この記事のポイント
- 商標権は10年、特許権は8年の定額法で、取得価額の全額まで償却します
- 商標権・特許権などは、取得の日から事業に使ったものとして償却を始めます
- 登録のための費用は、取得価額に入れないこともできます(法人税基本通達7-3-3の2)
- 青色申告の中小企業者等は、令和8年4月1日以後の取得なら40万円未満が特例の対象です(上限あり)
まず結論:商標権・特許権は無形固定資産として、定額法で償却します
会社が商標や特許を登録したり買ったりすると、その権利は会社の資産になります。
税務では無形固定資産(形のない資産)として、年数に分けて費用にします(法人税法施行令13条8号)。
耐用年数は、商標権10年・特許権8年などです。
登録のための費用は取得価額に入れないこともでき、金額が小さければ少額資産の扱いもあります。

耐用年数は別表第三で決まり、償却方法は定額法だけです
工業所有権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)の耐用年数は、次のとおりです。
| 権利 | 耐用年数 | 定額法の償却率 |
|---|---|---|
| 特許権 | 8年 | 0.125 |
| 実用新案権 | 5年 | 0.200 |
| 意匠権 | 7年 | 0.143 |
| 商標権 | 10年 | 0.100 |
(耐用年数省令の別表第三・別表第八)
償却方法は定額法だけで、毎年同じ額を費用にします(法人税法施行令48条の2第1項4号)。
無形固定資産は、取得価額の全額まで償却できます(同令61条1項2号)。
工業所有権は、取得の日から事業に使ったものとして扱います(法人税基本通達7-1-6)。
期の途中で取得したときは、取得の日から期末までの月数で月割りします(施行令59条)。1か月未満は1か月と数えます。
計算例
例1:3月決算の会社が、令和8年10月20日に商標権を1,200,000円で買った場合
1年分の償却限度額 1,200,000円 × 0.100 = 120,000円 初年度の月数 10月20日〜3月31日 → 6か月(端数は1か月) 初年度 120,000円 × 6/12 = 60,000円 2期目から10期目は毎年120,000円、11期目の60,000円で全額金額は一定の前提を置いた目安です。ソフトウエアの耐用年数はソフトウエア開発費の記事で扱っています。
取得価額は、買ったか自社で出願したかで考え方が違います
他社から買った権利は、代金に購入のための費用を足した額が取得価額です。
事業に使うために直接かかった費用も含めます(施行令54条1項1号)。
ただし、通達は次のように定めています。
次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。
(法人税基本通達7-3-3の2)
その(1)ニが「登録免許税その他登記又は登録のために要する費用」です。
出願権(特許や登録を受ける権利)を買った場合は、通達7-3-15が定めています。
登録されると、出願権のまだ償却していない残額が、その権利の取得価額になります。
取得に要した費用があれば、その額も加えます。
自社で出願した場合の費用を名指しした項目は、取得価額の通達には見当たりません。
出願料・登録料・弁理士報酬・調査費用は、費用ごとに扱いを決めます。
どの費用を取得価額に入れるかで、その期に損金になる額が変わります。
取得価額が小さい権利は、少額資産の扱いを検討します
金額が小さければ、一度に損金にできる制度があります。
- 10万円未満 ― 事業に使った期に損金経理(帳簿で費用に計上)すれば、全額が損金です(施行令133条)。
- 20万円未満 ― 一括償却資産として、36か月で均等に損金にできます(施行令133条の2。申告書への記載などが要件)。
- 40万円未満 ― 青色申告の中小企業者等は、損金経理すれば全額を損金にできます(措置法67条の5)。
40万円未満は、令和8年4月1日以後の取得が対象です。
それより前の取得は、改正前の30万円未満で判定します(令和8年法律第12号附則65条)。
従業員の数の基準も、同日以後の取得から原則400人以下(改正前500人以下)です。
対象は令和11年3月31日までの取得で、上限は事業年度ごとに合計300万円です。
確定申告書には、明細書(別表16(7))の添付が要ります(タックスアンサー No.5408)。
このタックスアンサーは、特許権・商標権も対象と明記しています。
工業所有権は取得の日に事業に使ったものとされるため、少額の扱いは取得した期の処理で決まります。
計算例
例2:青色申告の中小企業者等が、取得価額350,000円の商標権を取得した場合
令和8年4月1日以後の取得 → 40万円未満 → 損金経理した350,000円の全額が損金 令和8年3月31日以前の取得 → 30万円未満ではない → 10年の定額法(1年分 350,000円 × 0.100 = 35,000円)金額は一定の前提(300万円の枠内)を置いた目安です。

ライセンス料は、一時金か継続的な使用料かで扱いが変わります
実施権・使用権を得るための金額は、工業所有権に準じて償却します(法人税基本通達7-1-4の3)。
実施権などの存続期間が耐用年数より短いときは、その年数(1年未満は切捨て)で償却できます。商標の使用許諾の一時金を、繰延資産とした国税庁の事例もあります。
一方、毎月や毎年払う使用料は、その期に債務が確定した分がその期の損金です(法人税法22条3項2号)。
ポイント
一時金を全額その期の費用にしても、その期の損金は償却限度額までです(法人税法31条1項)。契約書で、一時金と使用料を分けて確かめます。
同じライセンス料でも、一時金は償却し、継続的な使用料はその期の費用にします。
フランチャイズの加盟金は、フランチャイズ加盟金の記事で扱っています。
見直しの対象になるのは、時期と金額基準の取り違えです
見直しの対象になるのは、次のような処理です。
- 使う前だからと償却を始めない ― 工業所有権は取得の日から事業に使ったものとされます。償却費は、損金経理をしなければ損金になりません(法人税法31条1項)。
- 資産にした権利を、後の期にまとめて費用にする ― 少額の扱いは、事業に使った期の損金経理が要件です(タックスアンサー No.5403)。
- 令和8年3月31日以前の取得に、40万円未満の基準を使う ― この取得は、改正前の30万円未満で判定します(附則65条)。
- 特例の明細書を付け忘れる ― 措置法67条の5の特例は、明細書の添付が適用の条件です(同条3項)。
注意
社長個人の商標を会社が買い取るときは、価格の根拠が要ります。通達7-3-1により、不当に高価な買入れのうち、実質的に贈与と認められた額は取得価額から除きます。
償却を始める時期と、取得日に応じた金額基準を、取得した期に確かめることが大切です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
権利を取得したら、ご自身で次の4点を整えられます。
- 登録証や契約書で、権利の種類と取得の日を確かめる
- 支払いを、購入代金・特許庁への支払い・弁理士報酬・調査費用に分けて記録する
- 別表第三で耐用年数を確かめ、固定資産台帳に載せる
- 自社が中小企業者等に当たるか、取得日が令和8年4月1日以後かを確かめる
一方、どの費用を取得価額に入れるかは、通達の文言と費用の中身を照らす個別判断です。
補足
商標権の存続期間は、設定の登録の日から10年です(商標法19条1項)。更新登録の申請で更新でき、更新登録料を納めます(同条2項・同法40条2項)。更新登録料の法人税の扱いを名指しした通達は、確かめた範囲では見当たりません。
施行令132条は、資産の使用可能期間を延ばす部分の支出を、その期の損金に算入しないと定めています。
更新登録料がこれに当たるかを含め、扱いは更新の内容と金額を見て決める個別判断です。

税理士が入ると変わるのは、取得価額の組み立てと特例の選び方です
小松公認会計士・税理士事務所では、権利を取得した会社に次の作業を行います。
ひとつめは、支払いの内訳の整理です。請求書と登録証から、取得価額に入れる額を決めます。
ふたつめは、制度の選択です。その期の利益と300万円の枠を見て、償却・一括償却・特例から選びます。
みっつめは、特例や一括償却の明細書の作成と、申告書への添付です。
よっつめは、ライセンス契約書の確認です。一時金と使用料を分けて処理します。
いつつめは、社長個人からの買い取りの準備です。価格の根拠となる資料をそろえます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 商標登録にかかった費用は、どの勘定科目で処理しますか?
資産に計上する分は、無形固定資産の「商標権」として10年の定額法で償却します。登録のための費用は、取得価額に入れないこともできます(法人税基本通達7-3-3の2)。取得価額が10万円未満なら、取得した期に損金経理すれば全額が損金です(法人税法施行令133条)。
Q2. 特許権の耐用年数は何年ですか?
特許権は8年で、定額法の償却率は0.125です(耐用年数省令別表第三・別表第八)。取得の日から事業に使ったものとして償却を始めます(法人税基本通達7-1-6)。取得価額の全額まで償却できます。実用新案権は5年、意匠権は7年です。
Q3. 商標権に、40万円未満の少額減価償却資産の特例は使えますか?
青色申告の中小企業者等なら使えます(タックスアンサー No.5408)。40万円未満の基準は令和8年4月1日以後の取得からで、それより前は30万円未満です。上限は事業年度ごとに合計300万円です。損金経理と明細書(別表16(7))の添付が要件です。
Q4. 他社の商標を使うためのライセンス料は、払った期の費用になりますか?
毎月や毎年の使用料は、その期に債務が確定した分がその期の損金です(法人税法22条3項2号)。使用権を得るための一時金は、工業所有権に準じて償却します(法人税基本通達7-1-4の3)。存続期間が耐用年数より短ければ、その年数(1年未満は切捨て)で償却できます。期間を決めた商標の使用許諾の一時金を、繰延資産とした国税庁の質疑応答事例もあります。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条3項・31条1項、法人税法施行令13条8号・48条の2第1項4号・54条1項・59条・61条1項2号・132条・133条・133条の2、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第三・別表第八、租税特別措置法67条の5と令和8年法律第12号附則65条、法人税基本通達7-1-4の3・7-1-6・7-3-1・7-3-3の2・7-3-15、商標法19条・40条、タックスアンサーNo.5403「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」・No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」、質疑応答事例「『プライバシーマーク』の使用許諾を受けるまでの費用等の税務上の取扱いについて」の内容を扱っています。自社で出願した場合の出願料・登録料・弁理士報酬を取得価額に入れるかの結論、商標の更新登録料と特許料(年金)の処理、特許庁の手数料・登録料の金額、外国での出願・登録の費用、職務発明の相当の利益、試験研究費と研究開発税制、中小企業者等・適用除外事業者・特定法人の判定の細目、一括償却資産と少額の判定単位の当てはめ、貸付けの用に供した資産を対象外とする定めの当てはめ、中古の権利の耐用年数、権利の譲渡・除却の損益、ノウハウの頭金、フランチャイズ加盟金、ソフトウエア、のれん(営業権・資産調整勘定)、消費税、外国法人に払う使用料の源泉徴収、社長個人が権利を売ったときの所得税、個人事業主の所得税、償却資産税は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の処理は取得の経緯と契約の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(13条・48条の2・54条・59条・61条・132条・133条・133条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- e-Gov法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(別表第三・別表第八)https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第1節第1款「減価償却資産」(7-1-4の3・7-1-6)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_01_01.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第3節第1款「固定資産の取得価額」(7-3-1・7-3-3の2・7-3-15)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_03_01.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
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