この記事のポイント
- 相手方などから受け取る賠償金は確定した期の益金が原則で、入金の期も認められます
- 損害の損失は、保険金・共済金で埋まる部分を除き、損害が出た期の損金にできます
- 固定資産の買い替えは、滅失・損壊から3年以内に支払が確定した賠償金なら圧縮記帳を検討できます
- 消費税は原則として不課税ですが、実質が対価に当たれば課税です
まず結論:受け取る損害賠償金は「確定した期」の益金が原則です
事故の相手方などから会社が受け取る損害賠償金は、法人税の益金になります。
示談で決まった示談金も、損害の賠償として受け取るものは同じです。
益金とは、税金の計算で収入として数える額です。
どの期の益金にするかは、法人税基本通達2-1-43が定めています。
他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。以下2-1-43において同じ。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。
(法人税基本通達2-1-43)
他の者から受ける賠償金は、確定した期の益金が原則で、受け取った期の計上も認められます。
損失の側は損害が出た期の損金にできるため、期がずれることがあります。

損失は損害が出た期に、益金は確定か入金の期に計上します
同じ通達の注は、損失の計上時期をこう定めています。
当該損害賠償金の請求の基因となった損害に係る損失の額は、保険金又は共済金により補塡される部分の金額を除き、その損害の発生した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
(法人税基本通達2-1-43の注)
賠償金が決まる前でも損失は今期の損金にでき、賠償金は翌期の益金になる場合があります。
計算例
例:3月決算の会社。令和8年3月10日の事故で、修理代600,000円を3月中に払った場合
確定した日(仮定) 令和8年3月25日/入金 令和8年4月15日 修理代の支払 (借)修繕費 600,000円/(貸)普通預金 600,000円 原則の3月25日 (借)未収入金 600,000円/(貸)雑収入 600,000円 → 令和8年3月期の所得への影響 -600,000円 + 600,000円 = 0円 入金の期で計上する4月15日 (借)普通預金 600,000円/(貸)雑収入 600,000円 → 令和8年3月期 -600,000円/令和9年3月期 +600,000円消費税と自社の保険金を考えない、一定の前提を置いた目安です。2期の合計は、どちらも0円です。

社用車の事故で、相手方の保険会社から受け取る場合
相手方の保険会社は、相手方に代わって損害賠償金を払う立場です。
消費税の通達も、加害者に代わって払う者を加害者に含めます(消費税法基本通達5-2-5)。
壊れた社用車を元に戻す修理代は、修繕費になります。
き損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となる
(法人税基本通達7-8-2)
修理代は修繕費として、賠償金の益金とは別に計上します。
会社が相手に賠償金を払う側の扱いは、会社が払う損害賠償金の記事で解説しています。
自社の車両保険などの保険金とは、扱いが分かれます
自社の保険の保険金と相手方からの損害賠償金は、次の点で扱いが分かれます。
| 項目 | 相手方からの損害賠償金 | 自社の保険の保険金 |
|---|---|---|
| 損害の期の損金(2-1-43の注) | 賠償金が決まる前でも、損失を損金にできる | 保険金で補塡される部分は除かれる |
| 圧縮記帳の対象(施行令84条) | 滅失・損壊の日から3年以内に支払が確定したもの | 保険会社などが支払う保険金で、同じく3年以内に支払が確定したもの |
| 圧縮記帳をするときの滅失損(10-5-2) | 賠償金のみなら、仮勘定にしなくてよい | 見積り計上を除き、保険金の額が確定するまで仮勘定 |
| 消費税 | 原則として対価に当たらない(5-2-5) | 対価に当たらない(5-2-4) |
注意
保険金で補塡される部分まで損害の期の損金にすると、2-1-43の注の扱いから外れます。
入金の通知は、保険金と賠償金に分けて保存します。
壊れた資産を買い替えるなら、圧縮記帳の入口を確かめます
圧縮記帳とは、買い替えた資産の帳簿価額を減らし、その分を損金にする処理です。
損害賠償金も、要件を満たせば圧縮記帳の対象になります。
要件は次のとおりで、清算中の法人は使えません。
- 所有する固定資産の滅失又は損壊により、保険金等の支払を受けたこと(法人税法47条1項)
- 損害賠償金は、滅失又は損壊のあった日から3年以内に支払の確定したものであること(施行令84条)
- その期の終わりまでに、同一種類の代替資産を取得し、又は損壊した資産などを改良したこと。所有権移転外リースによる取得は除かれます
- 帳簿価額を損金経理で減らすなどの経理をし、確定申告書に明細を書くこと(同条1項・3項)
同じ種類かどうかは、耐用年数の表の種類の区分などで判定します(法人税基本通達10-5-3)。
ポイント
棚卸資産の損害分と、休業などで減る収益・生じる費用の補塡分は、圧縮記帳の対象外です(10-5-1)。
保険差益の計算と、買い替えが期末に間に合わないときの特別勘定は、圧縮記帳の記事で解説しています。

消費税は原則として不課税で、実質が対価なら課税です
損害の発生に伴い受ける損害賠償金は、消費税の対象外が原則です。
損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しないが、例えば、次に掲げる損害賠償金のように、その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当することに留意する。
(消費税法基本通達5-2-5)
通達が挙げる例は、次の3つです。
- 損害を受けた棚卸資産等を加害者に引き渡し、そのまま又は軽い修理で使える場合
- 特許権や商標権などの無体財産権の侵害を受けた場合
- 不動産等の明渡しが遅れ、賃貸人が受け取る場合
対価に当たるかは、名称ではなく実質で判定するとされています(タックスアンサーNo.6257)。
補足
賠償金で払った修理代も、課税仕入れに当たれば仕入税額控除の規定が適用されます。お金の出どころは問わないとされています(消費税法基本通達11-2-8)。
法令・通達・裁決に照らして問題になる、5つの処理
次の処理は、ここまでの法令・通達・裁決と合いません。
- 社員や役員から受ける賠償金を、入金の期に計上する。「他の者」に当たらないとした裁決があります(平成23年2月8日裁決)。
- 保険金で埋まる部分まで、損害の期の損金にする。2-1-43の注は、この部分を除いています。
- 賠償金をすべて消費税の不課税にする。実質が対価なら課税です(5-2-5)。
- 休業の補償分まで、圧縮記帳の保険金等に入れる。収益の補塡に充てる分は対象外です(10-5-1)。
- 代わりの車を所有権移転外リースで入れて、圧縮記帳をする。この取得は除かれます(法人税法47条1項)。
社員の不正による損害は、従業員の横領の記事で扱っています。
どの処理も、入金額だけでなく、損害と補償の内訳で判断が変わります。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
事故や損害が起きたら、まず次の4点をご自身で残してください。
- 事故の日・相手方・損害の内容を、写真や報告書で記録する
- 修理の見積書・請求書と、支払った日を残す
- 示談書や保険会社の通知を、届いた日付ごとに保存する
- 入金を通帳で確かめ、保険金と賠償金を分けて記録する
どの日を「確定した日」とするかは、書類と経緯を見て決める個別判断です。
受け取った期での計上、圧縮記帳、消費税の区分も、事実ごとに判断が分かれます。

税理士が入ると変わるのは、計上する期の根拠と内訳の整理です
小松公認会計士・税理士事務所では、事故や損害の後に次の作業を行います。
ひとつめは、示談書・通知・通帳から、確定した日と入金日を特定することです。
ふたつめは、損失の期と益金の期を決め、決算書と申告書に反映することです。
みっつめは、保険金・賠償金・休業の補償などの内訳を分けることです。
よっつめは、圧縮記帳の可否と限度額の計算、申告書への明細の記載です。
いつつめは、消費税の区分と、修理代の仕入税額控除の確認です。
むっつめは、税務調査に備えて、計上の時期の根拠資料をまとめることです。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 示談金を受け取ったのが翌期なら、翌期の益金にしてよいですか?
原則は、支払を受けるべきことが確定した日の属する期の益金です(法人税基本通達2-1-43)。他の者から受ける賠償金は、実際に受け取った期の益金にしている場合も認められます。社員や役員から受ける賠償金は、この扱いの対象外とした裁決があります。
Q2. 事故の修理代は、賠償金が入る前の期に損金にできますか?
2-1-43の注は、損害に係る損失の額を、損害の発生した期の損金にできるとしています。ただし、保険金や共済金で補塡される部分は除かれます。壊れた車を元に戻すための修理代は修繕費です(7-8-2)。賠償金の入金を待たず、期末までに修理代の債務が確定した期の損金です(2-2-12)。
Q3. 相手方の保険会社から受け取った賠償金に、消費税はかかりますか?
損害の発生に伴い受ける賠償金は、原則として対価に当たりません(消費税法基本通達5-2-5)。ただし、壊れた資産を引き渡し、そのまま又は軽い修理で使える場合など、実質が対価なら課税です。名称ではなく実質で判定します。
Q4. 賠償金で新しい社用車を買えば、圧縮記帳できますか?
滅失・損壊の日から3年以内に支払が確定した損害賠償金が対象です(施行令84条)。期末までに同一種類の代替資産を取得した場合などに使えます(法人税法47条)。帳簿価額を損金経理で減らすなどの経理と、確定申告書への明細の記載が要ります。所有権移転外リースによる取得は除かれます。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条2項・3項、47条1項・3項、法人税法施行令84条、法人税基本通達2-1-43・2-2-12・7-8-2・10-5-1・10-5-2・10-5-3、消費税法基本通達5-2-4・5-2-5・11-2-8、タックスアンサーNo.5608「保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳」・No.6157「課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」・No.6257「損害賠償金」、国税不服審判所の平成23年2月8日裁決の内容を扱っています。示談・和解・判決などの場面ごとに「支払を受けるべきことが確定した日」をどう判定するか、自社の保険金を益金にする時期、相手方の保険会社が修理工場へ直接支払う場合の記帳、休業損害・代車費用・評価損の補償の扱い、人身事故の賠償金、過失割合と相殺、会社が賠償金を払う側の扱い、横領の場合の年度ごとの計算、保険差益金と圧縮限度額の計算、特別勘定の要件と期限、代替資産の交付を受けた場合と組織再編成の場合、修繕費と資本的支出の区分の基準、仕入税額控除の要件と経過措置、法人税額と加算税・延滞税、個人事業者の所得税は扱っていません。記事中の計算例と仕訳は一定の前提を置いた目安であり、確定した日や計上する期は事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 法人税基本通達 第2章第1節第7款「その他の収益等」(2-1-43)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_01_06.htm
- e-Gov法令検索「法人税法」(47条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(84条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- 国税庁 法人税基本通達 第10章第5節「保険金等で取得した資産等の圧縮記帳」(10-5-1〜10-5-3)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/10/10_05.htm
- 国税庁 消費税法基本通達 第5章第2節「資産の譲渡の範囲」(5-2-4・5-2-5)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/05/02.htm
事故の賠償金を受け取ったら、計上する期を決算の前に確かめませんか
相手方など他の者から受け取る損害賠償金は、確定した期の益金が原則です。実際に受け取った期に計上することも認められます。損害の損失は、保険金や共済金で埋まる部分を除き、損害が出た期の損金にできます。代表税理士が、示談書や保険会社の通知から計上する期を決めます。保険金と賠償金の内訳、圧縮記帳の可否、消費税の区分まで確認します。示談や入金の前の段階でご相談ください。
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