確定申告

年末に株の損出しをする前に確認したいこと
受渡日・口座の種類・翌年の確定申告

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 令和8年分に入るかは原則として受渡日で決まり、申告で約定日を選ぶこともできます
  • 源泉徴収ありの特定口座でも、ほかの口座と差し引くには確定申告が必要です
  • NISA口座の損失は、ほかの口座の利益と差し引くことも繰り越すこともできません
  • 損失の繰越は、損失の年から毎年続けて申告することが要件です(売らない年も)

まず結論:年末に売る前に、年分・口座・翌年の申告の3つを確かめます

含み損のある株などを年内に売り、その年の利益と差し引くことを「損出し」と呼ぶことがあります。

この記事は売買をおすすめするものではなく、売ったときの税金の扱いを整理するものです。

年内に売ったつもりでも、受渡日が翌年なら、原則として令和9年分の損益です。

年末に売る前に、年分・口座・翌年の申告を確かめます
年末に売る前に、年分・口座・翌年の申告を確かめます

令和8年分に入るかは、原則として受渡日で決まります

株などの売却(信用取引などを除く)の年分は、原則として株式の引渡しの日(受渡日)で決まります。

株式等の引渡しがあった日による。ただし、納税者の選択により、当該株式等の譲渡に関する契約の効力発生の日により総収入金額に算入して申告があったときは、これを認める。

(租税特別措置法関係通達37の10・37の11共-1(1))

契約の効力発生の日は、一般に約定日と呼ばれる日です。納税者が選べば、約定日の年分で申告することも認められています。

取引所で売買する国内の株式は、普通取引だと、契約の日から数えて3日目に決済します。日数には休業日を数えません(日本取引所グループ)。

このため、12月の終わりに売ると、受渡日が翌年になることがあります。

注意

受渡日が12月中になる最終の売買日は、証券会社の案内で確かめてください。投資信託を解約で換金するときは、通達で「一部の解約の日」によるとされています。外国株とあわせ、売る前に証券会社で確かめます。

原則どおり受渡日で考えると、年末の売却は翌年分になることがあります。

年内に売っても、受渡日が翌年なら原則として翌年分です
年内に売っても、受渡日が翌年なら原則として翌年分です

口座の種類で、差し引く手続きと申告が変わります

同じ年の上場株式等の利益と損失は差し引けますが、口座によって手続きが違います。

上場株式等には、公募の投資信託や外国の市場で売買される株式なども含まれます(No.1463)。

口座1年分の損益の計算ほかの口座と差し引くには
特定口座(源泉徴収あり)証券会社が計算し、税金を差し引きます確定申告が必要です
特定口座(源泉徴収なし)証券会社が計算し、年間取引報告書が送られます報告書を使って申告します
一般口座取得費などをご自身で計算します申告で合わせて計算します
NISA口座利益は非課税です損失はないものとみなされます
海外の証券会社の口座円に換算してご自身で計算します申告で合わせます(繰越などは要件を確認)

源泉徴収ありの口座は、口座ごとに申告不要を選べます。ただし、ほかの口座と差し引くときや繰り越すときは申告が必要です(No.1476)。

NISA口座の売却で出た損失は、所得税の計算ではないものとみなされます(措置法37条の14第2項)。

特定口座は国内の営業所に開く口座です(措置法37条の11の3第3項1号)。海外の口座の損益は、取引の時の為替相場で円に換算して計算します(所得税法57条の3第1項)。

配当との差し引きや繰越の対象は、条文が挙げる売り方の損失です(措置法37条の12の2第2項)。代表例は、金融商品取引法の登録を受けた証券会社などへの売委託です。海外の証券会社で売った損失が当たるかは、個別に確かめます。

海外の口座の年末の記録は、海外口座の年末の確認の記事で整理しています。

源泉徴収ありの特定口座でも、ほかの口座と差し引くには確定申告が必要です。

損失を繰り越すには、損失の年から毎年の申告が要ります

差し引ききれない損失は、毎年続けて申告することを前提に、翌年以後3年間繰り越せます。

売却損は確定申告で、申告分離課税を選んだ上場株式等の配当などと差し引けます(No.1474)。

それでも残る損失を繰り越すには、次の要件があります(措置法37条の12の2第5項・第7項)。

当該上場株式等に係る譲渡損失の金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合

(租税特別措置法37条の12の2第7項)

令和8年の損失なら、令和9年分から令和11年分の上場株式等の利益や配当などから差し引けます。

ポイント

株を売らなかった年も、損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です(No.1474)。申告書には、確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)を添えます。

残った損失は、毎年の申告を続けて翌年以後3年間繰り越せます
残った損失は、毎年の申告を続けて翌年以後3年間繰り越せます

計算例:口座をまたいで差し引くと、所得税等はこう変わります

源泉徴収ありの口座が2つでも、申告して差し引くと、所得税等が戻ることがあります。

計算例

例:令和8年分に、A証券で利益100万円、B証券で損失60万円が出た場合の所得税等

どちらも源泉徴収ありの特定口座で、配当はない前提です。

申告しない場合 1,000,000円 × 15.315% = 153,150円 申告した場合 (1,000,000円 - 600,000円)× 15.315% = 61,260円 確定申告で戻る所得税等 153,150円 - 61,260円 = 91,890円

15.315%は、所得税15%と復興特別所得税の合計です(No.1463・No.1476)。住民税(5%)は含めていません。

金額は一定の前提を置いた目安です。

令和9年以後に生ずる所得は、源泉徴収の税率の内訳が変わります(No.1476)。

間違えると、差し引けない・繰り越せないことがあります

次の食い違いがあると、差し引けないことや繰り越せないことがあります。

  • 受渡日が翌年 ― 原則どおりなら令和9年分の損失で、令和8年分の利益と差し引けません。
  • 源泉徴収ありの口座の損失だけを申告 ― その口座の配当などは申告不要にできず、あわせて申告します(No.1476)。
  • NISA口座で損失 ― ほかの口座の利益と差し引けません。
  • 繰越の途中で申告しなかった ― 連続して申告する要件を欠き、以後は差し引けなくなるおそれがあります。
  • 非上場株と相殺 ― 上場株式等と一般株式等の損益は、原則として差し引けません(No.1463)。

配当の課税方式の選び方は、株・投資信託の確定申告の記事で解説しています。

繰越の途中は、売買がない年も申告を欠かさないことが大切です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

年内にご自身で確かめられるのは、次の5つです。

  1. 証券会社ごとに、令和8年に売って確定した損益を確かめる
  2. 売る予定の株が、どの口座にあるかを確かめる
  3. 受渡日が12月中になる最終の売買日を、証券会社の案内で確かめる
  4. 繰り越している損失があれば、前年の申告書の控えを用意する
  5. 令和9年の口座を源泉徴収ありとなしのどちらにするかを、証券会社の案内で確かめる

源泉徴収の選択は年単位で、年の途中で源泉徴収をやめることはできません(No.1476)。

どの口座を申告に入れるか、約定日で申告するかは、口座全体を見て決める個別判断です。

配当の課税方式や海外の口座の扱いも、事実に応じて判断が分かれます。

証券会社から送られる年間取引報告書は、翌年の申告の材料になります
証券会社から送られる年間取引報告書は、翌年の申告の材料になります

税理士に頼むと変わるのは、口座ごとの集計と申告書の作成です

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

  • 年間取引報告書と取引の明細から、口座ごとの損益の集計
  • 一般口座・海外の口座の取得費の計算と、円への換算
  • 繰越損失の残高の確認と、付表・計算明細書の作成
  • 源泉徴収ありの口座を申告に入れるかの、配当を含めた試算
  • 確定申告書の作成と、期限内のe-Taxでの提出

令和8年分の確定申告は、原則として令和9年2月16日から3月15日までです(No.2020)。全国どこからでも、オンラインで完結します。

料金の目安

料金は基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額です。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。

通常料金での計算例:給与所得、株式・FXの売却、その他控除セットに当たる会社員の場合です。32,000円+6,000円+29,000円+6,000円=73,000円(税込80,300円)。株式・FXの売却は売却額3,000万円までの一律料金で、超える場合は個別にお見積りします。

ご自身の料金は60秒見積りで確かめられます。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 12月の終わりに売った株は、令和8年分になりますか?

原則は、株式の引渡しがあった日(受渡日)の年分です。国内の株の普通取引は契約日から数えて3日目(休業日を除く)に決済するため、翌年になることがあります。納税者が選べば、約定日の年分で申告することもできます(措置法通達37の10・37の11共-1)。

Q2. 源泉徴収ありの特定口座なら、申告しなくてよいですか?

その口座の売却益は、口座ごとに申告不要を選べます(No.1476)。ただし、ほかの口座の損益と差し引く場合や、損失を繰り越す場合は確定申告が必要です。その口座の損失を申告するときは、口座で受け取った配当なども、あわせて申告します。

Q3. NISA口座で出た損失は、ほかの口座の利益と差し引けますか?

差し引けません。NISA口座の売却で出た損失は、所得税の計算ではないものとみなされます(措置法37条の14第2項)。国税庁も、NISA口座の損失は損益通算も繰越控除もできないとしています(No.1474)。売る口座は事前に確かめてください。

Q4. 損失を繰り越している途中で、株を売らなかった年も申告が要りますか?

必要です。株を売らなかった年も、繰り越すための申告が必要です(No.1474)。損失の年から連続して確定申告書を出すことが、繰越控除の要件です(措置法37条の12の2第7項)。取引のない年の申告を欠くと、以後は差し引けなくなるおそれがあります。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法37条の11の3第3項1号・37条の11の5第1項・37条の12の2第2項・第5項・第7項・37条の14第2項、所得税法57条の3第1項、租税特別措置法関係通達37の10・37の11共-1、タックスアンサーNo.1463「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」・No.1465「株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い」・No.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」・No.1476「特定口座制度」・No.2020「確定申告」、日本取引所グループ「売買の種類」の内容を扱っています。令和8年の受渡日が12月中になる最終の売買日、特定口座の年間取引報告書の集計の基準日、特定口座の取引で約定日を選べるかの細目、投資信託の解約の日・外国株の受渡日、信用取引・発行日取引の計上時期、売却後に同じ銘柄を買い戻した場合や総平均法に準ずる方法による取得費の計算、外貨建て取引の換算に使う相場の細目、海外の証券会社での売却が損益通算・繰越控除の対象になるかの判定、相対取引、配当の課税方式の選び方、申告による合計所得金額・扶養・社会保険料への影響、住民税の手続、一般株式等(非上場株式)・特定中小会社の株式(エンジェル税制)・先物取引・FX・暗号資産の課税、外国税額控除、国外財産調書、期限後申告・修正申告で繰越控除を受ける場合の扱い、令和8年度改正によるNISAの見直しは扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は所得や控除の内容、端数の処理によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

年末に売る前に、口座ごとの損益と繰越を確かめませんか

年末の売却が令和8年分になるかは、原則として受渡日で決まります。納税者の選択で、約定日により申告することも認められています。源泉徴収ありの特定口座でも、ほかの口座の損益と差し引くには確定申告が必要です。NISA口座の損失は、差し引くことも繰り越すこともできません。損失の繰越は、損失の年から毎年続けて申告することが要件です。代表税理士が、証券会社ごとの年間取引報告書から損益を集計し、申告書の作成と提出まで行います。全国どこからでもオンラインで完結します。口座が複数ある方や、損失を繰り越している方は、令和8年分の申告からお任せください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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