この記事のポイント
- 自社利用のソフトウエアは耐用年数5年・定額法で償却します
- 設定作業と自社仕様への修正費は取得価額に入ります
- 償却は稼働した日から。完成前の支払は費用になりません
- 改修は機能追加なら資本的支出、障害の除去なら修繕費です
まず結論:自社で使うソフトウエアは、5年で償却する資産です
ソフトウエアは、無形固定資産です(法人税法施行令13条8号ヌ)。
| ソフトウエアの種類 | 耐用年数 | 根拠 |
|---|---|---|
| 複写して販売するための原本 | 3年 | 別表第三 |
| 研究開発用のもの | 3年 | 別表第六 |
| その他のもの(自社の業務用など) | 5年 | 別表第三 |
償却の方法は定額法です(法人税法施行令48条の2第1項4号)。
業務システムを外注して作っても買っても、原則は「5年・定額法」です。

取得価額には、設定作業とカスタマイズの費用も入ります
取得価額(資産として帳簿に載せる金額)は、次のとおりです(法人税法施行令54条1項)。
- 購入した場合 ― 購入の代価+購入に要した費用+事業の用に供するために直接要した費用
- 自社で製作した場合 ― 原材料費・労務費・経費+事業の用に供するために直接要した費用
買ったソフトの調整費用は、通達が明示しています。
他の者から購入したソフトウエアについて、そのソフトウエアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額は、当該ソフトウエアの取得価額に算入することに留意する。
(法人税基本通達7-3-15の2(注)1)
別の請求書でも、設定やカスタマイズの費用は本体と合わせて資産にします。
付随費用の考え方は取得価額に含める付随費用の記事で扱っています。
取得価額に入れないことができる費用は、通達に3つの例示があります
- 製作計画の変更などによる仕損じで、不要になったことが明らかな費用
- 研究開発費
- 間接費・付随費用で、合計が製作原価のおおむね3%以内の少額なもの
自社利用の研究開発費には条件があります。
研究開発費の額(自社利用のソフトウエアに係る研究開発費の額については、その自社利用のソフトウエアの利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかな場合における当該研究開発費の額に限る。)
(法人税基本通達7-3-15の3(2))
業務を効率化するためのシステムなら、研究開発費として外せる場面は限られます。
補足
データ移行や操作研修の費用は、この2つの通達に名指しの定めがありません。事業の用に供するために直接要した費用に当たるかを、契約書と作業の中身で個別に判断します。
10万円・20万円・40万円の3つの線で、少額の扱いが分かれます
| 取得価額 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 事業に使った期に全額を損金経理できる | 法人税法施行令133条 |
| 20万円未満 | 3年で均等に損金算入(一括償却資産) | 法人税法施行令133条の2 |
| 40万円未満 | 中小企業者等は全額を損金算入(年300万円まで) | 租税特別措置法67条の5 |
40万円の特例は、ソフトウエアも対象です(租税特別措置法67条の5第1項)。
令和8年4月1日以後の取得等から、30万円未満が40万円未満に上がりました。
同日以後は、従業員400人超の法人は対象外です。青色申告も要件です。
10万円と40万円の線は、事業に使った期の損金経理が前提です。
20万円の線は、使った期の申告書への記載も要件です(法人税法施行令133条の2第11項)。
注意
いったん資産に計上したものを、後の期にまとめて費用にしても損金になりません(タックスアンサーNo.5403)。40万円の特例は確定申告書への明細書の添付も必要です(租税特別措置法67条の5第3項)。
少額の判定の全体像は少額減価償却資産の記事をご覧ください。

償却は、完成して稼働した日から月割で始まります
事業の用に供していない資産は、減価償却資産から除かれます(法人税法施行令13条)。
着手金や中間金は、稼働まで費用になりません。資産の勘定に積み上げます(建設中の資産について通達7-1-4)。
期の途中で稼働したら、期末までの月数で按分します(法人税法施行令59条)。1か月未満は1か月です。
計算例
例:3月決算の会社。外注開発費600万円+導入時の設定作業60万円。令和8年10月15日に稼働
取得価額 6,000,000円 + 600,000円 = 6,600,000円 1年分の償却限度額 6,600,000円 × 0.200 = 1,320,000円 稼働から期末まで 令和8年10月15日〜令和9年3月31日 = 6か月 令和9年3月期の償却限度額 1,320,000円 × 6/12 = 660,000円 全額を費用にした場合に損金にならない額 6,600,000円 - 660,000円 = 5,940,000円0.200は耐用年数5年の定額法の償却率です(耐用年数省令 別表第八)。金額は目安です。
損金になるのは、損金経理をした額のうち償却限度額までです(法人税法31条1項)。
改修費は、機能を足したか、直したかで分かれます
改修は、中身で資本的支出(資産に加える支出)か修繕費かを決めます。
法人が、その有するソフトウエアにつきプログラムの修正等を行った場合において、当該修正等が、プログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときはその修正等に要した費用は修繕費に該当し、新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときはその修正等に要した費用は資本的支出に該当することに留意する。
(法人税基本通達7-8-6の2)
例えば改修費150万円のうち帳票機能の追加が100万円なら、それが資本的支出です。
残る不具合の修正50万円は修繕費です。
見積書に機能追加と不具合修正が混ざっていると、区分の根拠が残りません。
仕様を大幅に変えるなら新たな取得です。旧システムを使わないなら、その残りの帳簿価額も新システムの取得価額です(通達7-3-15の2(注)2)。
20万円・60万円の基準(通達7-8-3・7-8-4)は修繕費と資本的支出の記事で扱っています。
保守料・クラウド利用料・研究開発用は、それぞれ確かめ方が違います
保守契約の中身が、プログラムの障害の除去や現状の効用の維持なら、7-8-6の2により修繕費です。
保守の名目でも、機能追加の部分は資本的支出になり得ます。
クラウド(SaaS)の月額利用料を資産とする定めは、この記事で扱う条文と通達にはありません。
初期費用や複数年分の前払がある契約は、契約書で個別に判断します。
研究開発にだけ使うソフトウエアも減価償却資産です(通達7-1-8の2)。耐用年数省令の「開発研究」に使う場合は、耐用年数は3年です(別表第六)。

税務調査で指摘されやすいのは、この5つです
- 開発費を支払った期に全額費用にした ― 償却限度額を超える部分は加算です
- 稼働前の中間金を償却した ― 事業の用に供していない資産は償却できません
- 設定作業やカスタマイズ費を別の経費にした ― 取得価額に入ります(7-3-15の2(注)1)
- 業務改善システムを研究開発費として外した ― 自社利用は条件付きです(7-3-15の3(2))
- 改修費をすべて修繕費にした ― 機能追加の部分は資本的支出です(7-8-6の2)
どれも、契約書と見積書の内訳が分かれていないと説明が難しくなります。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
発注の前後にご自身で用意できるのは4点です。
- 契約書・見積書・請求書を1つのフォルダにまとめる
- 見積書を「本体」「設定・カスタマイズ」「移行・研修」「保守」に分けてもらう
- 稼働日(本番で使い始めた日)を社内の記録に残す
- 改修のたびに、機能追加か不具合修正かを発注書に書く
ポイント
取得価額に何を含めるか、40万円の特例を使える会社か、改修費をどう分けるかは、契約の中身ごとの判断です。

税理士が入ると変わるのは、発注前の内訳づくりと申告への反映です
ひとつめは、発注前の見積書の確認です。取得価額に入る費用を区分できる形に整えます。
ふたつめは、取得価額と稼働日の確定です。中間金の積み上げと、償却の開始月を決めます。
みっつめは、少額の特例の判定です。従業員数と年300万円の枠を確かめ、明細書を添付します。
よっつめは、改修費の区分です。機能追加と不具合修正を分け、根拠の資料を残します。
いつつめは、別表への反映です。償却限度額を計算し、超える部分を申告書で調整します。
小松公認会計士・税理士事務所では、導入の検討段階からこれらを確認しています。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 業務システムの開発費600万円を、支払った期に全額経費にできますか?
できません。自社で使うソフトウエアは耐用年数5年・定額法で償却する無形固定資産です。損金になるのは、損金経理をした額のうち償却限度額までです(法人税法31条1項)。期の途中で稼働したときは、稼働から期末までの月数で按分します(法人税法施行令59条)。
Q2. 完成前に支払った着手金や中間金は、いつ費用になりますか?
稼働するまでは費用になりません。事業の用に供していない資産は減価償却資産から除かれるためです(法人税法施行令13条)。完成して使い始めた日から、取得価額の全体を償却していきます。稼働日は社内の記録に残してください。
Q3. パッケージソフトの導入時に払った設定費は、本体と分けて経費にできますか?
原則としてできません。導入に必要な設定作業と、自社の仕様に合わせる付随的な修正作業の費用は、ソフトウエアの取得価額に入ります(法人税基本通達7-3-15の2(注)1)。本体と合わせた金額で、少額の判定も行います。
Q4. 38万円のソフトウエアを買いました。全額を経費にできますか?
令和8年4月1日以後の取得等で、青色申告の中小企業者等であれば、40万円未満の特例の対象になり得ます(租税特別措置法67条の5)。事業に使った期の損金経理と、確定申告書への明細書の添付が必要です。年300万円が上限で、従業員400人超の法人は対象外です。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法31条1項、法人税法施行令13条・48条の2第1項4号・54条1項・59条・133条・133条の2、租税特別措置法67条の5、租税特別措置法施行令39条の28、減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第三・別表第六・別表第八、法人税基本通達7-1-4・7-1-8の2・7-3-15の2・7-3-15の3・7-8-3・7-8-4・7-8-6の2、国税庁タックスアンサーNo.5403・No.5461、国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」の内容を扱っています。データ移行費用・操作研修費用を取得価額に含めるかどうかの結論、クラウド(SaaS)の初期費用や前払利用料の取扱い、短期前払費用・繰延資産の取扱い、市場販売目的のソフトウエアの取扱いの詳細、ソフトウエアのリース取引、研究開発税制の税額控除、特定生産性向上設備等投資促進税制・中小企業経営強化税制その他の特別償却・税額控除、租税特別措置法67条の5の中小企業者の資本金等の要件の詳細、耐用年数の短縮、ソフトウエアの除却損、消費税・地方税の取扱い、個人事業者の取扱いは扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は契約の内容・稼働日・事業年度によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(13条・48条の2・54条・59条・133条・133条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第3節第1款「固定資産の取得価額」(7-3-15の2・7-3-15の3)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_03_01.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第8節「資本的支出と修繕費」(7-8-6の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_08.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5461.htm
- 国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2026/pdf/A.pdf
システムを発注する前に、取得価額と改修費の区分を確かめませんか
自社で使うソフトウエアは、耐用年数5年・定額法で償却する無形固定資産です。設定作業やカスタマイズの費用も取得価額に入り、稼働前の支払は費用になりません。改修費は、機能追加なら資本的支出、不具合の修正なら修繕費です。代表税理士が、発注前の見積書の区分、取得価額と稼働日の確定、40万円未満の特例の判定と明細書の添付、改修費の区分、申告書への反映まで、通して対応します。見積書が出た段階でご相談いただくと、区分の根拠を契約書に残せます。
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