資した側・債務免除をした側の課税、取得した株式の取得価額)、DESの会社法上の手続(募集株式の発行、検査役の調査、資本金と資本準備金への計上額、登記)と登録免許税、債権の時価の評価方法、法人税法59条の政令で定める事実の細目と期限切れ欠損金の計算方法・添付書類、欠損金の繰越控除の細目(平成30年4月1日前に開始した事業年度の欠損金の繰越期間、57条11項2号・3号の法人を含む)と繰戻し還付、法人税・住民税・事業税の税率と税額、大法人の完全子会社などの判定、租税特別措置法による中小法人の特例と外形標準課税、地域ごとの均等割の課税の仕組みと条例上の税率、取引相場のない株式の評価方法と贈与税額の計算、DESに伴う株主間の贈与の細目、資力を喪失した場合の判定の細目、貸付金債権のうち質権・抵当権で担保された部分の評価、役員借入金の利息と返済計画、未払役員報酬の免除は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、税額や評価額は会社ごとの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条・57条・58条・59条・66条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「地方税法」(52条・312条)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 国税庁「10 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金」(法人税基本通達12-3-6の解説)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/070313/11.htm
- 国税庁 相続税法基本通達「第9条《その他の利益の享受》関係」(9-2・9-3)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/06.htm
- 国税庁 財産評価基本通達 第8章「第3節 定期金に関する権利」〜「第6節 その他の財産」(204・205)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/08.htm
役員借入金を減らす前に、免除とDESの税金を試算しませんか
役員借入金は、返済・債務免除・DESのどれを選ぶかで税金の結果が変わります。会社の法人税と均等割、ご家族の贈与税、社長の相続税まで影響します。免除した額や、DESの額面と時価との差額は会社の益金です。その期の損金や繰越欠損金で差し引ききれない部分に法人税がかかります。代表税理士が、残高の内訳の確認から欠損金の整理、時価と株価の試算まで対応します。均等割への影響の確認、書類の準備と申告まで通して行います。免除やDESを決める前の段階でご相談ください。
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