この記事のポイント
- 税務署長の決定があるまでは、期限を過ぎても原則5年の範囲で出せます
- 事前通知の前に自主的に出せば、無申告加算税は原則5%です
- 3,000万円控除は要件を満たし記載と添付があれば期限後でも使えます
- マイホームの譲渡損失の繰越控除は期限内申告と連続申告が条件です
まず結論:気づいたら期限後申告を。特例は使えないものもあります
申告の期間は原則、売った年の翌年2月16日から3月15日までです(No.3102)。
No.は、国税庁のタックスアンサー(税の解説ページ)の番号です。
期限を過ぎても、税務署長の決定があるまでは期限後申告書を出せます(国税通則法18条)。
決定とは、申告しなかった人の税額を、税務署長が調査で決める処分です(同法25条)。
国税庁も、気づいたらできるだけ早く申告するよう案内しています(No.2024)。
3,000万円控除などは、要件を満たせば期限後申告書に書いて使えます。
ただし、マイホームの譲渡損失の繰越控除は、原則として使えません。

最初に、売った年分の確定申告書を出したかを確かめます
| 状況 | 主な手続 |
|---|---|
| その年分の確定申告書を出していない | 期限後申告 |
| 給与や家賃などの申告は出したが、売却を書かなかった | 税額が不足するなら修正申告(No.2026) |
修正申告では、3,000万円控除を後から使えるとは限りません。
進め方は売却の申告を間違えたときの記事に任せます。
特例で税額が出ない方も申告が要る点は、3,000万円控除の申告要件の記事をご覧ください。
無申告加算税は、いつ出すかで割合が変わります
期限内に申告しないと本税に無申告加算税が上乗せされ、割合は出す時期で変わります。
本税とは本来の税金のことです。割合は次のとおりです(No.2024)。
| 期限後申告の時期 | 本税50万円までの部分 | 50万円超300万円までの部分 | 300万円超の部分 |
|---|---|---|---|
| 調査の事前通知の前に自主的に | 5% | 5% | 5% |
| 事前通知の後、調査による決定を予知する前 | 10% | 15% | 25% |
| 調査を受けた後、または決定を受けた場合 | 15% | 20% | 30% |
表は令和5年分以降の割合です。
事前通知とは、調査の日時や税目などを前もって知らせる連絡です(国税通則法74条の9)。
調査の事前通知の前に自主的に出せば、割合は5%にとどまります。
災害などの正当な理由があると認められる場合は、かかりません(国税通則法66条1項)。
ポイント
次をすべて満たす期限後申告にも、無申告加算税はかかりません(No.2024)。
①法定申告期限から1か月以内に自主的に申告した。②税金の全額を法定納期限までに納めた(口座振替は提出日まで)。③過去5年間に無申告加算税・重加算税を課されておらず、この取扱いも受けていない。
延滞税は、納める日まで日数に応じて増えます
延滞税は、法定納期限の翌日から納める日までの日数で計算する、利息に当たる税金です(No.9205)。
期限後申告で納める税金は、申告書を出した日が納期限です(No.2024)。
令和8年中の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、その後は年9.1%です。
申告した日に納めれば、令和8年中の期間は年2.8%の区分で計算します。
令和7年以前の期間は、割合が異なります(No.9205)。

自主的に出すときと調査の後では、割合以外も変わります
事前通知の後や調査の後は、次の点も変わります。
- 加算 ― 過去の無申告加算税などの状況で、10%が加わることがあります(No.2024)
- 特例を書く機会 ― 決定を受けると期限後申告書を出せず、機会を失うおそれがあります
- 重加算税 ― 隠蔽・仮装(契約書の破棄など)があると、調査の後は代わりに40%です(国税通則法68条2項)
税務署から売却についての「お尋ね」が届いた方も、事前通知の前に自主的に出せるかが分かれ目です。
調査か行政指導かは、担当者が手続の前に明示するとしています(税務調査手続に関するFAQ 問2)。
答え方はお尋ねが届いたときの記事に任せます。
特例は期限後でも使えるか:特例ごとに条件が違います
表の特例は、繰越控除を除き、要件を満たせば期限後申告書に書けます。
条件は確定申告書への記載と書類の添付です。
確定申告書の定義には「当該申告書に係る期限後申告書を含む」とあります(所得税法2条1項37号)。
| 特例 | 期限後申告書では(租税特別措置法の条文) |
|---|---|
| マイホームの3,000万円控除 | 書けます(35条12項) |
| 相続した空き家の3,000万円控除 | 書けます(同項)。市区町村の確認書も要ります(No.3306) |
| マイホームの軽減税率 | 書けます(31条の3第3項) |
| 特定のマイホームの買換え | 書けます(36条の2第5項)。買い換える期限は別です |
| 相続税額の取得費加算 | 書けます(39条2項) |
| マイホームの譲渡損失の損益通算 | 書けます(41条の5第2項など) |
| マイホームの譲渡損失の繰越控除 | 原則として使えません(同条5項など) |
繰越控除は、損失の年分の期限内申告書と連続した申告が条件です(No.3370・No.3390)。
税務署長が「やむを得ない事情」を認めれば適用できる定めもあります(35条13項など)。
書類の提出が条件で、具体例は条文にありません。
注意
新居の住宅ローン控除と両立しないことがあります。入居の年かその前年・前々年にマイホームの3,000万円控除を受けると、住宅ローン控除は使えません。入居の翌年から3年目までに旧居を売って受ける場合も同じです(No.3302)。

数字で見ると、特例を書けるかの差が大きく出ます
加算税は本税にかかるため、特例や取得費の確認で本税が下がると、加算税も下がります。
計算例
例:令和7年中にマイホームを売却(所有10年超・譲渡所得3,500万円)
特例を書いた本税 (3,500万円 - 3,000万円)× 10% × 1.021 = 510,500円 ① 事前通知の前に自主的に 510,000円 × 5% = 25,500円 ② 調査の後、決定の前に特例を書いて出す 50万円 × 15% + 1万円 × 20% = 77,000円 ③ 特例が適用されないとした本税 3,500万円 × 15% × 1.021 → 5,360,200円 ③の調査後の加算税 50万円 × 15% + 250万円 × 20% + 236万円 × 30% = 1,283,000円 ①の延滞税(令和8年12月1日に申告・納付) 510,000円 × 2.8% × 260日 ÷ 365日 → 10,100円各特例の要件を満たし、ほかの所得・所得控除・過去の加算税がない、一定の前提を置いた目安です。
税率は令和7年分、法定納期限は令和8年3月16日です。加算税と延滞税は、本税の1万円未満を切り捨てて計算します。
②③の延滞税と、各例の住民税は別です。
特例を書けるかどうかで、本税は約485万円変わります。
特例で本税が0円になるなら、加算税と延滞税の計算の基礎もありません。
動き方を誤ると、控除を逃したり負担が増えたりします
- 税金は出ないはずと放置する ― 記載と添付がなければ、原則として3,000万円控除は適用されません
- 損が出たからと出さない ― マイホームの譲渡損失の繰越控除が、原則として使えなくなります
- 取得費を調べず5%で出す ― 実際の取得費のほうが大きいと、税額が多くなります(No.3258)
- 申告して納めない ― 2か月を過ぎると、延滞税の割合が上がります
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
書類をそろえて事実を整理するところまでは、ご自身で進められます。
- 売った年と、その年分の確定申告書を出したかを確かめる
- 売ったときと買ったときの契約書、仲介手数料の領収書をそろえる
- 税務署から届いた書面があれば、日付と内容を確かめる
- 前年・前々年に使った特例と、新居の住宅ローン控除の有無を書き出す
特例の要件、加算税の区分、取得費の組み立ては、資料と経緯で結論が変わります。
税理士に頼むと変わるのは、特例の判定と負担の見込みです
小松公認会計士・税理士事務所では、特例の判定と負担の見込みを整えてから申告します。
- 申告が必要な年分の洗い出しと、期限後申告か修正申告かの確認
- 特例が使えるかの判定と、取得費の合理的な算定
- 譲渡所得の内訳書(土地・建物用)と申告書の作成・提出
- 納める税金と、加算税・延滞税の見込みのご説明
- 税務署から連絡が来ている場合の対応のご相談(税務調査の立会いは別料金)
全国どこからでもオンラインで完結します。料金は、売った金額や使う特例などで決まり、60秒見積りで分かります。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 何年も前の売却でも、今から期限後申告はできますか?
税務署長の決定があるまでは、期限後申告書を出せます(国税通則法18条1項)。決定ができるのは原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為があれば7年です(同法70条)。法定申告期限から原則5年を過ぎた年分は出せないとする判決もあります(東京高裁平成30年8月1日判決)。年分ごとに扱いを確かめて進めます。
Q2. 3,000万円控除で税金がゼロになるはずでした。期限後でも使えますか?
確定申告書には期限後申告書が含まれます(所得税法2条1項37号)。要件を満たし、特例の記載と書類の添付があれば使えます(租税特別措置法35条12項)。納める税金がなければ、無申告加算税と延滞税の計算の基礎になる税額もありません。
Q3. お尋ねが届いてから期限後申告をすると、加算税は重くなりますか?
分かれ目は、調査の事前通知の前に自主的に出すかどうかです。その場合は5%です(No.2024)。事前通知の後は10%〜25%、調査の後は15%〜30%です(令和5年分以降)。調査か行政指導かは担当者が明示することとしています。
Q4. マイホームを売って損が出ました。申告を忘れても問題ありませんか?
譲渡損失の繰越控除は、損失の年分の期限内申告書と連続した申告が条件です(No.3370・No.3390)。期限後は原則として繰り越せません。損益通算は要件を満たし、記載と添付があれば適用されます(租税特別措置法41条の5第2項など)。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税通則法18条・25条・35条2項・60条・66条・68条2項・70条・74条の9・118条3項・119条、国税通則法施行令27条の2、所得税法2条1項37号、租税特別措置法2条1項10号・31条の3第1項・3項・35条1項・3項・12項・13項・36条の2第5項・39条2項・41条の5・41条の5の2、国税庁タックスアンサー No.2024・No.2026・No.3102・No.3208・No.3258・No.3302・No.3305・No.3306・No.3355・No.3370・No.3390・No.9205、国税庁「延滞税の計算方法」「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2、東京高裁平成30年8月1日判決、国税庁の事務運営指針「申告所得税及び復興特別所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて」「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて」、国税庁「国税システムの更改について」の内容を扱っています。各特例の適用要件の細目と添付書類、「やむを得ない事情」に当たる具体的な事例、決定を受けた後や修正申告で特例を受けられるかの結論、「お尋ね」の法的な位置づけと回答の方法、無申告加算税の「正当な理由」の個別の判断、表にない特例(収用等・事業用資産の買換えなど)、マイホーム以外の譲渡損失の扱い、令和4年分以前の無申告加算税の割合、帳簿の提示に関する加算、66条3項の税額の控除、令和9年以後の延滞税の割合、納税の猶予、国税の徴収権の消滅時効の計算、住民税の申告・税額・延滞金、国民健康保険料への影響、青色申告特別控除への影響、消費税、罰則、令和9年分以後の復興特別所得税と防衛特別所得税、弊所の料金は扱っていません。記事中の計算例は令和7年中の売却を前提とした一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は取得費・譲渡費用・所有期間・使う特例・ほかの所得・申告と納付の日によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2024 確定申告を忘れたときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.9205 延滞税についてhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
- 国税庁 税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm
- e-Gov法令検索「国税通則法」(18条・66条)https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(35条・41条の5)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
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