不動産譲渡所得

店舗・工場を設備や在庫ごと売るときの税金
所得の区分は資産ごとに分かれます

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 土地・建物(附属設備・構築物を含む)は分離課税の譲渡所得です
  • 機械や備品は原則総合課税の譲渡所得。50万円控除後、所有5年超は2分の1が課税対象
  • 在庫や、10万円未満・一括償却の資産(業務上重要なものを除く)は事業所得(業務により雑所得)です
  • 代金は資産ごとに分けます。内訳がなければ時価の比で分ける根拠が必要です

まず結論:売ったものごとに、所得の区分と計算が分かれます

個人事業者が店舗や工場を、機械や在庫ごと売ることがあります。

1つの契約で売っても、税金は売ったものごとに所得の区分が分かれます。

土地・建物は分離課税の譲渡所得、機械や備品は原則として総合課税の譲渡所得、在庫は事業所得です。

譲渡所得とは、資産を売ったことによる所得です。

分離課税はほかの所得と分けて、総合課税は給与や事業の所得と合計して税額を計算します。

店舗を設備や在庫ごと売るときは、売ったものごとに所得の区分を確かめます
店舗を設備や在庫ごと売るときは、売ったものごとに所得の区分を確かめます

区分の早見表:土地建物・機械備品・在庫で分かれます

分離課税になるのは土地と「建物等」で、建物等には建物附属設備と構築物が含まれます。

建物及びその附属設備若しくは構築物(以下同条までにおいて「建物等」という。)

(租税特別措置法31条1項)

措置法通達31・32共-1も、分離課税の資産を土地建物等と一定の株式等に限っています。

売ったもの店舗・工場での例所得の区分
土地敷地(借地権を含む)譲渡所得(分離課税)
建物・建物附属設備・構築物建物、電気設備、給排水設備、舗装路面譲渡所得(分離課税)
機械装置・器具備品など製造用の機械、陳列ケース、事務机譲渡所得(総合課税)
少額の減価償却資産・一括償却資産10万円未満の備品など(業務上重要なものを除く)事業所得(業務により雑所得)
棚卸資産(在庫)商品、製品、原材料事業所得

附属設備・構築物・器具備品の例は、耐用年数省令の別表第一の区分によります。

機械や備品は「建物等」に入らないため、土地建物とは別に計算します。

機械・備品は総合課税:年50万円の控除と5年の数え方

機械や備品を売ったもうけは、原則として給与や事業の所得と合計する総合課税です。

計算式は「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−50万円」です(タックスアンサー No.3152)。

50万円は、資産ごとではなく、その年1年分で使える上限です。

所有期間が5年を超える長期なら、控除後の金額の2分の1が課税の対象です。

控除の詳しい仕組みは総合課税の譲渡所得と50万円控除の記事をご覧ください。

取得費は、取得価額から償却費の累積額を引いた未償却残高です(所得税法38条2項1号)。

ポイント

5年の数え方が違います。土地建物は売った年の1月1日で5年を超えるかを見ます(タックスアンサー No.3202)。機械や備品は取得した時から売った時までの所有期間で判定します(同 No.3152)。

建物と附属設備は土地と同じ分離課税、機械や備品は原則総合課税です
建物と附属設備は土地と同じ分離課税、機械や備品は原則総合課税です

在庫と少額の資産は事業所得:施行令81条の線引き

在庫や一部の少額の資産を売った所得は、譲渡所得ではなく事業所得などになります。

所得税法33条2項1号と施行令81条が、次のものを譲渡所得から外しています。

  • 在庫などのたな卸資産
  • 使用可能期間が1年未満の資産
  • 取得価額10万円未満の資産(業務の性質上基本的に重要なものを除く)
  • 20万円未満で、一括償却資産として3年で経費にしている資産(同)

これらを売った所得は、事業所得または雑所得になります(タックスアンサー No.3105)。

重要なものとは、業務に直接必要で欠くことのできない資産です(所得税基本通達33-1の2)。

使用可能期間1年未満の資産は、重要なものでも譲渡所得になりません(同33-1の3)。

補足

一括償却資産は売った後も3年目まで3分の1ずつ必要経費にします(所得税基本通達49-40の2の注)。廃業する年は残りを全額必要経費にする考え方が、法人成りの質疑応答事例にあります。

計算例:町工場を6,000万円で一括して売ったとき

同じ6,000万円の代金でも、3つの区分で別々に計算します。

計算例

例:土地・建物・機械・在庫を、内訳つきで合計6,000万円で売却

内訳 土地3,000万円・建物1,200万円・機械1,500万円・在庫300万円 取得費など 土地1,800万円、建物の未償却残高700万円、機械の未償却残高400万円 土地建物(分離課税・長期) 4,200万円 − 2,500万円 = 1,700万円 機械(総合課税・長期) 1,500万円 − 400万円 − 50万円 = 1,050万円 総所得金額に入る額 1,050万円 × 2分の1 = 525万円 在庫(事業所得) 300万円を売上(収入金額)に入れる

所有期間はいずれも5年超、ほかの譲渡はなく、消費税と譲渡費用は考えない、一定の前提を置いた目安です。

購入時の土地と建物の分け方は取得費を按分する方法の記事をご覧ください。

失敗しやすいのは、この5つです

区分を誤ると所得の金額が変わり、申告の誤りにつながります。

  • 機械や備品の代金を事業の売上に入れる ― 原則は譲渡所得です
  • 機械の売却損を事業の経費にする ― 事業所得の必要経費になりません
  • 機械や備品を土地建物の分離課税に混ぜる ― 総合課税で計算します
  • 在庫や少額の資産を譲渡所得に入れる ― 原則は事業所得です
  • 契約書に資産ごとの内訳がない ― 分ける根拠を後から用意します

1つめの根拠は、国税庁の次の説明です。

機械装置や器具備品などの減価償却資産の売却代金は、原則として、譲渡所得の収入金額になり、事業所得の収入金額にはなりません。

(国税庁 確定申告書等作成コーナー「減価償却資産の売却代金」)

2つめは、所得税法51条1項が、資産の譲渡による損失を必要経費の資産損失から除くためです。

注意

計算例の機械の益1,100万円を事業所得に入れると、総所得金額に1,100万円が入ります。正しくは525万円で、同じ前提で575万円の差です。

設備が建物附属設備か器具備品かを、一つずつ確かめてから計算します
設備が建物附属設備か器具備品かを、一つずつ確かめてから計算します

代金の内訳と消費税:時価の比で分ける考え方

内訳は、資産ごとの譲渡の時の価額(時価)に見合った金額にしておくことが大切です。

所得税基本通達33-11は、総合課税の短期と長期の資産を一つの契約で売った場合の定めです。

収入金額は、それぞれの資産の譲渡の時の価額の比で按分します。

契約の区分がおおむね時価の比で適正なら、その区分が認められます。

消費税でも、土地と建物などを一括で売った対価は合理的に区分します(消費税法基本通達10-1-5)。

区分されていなければ、譲渡の時の価額の比で按分します(消費税法施行令45条3項)。

課税事業者が事業用の資産を売ると、消費税がかかります。

土地や借地権の売却は非課税です(タックスアンサー No.6931)。

建物の消費税の注意点は事業用の建物を売ったときの消費税の記事にまとめています。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

資産の一覧づくりはご自身でできますが、区分と内訳の判断は個別です。

  1. 売る資産を、土地・建物・機械・備品・在庫に分けて一覧にする
  2. 減価償却の明細で、資産ごとの取得日・取得価額・未償却残高を確かめる
  3. 一括償却資産や、10万円未満で経費にした資産に印を付ける
  4. 在庫を、引き渡す日の数量と金額で棚卸しする

ここから先は、資料と事情で結論が変わります。

  • 資産ごとの時価の見積もりと、契約書の内訳の妥当性
  • 冷暖房などが、建物附属設備か器具備品か
  • 少額の資産が業務上重要なものか
  • 措置法28条の2の特例で経費にした資産の区分
  • 売った年の償却費を、必要経費と取得費のどちらで扱うか

冷暖房は、耐用年数省令の別表第一に建物附属設備と器具備品の両方の区分があります。

措置法28条の2の特例で経費にした資産は、施行令81条の号に挙がっていません。

この特例の対象は取得価額10万円以上40万円未満です(令和8年3月31日までの取得は30万円未満)。

売った年の償却費は、取得費に含めず必要経費に入れることもできます(所得税基本通達49-54)。

資産ごとの金額と根拠を一覧にしてから、契約書の内訳を固めます
資産ごとの金額と根拠を一覧にしてから、契約書の内訳を固めます

税理士が入ると変わるのは、区分ごとの計算と申告書への反映です

ひとつめは、減価償却の明細から資産を区分し、所得区分ごとの計算表を作ることです。

ふたつめは、契約の前に、資産ごとの時価の根拠と内訳の案を整えることです。

みっつめは、土地建物・機械・在庫の計算を、譲渡所得の内訳書や青色申告決算書などに反映することです。

よっつめは、課税事業者の場合に、土地と課税資産を分けて消費税の申告に反映することです。

小松公認会計士・税理士事務所では、資料の読み取りから各申告書の作成、適正申告までを担当します。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 陳列ケースや製造用の機械を売ったお金は、事業の売上に入れますか?

原則として入れません。国税庁の確定申告書等作成コーナーによると、これらは原則として譲渡所得の収入金額です。ただし、取得価額10万円未満のもの(事業に基本的に重要なものを除く)は事業所得の収入金額です。一括償却資産として経費にしたもの(同)や、既にスクラップ化したものも同様です。

Q2. 機械を帳簿の金額より安く売って損が出ました。事業の経費にできますか?

事業所得の必要経費にはできません。所得税法51条1項は、事業の必要経費になる資産損失から、資産の譲渡により生じた損失を除いています。売却損は総合課税の譲渡所得の計算の中で扱い、ほかの所得との関係は個別に確かめます。

Q3. 建物の電気設備や駐車場の舗装も、土地建物と同じ分離課税ですか?

分離課税です。租税特別措置法31条1項は、建物及びその附属設備若しくは構築物を「建物等」としています。建物等は、土地と同じ分離課税の対象です。電気設備は建物附属設備、舗装路面は構築物として、耐用年数省令の別表第一に区分があります。

Q4. 契約書に土地・建物・機械の内訳がありません。どう分けますか?

資産ごとの譲渡の時の価額(時価)の比で分ける考え方が示されています。所得税基本通達33-11は、総合課税の短期と長期の資産を一つの契約で売った場合の定めです。消費税では消費税法施行令45条3項です。時価の根拠資料をそろえ、契約の前なら契約書に内訳を書いておきます。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法22条・27条・33条・38条・51条、所得税法施行令81条・138条・139条、租税特別措置法28条の2・31条・32条、消費税法施行令45条3項、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一、所得税基本通達33-1の2・33-1の3・33-11・49-40の2・49-54、措置法通達31・32共-1、消費税法基本通達10-1-5、国税庁タックスアンサー No.2100・No.3105・No.3152・No.3202・No.6931、国税庁 確定申告書等作成コーナー(令和7年分よくある質問「減価償却資産の売却代金」)、国税庁 質疑応答事例「法人成りした場合の一括償却資産の必要経費算入」の内容を扱っています。資産ごとの時価の評価方法、建物附属設備と器具備品の個別の判定基準、少額の資産が業務の性質上基本的に重要なものに当たるかの判断、措置法28条の2の特例で経費にした資産を売った場合の所得区分、営業権や借家権の譲渡、分離課税と総合課税の税率と税額、譲渡損失の損益通算、事業用資産の買換えの特例など各特例の要件、消費税の納税義務の判定と簡易課税、個人事業税・住民税・国民健康保険への影響は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は資産の内訳・取得費・未償却残高・所有期間・他の所得によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

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店舗や工場を設備・備品・在庫ごと売ると、資産ごとに所得の区分が分かれます。土地建物は分離課税、機械や備品は原則として総合課税の譲渡所得、在庫や一部の少額資産は事業所得です。代表税理士が、減価償却の明細と契約書の案から、資産ごとの区分と内訳の根拠を整理します。譲渡所得の申告・青色申告決算書・消費税の申告まで一貫して作成します。契約の前の段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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