この記事のポイント
- 国外財産調書は、12月31日の国外財産が5,000万円超の居住者(非永住者を除く)が出します
- 提出期限は翌年6月30日で、令和8年分は令和9年6月30日が期限です
- 調書の円換算は12月31日の電信買相場(TTB)など、申告は取引日の仲値が原則です
- 国外財産の申告漏れでは、期限内の調書の提出と記載の有無で加算税が税額の5%分増減します
まず結論:12月31日の残高と相場の記録が、翌年の申告と調書の土台です
日本の居住者(非永住者を除く)は、国内外のすべての所得に所得税がかかります(所得税法7条1項1号)。
居住者とは、国内に住所がある人などです。
海外の利子・配当・家賃・売却益も、日本で課税されます。
さらに、12月31日の国外財産が5,000万円を超えると、国外財産調書の提出が必要です。
財産の種類・数量・価額などを書き、翌年6月30日までに出します(国外送金等調書法5条1項)。
年末の記録は、翌年の確定申告(原則3月15日まで)と国外財産調書の両方で使います。

国外財産調書の判定は、12月31日の現況で行います
調書を出すのは、居住者のうち非永住者を除く方です。
非永住者とは、日本国籍がなく、過去10年で国内に住んだ期間が合計5年以下の人です。
居住者かどうかと財産の所在は、12月31日の現況で判定します(国税庁通達5-2・施行令10条3項)。
令和8年分の期限は、令和9年6月30日です(令和4年分までは翌年3月15日)。
補足
財産債務調書も、12月31日の財産で判定し、期限は翌年6月30日です(国外送金等調書法6条の2)。対象は、確定申告をする方などで、退職所得を除く所得が2,000万円を超える方です。そのうえで、財産が3億円以上か、有価証券などが1億円以上あると出します。令和5年分からは、財産が10億円以上の居住者も対象です。
国外にある財産かは、口座を開いた場所で決まるものがあります
調書に載せるかは、財産の種類ごとに所在(ある場所)で判定します(施行令10条1項)。
- 預金 ― 預け入れた営業所の所在で判定します。国内の支店の外貨預金は、国外財産ではありません(国税庁FAQ問22)。
- 有価証券 ― 口座で管理するものは、口座を開いた営業所の所在で判定します(施行令10条2項)。
- 不動産 ― 不動産がある場所で判定します(FAQ問20)。
国内の証券口座の外国株は国外財産ではなく、海外の証券口座の日本株は国外財産です(FAQ問23)。
年末に記録したいのは、12月31日の残高・時価・相場です
調書に書く価額は、12月31日の時価か、合理的に見積もった見積価額です(施行令10条4項)。
| 財産 | 12月31日に記録するもの(例) |
|---|---|
| 預貯金 | 12月31日の預入高(満期前の定期預金は、預け入れた元本でも可) |
| 上場株式など | 取引所が公表する12月31日(なければ前の最も近い日)の最終価格 |
| 海外の土地・建物 | 鑑定評価額や、外国の固定資産税に当たる税の課税標準額など |
外貨は、取引金融機関の12月31日の最終の電信買相場(TTB)などで円にします(通達5-14)。
TTBは、銀行が外貨を円に替えるときの相場です。預金は、預け入れている金融機関の相場を使います(FAQ問18)。
注意
海外の不動産を借入金で買っていても、価額から借入金の元本は差し引けません(FAQ問39)。差し引いて5,000万円以下と判断すると、提出漏れにつながります。
計算例
例:12月31日に、海外の預金150,000米ドルと海外口座の株式195,000米ドルがある場合
外貨の合計 150,000米ドル + 195,000米ドル = 345,000米ドル TTBが145円のとき 345,000 × 145円 = 50,025,000円(5,000万円を超える) TTBが144円のとき 345,000 × 144円 = 49,680,000円(5,000万円以下)相場は仮定で、ほかに国外財産がない前提の目安です。
同じ外貨の残高でも、12月31日の相場しだいで提出が必要かどうかが変わります。

翌年の確定申告では、1年分の明細と外国の税金の書類を使います
確定申告では、12月31日の残高ではなく、1年間の利子・配当・売買の明細を使います。
国外で支払われ、国内で源泉徴収されない預金の利子は、総合課税の利子所得です(国税庁の手引き)。
配当所得の収入金額は、外国所得税額を差し引く前の金額です(No.1330)。
外貨の利子や配当は、原則として計上する日のTTM(売りと買いの相場の中間)で円にします。
ポイント
国外財産調書の円換算は、12月31日(相場がなければ前の最も近い日)のTTBなどです。確定申告は、取引日のTTMが原則です(所得税基本通達57の3-2)。
外国で引かれた税金は、外国税額控除で日本の所得税から差し引ける場合があります(所得税法95条1項)。
控除には、外国所得税を課されたことを証する書類などの添付が要ります(No.1240)。
現地で税金が引かれていても、日本の所得税の計算から外れるわけではありません。
海外の不動産を売った年は、海外の不動産の売却の記事をご覧ください。
記録がそろわないと、加算税と罰則の扱いが変わります
年末の記録が不十分だと、次のような誤りにつながります。
- 国内の証券口座の外国株を国外財産に入れる、または海外口座の日本株を入れ忘れる
- 12月31日以外の相場で円にする、借入金の元本を差し引いて判定する
- 現地で税金が引かれた利子や配当を、申告から外す
国外財産の利子・配当・家賃・売却益などの申告漏れでは、加算税が増減します。
加算税は申告漏れなどへの追加の税です(増減は国外送金等調書法6条)。
- 期限内の調書に記載あり ― 過少申告・無申告加算税が、税額の5%分軽くなります(同条1項)。
- 調書の提出なし・記載なし ― 5%分重くなります。重要な事項の記載不足も含みます(同条3項)。
- 求められた書類を指定日までに出さない ― 軽減はなくなり、提出なし・記載なしの加重は5%から10%になります(同条7項)。
書類は、国外財産の取得・運用・処分の記録です(施行規則13条の2)。預金なら入出金と利子、株式なら売買と配当の記録などです。
計算例
例:国外財産に関する加算税の計算の基礎となる税額が100万円の場合(加減される額)
期限内の調書に記載あり 1,000,000円 × 5% = 50,000円を差し引く 調書の提出なし・記載なし 1,000,000円 × 5% = 50,000円を加える 提出なし・記載なしで書類も出さない 1,000,000円 × 10% = 100,000円を加えるもとの加算税の額や、責めに帰すべき事由がない場合の扱いは事案ごとに異なります。一定の前提を置いた目安です。
期限後でも、調査通知の前に出した調書は、加算税の特例では期限内の提出とみなされます。調査による更正などを予知して出したものは除きます(同法6条6項)。
正当な理由なく期限までに調書を出さないと、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の定めがあります。
偽りの記載をして出した場合も同じです(同法10条)。期限までに出さなかった場合は、情状により刑が免除されることがあります。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
年末にご自身で進められるのは、次の4つです。
- 海外の口座と資産を、国名・金融機関名・支店名とあわせて一覧にする
- 12月31日の残高・最終価格と、取引金融機関のTTBを記録する
- 1年分の利子・配当・売買の明細と、外国の税金の書類を保存する
- 取得したときの契約書と、取得価額の記録を探しておく
不動産の見積価額の出し方や、外国税額控除の計算は、資料を見て決める個別判断です。
国外財産の判定や、居住者・非永住者の区分も、事実で結論が分かれます。
日本を出る予定がある方は、出国時の課税の記事もご覧ください。

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- 海外の口座・資産の一覧づくりと、口座ごとの国外財産かどうかの判定
- 12月31日の価額と相場の根拠をそろえた、調書の要否の判定
- 1年分の明細の円換算と、外国税額控除の明細書・添付書類の準備
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よくある質問(FAQ)
Q1. 国内の証券会社の口座で持つ外国株も、国外財産調書に書きますか?
口座で管理する有価証券は、口座を開いた証券会社などの営業所の所在で判定します(施行令10条2項)。国内の営業所の口座で管理する外国株は国内の財産なので、国外財産調書には書きません。反対に、海外の証券口座で持つ日本株は国外財産です(国税庁FAQ問23)。
Q2. 国外財産調書の円換算には、どの為替相場を使いますか?
12月31日の外国為替の売買相場で換算します(施行令10条5項)。具体的には、取引金融機関が公表する12月31日の最終の電信買相場(TTB)などです。同日に相場がなければ、その前の最も近い日の相場を使います(通達5-14)。
Q3. 海外の口座の利子は、現地で税金が引かれていれば申告しなくてよいですか?
非永住者以外の居住者は、国内外のすべての所得が課税の対象です(所得税法7条1項1号)。国外で支払われ国内で源泉徴収されない預金の利子は、総合課税の利子所得です。外国の税金は、書類を添付して外国税額控除で調整できる場合があります(No.1240)。
Q4. 国外財産調書の提出期限を過ぎてしまったら、どうなりますか?
期限後でも、調査通知の前に出せば、加算税の特例では期限内の提出とみなされます。調査による更正などを予知して出した場合は除きます(国外送金等調書法6条6項)。正当な理由なく期限までに出さないと、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の定めがあります。情状により刑が免除されることもあります(同法10条2項)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律5条1項・6条1項・3項・6項・7項・6条の2第1項・3項・10条、同法施行令10条1項〜5項・11条1項、同法施行規則12条5項・13条の2、国税庁の法令解釈通達(国外財産調書及び財産債務調書関係)5-2・5-9・5-10・5-14、所得税法2条1項3号・4号・7条1項・95条1項、所得税基本通達57の3-2、タックスアンサーNo.1240「居住者に係る外国税額控除」・No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」・No.2020「確定申告」、国税庁の確定申告の手引き(総合課税の利子所得)、国税庁「国外財産調書制度(FAQ)」・「財産債務調書制度(FAQ)」(いずれも令和8年8月)の内容を扱っています。非永住者・非居住者の課税と居住者の判定の細目、相続により取得した国外財産の扱い、財産債務調書の記載事項と所得要件の細目、国外財産調書と財産債務調書の両方を出す場合の記載、有価証券の取得価額の記載、建物などの見積価額の計算方法の細目、過少申告加算税・無申告加算税の税率と計算、延滞税、相続税の申告漏れの場合の特例、外国税額控除の控除限度額と繰越控除、外国株式の配当・譲渡益の課税方式の選択、外貨預金の為替差損益、海外不動産の家賃収入と減価償却、海外不動産の売却、出国時の課税、暗号資産の扱い、外国子会社合算税制、租税条約、国どうしの口座情報の交換、確定申告が必要かどうかの判定は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、為替相場や税額は個々の事情によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(5条・6条・6条の2・10条)https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000110
- 国税庁「国外財産調書制度(FAQ)」(令和8年8月)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/kokugai_zaisan/pdf/kokugai_faq.pdf
- 国税庁「財産債務調書制度(FAQ)」(令和8年8月)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/zaisan_saimu/pdf/zaisan_faq.pdf
- 国税庁 所得税基本通達 法第57条の3《外貨建取引の換算》関係(57の3-2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/11a/01.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1240「居住者に係る外国税額控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm
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