この記事のポイント
- 保険料は、受取人が会社でも遺族でも原則として期間の経過に応じた損金です
- 遺族受取で役員など特定の人だけを加入させると、保険料は給与です
- 会社が受け取る保険金は益金、遺族が直接受け取る保険金は相続税の対象です
- 主契約の保険金額は規程の支給額が上限で、規程とセットで決めます
まず結論:保険料は原則として損金で、遺族受取で特定の人だけを加入させると給与です
総合福祉団体定期保険は、会社が契約者となり、役員・従業員を被保険者とする団体保険です。
被保険者は、亡くなると保険金が出る対象の人です。
保険料は、受取人が会社でも遺族でも、原則として期間の経過に応じて損金になります。
損金は、税金の計算で差し引ける費用です。
ただし、受取人が遺族で、役員など特定の人だけを加入させると、保険料はその人への給与です。
保険金は、会社が受け取れば益金(収入に数えるもの)、遺族が受け取れば相続税の対象です。

主契約は遺族の生活保障、ヒューマン・ヴァリュー特約は会社の損失に備えます
金融庁は監督指針で、全員加入の団体定期保険を主契約と特約に分けるよう求めています。
保険会社の商品では、会社の損失に備える特約をヒューマン・ヴァリュー特約といいます。
| 区分 | 主契約 | ヒューマン・ヴァリュー特約 |
|---|---|---|
| 備えるもの | 規程の弔慰金・死亡退職金 | 代わりの人の採用・育成費用など |
| 保険金の受取人 | 遺族または会社 | 会社 |
| 保険金額の上限 | 規程の支給額 | 主契約の保険金額(2,000万円まで) |
保険会社の説明では、保険期間1年の団体保険です。
同じ説明では、規程の支給対象で、正常に就業し同意した人が全員加入します。
他人を被保険者とする死亡保険は、本人の同意がなければ効力を生じません(保険法38条)。

遺族受取で特定の人だけを加入させると、保険料は給与になります
受取人が遺族で、役員や部課長など特定の人だけを加入させると、保険料は給与です。
根拠は法人税基本通達9-3-5(2)のただし書で、受取人が会社の場合の(1)にはありません。
所得税の通達も、遺族受取の場合を次のように定めています。
当該役員又は使用人が受ける経済的利益はないものとする。ただし、役員又は特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該保険料の額に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与等とする。
(所得税基本通達36-31の2(2))
ポイント
加入資格や保険金額の差も、職種・年齢・勤続年数などによる合理的で普遍的な差なら、給与にしません。一方、オーナー一族などの同族関係者が、役員・使用人の全部か大部分を占める会社もあります。その場合、遺族受取なら全員加入でも同族関係者の分が給与です。根拠は所得税基本通達36-31の2の注2です。
補足
給与になった保険料の処理は、遺族受取の定期保険の記事で説明しています。9-3-5の2は、保険期間3年以上で最高解約返戻率50%超の保険が対象です。保険期間1年の契約は当たりません。法人保険と通達改正の記事もご覧ください。
特約の保険料も損金と考え、年払いと配当金は計上の時期に注意します
特約の保険料も、期間の経過に応じた損金と考えます。
国税庁の通達で、この特約や総合福祉団体定期保険を名指しした定めは確認できませんでした。
当該特約に係る保険料を支払った場合には、その支払った保険料の額については、当該特約の内容に応じ、9-3-4、9-3-5又は9-3-5の2の例による。
(法人税基本通達9-3-6の2)
死亡などに備える特約で、受取人が会社なので、9-3-5(1)の例によると考えます。
年払いの保険料も、期間の経過に応じた損金が原則です。
法人税基本通達2-2-14により、支払日から1年以内の保障の分は、支払った期の損金にもできます。
毎期続けることが条件で、国税庁のFAQも年払いをこの例に挙げています。
配当金が出る契約では、配当金は通知を受けた日の事業年度の益金です(9-3-8)。
計算例
例1:3月決算の会社が、10月1日に1年分の保険料1,200,000円を払った場合
原則(月割) 1,200,000円 × 6か月 ÷ 12か月 = 当期の損金 600,000円 残りの600,000円は前払費用とし、翌期の損金にします 2-2-14を継続して適用する場合 当期の損金は 1,200,000円金額は一定の前提を置いた目安です。保険期間と決算期の重なりは契約ごとに確かめます。
保険金は、会社が受け取れば益金、遺族が受け取れば相続税の対象です
会社が受け取る保険金は、特約の分も含めて益金です(法人税法22条2項)。
会社が規程に基づき遺族に払う死亡退職金は、原則として損金です。
ただし、役員に払う分は、不相当に高額な部分が損金になりません(法人税法34条2項)。
役員の親族などの使用人に払う分も同じです(同法36条)。
遺族が直接受け取る保険金は、相続税の対象です。
会社が払った保険料を、亡くなった人の負担とみるためです(相続税法基本通達3-17)。
会社が保険金を死亡退職金などとして支給すると決めていれば、退職手当金等として扱います(同ただし書)。
相続人が受け取る分には、「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額があります。
限度額は、死亡保険金と退職手当金等で別々です(相続税法12条1項6号・7号)。
弔慰金の扱いを含め、死亡退職金と弔慰金の記事にまとめています。

規程と保険金額はセットで決め、見直すときも一緒に変えます
主契約の保険金額は、規程の支給額が上限です。
金融庁の監督指針は次のとおりです。
主契約部分は災害・遺族補償規定等に基づく支給金額を上限とし、特約部分は主契約の保険金額を上限(ただし、2,000万円を上限)とする
(保険会社向けの総合的な監督指針Ⅱ-4-2-4(3)②)
保険会社の商品説明でも、主契約の保険金は規程の支給額を上回らない範囲で支払われます。
規程には、死亡と高度障害の両方の支給を書く必要があるとされます。
監督指針は、主契約の保険金を全額遺族に支払う扱いを求めています(同(4)②)。
会社がいったん受け取る場合も、保険会社は遺族が内容を知っているかを確かめてから支払います。
計算例
例2:規程の支給額が従業員5,000,000円・役員30,000,000円の場合
従業員 主契約の上限 5,000,000円/特約の上限 5,000,000円 役員 主契約の上限 30,000,000円/特約の上限 20,000,000円(2,000万円が上限)金額は一定の前提を置いた目安です。実際の上限は、契約の条件で確かめます。
失敗パターン:通達や規程とずれる5つの形
次の5つは、加入や更新の前に確かめたい、通達や規程とずれる処理です。
- 役員だけを加入させ、受取人を遺族にした。保険料は役員への給与です。
- 役員・従業員の全部か大部分が同族関係者なのに、全員加入なら大丈夫と考えた。遺族受取なら、同族関係者の分は給与です(所得税の通達)。
- 規程を変えずに保険金額だけを上げた。主契約の保険金額は、規程の支給額が上限です(監督指針)。
- 退職後も元役員だけを被保険者に残した。元役員だけを対象にしないことが、昭和49年の個別通達の前提です。
- 年払いの保険料を、年によって全額損金にしたり按分したりした。2-2-14は継続適用が条件です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
保険証券と規程の突き合わせまでは、ご自身でできます。
- 保険証券で、被保険者の範囲・受取人・特約の有無と保険金額を確かめる
- 弔慰金・死亡退職金規程の支給額と、主契約の保険金額を並べる
- 役員・従業員のうち、社長のご家族やご親族を書き出す
- 保険料の払い方と、毎期の経理処理が同じ方法かを確かめる
同族関係者が「大部分」か、保険金額の差が合理的かは、事実に応じた個別判断です。
役員の死亡退職金の相当額や、ご遺族の相続税の区分も個別判断です。
税理士が入ると変わるのは、保険料の区分と、規程・申告のつながりです
小松公認会計士・税理士事務所では、加入や更新の前から次の作業を行います。
- 保険証券と被保険者の一覧から、保険料が給与になる形かを判定します
- 規程の支給額と保険金額を突き合わせ、規程の改定案を確認します
- 年払いの保険料・配当金・特約の保険金の経理処理を確認します
- 役員の死亡退職金の額を検討し、損金にできる範囲を確かめます
- ご遺族の相続税申告で、死亡保険金と退職手当金等を区分します
- 決算書・申告書に反映し、税務調査の想定問答を用意します
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 総合福祉団体定期保険の保険料は、全額が損金になりますか?
受取人が会社でも遺族でも、原則として期間の経過に応じて損金です(法人税基本通達9-3-5)。保険期間1年の契約は、9-3-5の2の要件(保険期間3年以上)に当たりません。ただし、遺族受取で役員など特定の人だけを加入させると給与です。
Q2. ヒューマン・ヴァリュー特約の保険料と保険金は、どう扱いますか?
この特約を名指しした国税庁の通達は確認できず、一般の定めに当てはめます。特約の保険料は、特約の内容に応じて9-3-5などの例によります(9-3-6の2)。会社が受取人の特約なら、保険料は期間の経過に応じた損金、保険金は益金と考えます。
Q3. 遺族が直接受け取った保険金に、相続税はかかりますか?
会社が払った保険料も本人の負担とみて、死亡保険金として相続税の対象です(相続税法基本通達3-17)。会社が退職手当金等として支給すると決めていれば、退職手当金等です。相続人の分の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)は、両者で別々です。
Q4. 家族経営の会社でも、全員を加入させれば給与になりませんか?
所得税の通達は、遺族受取の場合の扱いを定めています。役員・使用人の全部か大部分が同族関係者の会社は、全員加入でも同族関係者の分が給与です。根拠は所得税基本通達36-31の2の注2です。大部分に当たるかは、事実に応じた個別判断です。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条2項・34条2項・36条、相続税法3条1項1号・2号、12条1項6号・7号、保険法38条、法人税基本通達2-2-14・9-3-5・9-3-5の2・9-3-6の2・9-3-8、所得税基本通達36-31の注2・36-31の2、相続税法基本通達3-17、国税庁の個別通達「団体定期保険の被保険者に退職者を含める場合の保険料の税務上の取扱いについて」(昭和49年4月20日)、国税庁「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」、タックスアンサーNo.4114・No.4117、金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」Ⅱ-4-2-4の内容を扱っています。総合福祉団体定期保険とヒューマン・ヴァリュー特約を名指しした国税庁の通達は確認できなかったため、一般の定めに当てはめて説明しています。相続税法12条1項の号番号は、令和8年4月1日施行の改正後のものです。保険金を益金に計上する時期、役員の死亡退職金の相当額の計算と損金算入の時期、給与とされた保険料の役員給与としての扱いと生命保険料控除、弔慰金の非課税の範囲、規程で保険金を弔慰金とした場合の相続税の区分、災害・入院の特約と高度障害保険金、加入年齢や最低人数など保険会社ごとの引受条件、消費税、令和9年度税制改正要望(死亡保険金の非課税限度額の引上げ)は扱っていません。商品の内容は保険会社と契約によって異なります。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、保険料の処理や保険金額の上限は契約と規程の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第3節「保険料等」(9-3-5・9-3-5の2・9-3-6の2・9-3-8)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm
- 国税庁 所得税基本通達〔給与等に係る経済的利益〕(36-31・36-31の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
- 国税庁 相続税法基本通達 第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》関係(3-17)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/02.htm
- 金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針(II.保険監督上の評価項目 II-4 業務の適切性)」(II-4-2-4)https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/ins/02d.html
- 東京海上日動あんしん生命保険「総合福祉団体定期保険」(保険会社の商品説明の例)https://www.tmn-anshin.co.jp/houjin/goods_employee/sou/
団体定期保険の保険料と規程を、加入や更新の前に確かめませんか
総合福祉団体定期保険の保険料は、原則として期間の経過に応じて損金になります。ただし、遺族受取で役員など特定の人だけを加入させると給与です。保険金は、会社受取なら益金、遺族受取なら相続税の対象です。主契約の保険金額は、弔慰金・死亡退職金規程の支給額が上限です。代表税理士が、保険証券と規程の突き合わせから経理処理まで確認します。役員の死亡退職金の検討や、ご遺族の相続税の区分にも対応します。加入や更新、規程の改定の前にご相談ください。
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