この記事のポイント
- 年の途中で退職した人は、一定の場合を除き年末調整を受けず、確定申告で精算します
- 開業準備の費用は、資産の購入代金を除き開業費とし、60か月均等か任意の額を申告書に書いて経費にします
- 事業所得の赤字は給与から差し引け、青色申告の年の分は毎年申告すれば3年繰り越せます
- 青色申告承認申請は、1月16日以後の開業なら開業した日から2か月以内です
まず結論:退職と開業が重なった年は、給与と事業を1つの申告で精算します
会社を辞めて独立した年は、会社員の給与と事業の収入が同じ年にあります。
年の途中で退職した人は、一定の場合を除き、年末調整を受けていません。
そこで、給与と開業後の事業所得をまとめ、確定申告で1年分の税金を計算し直します。
給与から引かれた所得税は申告で差し引かれ、結果は還付にも納付にもなります。
開業日の前後の経費、退職金、保険料の控除、青色申告の期限も、この申告に関わります。

年末調整を受けていない給与は、源泉徴収票をもとに精算します
最初にそろえるのは、元の勤務先が出す源泉徴収票です。
年の途中で退職した人は、年末調整の対象になりません(タックスアンサー No.2665)。
死亡による退職や、12月に支給される給与を受けた後の退職などは例外です。
勤務先は、退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を交付することになっています(所得税法226条1項)。
確定申告では1年分の税額を計算し、源泉徴収された所得税を差し引きます(同法120条1項4号)。
生命保険料控除なども、確定申告書に記入して受けます(タックスアンサー No.1140)。
ポイント
源泉徴収票が届かないときは、まず元の勤務先に求めます。それでも交付されないときは、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出せます(国税庁)。
補足
令和8年度改正の基礎控除の引上げなどは、令和8年分から適用されます。源泉徴収が変わるのは令和8年12月以後です(国税庁)。11月までに退職し、年末調整を受けていない人は、改正後の控除を確定申告で反映します。
退職金は、「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば、原則として申告は要りません。
ただし、確定申告書を出すときは、退職所得の金額も記載します(タックスアンサー No.1420)。
申告書を出していない退職金の精算は、退職金の確定申告の記事で扱っています。
開業日の前と後で、経費の扱いが分かれます
開業後の事業の費用は、原則としてその年の必要経費(収入から引ける費用)です(所得税法37条1項)。
開業より前の支出のうち、開業準備のためのものは「開業費」として扱います。
開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)
(所得税法施行令7条1項1号)
開業費は、いったん資産(繰延資産)に計上します。
経費にする額は、60か月で均等に割った額が基本です(同令137条1項1号)。
開業費の額の範囲内で任意の額を確定申告書に書けば、その額を経費にできます(同条3項)。
パソコンなど資産の購入代金や前払費用は、開業費に含まれません(同令7条1項)。
生活費などの家事上の経費は、開業の前後を問わず必要経費になりません(所得税法45条1項1号)。
注意
私用と開業準備の支払いが同じ口座やカードに混ざると、どれが開業費かを説明しにくくなります。開業前の領収書は、日付と内容が分かる形で分けて残します。

国民健康保険と国民年金は、社会保険料控除で差し引きます
退職後に払った国民健康保険料(税)と国民年金保険料は、社会保険料控除の対象です(所得税法74条)。
生計を一にする配偶者などの分を払った場合も、払った人が控除を受けられます(同条1項)。
在職中に給与から差し引かれた社会保険料も、同じく控除の対象です(同項)。
年末調整がない年は、保険料の控除も自分で集めて申告書に入れます。
国民年金保険料は、控除証明書などの添付か提示が必要です(タックスアンサー No.1130)。
令和9年1月1日以後に出す令和8年分の申告書では、明細書の添付で代えることもできます(同)。
1年目の赤字は給与と差し引けて、繰り越せるかは青色申告で変わります
開業1年目の事業所得が赤字なら、その赤字を給与所得などから差し引けます(所得税法69条1項)。
これを損益通算といい、源泉徴収された所得税が戻ることがあります。
給与所得などから引ききれない赤字は、最後は退職所得からも差し引きます(同法施行令198条)。
ただし、雑所得の赤字は、ほかの所得から差し引けません(タックスアンサー No.2250)。
計算例
例:事業所得が50万円の赤字で、赤字がなければ課税される所得金額が150万円の人
差し引く前 1,500,000円 × 5% × 1.021 = 76,575円 差し引いた後 1,000,000円 × 5% × 1.021 = 51,050円 税額の差 76,575円 - 51,050円 = 25,525円例の所得の範囲では、所得税の税率は5%です(タックスアンサー No.2260)。
1.021は、令和8年分の復興特別所得税2.1%を加える計算です。一定の前提を置いた目安です。
引ききれずに残った赤字を、純損失といいます。
原則として、純損失を翌年以後3年間繰り越せるのは、青色申告の年の分です(所得税法70条1項)。
その後も毎年、確定申告書を出し続けることが条件です(同条4項)。
1月16日以後に開業した人の青色申告承認申請は、開業した日から2か月以内です(同法144条)。
たとえば令和8年10月1日に開業した人の期限は、令和8年12月1日です(国税通則法10条)。
過ぎると令和8年分は青色申告にできず、令和9年分からなら令和9年3月15日までに申請します。
届出書の全体は、開業したら出す届出書の記事にまとめています。

間違えたときに起きることを、先に知っておきます
次のような誤りがあると、二度手間や追加の負担につながります。
- 給与や退職金の書き漏れ:期限後に税額の不足に気づくと修正申告が必要で、延滞税もかかります。調査の事前通知の後なら、過少申告加算税もかかります(タックスアンサー No.2026)。
- 保険料などの控除の入れ忘れ:納めすぎた税金は、更正の請求で取り戻せる場合があります(同)。
- 青色申告承認申請の期限切れ:赤字は、災害による損失などを除き繰り越せません(所得税法70条2項)。
- 予定納税を見込んでいない:令和8年分をもとにした予定納税基準額が15万円以上だと対象です。令和9年7月と11月に、それぞれ3分の1を納めます(同法104条1項)。
予定納税のしくみは、予定納税の記事をご覧ください。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
申告の前に、ご自身で整えられるのは次の4点です。
- 元の勤務先から、給与と退職金の源泉徴収票を受け取る
- 国民健康保険・国民年金などの領収書や控除証明書を集める
- 開業日以後の領収書・請求書・通帳を、月ごとに整理する
- 開業日より前の支出は、日付と内容が分かる形で分けて残す
どの支出を開業費や経費とし、いつ経費にするかは、事実に応じた個別判断です。
自宅の家賃や通信費の仕事分の割合、事業所得か雑所得かの区分も、根拠の説明が要ります。
赤字の年に開業費をいくら経費にするかも、青色申告かどうかで考え方が変わります。
書類集めまではご自身で行い、仕分けと計算から任せる分け方もできます。

税理士に頼むと変わるのは、仕分けの根拠と1年分の精算の正確さです
小松公認会計士・税理士事務所では、退職と開業が重なった年の申告を次の流れで進めます。
ひとつめは、必要書類の一覧化です。源泉徴収票・保険料の書類・開業前後の領収書をそろえます。
ふたつめは、開業日の前後の支出の仕分けです。開業費・資産・経費・生活費に分けます。
みっつめは、帳簿の締めと事業所得の計算です。青色申告なら決算書まで作ります。
よっつめは、給与・退職金・事業を合わせた見込み計算です。還付か納付かを先にお伝えします。
いつつめは、申告書の作成とe-Taxでの提出、控えの保管です。全国オンラインで完結します。
むっつめは、翌年の予定納税の見込みと、青色申告承認申請の時期の確認です。
料金は、所得の種類・取引の量・記帳の状態で決まり、60秒見積りでその場で分かります。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 年の途中で会社を辞めて開業しました。年末調整は受けられますか?
年の途中で退職した人は、年末調整の対象になりません(タックスアンサー No.2665)。死亡による退職や、12月に支給される給与を受けた後の退職などは例外です。給与の源泉徴収税額は、事業所得と合わせた確定申告で精算し、還付にも納付にもなります。
Q2. 退職前に払った開業準備の費用は、経費にできますか?
開業準備のために特別に支出した費用は「開業費」として資産に計上します(所得税法施行令7条1項1号)。基本は60か月で均等ですが、範囲内の任意の額を申告書に書いて経費にもできます(同令137条)。パソコンなど資産の購入代金や生活費は、開業費に含まれません。
Q3. 1年目の事業が赤字です。給与から引かれた税金は戻りますか?
事業所得の赤字は、給与所得などから差し引けます(所得税法69条1項)。年税額が源泉徴収税額を下回れば、差額が還付されます。雑所得の赤字は差し引けません。引ききれない赤字を繰り越せるのは、その年に青色申告をし、毎年申告を続けた場合などです(同法70条)。
Q4. 青色申告承認申請の期限を過ぎてしまいました。どうなりますか?
1月16日以後に開業した場合の期限は、開業した日から2か月以内です(所得税法144条)。過ぎると、開業した年分は青色申告にできず、青色申告の特典(赤字の繰越しなど)を受けられません。翌年分から青色申告にするには、翌年3月15日までに申請書を出します。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法37条1項・45条1項1号・69条1項・70条1項・2項・4項・74条1項・2項・104条1項・120条1項・144条・226条1項、所得税法施行令7条1項・137条1項1号・3項・198条、国税通則法10条、タックスアンサーNo.2665「年末調整の対象となる人」・No.1130「社会保険料控除」・No.1140「生命保険料控除」・No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」・No.2026「確定申告を間違えたとき」・No.2250「損益通算」・No.2260「所得税の税率」、国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」・「源泉徴収票不交付の届出手続」の内容を扱っています。給与所得控除額・基礎控除額など控除の具体的な金額、年末調整の例外の細目、退職所得の計算方法と退職所得控除額、開業届の提出期限、青色申告特別控除の要件と金額、青色事業専従者給与、純損失の繰戻し、還付申告の提出期間、確定申告が不要となる場合、予定納税の減額申請と予定納税基準額の計算の細目、開業費の償却費の月数の数え方、事業所得と雑所得の区分の基準、家事関連費の按分の基準、会社員のときに買った資産を事業に使う場合の減価償却、源泉徴収票不交付の届出書の添付書類、消費税とインボイス制度、住民税と個人事業税、国民健康保険料・国民年金保険料の額と加入の手続、雇用保険の給付は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は所得や控除の状況によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(69条・70条・74条・120条・144条・226条ほか)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(7条・137条・198条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 国税庁 タックスアンサー No.2665 年末調整の対象となる人https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1130 社会保険料控除https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm
退職と開業が重なった年の確定申告を、1年目からお任せください
独立した年は、給与・退職金・開業前後の経費・保険料の控除を1つの申告にまとめます。年末調整を受けていない給与の精算も、この申告で行います。代表税理士が、必要書類の一覧化から支出の仕分け、帳簿の締めまで行います。還付か納付かの見込みを先にお伝えし、申告書の作成とe-Taxでの提出まで対応します。青色申告承認申請の期限や、翌年の予定納税の見込みもあわせて確認します。全国オンラインで完結します。
無料相談を申し込む 個人事業主・フリーランスの確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り